赤髪金髪コラボでシリアスなSSを…
シリアスに始まりシリアスに終わってしまいました…
*attention*
赤髪金髪コラボのSSです
シリアスです
Twitterできいたネタでやってみましたが…色々ごめんなさいな感じに…;
無心に、無情に任務をこなさなければと自分に言い聞かせるライニさんと
それを何とかしたいと思いつつ方法わからないアネット…みたいな(ぇ)
こういうシリアス好きな星蘭が暴走していてすみません;;
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
美しい死神は、冷淡に死を与える。
冷たい夜風に髪を靡かせ。
美しい青の瞳には光をともすことなく。
助けを乞われようともそれに応えることなく。
ただただ無心に引き金を引く彼の胸に灯る思いは……――
***
―― 静かな夜を裂く、銃声が響く。
森のなかの大きな屋敷の中。
広い広い屋敷の、一室。そこに広がるのは凄惨な光景だった。
それらすべてをこなしたのは……部屋のなかにいる……
否、正確に言えば部屋のなかで立っている人間のうちの片方……
艶やかな金髪。
鮮やかな碧眼。
女性的とさえ言われそうなほどに華奢な体躯……
この部屋は、そんな彼が"刑"を執行した跡地、とも言えた。
現に床に広がる赤色の水溜まりのなかには、
まるで糸の切れた操り人形のように人間の躯が転がっていた。
金髪の少年はまっすぐに、最後の一人に歩み寄った。
彼を処理すれば、すべての任務が完了となる。
「ゆ、許してくれ……!投降でも何でも、するから……!」
組織最後の一人は、そういって懇願した。
みっともない命乞い。
他の仲間が死んだ後に、彼は助けを乞う。
金髪の少年はそれを見下ろした。
男はみっともなくそれを見上げた。
それを見下ろして、金髪の少年は男にしては高い声で、告げる。
「投降せよ、という指示は最初に与えました。
それに従わないで抵抗を続けたのは貴方たちでしょう」
金髪の少年は冷たくそういいはなった。
青色の美しい瞳には光が灯っていない。
男の顔に、絶望の色が灯る。
たしかに、最初に指示を出した。
無抵抗で投降せよ、と。
しかし、先に発砲してきたのは向こうだった。
反撃されたならば、容赦など無用。
金髪の彼は、部下に下層幹部への"対応"の指示を出して、
自身は中心幹部がいるという部屋を目指した。
そして部屋にたどり着いた彼は……相手を、容赦なく撃った。
相手は危険な魔術の研究をしている組織だった。
放っておけば力をもって、国に歯向かうとも限らない思想の持ち主たちでもあった。
ただ、無心に引き金を引いた。
乾いた音が響いて、相手が床に倒れる。
赤色が広がる床と、事切れた敵とを見下ろした。
ハイドリヒは任務完了を告げ、片付けは部下に任せ、その屋敷を出た。
艶やかな金髪が風に靡く。
彼は静かにそれをかき揚げて、後ろを振り向いた。
まだ、屋敷の方はすっかり静まり返っていた。
此処に来たときには、屋敷から賑やかな声が聞こえていた。
不穏組織の一つ、という報告だった。
調査した結果に、危険な組織であると上層も判断を下した。
敵は徹底的に排除せよ……――
そんな、上層(うえ)からの指示を胸に、
金髪の彼……ハイドリヒはこうして任務に赴いたのだった。
任務の執行は簡単なものだった。
危険とはいえ相手はあくまで、群れねば活動出来ない弱小組織。
一気に畳み掛けて攻撃してしまえば、話は簡単だった。
―― いずれにせよ処刑は免れまい。
それならば抵抗される前に殺してしまって構わない。
寧ろ、その方も手間間が少なくて済む……
そんな指示を思い返し、ハイドリヒは静かに目を閉じた。
「……帰りましょうか」
誰にともなく、そう呟く。
静かな声は、漆黒の夜空に吸い込まれて消えた。
***
一人で歩いていく、任務後の帰り道。
ハイドリヒはそっと腰のホルダーに触れた。
先ほど使った銃は、まだ少し熱を持っていた。
―― 消去しろ。
感情を、と自分に言い聞かせる。
なにも思うな、思い返すな、と。
頭を過ったのは、最後に撃った残党の姿。
涙をこぼし、許しを乞うたその姿は、いっそう鮮明に記憶に残っていた。
「間違ったことはなにもしていない」
ハイドリヒはそう呟いた。誰にいったわけでもない。
強いていうならば……彼自身に、いったのだろう。
命乞いの後の反撃だって十分にありうる。
