科学者道化師コラボでシリアスめ?なお話です。
健気なムッソリーニさんを書いてみたかったのです…←おい
*attention*
科学者道化師コラボでのお話です
本家Laurentia!(学パロ)設定でのお話です
シリアスめ?なお話です
カルセの仕事上、こういうこともありうるかな、と思いまして…←
ムッソリーニさんなら待っててくださるかな、と言う妄想…←
そのあとのやり取りも完全に趣味です(笑)
背が高い方を低い方が撫でたり頬キスしたりというシチュが好きです
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
冷房の効いた、学校の保健室。
その作業用の机で書類仕事をこなしているのは、淡い水色の髪の男性。
この学校……イリュジア学園の養護教諭であるカルセは、
書類に向けていた視線をはずして、時計の方を見た。
もうすぐ、時刻は午後六時を示す。
部活動も大半が終わり、帰ってしまっても問題ない時刻になる。
本当ならもう少し早く帰ることも出来るのだけれど、
暑いこの時期、部活中に熱中症を起こしたりする生徒も多いため、
こうして少し遅くまで残るようにしているのだった。
とはいえ、今日は何事も起こらなさそうだ。
その事にとりあえず安堵する。
そして窓の外に視線を向けつつ、カルセはふっと息を吐き出した。
「彼は、もう待っていますかね……」
カルセは小さくそう呟いた。
彼の口元が、微かに綻ぶ。
彼、というのは他校の生徒……ムッソリーニのこと。
カルセが先刻からやたら時計を気にしているのは、そのためだった。
今日は、カルセの仕事が終わったら二人で帰ろうと言う約束をしていた。
帰りがけにひとつ二つ店を覗きたいな、という話もしていた。
カルセが最近忙しく、二人でいられる時間は減っていた。
学生と教師と言う身分。
こればかりはどうしようもない。
でも少しでいいから一緒にいたい。
そう思って、カルセはムッソリーニを帰り道のデートに誘ったのだった。
どうしても六時過ぎにならないと待ち合わせ出来ない。
そんなカルセの言葉にも、ムッソリーニは笑顔で頷いた。
それまでは図書館で勉強しているから良いといって。
仕事が終わったら、すぐに彼のところにいこう。
そういえば、新しい靴がほしいと話していたっけ。
自分も、普段使いの靴がほしいと思っていたから、一緒に買いにいこうか。
そんなことを考えかけて、カルセは苦笑気味に首を振る。
まだ仕事中だ。
真面目に仕事をしなくては……
そう思った、その時。
がらりと、勢いよく保健室のドアが開いた。
カルセが驚いて顔をあげれば、何やら焦った様子の生徒。
体操着姿の生徒。
たしかバスケ部の子だったか、とカルセは思う。
「カルセ先生、来てください!」
血相を変えてそう叫ぶ生徒。
カルセはまばたきをしつつ、立ち上がった。
「どうしたのですか?」
「部活中に事故が……!」
話を聞きつつ、カルセも体育館に走った。
どうやら、練習中に生徒同士がぶつかって一方が転んだときに頭を打ったらしい。
頭を打った子の意識がないこと。
顧問の教師が様子を見ていること。
救急車は既に呼んでいると言うこと。
それらを的確に説明するのを聞きながら、カルセも体育館に走る。
意識がないというのはちょっと心配だ。
救急車を呼んでいると言うならとりあえずの処置をして、
病院に搬送するのが最善策だろう。
カルセは冷静に頭のなかでそう思う。
時刻はちょうど、六時を回ったところだった。
***
その後カルセはその事故の処理に追われた。
保護者への連絡、病院への連絡と生徒の状況の確認。
どうやら、生徒も大事には至らなかったようで、
すぐに意識も戻り、脳にも異常はなさそうだと言う。
その事には、とりあえずほっとした。
ただひとつ、生じた問題はといえば……
それらの仕事をすべて片付けて、カルセがはっとした時には、
すでに時刻が八時を回っていたことである。
忙しすぎて、電話の一本も入れられていない。
メールの一通も出来ていない。
それに気がついたとき、カルセはすっと血の気が引くのを感じた。
慌てて携帯電話を確認すれば、メールと電話が一件ずつ。
どちらも、ムッソリーニからのものだった。
滅多に彼からは連絡を寄越して来ない。
カルセのさんの迷惑になると困るから、と彼はよくいっていた。
そんな彼がこうして連絡を寄越してきている時点で、
心配をかけたのだと言う子とは容易に想像できる。
メールはちょうど六時少し過ぎくらい。
"待ち合わせ場所で待ってます"と言うもの。
電話は、それから三十分後。
20秒間のコール。
留守電はなし。
それを見ると、カルセは唇を噛んだ。
そしてもう一度電話をかけてみるも、通じない。
メールも返信がない。
カルセはすべての仕事が片付いているのを確認すると、そのまま学校を飛び出した。
車もバイクも持たず、歩いて通勤していることをこのときばかりは後悔した。
車なら、せめてバイクか自転車なら、もう少し早く行けるのに、と。
待ち合わせは、時々二人でいくカフェの前。
そこで待ち合わせてから買い物にいこうと言う話をしていた。
待ち合わせ時間から既に二時間だ。
もう、いるはずがない。
そう思いつつも、カルセは走ってそこにいった。
夏とはいえ、七時半を回れば暗くもなる。
