久々の主人公コラボのSSです。
ふとやってみたいなと思ったネタで書いてきてしまいました…←
*attention*
主人公コラボのSSです
ほのぼのなお話です
ヒトラーさんが身近な子供には寛大だった、って表記を見てやりたくなって…←
フィアは子供の扱いがあまり得意ではありません(笑)
それでも違うベクトルで二人とも子供に優しかったら良いな、と思って…←
相変わらずの妄想クオリティです
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
夕闇に染まっていく街並み。
そこを歩く二つの影。
点り始めた街灯が二人の影を長く地面に落としている。
黒髪の少年……ヒトラーは小さくくしゃみをした。
隣を歩いていた亜麻色の髪の少年が心配そうに眉を下げ、首をかしげる。
「大丈夫ですか、ヒトラー様」
「ん、あぁ……平気だ。すまない」
そういってヒトラーは苦笑した。
思いの外外が寒かったのだ。
こんなことならもう少し厚手の上着を着てきた方がよかっただろうか、と思う。
炎属性魔術の使い手だが、ヒトラーはあまり体温が高い方ではない。
炎属性魔術よりも悪魔属性魔術の特性が強く出ているのかもしれないな、と思った。
こうしてフィアとヒトラーが一緒にいる理由はといえば、
街の巡回に来ていたフィアと休日で楽器屋に楽譜を見に行っていたヒトラーとが
偶然鉢合わせ、どうせならば一緒に帰ろうということになった次第である。
日が落ちるのは大分早くなってきている。
既にもう街は夕暮れに染まっていて、
二人が歩く道沿いの民家からは穏やかな声が聞こえていた。
夕食はなにかと訊ねる子供の声。
仕事を終えて帰ってきた父親のただいま、という声。
幸せそうなそのヒトコマに、ヒトラーは空色の瞳を細める。
と、その時だった。
「ん……?」
不意にフィアが足を止め、周囲を見渡した。
ヒトラーも彼が足を止めた理由が何となくわかったため、訊ねる。
「フィアも聞こえたか?」
「えぇ、子供の泣き声のような……彼方、でしょうか」
そう、二人の耳がとらえたのは子供の泣き声。
パッと周囲を見た雰囲気ではわからないが、確かにその声は聞こえてきて。
フィアとヒトラーは周囲を見渡してその声の方へ足を進めていった。
***
二人が進んでいった方には小さな男の子が一人。
通りの真ん中に立ち尽くして泣いている。
年はまだ十歳に満たないだろう、という幼さだ。
既に通りを歩く人間は大分少なくなっていて、声をかける者もいなかったようだ。
これは心細かっただろう、とフィアもヒトラーも思う。
フィアは一瞬どうやって声をかけたものか、と悩む顔をした。
あまり社交的でないフィアは子供の扱いも得意な方ではない。
と、フィアが動くより先にヒトラーが動いた。
するり、とフィアの横をすり抜けてその少年に歩み寄るヒトラー。
そしてヒトラーは軽く身を屈めて、その少年に視線を合わせた。
泣きじゃくっていた子供は不思議そうにヒトラーを見る。
涙で潤んだ少年の瞳がヒトラーを見つめる。
ヒトラーは優しい声で少年に問いかけた。
「どうしたんだ?」
「う、うぅ……おうち、わかんなくなっちゃったぁ……」
えぐえぐと泣きじゃくりながらそう訴える少年。
少年曰く、彼は元々この街の子供ではないらしい。
親戚の家に親と一緒に遊びに来て、外で遊んでいたのは良いのだが、
そのまま一人でふらふらしているうちに完全に迷子になってしまったのだという。
事情を説明しているうちに余計心細くなったのか、少年は再び泣きじゃくる。
一人で見知らぬ土地にさ迷い出てしまった恐怖は大きいだろう。
ヒトラーは少し困った顔をした。
この辺りの地理には詳しくない。
家の方を聞くも、少年の説明は説明になっておらず、聞いてもよくわからない。
どうしたものか、と悩んだとき。
不意に少年の前に差し出された、白い手。
その上には小さな飴がひとつ乗っている。
「男の子だろう。泣くな」
そういっているのは、勿論ヒトラーと一緒にいた亜麻色の髪の少年。
ヒトラーの傍で泣いていた少年はびっくりしたように、
その手の主……基、フィアを見上げた。
「え、これ……」
「……飴でも舐めて少し落ち着け。泣いてても疲れるだけだろう」
フィアの言葉に少年は何度かまばたきをする。
そして、無邪気に笑うと"ありがとう、お兄ちゃん"といった。
