カルセとクレースの過去話です。
コラボの科学者道化師コラボ前提で…
以前やったツイッターの診断、クレースの設定が出来るきっかけだったお題で
小説を書いてみたくなったのでした(笑)
カルセは強い人ですがたまに変な所脆くて、
思考回路が曲がっちゃってたらかわいいなと思った結果でした←
たぶんこの気質は一生変わらない、
そして二度目に大切な人間を失ったときは本当におかしくなるんじゃないかなと思ったり(ぇ)
そんな、ある意味複雑な魔術医ですカルセは(笑)
あ、特殊な描写はないですが、一応BLです←おい
ともあれ、追記からお話です!
それは、今から十数年前。
現在のディアロ城騎士団長たちがまだ騎士となるよりも前の話……
淡水色の髪の少年……カルセは医療部隊草鹿のヴァーチェだった。
自他のあらゆる感覚を操作することが出来る能力を有する、有能な騎士。
上官からの信頼もあつく、医療技術も飛び抜けていた少年だった。
彼には、かけがえのない存在である人間がいた。
深緑の髪、青の瞳。
おっとりしていて他人想いな少年、クレースである。
彼らは騎士団の同期入団者であり、友人同士であった。
……否、友人というよりはもう少し、親しかったか。
穏やかな気質の二人はよく図書館で過ごしたり、
二人中庭で本を読んだりして過ごしていた。
走り回ったり飛び回ったりする仲間たちを見て笑っていたりもした。
基本的に仲のよい二人だったが、時折激しい喧嘩をしたりもした。
もっぱら、原因はクレースだった。
「何度いったらわかるのですか貴方という人は!」
そんな声が、月に一度は必ずといってもよいほど響いた。
その度仲間たちは"あぁまたか"という顔をして、苦笑しあったりしていた。
説教を食らっているのは他でもない、クレース。
カルセの前に座らされた彼の頬や腕には、
痛々しい傷跡が残っていることが多々あった。
というのも……
カルセが怒る理由。
それが、クレースの無茶にあったから。
クレースは基本的に他人のことを最優先に考える気質で、
自分のことは後回しにしてしまう節があった。
それは任務中であっても同じこと。
任務中に誰かが転んで怪我をしたら、
いくらそこが危険でも真っ先に飛び込んでいって助け、
結果自分が大怪我をするなんてことはざにあった。
体調不良をおして任務に出掛けて見事な成果をあげた挙げ句、
帰りに倒れるなんてこともあった。
その度こうして、カルセから説教されるのである。
「何度も何度も……無茶をするなといったでしょう!
そのうち本当に命を落としますよ!?」
カルセの声は真剣そのもので、藍色の瞳にはたしかな怒りの炎が燃えていた。
怒り、というよりは……不安、心配か。
無論カルセも仲間想い。
誰に対しても同じように心配したりもしていたが、
クレースは彼にとって殊更大切な存在。
そんな彼が無茶をしてこうして怪我をするのは、
普通の仲間が怪我をするよりずっと一大事で、許せないことだったのだろう。
クレースもその思いは十分良くわかっている。
でも、それとこれとは話が別だった。
どうしてこんな無茶ばかりするのか。
そう怒りの声をあげるカルセに、クレースも反撃した。
「無茶はしてないよ!それに、僕がやらなかったら誰がやるの?
僕が助けにいかなかったら、あの子死んじゃってたかもしれないんだよ?」
見殺しになんてできないよ、とクレースは言う。
その言葉には、カルセは口をつぐむしかなかった。
それは、そうなのだ。
クレースが言うことにも一理ある。
彼が助けに入ったために助かった人間も多くいる。
その結果にクレースの方が死にかけたことも多々あったけれど。
そこでいつも二人の喧嘩はピタリと止まり、どちらともなく溜め息を漏らす。
埒が明かないことを二人ともよく知っているから。
カルセだって自分が心配しているのだから無茶をするのはやめろ何て言えないし、
クレースはクレースでカルセが自分のためを思って怒っていることを知っている。
「……ほら、怪我の治療をしますよ」
放っておけませんからね、といってカルセは彼の手当てをした。
クレースが怪我をした時はカルセが、カルセが怪我をした時はクレースが手当てする。
それは二人の、いつもの行動で……
喧嘩していたのにこの状況。
それがなんだかおかしくて、二人はいつも笑っていた。
もともと、喧嘩というのもおかしな話だったのかもしれない。
そう思いながら。
***
クレースが"あの事故"で命をおとしてから、カルセは少しだけ変わった。
表面上はなにも変わらなかったが、色々な、些細な点が変わっていった。
仲間のことを滅多に名前で呼ばなくなった。
声をかけられれば話はするし、必要となれば声もかけるが、
自分から雑談を持ちかけたり、なにか相談するということがなくなった。
必要以上に食堂や休憩室等の仲間が集まる場所に出入りしなくなった。
それはひとえに……他人との接触を避けたのだろう。
その理由も周囲は、わかっていた。
失うことを恐れるあまりに、大切なものを作るのをやめた。
恋人はもちろん、友人と呼べる存在さえも。
仲間との間に亀裂が入るとさすがに問題があるから、
最小限のコミュニケーションはとるし、普通に笑いも話もするけれど……
近づきすぎることがないように、いつも距離をとっていた。
それは、ずっと続いた。
彼が成長し、部隊長を務めるようになってからも。
部下とも一線を引き、必要以上に近づかないようにした。
もう二度と大切な人間を失いたくない。
そんな強い思いを抱いた、強くも脆い魔術医が抱いた、呪いじみた強迫観念。
大切なものを作れば失うのが怖くなる。
ならば大切なものを作らなければいい。
彼はそう思い、その信念の下に生きていた。
そう。
そんな呪いが解けるまで……――
―― 二度目の恋をしよう ――
(大切なものを得れば失うのが怖くなる。
でも大切なものを得なければ得られない安らぎがある)
(その事に気がつかせたのは、かつて彼が愛した彼に良く似た少年。
魔術医はいつしか彼に、二度目の恋をした)