八時を過ぎたこの時間ではもうとっくに日は暮れ、
街を照らすのは店の明かりばかりになっていた。
そんな街を仕事で着ているワイシャツ姿で走る姿は、さぞかし滑稽だっただろう。
流石に白衣は脱いでいたが、わざわざ私服に着替え直す時間などあるはずがない。
不思議そうな周囲の視線も気にせず、カルセは走って待ち合わせ場所にいった。
すでにカフェはしまっていて"Closed"の看板がかかっている。
明かりのないそこに、人影はない。
あぁ、やはり帰ってしまったのだろう。
その事に安堵するやら申し訳ないやらでカルセは溜め息を吐き出す。
その時だった。
「カルセさん?」
不意に聞こえた声。
それに振り向けば、カフェの壁に寄りかかっている金髪の少年の姿。
カルセはそれに驚いて大きく目を見開く。
「!ムッソリーニ!」
思わず、大きな声で名を呼んでいた。
ムッソリーニ自身も驚くほどの声で。
そしてカルセは彼に歩み寄ると、思わず彼を抱き締めた。
唐突な行動に驚いたのか、一瞬もがいたムッソリーニだったが、
その次に聞こえたのは心底ほっとしたような声での、"お疲れさま"だった。
カルセはそれを聞いて、驚いた。
そして彼の体を離して彼を見つめる。
少しも怒ったり拗ねたりした様子のない、澄んだ青い瞳。
カルセはそれを見つめて顔を歪めつつ、いった。
「怒っていいんですよ?」
二時間も連絡なしに待ちぼうけさせて。
怒らないはずがない。
悲しくないはずがない。
カルセはそういったが、ムッソリーニは笑顔で首を振った。
そして、カルセを見つめながら、言う。
「怒らないよ。だって、カルセさんの仕事だもん」
何かあったんでしょう?とムッソリーニは言う。
学校に通う立場である以上、学校で起きうる事態は簡単に想像出来るよ、と。
カルセはそんな彼を見つめて、藍色の瞳を瞬かせた。
そしてぐっと唇を噛むと、再び彼を強く抱き寄せる。
ムッソリーニが"カルセさん此処路上だから!"と声をあげるが、無視。
どうせ、通る人だって興味を持つはずないのだから。
今はただ、この愛しい恋人を抱き締めたかった。
さんざんコンクリートの照り返しにあったであろう彼の体は少し熱い。
カルセはそれを感じつつ、小さく呟くような声でいった。
「……全く、貴方は……この炎天下、何時間待ってたんですか」
六時の段階で此処にいると言うメールが来ていた。
カフェも、七時にはしまっていたはず。
無駄遣いはしないたちの彼がすぐに来ると思われるカルセを待つために、
わざわざカフェに入ることは考えづらいから……
恐らく、少なくとも二時間は此処にいたことになる。
「熱中症になったらどうするつもりだったんですか」
「ちゃんと水は飲んでたよ?」
だから大丈夫。
ムッソリーニは笑いながらそういう。
カルセはそんな彼の額に自分の額をこつんとぶつけた。
「……本当に、大馬鹿です」
「馬鹿っていうなよ、もー……」
わかってるって、とむくれた顔をするムッソリーニ。
何処かおどけたようなその表情は、カルセの後悔を拭おうとしているように見えた。
「……違いますよ、馬鹿は私です。
本当に、ごめんなさいムッソリーニ」
カルセはそういった。
仕事だったのだから仕方ないと開き直ることはできなかった。
愛しい彼。
優しい彼。
その気質はよくよく知っている。
どんなに暑くても、どんなに寒くても、彼がこうして待っていることは想像できた。
病院への連絡の片手間に一通、一行のメールを送る時間くらいあっただろう。
仕事で帰れなくなった、ごめんなさいくらい。
それさえもできなかった自分に腹が立つ。
そう思いつつカルセはムッソリーニの体を離しながら、溜め息を吐き出した。
ムッソリーニはそんな彼を見つめて幾度か青い瞳を瞬かせる。
そして少し背伸びをしてカルセの頭を撫でた。
唐突な彼の行動にカルセは驚いて固まる。
そんな彼を見てにっと笑うと、ムッソリーニはいった。
「お仕事お疲れさま、カルセさん。
確かにちょっと心配はしたけど……
大丈夫だよ、ちゃんとカルセさんは来てくれたんだから」
だから大丈夫だよ。
そんな顔をしなくていいんだよ。
ムッソリーニはそういって、笑う。
それはカルセを気遣うために本心を偽っている訳ではない、本気の言葉で。
カルセはそれを聞いて、顔を歪める。
「……ムッソリーニ」
本当にごめんなさい。
そう詫びるカルセを見て溜め息を吐くと、
ムッソリーニは一瞬迷ってから、彼の額にキスをした。
「もうそんな顔しない!終わり!
な?帰ろうよ、カルセさん」
疲れてるだろうから買い物は今度。
とりあえず、かえって夕食にしよう?
今日は、俺が作るからさ。
ムッソリーニはそういって、笑う。
カルセはそんな恋人を見つめた。
優しくて暖かくて、気遣いの出来る彼。
自分より、一回りも年下なのに……
「……ありがとうございます、ムッソリーニ」
カルセはそういって、彼に微笑みかけた。
やっと笑った彼を見て、ムッソリーニも嬉しそうに笑う。
そして二人は、一緒に歩いて帰っていった。
―― My lover ――
("そういえば何で電話通じなかったんですか?
仕事終わった後に連絡したのですけれど…")
("え?あ、電池が切れちゃってて…ごめんなさい"
貴方を待つ間何度も何度も画面を見てるうちに電池が切れたのは、秘密)