一度抵抗を見せた人間に情は無用……
あの場で許したとしたら、もしかしたら攻撃を受けたかもしれないのだ。
そうなれば、形勢が逆転することもありうるのだ。
だから、容赦などしない。
あの時点での命乞いなど聞けない。
そんなことを説明すれば、血も涙もない、と人はいうだろう。
冷たく非道な死刑執行人。
美しい、金髪の野獣……
彼につけられたのは、そんな、渾名。
優秀だと、人はいう。
ある者はその才に嫉妬さえする。
しかし、その実……そうだったのだろうか。
この任務を遂行することは、正解で。
この任務をこなす技量があるのは優れている証で。
この任務を遂行できるのは……誇り高いことなのだろうか。
金髪の彼は、そう思う。
―― その時。
「お帰り!ラインハルト!」
不意に明るい声が響いて、体に強い衝撃がぶつかってきた。
いつのまにか、目的地まで帰りついていたらしい。
その衝撃の犯人はハイドリヒもよく知っている。
明るく笑って抱きついてくる赤髪の少年。
ハイドリヒはそれを抱き止めた。
それはもう、慣れた衝撃で、ふらつくようなことはなくなったが……
ハイドリヒは抱きついてきた彼の体をそっと押し返した。
今の自分に触れてほしくなかった。
そんな彼の態度に、赤髪の少年……アネットは、不思議そうなかおをした。
その表情がすぐに心配そうなものに変わる。
「……?どうかしたか、ラインハルト」
「え……」
何がですか、とハイドリヒはいう。
アネットは心配そうに眉を下げながら、いった。
「元気ない、気がしたから」
大丈夫か、と彼は問いかける。
その指摘に、ハイドリヒは少し驚いた。
元気がない、というその指摘は恐らく間違いではないだろう。
本人は顔に出さないように努めてはいても、どうしても滲んでしまう、疲れ。
いつものことではあるのだが……彼は、いつもこういう時ばかり鋭い。
けれど、一度否定してやれば良いということも、ハイドリヒは心得ていて。
「大丈夫ですよ。何でもありません」
疲れているだけですから、とハイドリヒはいった。
理由はそれだけで十分なはずだった。
アネットは複雑そうな表情をして、ハイドリヒを見つめていた。
たぶん、彼は勘違いをしているのだろう。
ハイドリヒが"疲れた"と訴えるのは大抵、彼の体を使った、
ハニートラップ紛いの任務だったから。
そんな彼を見て、先回りをした。
ハイドリヒは首を振って、アネットにいう。
「違いますよ……そういう、任務ではありませんでしたから」
「……そっか」
それなら、よかった……のか?とアネットは呟く。
正直よくはないのだろうけれど、と呟いていた。
ハイドリヒの反応にアネットは少しだけほっとした顔をした。
正直愛しい彼にまで誤魔化したり嘘をついたりするのは少し心苦しいのだが……
彼に、真実を説明したいとは思わなかった
ハイドリヒはそんな彼に"部屋に戻って休みます"といった。
アネットはそれを聞いて、小さく頷く。
そして、ぎゅとハイドリヒを抱き締めた。
「ゆっくり休んで、くれな」
「えぇ……でも、アネットさん……
離して、くれませんか……」
ハイドリヒは緩まないアネットの腕をそっと叩いた。
ゆっくり休め、というわりに彼のうでは離れない。
アネットは言われて漸く気づいたようにはっとした。
「あ……ごめん。もうちょい、一緒にいたくてさ」
アネットは苦笑気味にそういって、ハイドリヒの体を離した。
どうやら彼は少しでも長く、"恋人"と一緒にいたかったらしい。
そのまま彼の美しい金髪をそっと撫でる。
いつもならばその手を甘んじて受けるハイドリヒだが……
今は、無理だった。
すぐに、アネットに別れを告げて踵を返す。
離れてしまった温もりが恋しいと、そう感じてしまう心をも封じて、
ハイドリヒはまっすぐに自室に向かって歩き出した。
***
「……ラインハルト……」
アネットはその背中を心配そうに見送っていた。
鈍い彼でも、大体ハイドリヒが今、どんな
任務にいっていたか推測ができていた。
彼が自分に触れられるのを拒絶するときは、決まっていた。
自分を、"穢れて"いると感じている時だ。
抱き締めた腕をすぐにほどけなかったのも、
自分からすがっては来ない彼を慰めるため。
出来ることならずっとああして抱き締めていてやりたかった。
―― でも。
彼を慰めにいくのが賢明かは、今一つ自信が持てなかった。
自分がいくことで、彼をいっそう追い詰めはしないだろうか?
