科学者道化師コラボでシリアス&若干深夜テンションちっくなお話です。
ふと思い付いたネタだったのに無駄に長くなりました…
こういう話好きです←おい
*attention*
科学者道化師コラボのお話です(若干BL注意です)
シリアス&深夜テンションちっくなお話です
ある意味での嫉妬ネタ?です
やっぱりムッソリーニさんの立場からしたらクレースのことは気になるだろうな、と…
それでも彼なら嫉妬した自分自身を責めそうだなと言う妄想←おい
カルセは本気でムッソリーニさんが好きで、どうしたら良いか悩むのだと思います(笑)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
ぶくぶく、と泡が昇り、消える。
温かな湯に沈む彼の、柔らかい金の髪が揺れる。
ぶくぶく。
ぶくぶく。
子供がそうして遊ぶように、彼は息を吐き出し続ける。
「ぷは……」
流石に息苦しくなって顔をあげて、彼……ムッソリーニは軽く顔を拭った。
少し体を動かせば、ぱしゃりと湯が跳ねた。
ムッソリーニはバスタブの縁に腕をついて、一息吐く。
此処は、自分の部屋のバスルームではない。
恋人の……カルセの部屋だ。
そうはいっても、部屋の作りは何処も同じ。
自分の部屋に戻ってシャワーを浴びるからといった彼だったのだが、
それでは面倒でしょう、とカルセに押しきられて、現在に至る。
彼は、嫉妬深い。
彼は、独占欲が強い。
それは、一緒にいて強く感じること。
こうして、一緒に過ごしていると感じる彼の思い。
優しさを、暖かさを感じる。
それと同時に、思ってしまう。
この優しさを。
この温もりを。
"彼"にも向けたの?
「……やーだなぁ……
俺、すっげぇやなやつ……」
そう呟きながら、ムッソリーニは再びバスタブの湯のなかに沈んだ。
そのまま、目を閉じる。
ぴりぴりと、目の痛みを感じた。
***
それから暫く湯に沈んでいたムッソリーニだったが、
いい加減に上がらないとカルセに迷惑だと思って湯から上がった。
タオルで体を拭き、着替えてから鏡の前にたつ。
ほんの少し目が赤くなっていたが、この程度ならば湯が入ったと誤魔化せるだろう。
そう思いつつムッソリーニはバスルームから出た。
「お風呂先にいただいてきましたー……って」
あれ、とムッソリーニは驚きの声をあげた。
というのも……
「カルセさん……?寝てる、の?」
部屋の主である、恋人……カルセが、机に突っ伏して眠っていたから。
彼の寝顔なんて初めてみたと、ムッソリーニは少し驚く。
カルセはいつも、自分の無防備な姿を晒そうとしなかった。
いつでも優位にたって、いつでも余裕そうで……
そんな彼の、こんな無防備な姿は、初めてみた。
「……疲れてる、んだろうな」
ムッソリーニはカルセをみて、そう呟いた。
溜め息混じりに"俺には無理すんなって言うくせに"といって、苦笑する。
彼だって大概無理をするタチだと言うことを、ムッソリーニは知っている。
起こすか否か、ムッソリーニは悩んだ。
こうして寝入ってしまっているということは仕事も段落しているのだろう。
後は風呂に入って寝てしまうだけだというのなら、
起こして風呂にはいるよう言えば良いかもしれない。
でも、こうしてぐっすり寝入っているようなのに……
無理矢理たたき起こすというのも、忍びない気がした。
疲れて寝入ってしまったのならば、眠っている間はそのままにしてあげたい。
どちらにしよう。
そう迷いつつ視線を彷徨わせた時、ムッソリーニは彼の机の上にあるものを見つけた。
「……あ」
それは、一枚の写真だった。
古い写真のようだが、魔術で保護されているのか、
色褪せたり破けたりはしていない写真。
写っているのは少年時代のカルセと、彼と似たような年頃の深緑の髪の少年。
二人とも楽しそうに微笑んでいる。
「クレースさん……」
ムッソリーニはカルセの隣で笑っている緑髪の少年の名を紡いだ。
そして、青い瞳を細める。
カルセの、かつての恋人。
今は亡き、彼の大切な存在だった人。
さっきムッソリーニがバスルームで思い出していたのも、彼のことだった。
かつてカルセが愛情を注いでいたであろう人物……――
カルセは、ムッソリーニと彼を重ねるようなことはしないといっていた。
事実、彼とは別の存在として自分を大切にしてくれているとも思う。
でも、どうしても……
心の何処かで思ってしまうのだ。
彼にも、俺にしたように優しく笑いかけたの?
