風邪ひいて寝込んだせいで書き途中で止まってたSSが…
完成させたのはいいですが、どうにもぐだぐだですね(笑)
ともあれ、またも文章書きたい熱が…
ってなわけで。
また、性懲りもなくSS量産を始めます…
が、相変わらずのクオリティです、あしからず。
さて、今回のSSは図ってか図らずか、風邪ネタ。
アルとフィアですね。
シリアスのち、ほのぼの?ですかねぇ。
フィアとアルの関係はこれくらいがちょうどいい。
どっちかがどっちかを抱きしめていても、
それを恋愛としてとらえることはどうにも不可能…
どちらかというと家族愛?友情?な感じにしたいものです。
…わ、わかりにくい。
とはいえ、「OK」の方は、追記からどうぞー!!
たとえば。
君が、僕の前からいなくなるとして。
僕は、最後まで笑っていることが、出来るだろうか。
……きっと、答えはNOだ。
だって僕は、君が大好きだから。
君がいなくなるのは、もう嫌だ。
―― ねぇ。何処にも、行かないで……?
***
Side Al
―― 真っ暗な中を、彷徨う夢を見た。
独りきりで、立ち尽くして。誰も、いなくて。
孤独。寂しさ。恐怖。
どうしよう。どうして、どうして僕はこんな所にいるの?
訊ねても、返事はない。
当然だよね、誰もいないんだから。
ふと射し込む、一筋の光。
眩しさに思わず目を閉じたけれど、
次の瞬間にはそこに立っている人が、はっきり見えた。
僕の、大切な親友。フィア。
名前を呼んだ。
振り向いて、欲しくて。
「フィア……!」
僕の声に、フィアは振り向いた。
悲しそうに笑って、何か言う。
その口の動きを、目で追った。
―― ごめん。
次の瞬間、僕の方に投げられた、"何か"。
それが何なのか、一瞬わからなかったけれど……
―― 嗚呼、僕はこの景色を、シーンを、知っている……?
思い出したくもない、"あの日"。
フィアが、いなくなった、あの時。
フィアは僕が渡したブレスレッドを外して、天使になった。
僕たちを、守るために。
あの時の絶望を、悲しさを、やるせなさを……僕は、一生忘れない。
でもなんで?
何で僕は、いま……――
―― もう一度、この場面を見ているの……?
ふと、僕の頭に触れた手。
優しい手が、フィアのそれだと気付いた。
他人より少し冷たい、細くて綺麗な手。
僕が大好きな手。
少し、安心して力を抜いた瞬間。
その手が、離れた。
フィアが僕に背を向ける。
手を伸ばしたけれど、届かなかった。
待って。待って。待ってよ……!
***
「いかないで……っ」
叫んだ。
声が上手く出なかった。
「アル?どうした?」
それと同時に聞こえたのは、驚いた、声。
僕の目の前には心配そうな、"彼"の顔。
何で?どうして?
さっき僕に背を向けて去って行った、彼。
綺麗なサファイアブルーの瞳が、驚いたように見開かれている。
「夢……?」
誰に訊ねるでもなく小さく呟けば、フィアは困惑した顔をする。
そもそも、此処は何処かと考えて……思い出した。
此処は、僕の部屋だ。
体調管理ができてなかったせいで風邪を引いて、フィアが部屋に来てくれて……
そこから先を思い出せないあたり、僕はいつの間にか眠ってしまったんだろう。
ベッドの横に椅子を置いて座っていたフィアは、
手に持っていた本をサイドテーブルに置いて、僕の顔を覗き込む。
「どうしたんだ……?怖い夢でも、見たのか?」
よしよし、と僕の頭を撫でるその手が優しくて。
逆に、その手が離れて消えるのが怖くなった。
―― あの、夢のように……?
