フィアとアネットのSSです。
この二人での訓練ネタやると体格差が露になるというか…←
アネットがいってる「力業だけだと勝てない奴」は無論彼の恋人です(ぇ)
ともあれ、追記からどうぞ!
Side Fia
ぶつかりあう剣。
散る火花。
腕に伝わってくる重い鋼の感覚。
腕が痺れて剣を取り落としそうになる。
けれどそれを必死に堪えて押し返した。
相手は少し驚いたように笑う。
しかし、すぐにその表情は余裕の色を灯す。
ぎらり、と輝くガーネットの瞳。
―― 何か仕掛けてくる。
そう思って身構えたその刹那。
俺の剣を止めていた赤髪の少年はスッと剣を引いた。
強く押していた剣が支えを失って倒れかける。
思わぬ動きだった。
前に押してくることは十分考えていたが、引かれるとは。
想像していなかった動きだったから、対応が遅れた。
バランスを崩した俺の腕を掴む力強い腕。
勢いよく腕を引っ張られて地面に引き倒された。
驚いて体勢を起こすより先に首筋に突きつけられる銀色。
……俺の敗けだ。
「……くそ」
「はは、まだまだ甘いなぁ、フィア」
くっくっと笑いながら俺の首筋に剣を突きつけていた赤髪の彼……アネットが笑う。
先程までの真剣な、獣のような表情は消えて、
いつも通りの人懐っこい笑顔が浮かんでいる。
差し出された彼奴の手を握って、俺は体を起こした。
そのまま溜め息をはいていう。
「お前の体術には勝てん……」
「そりゃあな。俺が負けたら問題だろ。仮にも戦闘部隊の騎士なのに」
「まぁ、それはそうだが」
どうしても悔しくて溜め息が漏れる。
剣術も魔術もそこそこ得意な方だと自負しているが、
どうしても体術だけは強くなりきらない。
無論、俺が女であるというハンディが大きいのだが……
それにしたっても、もう少しまともに戦えるようにならないと、
魔術を封じられて剣を奪われた状態になった場合、
俺は一切反撃出来なくなってしまう。
俺の従兄であるルカは魔術が先天的に使えない。
剣術だけの体力馬鹿、と侮っていたが、彼奴は剣を奪われても戦える。
思い返すにルカはかなり体格が良いし体力もある。力も強い。
だから、彼奴は戦える。
……俺も、彼奴ほどでなくていいから、
体術が使えるようになりたいんだ。
以前、ヴィオレスに捕らえられたときのような間抜けは真っ平だ。
その訓練の為に俺は今のようにアネットに
体術と剣術の融合の訓練に付き合ってもらっている。
ルカは恐らく受けてくれないし、シストもたぶん受けてくれない。
申し訳ないがアルは論外だ。
消去法的にも力量的にも、アネットが適役だった。
俺の本当の性別を知っていて、ある程度の手加減が出来て、
でも手加減しすぎず、俺の能力を高めてくれそうな人間。
炎属性魔術が苦手な俺はアネットと一緒に訓練をすることは少なかったからか、
アネットは快くこの役を引き受けてくれた。
「それにしても……アネット、お前少し戦闘スタイル変わったか?」
剣をぶつけながら思っていたことを口に出す。
アネットは少し驚いた顔をして俺を見た。
そして、小さく笑う。
「あぁ、まぁ……多少な。
力業だけだと勝てない奴がいるからさ」
そういって苦笑するアネット。
……あぁ、何となくわかった。
でも、彼のそういう変化はプラスだと思う。
根本にある戦闘スタイルはアネットらしい力メインのものだが、
そのなかにも素早さが出ている。
それはアネットにとって大きな武器だろう。
「でもフィアも大分強くなったと思うぜ?
あとはやっぱり……お前の場合、体のデカさとゴツさが足りないんだろうな。
もう少し逞しくなったらどうだ?」
「……なれるものならなりたいよ」
切実な思いである。
ちゃんと筋トレ(女がやるレベルじゃないと思う)もしているし、
食べ物の好き嫌いもあまりしていないつもりだ。
食べられる量は確かに少ないが、それでもきちんと食べてるつもりなんだが……
「残念ながらお前のように逞しくはなれんよ」
「そっかぁ?」
「あのなぁ、人間すべてがお前のように逞しくはなれたら苦労はしないよ」
俺はそういって苦笑する。
戦闘部隊の有力ルーキーと体の作りを一緒にされても困る。
俺は天使族であるがゆえに身体的に華奢、というのも考えられるよな。
あまり思い出したくないが……俺の血族であるフォルも、確かかなり華奢だった。
「体格で勝てないとなると、やっぱり技術だよなぁ……
周りに比べたら体もちっさくて細いから、
速さ重視でいけばたぶん足元救えるよ。
今度はそれでやってみろ。
あと、俺に剣で押されても無理に受けようとすんな、体力使うだけだから」
「……そうだな。気を付ける」
俺はそういうと剣を握り直した。
そして、アネットのほうをみる。
「もう一度頼む」
「大丈夫か?むちゃくちゃしても疲れるだけだぞー?」
「……それはお前には言われたくないな」
俺はそういうとアネットを軽くこづいた。
無謀をしてよく叱られているアネットにだけは言われたくない。
俺がそういうと、アネットは笑って剣を握り直した。
そして、勝ち気に笑う。
「よし、来い!」
俺は力強くうなずいて、彼に向かって斬りかかっていった。
―― Style ――
(各々違う、戦闘スタイル
それを教えてもらえば、自分はもっと強くなれるだろうか)