フィアとアネットのお話です。
この二人での組み合わせも割と好きで…
ここ最近フィアを書いてやることがなかったので久しぶりに書きたくて…(笑)
アネットに押しつぶされるフィアって、本編の時からありましたが…
こういうシチュが何気に好きな私です←
あのシーンのおかげでフィアとアネットのペアを考えていた時期もありました…(笑)←
では、追記からどうぞ!
賑やかな食堂。
そこで午後の休憩をとる騎士たちの中に、亜麻色の髪の少年と赤髪の少年がいた。
フィアとアネット……珍しい、組み合わせだ。
というのも、アネットが一人で食堂で休憩していた時にそこにやってきたフィアを捕まえたから。
元々一人で過ごすのが嫌いな寂しがりやな気質のアネット。
知り合いが近くに来ると、必ずといっても良いほどこの展開だ。
フィアもそれはよくわかっているし、彼自身もまた暇を持て余していたから、
まぁ別にそれで良いか、と思ったのだった。
少し高めの椅子。
それに深く腰掛けて足をぶらぶらさせている、赤髪の少年……
アネットはフィアの方を見た。
「フィアはさ」
「?いきなりどうした?」
唐突な話の切り出しに、フィアはきょとんとした顔をする。
ミルクティーの入ったティーカップを手にしたままきょとんとしているフィア。
アネットはそれを見つめる。
……正式に言えば、フィアの手首の辺りをじっと見つめていた。
アネットはその視線をフィアの顔に移して、笑いながら言った。
「そのブレスレッド、ずっとつけてるんだよな」
「ん……?あぁ、このアルに貰った奴か」
フィアはアネットが示したであろうもの……
自分が右手首に着けている青い石のはまったブレスレットを見た。
そのブレスレットは、フィアが親友のアルに貰った、大切な宝物だ。
魔術石がはまっているそれは、魔力抑制機の効果もあり、
フィアにとっては欠かせない存在でもある。
それを一瞥したフィアはアネットの方を向きなおして、小さく首を傾げた。
「でも、何を唐突に……」
アネットが何故唐突に自分のブレスレットに関しての話題を振ってきた理由がわからない。
フィアがそう呟くように言うと、アネットはふっと笑って、言った。
「……何か、懐かしくてさ」
「懐かしい?何がだ?」
ますます意味が分からない。
そういう顔をするフィアを見て、アネットは笑いながら、言った。
「そのブレスレット、俺も見せてもらったからさ、アルに」
「え?あぁ……俺がコトス村に様子を見に行ってた時にか」
フィアはその時のことを思い出した。
アネットと一緒に任務に赴いたあの日のこと。
苦手な火竜と戦う任務であるということを知りながら戦いに出た、あの日。
アネットと、アルと、三人で火竜を倒した、あの日のこと……――
そうだ、このブレスレットをもらったのはあの時だ。
あの頃は自分の魔力が天使の魔力であるということを知って動揺したり、
シストの過去を聞いて驚いたりしていたころだった。
そんなに昔のことではないはずなのに何だか懐かしい感じがして、
フィアも小さく笑ってしまった。
「此処に居ると時間の流れが速いような気がするな」
フィアがそういうと、アネットも小さく笑って頷いた。
どうやら、彼も同じように感じているらしい。
アネットは髪を掻き揚げて、小さく溜め息を吐き出した。
「騎士団入団してからもう十四年くらいかぁ……」
大分経ったなぁ、と呟くアネット。
それを聞いて、フィアは驚いたように大きく目を見開く。
そして、小さく息を吐き出しながら、言った。
「わ、アネットは随分昔からいるんだな、此処に……」
ルカと同い年でルカと同期生なのだから当然。
よく考えればそうなのだが……改めてそう思うと、何だかおかしい。
フィアのリアクションを見て、アネットはきょとんとした顔をした。
そして、おかしそうに笑いながら、言った。
「随分って言ったって、あんまり変わんねぇよ。フィアだって……」
「俺は七年前だ。お前の半分だぞ……」
どんだけ違うんだ、とフィアは溜め息を吐き出す。
アネットはそんな彼の言葉を聞いて目を丸くした。
そして"そんなに違ってたのかぁ"と呟く。
フィアはそんな彼の反応を見て、苦笑を洩らした。
「アネット、お前は忘れているかもしれないが……俺はお前より二つ年下だ。
入団したのはついこの間みたいなものだしな……」
「あ、そっか、フィアは俺より年下か……」
そういえばそうだっけ、とアネットは小さく呟く。
案の定、アネットはフィアの方が年下であることをすっかり忘れていたらしい。
子供っぽい気質のアネット。
大人っぽい気質のフィア。
二人の年齢は、まるで逆だ。
「アネットは子供っぽいからな……ルカに輪をかけて」
「な……っ失礼な奴だな、フィア……」
アネットは拗ねたような、むくれたような顔をした。
頬を膨らませる彼を見て、フィアはくすりと笑いながら、言った。
「俺は何ら変わったことは言っていないぞ?」
「……あー、そうだったな…」
やれやれ、とアネットは溜め息を吐き出す。
フィアのああいった性格は相変わらず。
フィア自身が言う通りだ。
アネットは小さく息を吐き出して立ち上がると、ぐいっと伸びをした。
そして、そのままフィアの方をみて、言った。
「さてーと!俺はちょっと訓練してくっかな……
フィア付き合ってくれねぇか?」
そんなアネットの言葉に、フィアは笑顔でうなずく。
「俺は構わないが?」
「そっか!じゃあ、行こうぜ!」
アネットは笑顔でそういって、フィアに飛びつく。
フィアはそれをよけそこねて、二人そろって椅子から転げ落ちる。
そして、そのままアネットに思い切り押しつぶされた。
「っ、う……っ馬鹿、アネット!降りろ!」
「あ、悪い!」
慌てて体を起こすアネット。怒りの声を上げるフィア。
アネットは体を彼の上から退けつつ、笑う。
「……何がおかしいんだ、馬鹿アネット」
「や、こうしてお前とやり取りしてんのも楽しいなって思ってさ!」
笑顔でそう言い切るアネットを見て、フィアは一瞬呆れたような顔をしたが……
すぐに、穏やかに笑って見せたのだった。
―― Time… ――
(こうして仲間と過ごす時間
それはあっという間だけれど充実した時間で…)
(重なっていく思い出。詰まっていく距離。
初めて出会ったころはこんなやり取りをする友人同士になるなんて誰が想像しただろう?)
2014-6-5 19:40