赤髪金髪コラボでシリアス小説第二段です。
相変わらず妄想が変な方向に暴走してすみません…;;
*attention*
赤髪金髪コラボでのSSです
シリアスなお話です
Twitterで聞いたネタを使って書いてみましたが…相変わらず妄想全開ですみません;;
体を壊すくらいならやめてほしい、と思うアネットとやめられないと思うライニさんと…
追い詰められてる美人さんが大好きな星蘭が暴走してます…←
口移しネタとか他にやりたいことも詰め込んでしまいました…
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
静かなバルコニー。
そこで佇んでいるのは、金髪の少年。
風呂上がりなのか、髪はしっとりと濡れている。
吹き抜ける風はその体には冷たいだろうに、
彼は顔をしかめることもせず、ただただ白い月を見上げていた。
青白い光を落とす、月。
その下に立つ金髪の彼……ハイドリヒは口に煙草をくわえていた。
滅多なことでそれを吸う彼ではなかったけれど、
苛立っている時や何か考え込んでいるときにはこうして吸うこともあった。
吸ったからどう、ということはない。
吸うのが習慣になっているわけではないからないならないで良い。
別段気持ちがスッキリすることもないけれど、気は多少まぎれるから。
息を吐き出せば、ふわりと白い靄が上がる。
それが煙草の煙なのか、自分の吐息なのかはよくわからないけれど。
―― と、その時。
不意に後ろから抱き締められた。
その腕の暖かさはよく知っている。
その腕がそっと伸びてきて、ハイドリヒが口にくわえていた煙草をとった。
「体に悪いっていっただろ……それに、風邪引くぞ」
低い声が、耳を打つ。
優しい手が、そっとハイドリヒの金髪を撫で付けた。
ハイドリヒは振り向くこともせず、彼にいう。
「アネットさん……また、貴方はノックもせずに……」
「いつものことだろ」
赤髪の彼……アネットはそういって笑う。
ハイドリヒはひとつ息を吐き出して、それもそうですね、と返した。
しっとりと濡れた髪を濡れる、暖かい掌。
髪に感じる暖かさから、彼が魔力で髪を乾かそうとしてくれているのがわかる。
器用に魔力を調整することが得意でないはずの彼なのに。
「……無理に乾かさなくていいですよ」
ハイドリヒはアネットにそういった。
細かい魔力の調整は気力を使う。
得意でもないのなら、無理にしてほしくはなかった。
アネットはその言葉に手を止める。
そして苦笑気味の声でいった。
「だったら部屋に戻って髪乾かせよ……」
アネットはそういいながら、ハイドリヒの頭から手を離す。
そして再びハイドリヒの体を抱き締めた。
そのまま、耳元にささやく。
「……なあ、ラインハルト」
「なんですか……」
アネットはぎゅ、とハイドリヒを抱き締める腕に力を籠めた。
その腕が少し震えていることに、ハイドリヒは気づく。
けれど、何にも気づいていないフリをして、彼の言葉の続きを待った。
「……やめられ、ないのか。そういう、仕事」
アネットはそういう。
正直、こんなことをいうのはどうかと思った。
アネットもハイドリヒ同様に騎士として働いている。
任務の重要さは、その重責はよくわかっている。
簡単にやめていいとは思わない。
―― けれど……
これ以上見ていられなかった。
苦しそうにしつつも逃げ切れずにいるハイドリヒの様子を。
人を殺める仕事も平然とこなさなければならない。
誰かを陥れるために虚偽の報告書を作り上げたりしたこともあるという。
そんなこと、精神的に打撃を食らわないはずがない。
逃がしてやりたいと思っても、彼は逃げない。
自分から、その任務に赴いていってしまう。
逃げてはいけない、逃げない、逃げられない……
その何れなのかは、わからないけれど。
「……きついなら、やめてよ……ラインハルト。
体壊してまで続けることないよ……」
アネットの言葉を聞いて、ハイドリヒは長い溜め息を吐き出した。
彼の声は、小さく震えていた。
ハイドリヒを抱き締める腕に、力がこもる。
「……アネットさん、前にもいったかもしれませんが」
ハイドリヒはアネットの腕をほどこうとしながら、アネットにいう。
アネットはハイドリヒを抱き締める腕を緩めた。
代わりにハイドリヒの体の向きを変えさせて、自分の方を向かせようとする。
しかし、伏せたハイドリヒの青色の瞳はもう、見えない。
「私にしか出来ないのですよ」
震える声を圧し殺して……
それでも震える声で、ハイドリヒはいう。
アネットは黙ってそれを聞いていた。
部下に命令を出すのでさえも苦なのにも関わらず。