遠く遠くに離れて、もう二度と、触れられなくなる……
それが、怖い。怖いんだ。
「わ……っ!?」
体を起こして、驚いているフィアに、しがみついた。
みっともないくらい体が震えているのが、嫌でもわかってしまった。
怖い、怖い怖い怖い。
「ど、どうしたんだよ、アル。少し、落ち着いて」
「フィア、何処にもいかないで……」
「え?」
「僕は、ずっとフィアと一緒にいたい……」
涙がこぼれた。
酷くリアルなあの夢は、僕の恐怖を表したもの。
一度、フィアがいなくなった時のことは僕の中でトラウマになっているらしい。
もうあんなことにはならない、ってフィアは笑っていたのに。
もう大丈夫だ、って約束してくれたのに。
ずっと一緒だよ、って笑ってくれたのに、それなのに。
でも疑い深い僕は、いまだに心配で、不安で。
だから、あんな夢を見たんだろう。
あの時は、従兄であるルカ様の方がショックだと解っていたし、
パートナーであるシストさんの方が苦しいこともわかっていた。
だから、僕は頑張らなきゃ、って思えた。
僕が泣いている場合じゃない、ってわかってた。
けれど……
今みたいな夢を見たら、やっぱり不安になる。悲しくなる。
いなくならないで。
僕の傍に居て?
ずっとずっと、君の親友で、いさせて……?
フィアは、小さく溜息を吐いた。
呆れている、かな。当然だよね。
いきなり、こんなことを……
でも、フィアは……しがみついてる僕のことを、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「……どうやら、夢の中の俺はお前を不安にさせるようなことをしたみたいだな」
"すまない"、と。
謝る必要は全然ないのに、フィアは謝って。
「俺は、傍に居るよ。大丈夫だから」
嗚呼、その言葉だけで。
背中を撫でてくれる優しい手だけで、僕は安心できる。
「俺が、悪いんだよな。一度、お前を傷つけたから」
どうして謝ってくれるんだろう。
ただの、僕の我儘なのに。
フィアは、僕たちを守るためにあの魔術を使ってくれただけで。
あの魔術を使ってくれなかったら、僕らは、この国は滅んでいたのに。
フィアは、僕らを守るために、自分の命を捨てる覚悟をしてくれただけなのに。
それなのに、優しい君は……謝ってくれるんだね。
「……忘れないよ、あの時のお前の顔は。
お前の、信頼を裏切ったんだな、って思って……俺も、辛かった」
"もう、親友には戻れないな、って思ったよ"
フィアはそう言って、苦笑した。
そのあと、力強く笑って、言ってくれた。
「でも、大丈夫だ。俺はもう、二度とあんな真似はしない」
優しい声。しっかりした声。
少しずつ、体の震えもおさまってくる。
「皆を……仲間を、傷つけるような真似は、もう二度としないと誓うよ」
だから、安心してくれ。と。
フィアは優しい声で、そういってくれた。
そして、僕の体を離して、微笑んで。
「少し、眠るといい。その方が、早く良くなるだろう?
俺は、お前が眠るまで此処にいる」
そっとそういって、フィアは僕の身体をベッドに寝かせる。
そのまま、優しく頭を撫でてくれた。
―― 嗚呼、大好きなんだ。
わざと少し低くしてる声も。
他人より冷たい手も。
そっけない口ぶりも、優しい笑顔も。
全部、全部大好きなんだ。
改めてそう感じていた時、聴こえてきた声で、僕はうっすら目をあけた。
「……フィア?」
優しい、歌声。
何時ものフィアより高い、澄んだ歌声。
フィアは普段わざと声を低くしてしゃべっている。
そうしないと、"男らしくない"から。
普段フィアが喋るときは、いつも低い声だけど、歌うときは高い声になる。
それが"本当の"フィアの声、らしいけれど……
―― さすがに、歌うときには"男らしく"できない。
そういって、照れ笑いしていたのを、思い出す。
僕が名を呼ぶと、フィアはふっと笑った。
「……小さい頃、母さんが歌ってくれたものだからうろ覚えだけれど……
憶えてる。俺は、この歌が好きだった」
照れ臭そうにそう言って、フィアは僕の頭を撫でる。
優しい手と、優しい声と。
少しずつ、瞼が重くなってくる。
あの夢に対する恐怖は、消えていた。
―― 大丈夫。
そう、信じられた。
フィアの声で。言葉で。温かい手で。
―― 優しい天使の子守歌 ――
(ありがとう。傍に居てくれて)
2012-10-12 16:24