フィアはちらと少年に目を向けるも、すぐに逸らしてしまった。
照れているのだろう、とヒトラーは推測する。
元々他人に感謝されると照れ臭そうな顔をするフィアだ。
そっけない物言いは冷たく感じもするが、その視線は周囲に向けられている。
そんな不器用な優しさはヒトラーにはもちろん、少年にもわかったらしい。
フィアはヒトラーに視線を向けると、いった。
「ヒトラー様、その子を頼みます。
俺はこの辺りでお母さんを探してきます。
その子が周りにいないとなったら探すでしょう」
そういうや否や、フィアは走り出す。
その素早さ、躊躇いのなさは地元の騎士だからこその行動だろう。
ヒトラーは勇ましい背中を見送ると、少年の方に向き直って、微笑んだ。
「彼が君のお家を探してきてくれるまで、私と一緒に待っていようか」
「お兄ちゃんも、一緒?」
「あぁ。一人で心細かったな」
そういいながらヒトラーはおずおずと少年の頭を撫でる。
少年は涙で潤んだ目でヒトラーを見上げていたが、
頭を撫でられると嬉しそうに笑った。
***
そのままヒトラーとロディ、と名乗った少年は通りの隅にあったベンチに座った。
そこで足をぶらぶらさせつつ、ロディはヒトラーに訊ねる。
「お兄ちゃんは騎士さんなの?」
「え?あぁ、私も……さっきの彼も、ディアロ城の騎士だ」
「へぇ……すごいね!」
そういって、ロディは明るく笑う。
すごいすごい、と無邪気に誉める少年に、
ヒトラーははにかんだような表情を浮かべた。
優しい態度をとってくれたヒトラーになついたらしく、
彼は先程まで大泣きしていたとは思えないほど明るく色々なことを話した。
家のことや家族のことを話し、
ヒトラーには騎士としての仕事のことを聞いて、はしゃいだ。
「すごいね、騎士様は僕たちの街を守ってくれてるんでしょ?」
「ん……そう、だな」
「ありがとう!」
ヒトラーは空色の瞳を幾度か瞬かせたあと、照れ臭そうに笑った。
こうも無邪気に礼を言われると照れ臭いものがある。
それに、ヒトラーは自分の魔力が悪魔の魔力であることを少々憂いている。
悪魔の魔力はどうしても破壊のイメージがあるからだ。
"守ってくれてるんだよね"という言葉に自信をもって頷けなかった理由はそれだ。
しかし、その少年の明るさがヒトラーにも笑顔を浮かべさせる。
守ることが出来ているだろうか。
この幼子を撫でる自分の手はちゃんと優しいだろうか、と……そう思ったとき。
「ヒトラー様!」
遠くから聞こえた声にヒトラーとロディは顔をあげる。
日も落ち、暗くなってきた道を走ってくるのは、亜麻色の髪の騎士と……
「ママ!」
ぱぁあっと顔を輝かせて、ロディが叫ぶ。
どうやらフィアはちゃんとロディの母親を見つけられたらしい。
「申し訳ありません、騎士様方……!ありがとうございます、本当に……」
駆け寄ってきた女性はロディをしっかりと抱き締めて、
ヒトラーとフィアに何度も何度も礼をいった。
本当に心配していたのだろう。
フィアとヒトラーが照れるほどに礼をいう母親に、
"当然のことをしたまでですから"といって、二人も微笑む。
帰り際、ロディは振り向いて二人の騎士に手を振った。
「ばいばい、黒髪のお兄ちゃん、茶髪のお兄ちゃん!」
ありがとう、といって遠ざかる少年。
フィアとヒトラーも控えめにそれに手を振り返した。
遠ざかるロディと母親の姿。
それを見送ったあと、フィアはヒトラーにいった。
「ヒトラー様、子供の扱いがお上手ですね……」
俺には真似できません、とフィアはいう。
先程の彼の振る舞いが、恐らく彼の子供の扱いの限界なのだろう。
ヒトラーは首をかしげつつ、フィアの言葉に答えた。
「そう、かな……
まあ、子供は割りと、嫌いではないし……
まだ子供のような部下も多いからな」
ヒトラーはそういって、笑う。
フィアは微笑んで"俺も見習わなくては"といった。
そして、帰りましょうか、と促す。
もう一度振り返れば母親と手を繋いで歩いていく幼い少年の姿。
幸福そうな、彼と母親の姿……――
この平和を自分達が守れたら良いな、と思いつつ、
ヒトラーはフィアと一緒に歩き出した。
―― 平和な光景を… ――
(こんな平和な光景を守りたい
泣きじゃくる少年を見て改めてそう感じたんだ)
(優しく子供に接する彼の姿。
遠目に見ていても優しくて、暖かくて…)