苦しいなら苦しいといってほしい。
辛いなら辛いといってほしい。
でも、それを求めることが出来ない境遇にあること位は、アネットも理解していて。
あとから様子を見に行こうと、そう思う他なかった。
それが、今できる最善だと。
「……守るよ 、絶対」
人知れず、赤髪の彼は呟く。
固く、拳を握って。
強がっていても本当はとても脆い彼が壊れてしまわないように。
守りたい、守らせてほしいと、そう強く願いながら……――
***
「はぁ……」
自室の、静かなベッドの上。
ハイドリヒは何度も何度も寝返りを打った。
疲れているはずなのだ。心も、体も。
けれど、眠れない。
寝付けない。
目を閉じれば鮮やかな赤色が脳裏に浮かぶ。
それを振り払おうとしても、一層鮮やかになるばかりで……――
―― 嗚呼、"本当の意味で"非道になれるなら。
それほど、簡単なことはなかっただろう。
心なんてなければ、もっと簡単だっただろう。
誇ることなど到底できない任務内容。
寧ろ、こんなことはおかしいと訴えかける自分の内心。
しかし、彼はそれを言葉に出すことも、表情に出すことも、自らに禁じた。
―― 非道になれ。
―― いちいち標的(あいて)に同情していたら任務遂行など不可能だ。
―― 感情のスイッチを切れ。
そんな、上からの指示が今ならばよくわかる気がしていた。
非道になれ。情を持つな。
これは、正当な任務だ。
殺らなければ殺られる。
組織を、仲間を、自分自身を危険に晒す要因となりうるものは、
排除して然るべき……
そう思わないと、やっていけなかった。
涙をこぼすことさえ禁じた彼が自分を保つすべは、それくらいしかなくて。
―― 平気なわけ、ないじゃん。
ふと脳裏に過ったのは、赤髪の彼の声だった。
いつだったか、初めてハイドリヒが人を殺めた時の話をしたときの、彼の声。
辛いのなら泣いていい、苦しいならば吐き出せばいい……
そういって彼は優しく自分を抱き締めた。
その言葉は暖かく、優しいものだった。
抱き締めてくれる腕を、事実求めてもいたのかもしれない。
けれど、躊躇いだってあった。
こんな、血にまみれた腕で彼にすがることは、救いを求めることは……
きっと、許されざることなのだと、彼は自分に言い聞かせる。
「そういう、訳にもいかないのですよ……」
ハイドリヒは静かにそう呟く。
そのまま、冷たいシーツを固く握りしめた。
―― 眠れぬ夜 ――
(平気でなくとも、平気でいなくてはいけない。
感情を殺し、自分の行為を正当だと言い張るだけのことが出来なければいけない。
そうしないと私は……)
(壊れてしまいそうな君を救うためには俺はどうしたらいい?
守りたい、守らせてくれとそう願えども……方法が、見つからないんだ)