RTされたら〜ってやつです。
もっとも、RTされなくても書いちゃうのが私なのですが(駄目じゃん)
夏休みも今日で終わり。
散々書いたSSも(裏部屋含む)更新ペースが亀以下になると思うと寂しいな…
さぁ、とりあえず行きますよー!!
あ、今回はシレーネ兄妹(ジェイド&リン)です。
御題はですねェ…「信頼は裏切れない」です。
ちょっとシリアス目ですかね?
ジェイドの過去の話とか、少しできたらいいなぁ、と思っております。
ではでは、準備の(何の?)出来た方は、追記からどうぞー!
Side ジェイド
―― 驚いた、というのが一番大きい。
講義の準備をしていた僕の所に来たのは、サファイアの瞳の彼、で。
一体どうしたのか、と聞けば。
僕の妹が訪ねてきている、と。
ただ純粋に、驚きました。
僕が生まれ育った町……フォレーヌは、此処から遠い。
それに、僕の妹……リンは、体が弱いのですから。
急いで行って、シストと一緒にいる少女を見て、僕は言葉を失いました。
嗚呼、いつの間にこんなに大きくなったのか、と。
僕の記憶にあるあの子の姿は、たどたどしく僕を呼ぶ、幼子で。
"おにいさま"と幼い声で呼ばれるたび、くすぐったい様な気分になったことだけ、
酷く鮮明に記憶に残っていました。
でも、今目の前に立っているあの子は、リンは……美しく、優しげな少女。
母に似た、穏やかな表情。
父に似た、強い光を宿した瞳。
僕の記憶に残る、あの弱弱しい姿から、彼女はずいぶんと成長していました。
最後にあったのがいつか、ということさえも、僕は思い出せなくて。
―― それが、申し訳なかった。
少し見ない間に大きくなった、と僕が言えば、彼女は酷く悲しそうな顔をして。
"最後にあったのは二年前だ"と教えてくれました。
そんなに長い間会っていないのか。
そう思うと、僕自身も悲しかった。
言い訳なら、いくらでもできるのです。
僕は、騎士団の一部隊のトップである。
それと同時に、医者でもある。
基本的な仕事はこの城内の仕事でも、要請があれば街へ行くこともある。
遠く離れたフォレーヌに帰る時間など、ないのです。
しかし……ほんの少しでも。
せめて、大切な妹の誕生日くらいには、帰ってあげればよかった。
そう、後悔しました。
すまない、と。ちゃんと謝りたいのに。
僕の口から紡がれるのは、事務的な挨拶ばかり。
父は、母は元気か、なんて。あの子に聞いて、どうするんでしょう。
挙句の果てには、講義があると、そういって。僕は、彼女に背を向けたのです。
……話す資格など、ないと思ったのです。
あの子が幼い頃から、僕は騎士として働いていました。
街の場所が場所ですから、なかなか家にも帰れずに。
あの子は、リンは、僕を慕ってくれるのに、僕はそれに報いることができない。
兄らしく、振舞うことができないのですよ。
―― ほら、今も。
リンは、聞き分けがいい子ですから。
僕が"用事がある"といえば、素直に引き下がるのです。
もっと我儘を言ってくれてもいいのに。
……"傍にいたい"と、いってくれたなら……
それを望むことでさえも、罪であるような気がしたのです。
僕と彼女は確かに兄妹です。しかし、共にいた時間が短すぎる。
もっと兄らしく振舞うことができていたのなら、それを望んでもよいのかもしれませんが……
それはきっと、"我儘"でしょうから。
そんな気持ちのまま、僕は講義を終えました。
いつも通りに振舞うことができていたか、自信はありません。
"精神共鳴"の力を持つアルが時折僕の方を心配そうに見ていたので、
きっと、平常心ではいられなかったのでしょうね。
そんなことを思いながら、部屋にいた時。
甲高い悲鳴と聞きなれた声と一緒に、何か……基"誰か"が部屋に降ってきました。
「きゃぁ?!」
「おじゃましまーす!!」
何かと思って、そちらを見て驚きました。
そこにいたのは、シストの姉君……ロゼ様に抱えられた、我が妹だったのですから。
「い、いったいどうしたのですか……このようなところに」
「お届け物、でーす!」
ね?と言って、ロゼ様はリンを下しました。
リンは驚いているのか、少しあたりを見渡した後、僕の方を見ました。
そして、言ってくれたのです。
「お兄様……私、もっとお兄様と一緒にいたいです」
「!」
「……お兄様と一緒にいられないことは、悲しいです」
僕と同じ、翡翠色の瞳を揺るがせて、あの子は言った。
ああ、君は。
望んでくれるのですか。僕とともに、いることを。
「お兄様がお忙しいことは、わかっております。
それに、私も帰らなくては、お父様とお母様が心配します……
しかし、今だけは……」
―― 少しだけ、話をしたいのです。
リンはそういうと、僕に抱き着いてきました。
暖かな体を抱き返せば、嬉しそうに微笑んで。
ロゼ様にお礼を言おうと思ったのに、すでにいなくなっていました。
まったく、素早い方だ。
「……リン」
「はい。なんでしょう?」
名を呼んで、その髪をそっと撫でました。
すると驚いたような顔をして、リンは僕の方を見るのです。
「すみません。僕のようなものが、兄で」
静かに、謝りました。
それは、心からの謝罪。
すみません。ごめんなさい。
傍にいることもできず、成長を見守ることもできず。
リンは暫く驚いたような顔をして、僕を見つめていました。
しかし、ゆっくりと首を振って、微笑んで。
「私は、お兄様がお兄様で良かったと思っていますよ」
「え……?」
「確かに、あまり会えないことは寂しいです。
しかし……お兄様は、私にとって大切な兄であり、目標なのです。
お兄様のような医師になることが、私の今の目標なのですよ」
そういって、優しく微笑んでくれるリン。
……純粋に、嬉しかった。
こんなにも離れているのに。
共にいた時間も、数えるほどしかないのに。
彼女は、確かに僕のことを……
「ですから、そんな悲しいことを言わないでください。
私は、お兄様が少しでも私たちのことを覚えていてくださるなら、それでいいのです」
リンはそういって、僕の小指に自分の小指を絡ませました。
懐かしい、"指切り"ですね。
嗚呼、彼女は信頼してくれている。僕のことを。
なかなか家にも帰らない、僕のことを。
「……時々は、家にも帰れたらいいのですが」
「ふふ。難しいのでしょう?わかっております」
「手紙を、書きます」
「えぇ、そうしてください」
嬉しそうに笑うリンの顔を見て、僕も微笑み返して。
―― ほんの少しですが、"兄妹らしい"時間を、過ごせた気がしました。
Fin
***
御題を無視してしまった気がするけれど…まぁいいか(え)
2012-8-29 19:11