シュタウフェンベルクさん&ベルトルトお兄さんとのお話です。
教会でお祈りしている大佐殿の姿を書きたかったのと…
お兄様とああいうやり取りしているところやりたかったのですすみません←
*attention*
大佐殿&ベルトルトさんのお話です
ほのぼの?なお話です
教会でお祈りしてる大佐殿の姿を書きたくて…!
大佐殿とああいうやり取りをするお兄様を書きたくて…←
兄弟でああいうやり取りをしている姿って良いと思うのです…
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
朝日が差し込む、静かな礼拝堂。
そこに一人佇むのは、黒髪の少年。
ステンドグラスから射しいってくる朝日が、艷やかな黒髪を照らす。
彼の綺麗な青い瞳は、壁にある大きな絵を見つめていた。
神聖なその空間。
静かで誰もいない、早朝の礼拝堂……――
黒髪の少年は一人で跪き、目を閉じる。
そして彼……シュタウフェンベルクは左手で自分の右腕の袖を掴んだ。
そのままきゅっと、手に力を籠める。
片腕を失っている彼では、普通の人々のように手を合わせることができない。
その代わり、というように彼はきゅっと、自分の服の袖を掴んでいるのだった。
静かに、祈りを捧げる。
聞こえてくるのは近くの森で囀る鳥の声と、自分のかすかな息遣い。
耳を澄ませれば自分の鼓動さえ聞こえそうな、そんな静かな空間だった。
シュタウフェンベルクはふぅと小さく息を吐き出す。
此処にこうしてゆっくりきたのは、随分と久しぶりな気がした。
仕事が多忙なシュタウフェンベルク。
この国にとどまって仕事をしていることもあるにはあるが、
此処最近では隣国イリュジアに仕事をしにいく事もあった。
そういった移動の時にはこうしてゆっくりしている暇はない。
普通に家から仕事場に行くにせよ何にせよ、
こうしてゆっくり寄り道をしている時間はないのだ。
そんな彼が何故今日こうして此処に来られたかといえば……――
ただ単純に、いつもより少し早く目が覚めただけだった。
どちらかといえば寝起きは良くない、低血圧な彼。
しかし今日はどういう訳かカーテンの隙間から差し込む日差しに叩き起こされたのだ。
そして、まだ仕事に行くにも早いし、
何より一緒に暮らしている兄を起こしても申し訳ない……
そう思って一人、家を出てちょっとした散歩をしていたのだった。
穏やかな初夏の早朝。
普段こうして朝早くに外に出る習慣のない彼は、眩しい朝日に思わず目を細めた。
昼間はだいぶ気温が上がる時期になってきたが、
それでもまだ明け方の空気は涼しくて、心地よい。
仕事中や、イリュジアにいっている間はずっと一緒にいる副官が隣にいないためか、酷く静かに感じた。
そうしているうちにたどり着いたのが、此処……――
静かな、教会だった。
流石にこの時間帯では人もいない。
蝋燭の明かりも消えていて、頼りは窓から射し入ってくる朝日くらいなもので……
それが逆に、建物の中の神秘的な雰囲気を助長していた。
そんな場所に入っていった彼は、静かに跪いた。
そして、服の袖を握り、祈る。
―― 何を?
さぁ、何をであったか。
それは、シュタウフェンベルクにもよくわからないことだった。
日頃の無事を感謝し、これから先の加護を願ったのか。
或いは……望めるかはわからないけれどと思いつつ、
副官や兄たち、友人と過ごす穏やかな時間が末永く続いてほしいと願ったのか。
シュタウフェンベルクはフラグメント。
自分の背負う宿命や、自分が"何の"フラグメントであるかということは、重々承知の上。
だから、平穏など望んではいけないのかもしれないけれど……
―― それでも、望みたいと思った。
大切な副官、ヘフテン。
少々過保護で、でも大切な家族であるベルトルトとアレクサンダー。
昔からの友人で、自分のこともよく支えてくれるクヴィルンハイム……――
彼らと過ごす時間は間違いなく幸福なもので、穏やかなもので……
失いたくないと、そう願うから。
右袖を握るシュタウフェンベルクの手に、力が篭った。
それだけ強い願いを、籠める。
そして暫しそのまま跪いていた彼は目を開けて、そっと立ち上がった。
そのまま、礼拝堂を後にする。
そこを歩いていくシュタウフェンベルクのブーツの足音だけが、
厳かなその空間に響いていた。
***
「クラウス」
教会を出てすぐ。
名前を呼ばれて彼は驚いた顔をした。
振り向けば、そこには自分と同じ黒髪の青年……兄であるベルトルトの姿があって。
