ダリューゲさんとアズルのお話です。
ダリューゲさんは自分の魔術で姿を変えているお方なので…
その真実を知ったらアズルは驚くだろうな、と(笑)←おい
*attention*
ダリューゲさんとアズルのお話です。
ほのぼの時々ちらちらシリアスチックなお話です。
でも基本ほのぼのです。
子供の姿をとっていらっしゃるダリューゲさんですがその実…
アズルは基本そういったことに気がつかない子なので真実知ったら驚くだろうな、と…←
最初のシリアス描写は私がやりたかったのですごめんなさい←おい
アズルの言葉が妙に意味深な…"かわいい"とかいってごめんなさい(笑)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
とある、麻薬の密売組織の本拠地(アジト)……――
響くは、ばたばたと、廊下を駆け抜ける音。
廊下の端の部屋に身を隠していた唐紅色の髪の少年は、
その音が近づいて来るのを聞いて、そっとほくそ笑む。
そして、足元に積み重なっていた箱を蹴り倒した。
途端、大きな音がたつ。
それに気がついたらしい組織の幹部たちはそちらに向かって駆けつけた。
数人の大人の男に対峙しているのは長い髪を三つ編みに編んだ少年。
年は、かなり幼く見える少年だ。
そうして彼を囲んだ男たちはにやりと笑いながら、いった。
「へへっ、馬鹿な奴め……」
「所詮は子供だな、ツメが甘い……」
廊下の角の部屋。
ドアはひとつだけ。
もう、逃げ場はない。
そこに逃げ込んでいた三つ編みの少年……
ダリューゲを追い詰めた、組織の幹部たちは笑う。
自分達のアジトを突き止められて一瞬は動揺したものの、
逃げていった少年が幼かったことに、余裕を取り戻したらしい。
「お前さんには消えてもらうよ。余計な詮索をされちまったようだからなぁ」
そういって、一人が大きく剣を振りかぶる。
相手の少年、ダリューゲは武器を持っていない。
そんな"非力"な少年を一人殺めるくらい容易い……
そう思っていた彼らだったが。
ダリューゲはにぃ、と笑った。
そして……
キィンっと響く、高い金属音。
剣を振り下ろした男はそのまま強い力で振り払われて、床に倒れた。
倒れた男は肩を切られていて、呻いている。
唐突な反撃に、男たちはその場に凍りつく。
ダリューゲはそんな彼らを見て、笑った。
「悪かったねぇ……僕はただの子供じゃないよ……」
長く編んだ彼の髪の先は、鋭い刃物に変化していた。
それで攻撃を返し、逆に切りつけたらしい。
男たちは動揺した表情でダリューゲの髪を、そして表情を見た。
「な、何……っ」
「ふふ、見た目でなめてもらっちゃ困るなぁ……痛い目見せるよぉ?」
そういいながら、ダリューゲは腕の先も得物に変化させる。
子供の姿のままに冷たく笑って見せる彼の表情に、
男たちの表情は凍りついたのだった。
***
そうして、任務を終えた後……
ダリューゲはふぅ、と小さく息を吐き出した。
時計を見れば、ちょうどもうすぐ午後三時。
"彼"にいくと告げた時間を、少し過ぎてしまっていた。
少し急がないと、と呟いた彼が赴いたのは、
彼の国でも彼がよくいくイリュジアでもなく、その先にある国ミラジェリオ王国。
その国の国王、アズルのもとへと向かっていたのだった。
彼の護衛を務めることになってから数日。
時々しか出掛けないアズルではあったが、話し相手になってほしいし、
時間があるときでもいいから遊びに来てほしいと言われて、
こうして通ってきているダリューゲ。
大変だったらいいんだよ、とは言われているのだが……
ダリューゲとしても、アズルの穏やかで優しい性格は気に入っていたし、
自分の能力……アルプトラウムを知っても尚、
怖くないし怯えないといってくれた彼になついてもいたから、
出来る限りは彼のところにいくことにしていた。
部屋に入れば、彼はいつも通り机に向かって本を開いていた。
それを見て、ダリューゲは小さく笑う。
「たまには外に出た方がいいんじゃないかなぁ……」
「あ、ダリューゲ!来てくれたんだね」
嬉しそうに笑う、ミラジェリオ国王アズル。