彼にも、俺にしたように優しくキスをしたの?
彼にも……俺にしたように優しく触れたの?
そんなことを考える度に自己嫌悪に陥る。
彼が自分と彼とを比べていないというのに、
自分自身が自分と彼都を比べてしまっている。
それで勝手に嫉妬している自分が、憎たらしく感じた。
そっと写真から目を逸らして、ムッソリーニは溜め息を吐き出す。
とりあえず、気持ちを落ち着けないと……
そう思うように、深呼吸を繰り返す。
その時だった。
「……ムッソリーニ?」
不意に聞こえた声にはっとした。
視線をその声の方へ向ければ、案の定……藍色の瞳とかち合う。
「っ、カルセさん」
ムッソリーニは彼の名前を呼んだ。
まさか、目を覚ましているとは思わなかった。
少し、焦る。
カルセは体を起こして眼鏡をかけなおした。
そして、ムッソリーニの方を見つめて、問いかける。
「どうかしましたか?」
「どうもしないよ?あ、お風呂お先にいただいてきました!」
ムッソリーニはそういって、いつも通りに笑ってみせる。
今抱いていた感情を圧し殺すように。
「それにしても、カルセさんの寝顔なんてレアなもんみれちゃったなー
早く風呂上がってきて得したって感じ?」
悪戯っぽく笑いながら、ムッソリーニはカルセにそういう。
そんな彼を見つめて、カルセはすっと藍の瞳を細めた。
「ムッソリーニ」
「あ、いっそ写真でも撮っとけば良かったかなー?
あがってきたらカルセさん寝てるんだもん。びっくりしちゃっ……」
カルセが名を呼ぶのも無視してそうはしゃぎ続けるムッソリーニ。
彼の体を、カルセはひょいと抱き上げた。
驚いて固まっている彼をそのまま運んで、ベッドの上に落とす。
いつもより幾分乱暴な落とし方。
そのままカルセが馬乗りになる。
彼の行動に困惑したように、ムッソリーニはいった。
「何、カルセさ……んぅ……っ」
名前を呼び終わるより先。
カルセに深く口付けられた。
声も呼吸もすべて奪われ、支配される。
くらくらと意識が揺れる。
「ん、……ぅっは、ぁ……」
ふわりと意識が遠退いたタイミングで、カルセはムッソリーニを解放した。
彼は荒く息を吐き出しながら、カルセを見つめた。
「何でもないというのなら、もう少しそれらしい顔をしていってほしいものですね。
……そんな泣き出しそうな顔をして言われたって、説得力皆無です」
カルセはそういいながら、ムッソリーニの頬に手を添えた。
その温もりはいつも心地よく安心できる。
でも今日は少し胸が痛くて、ムッソリーニは思わず逃げた。
カルセはそんな彼をみて顔を顰める。
そして、再び深いキスをした。
逃げようとする彼の腰を撫でて、抵抗する力を奪う。
こういうことに慣れていない彼を沈ませるにはこれが一番早かった。
「何でもない、どうもしないというのなら……
私の目をみて、はっきりと、そう言いなさい」
嘘はすぐにわかりますから、とカルセは言う。
そして、嘘を言う度にキスをするつもりなのだろう。
ムッソリーニは暫し彼から視線を逃がした。
数秒して視線を戻すが、カルセはやはりじっとムッソリーニを見下ろしている。
ムッソリーニは目を伏せた。
そして、小さく溜め息を吐き出すと、掠れた声で詫びた。
「……ごめん、カルセさん」
「?何故謝るんです?」
それは予想外の反応だったようで、カルセは驚いた顔をする。
ムッソリーニは彼の言葉を聞くとこくりと頷いた。
「俺……勝手に、クレースさんに嫉妬してたんだ……」
そんな彼の言葉に大きく目を見開くカルセ。
ムッソリーニはカルセに掴まれていなかった手でくしゃりと金の前髪をかき揚げる。
