ダリューゲさんとアズルのお話第2段です。
Twitterの診断で出たお題「同情するなら突き放して」で書いてしまいました…!
二段目にしてこんなシリアスですみません←おい
*attention*
ダリューゲさんとアズルのお話です。
少しシリアス目なお話です。
「King and knight」の続き的なお話です。
Twitterの診断で出たお題を使わせていただいてます。
自分の力に少しだけ悩んでしまうダリューゲさんとそれを慰めるアズを書きたくて…←
アズルは完全にダリューゲさんを可愛がってる(笑)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKと言うかたは追記からどうぞ!
ふわふわと微睡んだ意識のなか。
ダリューゲは何かが自分に触れているのを感じた。
優しく、頭を撫でる手を感じる。
暖かくて、心地よい。
しなやかな、細い手だ。
そうして頭を撫でられることは、決して多くなかったと思うのだが……
一体、どうしたのだろう。
自分は誰に撫でられているのだろう……?
***
「ん……」
ぱち、と目が開いた。
ダリューゲは緑の瞳を瞬かせて、状況を把握しようとした。
見慣れない綺麗な天井が目に映る。
天井と言うよりは……天蓋?
それを見て暫し固まっていると、ひょいと顔が覗き込んできた。
柔らかな紫の髪の青年……ダリューゲの、"依頼主"だ。
彼はダリューゲが目を覚ましているのに気がつくと、にっこり笑って訊ねる。
「あ、目が覚めた?」
「アズル……?」
ダリューゲが彼の名前を呟くように呼ぶと、彼……アズルは微笑んで頷いた。
そして、そっとダリューゲの額を撫でる。
「大丈夫?何処か体調が悪かったりはしない?」
少し心配そうに問いかけてくる彼。
ダリューゲは柔らかいベッドに手をついて、体を起こす。
そして、アズルの問いかけに頷いた。
「大丈夫……って言うか、あれ?僕……」
何で寝てるんだっけ、とダリューゲは小さく呟いた。
それを聞いて、アズルは微笑んで、事情を説明する。
「僕と一緒に出掛けた帰り、魔力の使いすぎで倒れたんだよ。
倒れたと言うか、眠っちゃったと言うか……」
「え?……あー、ごめんなさい」
彼に言われて思い出した。
アズルを狙って攻撃を仕掛けてきた数人の男たちを蹴散らし、
そのあとで安心すると同時、意識がゆらいだのだった。
仮にも護衛任務を務める人間が途中で寝入ってしまうなんて不覚だ、と思いながらダリューゲが詫びると、
アズルは微笑んだままにゆっくりと首を振った。
「いいんだよ、気にしないで?」
そういいつつ、アズルはもう一度ダリューゲの頭を撫でた。
ダリューゲはその感覚にほっと息を吐く。
眠っているときにも感じた、その優しい手。
そうして頭を撫でられたり、こうして親しげに話しかけられたりすることがなかった分、
安心すると同時……少し、嬉しくて。
アズルはそんなダリューゲを見て"あ、そうだ"と付け足すようにいった。
「あと、さっきちゃんと言えなかったから……さっきはありがとうね」
「え?」
何で礼を言われたのだろう??とダリューゲは首をかしげる。
アズルはくすくすと笑いながら、いった。
「助けてくれてありがとう」
「あ、そういうこと……」
漸く合点がいった、と言うようにダリューゲは頷いた。
そして、おかしそうに笑いながら、アズルに言う。
「ううん、あれが僕の仕事だからねぇ……お礼言われることでもないよぉ」
護衛を務めるのは自分の仕事。
だからお礼を言われるようなことではないよ。
そう答えるダリューゲに、アズルはくすりと笑って、いった。
「ふふ、そういわないでよ。
……それにしても、強かったね」
アズルの言葉に、ダリューゲは少し表情をひきつらせた。
ほんの一瞬、ちゃんと見ていなければ気がつけない程度に。
「……うん」
少し、弱い声で答えるダリューゲ。
アズルはそんな彼に少し疑問をおぼえながら、言葉を続けた。
「びっくりしたよ。ああいう戦いかたする人、初めて見たし」
「……だろうね。早々いないと思うよ。
自分の体を武器にして戦える人間なんて、そうそういないでしょう?」
少し、寂しげな口調。
寂しげ?悲しげ?
