※夕日歌姫番外編です


今日は待ちに待った特別な日。

ニヤケてしまう口元をどうにか抑えながら部屋のドアを叩くと、中から金髪の青年が出てきた。


「来てくれたんですね、ヒュウガさん!!」

「おはよ、コナツ。今日は呼んでくれてありがと!!」


ヒュウガがハートの飛ぶ勢いで抱きつくと、腕に抱かれた青年は、苦しいですよ、と言いながら顔を赤らめた。

くすり、と笑いつつ、勧められた部屋の中に入れば、入口から既に甘い香りが漂っていた。


「コナツ、チョコ作ってくれたの?!」

「ええ…まあ、」


照れているのか、顔をうつ向かせるコナツ。ぼんやりと、可愛いなぁなんて思いながら、もはやヒュウガの定位置となった淡いオレンジ色のソファに身を沈める。


「で。チョコは?」

「それは後のお楽しみです」

意地悪っぽくそう言うと、ヒュウガはまるで子犬が耳を垂れるように、しゅんとなった。…もっとも、子犬と言えるほど可愛いものではないが。

そんなことを考えていれば、ヒュウガはいきなり、すく、と立ち上がって近づいて来た。

近い距離に恥ずかしさがこみあげてヒュウガの身体を退かそうと手を伸ばせば、逆にその手をぐいと引っ張られ、コナツはヒュウガに抱きつく形となった。


「チョコ貰えないならコナツを食べちゃうよ」

「ちょ、何言ってるんですか!!」


抵抗するも、腰に腕を回され固定されてしまったのでどうにもならない。

どうしようか、とぐるぐる考えていると、後頭部をもう一方の腕で掴まれ、上を向かせられた。


「コナツ……」

唇が触れそうになった、その時。





バンっ!!!


…唐突にドアが開かれた。


「コナツ、来てやったぞー!!って、あ、ヒュウガ、お前っ」

「何をやっているんですか…!!(ふるふる)」


そう言ってコナツからヒュウガをベリ、と剥がしたのはヒュウガの同僚であるフラウとカストル。

解放されたコナツはほっと息をついてから、二人の真剣な表情を見て、くすくすと笑った。


「まったく、油断も隙もない…」

腕を組んでため息をつくカストルと、その言葉に、まったくだ、と答えるフラウの後ろには、くるくると周りを見回し頭上にはてなマークを浮かべるヒュウガ。

それを見たコナツはもはや押さえきれなくなって大いに笑った。


「今のヒュウガさんの顔ったら……ふ、」

「ちょ、ちょっと待ってよ、何でここにフラウとカストルまで来てる訳?」


ヒュウガがそう言うのも無理はない。他の人も誘っていることなどヒュウガには伝えていなかったのだから。

コナツは、よくぞ聞いてくれました、とばかりににっこりと笑ってから台所に駆け込み、大きな鍋のような壷のような、ともかく可愛らしくて大きな器を持って来た。

三人はなんだなんだ、と器の中を覗きこむ。


「これは…チョコか?」

「そうです」


ことん、と果物やクッキーの乗った皿をテーブルの上に乗せながらそう答えるコナツ。


「せっかくのバレンタインなので、チョコフォンデュを作って皆でパーティーみたいにして楽しみたいなって思って」


なんていい子なんだ…、とばかりに握り締めた拳を震わせながら涙を流すカストル。


「それじゃ、始めましょうか」





こうして始まったチョコレートパーティーが終了したのはもう日が暮れ始める頃のことだった。

カストルとフラウは、他にも当てがあるから、ということで帰ってしまった。

つまり、部屋にはコナツとヒュウガの二人だけ。


「ねぇ、コナツ…さっきの続きしていい?」

「しょうがないですね」


床に映し出された二人の影が、重なる。

それは、街が優しい橙色に染まり始めた、夕方のことだった。


***

お粗末ですm(__)m
せっかくのバレンタインなんだから、もっと甘く出来ないのかって感じですね。
チョコフォンデュ食べたいな… ←
つか、朝から夕方までとかどんなパーティーなんだろうね 笑