聞けば年は27だと言うが、到底そうは見えないな、とダリューゲは思っていた。
穏やかな気質や面倒見が良いところは確かに大人っぽかったが、
大きな瞳や人懐っこい性格は、彼を幼く見せる。
アズルはダリューゲを見て嬉しそうににこにこ笑っていたが、ふと表情を曇らせた。
そして、すまなそうにダリューゲに言う。
「無理をいってしまってごめんね?いいんだよ、無理をして来なくても……」
「別に無理はしてないよー。仕事終わってそのついでに顔だしてるだけだしね」
気にしないで、といってダリューゲは笑う。
確かに仕事は少々ハードだが、それですぐにつぶれるようでは、
警察組織などやっていけない。
彼がそう答えると、アズルはほぅっと息を吐き出した。
そして、傍に来た彼の頭をそっと撫でながら、言う。
「大変だね、ダリューゲ……まだ小さいのに」
その言葉にダリューゲは一瞬固まる。
え?どういうことだ……
そう考えて、すぐに納得がいった顔をした。
「え?……あぁ」
そして、ダリューゲはにぃっと笑う。
悪戯を思い付いた子供のような表情を浮かべた彼は、"ねぇアズル"と彼を呼んだ。
「子供でこういう仕事してるの、大変だって思う?」
どう?と首をかしげるダリューゲに、アズルはキョトンとした表情を浮かべた。
「え?うん。
だって僕が君くらいの年の時は、剣術とかの練習をさせられてたくらいだからさ……」
そういって、アズルは苦笑を漏らす。
大分若くして国を治める立場になったアズルではあるが、
少年期にはあくまで王子の立場。
色々な習い事を教え込まされていただけの彼からしてみれば、
自分の護衛もそうだが、それ以外にも色々な仕事をしていると聞けば……すごいと思う。
尊敬さえしていた。
そんなアズルの言葉を聞いて、ダリューゲは意味ありげに笑った。
「……ふぅん」
そう声を漏らすと、ダリューゲはぎゅ、とアズルの手を握った。
そして、驚いたように顔をあげたアズルを見て、緑の瞳を細めつついう。
「ね、アズル……大人の姿がいいなら、なってあげようか」
「え?」
ダリューゲの言葉の意味が理解できず、アズルは固まる。
そんな彼に向かってひとつウインクを見せると……ダリューゲは魔術を使った。
みるみるうちに、その姿が変わっていく。
否、基本的な髪色や何やらは変わらないのだが……背が、伸びた。
幼い雰囲気も消えて、大人っぽくなる。
そんな彼を見て、アズルは驚いたように深い緑色の瞳を大きく見開いた。
「え、え?な……」
「ふふー、びっくりした?」
成功、と言わんばかりに笑うダリューゲ。
割りと長身の部類に入るアズルに負けない、
それ以上の身長になった彼は、目を細めつつ、そういう。
暫し驚きからフリーズしていたアズルだったが、すぐに息を吐き出して、言う。
「び、びっくりするよ……だって、君……」
普段の姿と違うじゃない、とアズルは言う。
そんな彼の言葉を聞いて、くすくすとダリューゲは笑う。
そして、アズルに向かって首をかしげつつ、いった。
「僕が得意なのは変身魔術だよ。
これくらい楽勝楽勝。
いつもとってる姿が本物って訳でもないし」
そう。
ダリューゲが得意とするのは変身魔術。
普段彼がとっている姿さえ、魔術で取ったものなのだ。
そんな"ネタばらし"をされたアズルは暫しまじまじとダリューゲの姿を見つめた。
そして、小さく息を吐き出して、言う。
「……ふぅ、なるほどね」
「ふふ、そういうことー」
そういいながら、ダリューゲはいつも通りの子供の姿に戻る。
見慣れた姿に戻った彼を見てほっとした表情を浮かべた後、
アズルはすぐに"あれ?"と声を洩らした。
「え?それじゃあ、本当の年齢は幾つなの?」
そんなアズルの問いかけに、ダリューゲはぱちぱちとまばたきをした。
そして何やら考え込む表情をする。
「うーん……ずっと子供の姿とってるから忘れちゃった。
たぶん、アズルと同じかそれ以上じゃないかなぁ?」
「え……本当に?じゃあ、何でそんな姿でいるの?」
色々わからないのだけど、とアズルは言う。
ダリューゲは彼の反応を見ると"まぁそうだよねー"といって、苦笑した。
そして、自分の胸を軽くつつきつつ、いった。
「だって、この格好でいる方が……色々、楽なんだよ」