……どちらともつかない口調。
アズルは驚いた顔をして、ベッドに座っている彼の方に視線を向けた。
「……ダリューゲ?」
ダリューゲは俯いている。
その小さな手は、白いシーツを握りしめていた。
彼の表情と、挙動。
それを暫し見つめていたアズルは、"ねぇダリューゲ"と声をかけた。
「さっきの……あの人たちがいってたこと、気にしてる?」
―― ば、化け物だ……
さっき、戦った相手は最後にそう言い捨てていた。
彼が、強いことを指摘されてこんな表情を浮かべる理由を考えたら……これくらいしかない。
案の定、アズルの質問に驚いたように、ダリューゲは顔をあげた。
長い三つ編みが揺れる。
その表情が、今の言葉が図星であると告げていた。
アズルはふ、と微笑んでダリューゲに告げる。
「……僕は化け物だ何て思わないよ。
ごめんね、さっきのはそういうつもりで強いとか、
見たことないとかいったわけじゃなかったんだ」
そう、本当に純粋に強いと思った。
アズル自身は一切戦うことが出来ないから。
そう思っていったのだけれど……
その言葉がダリューゲを傷つけたのだとしたら悪いな、と思って詫びたのだが……
アズルの言葉に、ダリューゲはそっと首を振った。
「いいよ。気を使わなくて」
そんな、ダリューゲの言葉。
アズルはそれを聞いて、大きく目を見開いた。
「え?気なんか使って……」
「いいよ……慣れてるもん」
そういいながら、ダリューゲはそっと、自分の腕を撫でた。
先刻彼が武器にした、彼自身の腕。
今は、普通の人間の姿出はあるけれど……
「その気になれば、体の何処でも武器に出来る」
「それは、変身魔術の一種、と思っていいかな?」
アズルの問いかけにダリューゲはこくり、と頷いた。
そして付け足すように"変身魔術が得意なんだよ、僕"と言う。
「他の誰かの人間の姿を真似たり、特定の姿をとることが出来る人はいるけれど……
僕みたいに、"アルプトラウム"で自分の体を武器に出来る人間は、
たぶん、あんまり……いないと思うよ」
そう語りつつ、ダリューゲは目を伏せた。
思い返す、今までのこと。
先程の男のように化け物だと喚いたり、気味が悪いと避けたり、
恐れたりする人間がほとんどだった。
お陰で、友人と呼べるような人間はほぼいなかった。
現在のパートナーであるベーメはともかくとして、
それ以外の人間に、友人と呼ばれることはほぼなくて……
自分の能力は仕事をこなす上では便利だった。
武器を持っていないと油断した相手を倒すことも容易だったし、戦いも簡単だったから……
でも、それと同時。
やはり……――
自分のその能力が疎ましかった。
悩んでいた。
それを、話す相手さえもいなくて……
ふ、と息を吐き出したダリューゲは呟くようにいった。
「同情は、いらないよ。
同情するくらいなら……突き放してよ」
あくまでただの依頼主と騎士だから。
それだけだから……
いっそのこと、いっそのこと……突き放してくれた方が、ましだった。
……あの優しい手を、心地よいと、嬉しいと、感じてしまう前に。
ただ淡々と用事を言いつけてくれるだけの方が、よかった。
そう思いながら俯いていれば……
そっと、シーツの上のダリューゲの手を、アズルがそっと握った。
「……ダリューゲ」
柔らかな声で呼ばれて、ダリューゲは視線をあげる。
アズルはそんな彼の緑の瞳を見つめながら、いった。
「突き放さないよ。大丈夫」
躊躇いながら、アズルは優しくダリューゲの手を、そして腕を撫でる。
先程まで武器にしていた場所を撫でられてダリューゲは少し体を強張らせるが、
アズルは"逃げなくていいよ"と言う。
「大丈夫だよ。君を嫌ったり怖がったりはしないから……
これからも、僕の護衛をしてくれる?」
アズルは首をかしげて、ダリューゲにそう訊ねる。
ダリューゲは暫し、アズルを見つめていた。
彼の言葉は、真実だろうか?
彼のこの手の優しさは、真実だろうか?
……本当に、怯えずに、気味悪がらずに、いてくれるのだとしたら……
「アズルが、そうしてっていうんなら」
ダリューゲは、そう返した。
少しだけ、照れ臭そうに笑いながら。
アズルはそんな彼の様子に微笑むと、もう一度ダリューゲの頭を撫でて……
それから、そっと彼の頬にキスをおとした。
挨拶がわり、と悪戯っぽく笑いながら。
「ふふ、そうしてほしいな。
……さて、まだ疲れてるだろうし、此処で休んでいたらいいよ」
アズルはそういうが、ダリューゲは驚いた顔をした。
そして、首を振りながら言う。
「え、でも……」
でも、そういう訳にもいかない。
自分が此処にいるのはあくまでも仕事のためであり、
こんなところで呑気に寝ている場合ではない。
ダリューゲはそう返したが、アズルは軽く彼の体を押して、ベッドに寝転ばせる。
そして、にっこりと微笑んで、いった。
「僕も、今日は出掛けなければいけない用事も、
こなさなければならない仕事もないから、僕も此処にいるし……
話し相手になってくれないかな?」
「話し、相手……」
ダリューゲは彼の言葉を繰り返す。
アズルはこくりと頷いて、いった。
「うん。僕、外のこともあまりよく知らないし……ダリューゲの話も聞きたいな」
色々話してみたいな、と彼は言う。
そのままに伸ばされた手は、やはり優しい。
"眠くなったら寝てもいいからね"と言うアズルの言葉に頷いて、
ダリューゲは少しだけ、表情を緩めた。
―― Pity…? ――
(君に向ける感情は、決して同情なんかじゃないよ。
君が寂しそうだとは思ったけれど。
その表情を拭いたいとは思ったけれど…)
(優しい手。優しい声。
生きた兵器である僕に、それを向けてくれる貴方は……)