彼は弟、クラウスを見つめて穏やかに目を細める。
そして周囲を見渡しつつ、穏やかな声で言った。
「此処に来ていたんだね」
随分朝起きるのが早かったからびっくりしたよ、とベルトルトは微笑む。
彼ももうすでに仕事用の制服を身につけている。
自分が起きた時に起こしてしまっただろうか、と、
クラウスは少し申し訳なさそうな顔をした。
「済まない、兄さんまで起こしてしまったか……?」
「いや、僕はもう起きてたよ。
でも、朝寝坊なクラウスが一人で起きだして、
何処か行く気配を感じたから少しびっくりした」
少しからかうような口調で、ベルトルトはいう。
確かに彼のいう通り、普段のクラウスは自力で起きてくるほうが珍しい。
仕事に遅れては大変だからとベルトルト、
或いは家にいるとすればアレクサンダーが起こしに行くのがいつものこと。
しかし今日はそれなしに彼一人で起きだしていったのだから……
ベルトルトにとっては驚きだっただろう。
そんな兄の言葉にクラウスは苦笑して"今日はたまたま早めに目が覚めたんだ"という。
「それで、折角だから少し散歩でも、と思って……」
「そっか。……だいぶ長く此処にいたみたいだけど、何をお祈りしていたんだい?」
ベルトルトは小さく首を傾げて、クラウスに問いかける。
彼が外に出て行ってからすぐ、ベルトルトも追いかけてきていて、
彼が教会に入っていくのを見つめた後、
"邪魔をしては悪いかな"と思い、一人外で、彼が出てくるのを待っていたという。
そんな兄の言葉に"ついてきていたのか……"と苦笑しつつ、
クラウスはふっと遠くを見るような顔をした。
柔らかな朝の風が、クラウスとアレクサンダーの黒髪を揺らす。
それを感じつつ、クラウスは口を開いた。
「何を、というわけではないけれど……
最近あまり、こうすることがなかったからな」
「なるほど……良い事だと思うよ」
ベルトルトもそれ以上深く追求することはなく、弟の言葉に頷く。
そして穏やかに微笑むと、ぽんと彼の背を押した。
「さ、帰ろうかクラウス。朝ごはん食べて、お仕事いかないと」
「そうだな」
遅刻しても大変だし、とクラウスはベルトルトの言葉に頷く。
そして二人は並んで一緒に歩き出した。
***
昇った朝日。
穏やかな風。
草を踏んでいく二人の足音……
ベルトルトはふと、自分の隣を歩いている弟の顔を見た。
自分よりは若干背が低いとはいえ、幼い頃に比べたらずっと高くなった身長。
眼帯で覆った左目。
薄くなっている右の袖……――
いつの間にか、大きくなったな。
ベルトルトはふとそんなことを思う。
自分や、自分の双子の弟であるアレクサンダーにくっついて歩いていた幼い頃の彼。
体が弱く、勉強は出来たが家庭教師に頼ることも多かったような彼が、
こうして軍人になるなど、想像しても居なかった。
そんなことを思っていると、ベルトルトの視線に気がついたかのように、
クラウスが顔を上げた。
そして不思議そうに首を傾げる。
そうした時の彼の仕草にはまだ何処かあどけなさのようなものが残っていて、
ベルトルトは思わずくすくすと笑った。
「?どうかしたのか、兄さん……」
「いや、何でもないよ。
クラウスも大きくなったなぁ、と思ってね」
唐突にそんなことを言い出した兄に、
クラウスは少しだけ困惑したような表情を浮かべる。
でもすぐに表情を緩めると、"私ももう16だからな"と答えた。
「そっかぁ、十六かぁ……」
ベルトルトはそんな彼の言葉を聞いてほぅっと息を吐き出す。
部下を持ち、慕われる立場にさえなっている彼。
いつの間にか、そこまで大きくなったのだな、と思う。
しみじみとした顔をしている兄を見て、クラウスは不思議そうな顔をしていた。
ベルトルトは暫しそうしてクラウスを見つめた後、にっこりと微笑んで、言った。
「よし、帰ろうクラウス。
なんか、隣を歩いたらしみじみしてしまったよ」
「確かに、兄さんと二人で歩くのは久しぶりかもしれないな……」
クラウスはそう言いつつゆっくりと歩き出す。
その隣を歩きながら、ベルトルトはそっと彼の右腕の袖に、自分の手を重ねた。
―― 重ねた願い ――
(どうかどうか、願いを叶えてください
ただ平穏を、安寧を…願うのはただそれだけだから)
(いつの間に君はこんなにも大きくなっていたのだろうね。
でも、僕が君の兄であることは変わらないから…
頼っていいんだと、それだけは忘れないでほしい)
2014-6-5 18:28