色々、楽。
それはその言葉通りだった。
任務の時には、もちろんだ。
子供と言うだけで相手は油断してくれるし、
油断している相手を討つくらい簡単なこと。
ついでにもうひとつ言うのならば……――
この姿をとっていれば、親しく接してくれる人も多いから。
能力がばれさえしなければ……だけれど。
アズルはそうして彼がちらりと見せた表情に気がつくと、ふっと笑った。
そして、小さな子供の姿に戻ったダリューゲの頭をなでる。
「……そっか」
「アズルは?どっちの姿の方が好き?」
ダリューゲはアズルにそう答えた。
アズルは唐突にそんな質問を振られて少し驚いた顔をする。
ダリューゲはじっと彼を見つめながら、答えを待った。
彼は考え込んだ表情のまま固まっている。
ダリューゲは小さく息をはいて、彼にいった。
「……アズルが大人の姿のままでいてほしいって言うなら、そうするけど。
その方が、年が近く見えるだろうしね」
「……いや」
アズルはダリューゲの言葉にゆっくりと首を振り、微笑んだ。
そして穏やかな声で答える。
「君が好んでその姿をとってるなら、僕は止めないよ。
そのままでも、可愛いし……姿変わったからどう、ってこともないしね」
"君は君だろ?"といって、アズルは首をかしげる。
その返答は、変身魔術を使って自分を偽る彼にとって、ある意味一番ほしい言葉で……
ダリューゲは照れ臭そうな表情を浮かべて、"そっか"といった。
「なら、このままでいよっかなぁ……
僕もアズルに頭を撫でてもらうの、割りと好きだしね」
照れ隠しに冗談っぽく、ダリューゲはそういった。
しかし、口にした言葉は事実。
人間相手に攻撃したり捕縛したりという、ハードな任務。
人によっては嫌悪したりすることもありうるような任務をこなしたあとで、
此処に来て彼に頭を撫でられるとほっとする。
優しくて暖かな掌……
それに撫でられるのは、純粋に嬉しい。
心地よい、と思う。
アズルはそんな彼の言葉を聞いて、嬉しそうに瞳を細めて、言う。
「ふふ、そう?
……でも、あんまり無理したら駄目だよ?危ないし」
彼の言葉を聞いて、ダリューゲは小さく笑った。
そしてひらりと手を振りつつ、言う。
「大丈夫だよぉ。だって僕、どんな状況でも戦えるし。
武器を持ち歩いてるんじゃなくて、武器を内蔵してるわけだからね」
少し自嘲を含んだような言い方。
アズルは彼の言いぐさに小さく溜め息を吐き出す。
「はぁ。そういう問題じゃないって……」
「え?」
じゃあどういうこと?とダリューゲが首をかしげると、
アズルはぴんっと軽く彼の額を小突いた。
驚いた顔をしている彼にぐいっと顔を近づけつつ、言う。
「この前みたいに魔力尽きたり、疲れきってるときにそういうこと出来るかい?」
アズルの問いかけに、ダリューゲは少し視線を彷徨わせる。
そして、諦めたように肩を竦めて、言った。
「それは……まぁ、わからないけど」
それは、正直わからない。
魔力を使いすぎてしまえば、この前のように倒れる。
こうして国から国への移動が少しも疲れないかと問われたら、
疲れると返さなければ嘘になる。
ダリューゲがそう答えると、アズルは苦笑を洩らして、ゆっくりと首を振る。
そして、まっすぐに彼を見つめながら、いった。
「そうでなくとも、あんまり無理はしてほしくないんだよ……大切な友人だからね」
そんなアズルの言葉を聞いて、ダリューゲは幾度かまばたきをする。
友人、と言う言葉。
彼が気遣ってくれていることがうかがえる言葉。
それは、純粋に嬉しくて……
「あ、ありがと……まぁ、気を付けるよ」
「気を付けてね。
……さて、と。君の言う通り、少し外に出てみようかな。
出るといっても、中庭くらいでよしにするけどね」
"頼むよ、僕の騎士様"といって、アズルは微笑む。
ダリューゲは彼に笑みを返すと、こくりと頷いて見せたのだった。
―― Child or…? ――
(子供?大人?どっちだろう。
どっちの"僕"が貴方は好きですか?)
(イタズラに笑って大人の姿を見せた彼。
普段の姿に見慣れていたから驚いたけれど…
どっちの姿も、きっと彼なんだろうね)