自分以外の誰かにこの仕事を任せようとは思わない。
もっというならば……自分のようにこなせる人間が他にいるかもわからない。
ハイドリヒはそう訴える。
アネットはそれを聞いて顔を歪めた。
「でも、だからって……
だからって、ラインハルトが一人で全部背負うのは……!」
おかしい、とアネットは言おうとした。
彼が一人で背負うには重すぎる、と。
彼の華奢な背中ですべてを背負うことなど出来るはずがない、と。
だから……自分にも頼ってほしいのに、と。
―― けれど。
「アネットさんにはわかりませんよ……!」
ハイドリヒはアネットにそういった。
貴方にはわからない、と。
自分がやるしかないのだ、と。
そういってしまってから、ハイドリヒは後悔する。
アネットが傷ついた顔をしたのがわかったからだ。
傷つけたいわけではないのに傷つけてしまう。
ハイドリヒは唇を噛んだ。
―― あぁ、同じ心理だと思った。
殺したいわけではない。
残忍な任務を好んでいるわけではない。
それなのにしなければならないという、ジレンマ……――
ハイドリヒが言葉を紡げずにいる間に、アネットは顔を伏せた。
そのまま、声を震わせてハイドリヒにいう。
「そうだよ……俺には、わからないよ……」
アネットは顔を伏せたまま、いった。
自分にはわからない、と。
ハイドリヒのいう通り、アネットの任務はハイドリヒのそれとは大きく異なっている。
だから、わかるはずがない。
わかる、なんていってしまってはいけないこともわかっている。
それが歯痒いのだ、とアネットはいった。
その表情は、本当に悔しそうで。
その表情をさせているのが自分であることは、ハイドリヒにもよくわかっていて……
「…………っ」
ハイドリヒはそんなアネットを見て、固く拳を握った。
アネットを傷つけた自分に対する苛立ちと、
どうしようもない虚しさとを抱いて……
けれど、アネットは再びハイドリヒを抱き締めた。
今度は、正面から。
強く、強く、それでも優しく彼は自分を抱き締める。
泣き出しそうな顔をしていたのに。
その顔をさせたのも自分なのに。
その温もりを感じて、ハイドリヒは一度顔を歪める。
そして、強く藻掻いた。
「とにかく、大丈夫ですから離し……っ」
離してください、とハイドリヒは叫ぶ。
とにかく、彼に離してほしかった。
この温もりに甘えることは罪と思った。
―― しかし。
藻掻くハイドリヒを抱き締める腕を一度緩めたアネットは、口に何かをいれた。
そしてそのまま強引にハイドリヒの顔を上向かせて、口付ける。
いきなり何をするんだ、というように驚いた顔をするハイドリヒ。
アネットは口に含んでいたものを彼に飲み込ませた。
「っ、何……」
くらり、と。
意識が揺らいだ。
―― 薬……睡眠薬?
ハイドリヒがそう思うより早く、体の力が抜けた。
揺らぐ意識のなかで見えたアネットの表情は、悲しげなものだった。
「……こういう手に、頼りたくないけど……」
ぐたりとその場に崩れるハイドリヒの体を支えて、アネットは溜め息を吐く。
そのまま、まだ乾ききっていないハイドリヒの金髪を優しく撫でた。
「……ラインハルトが、ろくに寝てないことくらい……見てりゃ、わかる」
見た目には、わからない。
彼はいつも通りに振る舞っていたから。
疲れも何も、周囲に悟らせようとはしなかったから。
けれど……近くで見れば、わかる。
明らかな疲れ。
抱き締めた体も、酷く痩せてしまったような気がした。
食事も一緒にとることにしていたが、
思い返すに彼がしっかり食事をとっているようには見えなかった。
だから。
アネットは事情を話して医療部隊長……
ジェイドに薬をもらってきていたのだった。
ハイドリヒは静かに眠っている。
少しは、安らいだ表情だった。
アネットはそれを見て、顔を歪めた。
「……なぁ、ラインハルト」
―― お前が自由になるには、どうしたらいいだろうな。
アネットはそう呟いて、そっとハイドリヒの体を抱き上げる。
そのまま室内に入って、ベッドに彼を寝かせた。
「……ラインハルト」
アネットは彼の名前を呼ぶ。
薬を飲ませた時に自分も多少飲み込んでしまったのか、
彼もその場に膝をついて、ハイドリヒのベッドの上に体を預け、目を閉じた。
「……――」
ぎゅ、と細いハイドリヒの手を握りながら、
彼は小さな声でささやかな願いを呟く……――
―― Run away… ――
(逃げてほしいんだよ。お前が壊れてしまう前に。
それが罪だというのなら、その罪を俺も一緒に背負うから……)
(傷つけたくないのに傷つけてしまう
逃げたくても逃げられない……その心理は、きっとよく似ていて……)