珍しくアンバーのSSです。
彼はどうにも影が霞がちなので…
たまには、かいてあげたいな、と←
彼はいつも完全ギャグパートになるか、完全シリアスパートになるかのどちらかで…
あれ、君最初はこんなキャラだった?って自分でも疑問です(笑)
まぁ、優しいお兄ちゃんである彼をかけたらなー…と思ってかいたのですが…
ひさびさすぎてキャラが行方不明です←
ともあれ、追記からお話です!
白い墓石が立ち並ぶ、静かな墓地。
冷たい冬の風が吹いて、一面に生えているイトスギの木を揺らす。
そこを歩いていくのは白い騎士の制服を身に付けた、琥珀の瞳の少年……アンバー。
大きな白百合の花束を二つ抱え、彼の足は迷いなく、
その墓地の一ヶ所を目指していた。
久しぶりに来るこの場所。
静かで厳かな雰囲気のこの場所は、アンバーも幼い頃から良く来ている場所で。
アンバーはたどり着いた二つの墓石の前で、立ち止まった。
そんな彼の柔らかな黄色の髪を、穏やかな風が揺らした。
「……久しぶり、母さん、ハク」
墓地の一画の並んだ、二つの墓石。
刻まれているのは彼の母親と弟の名前。
人懐っこい顔に寂しげな笑みを浮かべて、彼は呟くようにいった。
「……なかなかこられなくてごめんね」
大切な家族二人にそう詫びて、アンバーは百合の花束をそっと供えた。
そして、手を合わせる。
騎士の仕事は多忙で、そうそう故郷に帰ることも出来ない。
よって、墓参りにもそうそう来ることが出来ない。
それでも墓石が綺麗なのはすでに騎士団を引退している父親がまめに来てるのか、
はたまた此処の管理者が丁寧に管理してくれているのか、だ。
何れにせよありがたいことだね、と呟いてアンバーは微笑んだ。
白い墓石に刻まれた、愛しい二人の名前。
彼の母親は弟を生むとすぐに亡くなった。
弟は……――幼い頃に病で命をおとし、
その後魂の器として甦った彼はアンバーが自らの手で殺した。
その時のことは今もアンバーの胸に深く突き刺さって消えない、記憶。
忘れない、忘れてはいけない……記憶。
新しいパートナーを持った自分を憎んだ弟。
その弱味につけこまれ、戦う操り人形とされてしまった彼。
助けて、といった小さな弟の頼みごと。
突き刺した、剣の感覚。
肉体と精神が分離したときのほっとした表情。
そして……最期の涙と、笑顔と、交わした約束。
アンバーはそっと自分の弟の墓石に触れた。
そして、囁くような声で訊ねる。
「……ハク、元気にしてる?泣いたり、してないかな」
ずっと君は、幼い頃から一人で頑張っていたよね。
君が生まれてすぐに母さんは死んでしまったから君は母さんをよく知らないね。
同じ年くらいの子達が外で遊ぶのを一人ベッドから見つめていた。
魔術の練習も僕か父さんのどちらかに教えてもらっていた。
ごめんね
……ずっと、一人にしてごめん。
今も、一人なのかな。
母さんと、一緒にいるのかな。
それとも、"影猫"と名乗っていたときに一緒にいた彼らと……?
どちらでもいい。
どうか、少しでも君が安らいだ気持ちでいられますように……――
アンバーはそういいながら、優しく白い墓石を撫でた。
幼い弟を気遣う兄。
その想いは、弟に届いているだろうか。
幼い頃からずっと一緒、という訳にはいかなかった。
アンバーは幼い頃から騎士としての訓練を受けていて、
彼の弟……ハクは生まれつきの体の弱さから病床に臥せていることが多い少年だったから。
似ていたか、といわれればにていたのは容姿のみ、とも言えたかもしれない。
性格はどちらかと言えば逆だったし、
からだの丈夫さにせよ剣術のうまさにせよ、互いに正反対だったといっても良い。
けれど……ハクがそんな自分を尊敬していたことをアンバーも知っている。
だから、必死に強い騎士になろうとした。
彼が、死んでからも……――
「ね、ハク、母さん……
僕は、強い騎士になれているかな?父さんのように」
遠くにいる二人に、問いかける。
自分は、自分の前に部隊長を務めた父親のように、
強く、誇り高き騎士になれているだろうか、と。
正直、自信はなかった。
魔力を使うにせよ他人を撹乱するだけの精神系の魔術。
作戦をたてるといったって、それがいつも上手くいくとは限らない。
でも、彼なりに精一杯だった。
それは、ちゃんと……誰かのために、なれているだろうか?
―― その時。
優しい、風が吹いた。
彼が供えた白百合が揺れる。
「あ……」
アンバーのポケットから、黒いリボンがひらりと落ちた。
それは……――
二度目の生をうけた彼の弟が、"ロシャ"と名乗っていたときにつけていたもの。
今のアンバーにとっては、ちょっとしたお守りだった。
そのリボンが、風に舞い上がった。
そして、ひらりとアンバーの掌に舞い落ちる。
―― ちゃんと、みてるから。
そんな、弟の声が聞こえた気がして、アンバーは小さく微笑んだ。
そして、"ありがとう"と呟く。
大好きだった弟へ。
そして、大好きだった母親へ。
祈る想いは、今も変わらない。
―― Please…… ――
(見守っていてください。
僕も精一杯に頑張ってみせるから)
(そう呟くように誓えば
また優しい風が吹いてきて背中を押した)