「あの人には勝てないかもしれないって思ったら悔しくて、
そんなこと思ってる俺が馬鹿みたいで、って言うか実際馬鹿で……っ」
あぁ、もう頭のなかはぐちゃぐちゃだ。
彼のことが好きで。
だからこそ彼のことを困らせたくなくて。
だけど自分の頭のなかだけで全部抱えていたら爆発しそうで。
ムッソリーニのそんな言葉を聞いてカルセは小さく息を吐く。
そして、呟くような声でいった。
「えぇ、確かに貴方は馬鹿ですよ」
きっぱりと、カルセはそういった。
ムッソリーニは目を伏せる。
胸が、痛い。
カルセはそんな彼を見つめると、ふっと表情を緩めた。
そしてムッソリーニの耳元に、囁く。
「……でも、不安にさせている私も馬鹿です。
どうしたら貴方に伝わるかと考えるけれど……」
そういいながら、カルセはそっとムッソリーニの額にキスを落とす。
驚いたように瞬く彼の青い目から涙が溢れて、シーツに染み込んだ。
「こんな手段に訴えるくらいしか、思い付かない」
直接触れることしか。
自分の温もりを伝えることしか。
それくらいしか思い付かない。
カルセだってわかっていた。
元々恋人が居た自分と一緒にいるムッソリーニの不安。
しかも自分と彼……クレースは嫌いあって別れたわけではないのだから、
ムッソリーニからしてみれば、不安なのだろうということも。
でも実際、クレースとのことは、十数年前に終わっていた。
彼は、もう死んでしまった。
二度と帰ることはない。
ムッソリーニのことは、一人の人間として愛していた。
誰かと……クレースと比べることは、なかった。
「私はね、ムッソリーニ……
貴方に出会うまでは、もう二度と誰のことも好きにならないと心に決めていたんです。
この腕にはもう誰も抱かないと。
部下にしたのもせいぜい頭を撫でるくらいのものでした」
クレースを失って立てた誓い。
もう二度と大切な人間は作らないという誓い。
部下にも友人にも必要以上には近づかないようにした。
近づきすぎたと思えば自分から突き放した。
けれど……――
「でも、貴方に出会って変わった……貴方を守り、愛したいとそう思った。
キスをして触れたいと、抱き締めたいと、そうまで思った。
……手放したくない、ずっと傍にいてほしいと思った」
そういいながら、カルセはムッソリーニの首筋に顔を埋めた。
そして、一瞬の躊躇いの後に強く口付けて、痕を残す。
誰かにみられる可能性もあるからと一瞬迷ったが、わざとそこに刻んだ。
「ぁ……っ」
ひくっとムッソリーニの体がこわばる。
甘い声が、彼の唇から漏れた。
カルセは彼の首筋から顔を離した。
少し速い呼吸をする彼を見つめると、藍色の瞳を細めて、いった。
「それだけ、貴方が"特別"なんですよ」
そういいながらカルセはムッソリーニの頬を撫でる。
少し濡れた頬。
そこにキスを落としながら、カルセはいった。
「……それだけでは、駄目ですかね」
そういって、カルセは微笑む。
ムッソリーニはそんな彼を見つめた後、唇を噛んで、こくりと頷いた。
「駄目な訳、ない……
我儘でごめんなさい、カルセさん……っ」
「貴方が詫びる必要性はこれっぽちもありませんよ……」
私が貴方を安心させられれば良いだけです。
カルセはそういいながらムッソリーニを抱き締める。
自分の温もりを、声を、感触を彼に伝えようとするように。
―― 不安を消す方法 ――
(そんなものひとつも思い付かない。
こうして貴方に触れて大丈夫だと伝えることしか)
(貴方がかつて愛したであろうあの人に思わず嫉妬して、それを隠しきれなくて
ごめんなさいと詫びる俺の首筋に所有痕を刻む愛しい人
安心して良いんだよね……?)