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濡れる蝶は月夜を舞う。
その涙は誰(たれ)への餞(はなむけ)か。
「アーヤたん♪」
その声は、執務室を冷凍庫にするかのように空気を凍りつかせた。
…無論本人はそんなことには気づいていないが。
「…なんだ」
アヤたん、と呼ばれた男は目の前の、嬉しそうに笑むグラサン男に冷徹な目を向けて言った。
「暇だから遊んでー」
瓢々と言うヒュウガの後ろでは、部下であるコナツが顔面蒼白になりながらあたふたしている。
アヤナミは暫し考えた後、机の中からあるものを取り出す。
「そうか…そんなに言うのなら仕方ない…」
パシンッ
ゆらりと立ち上がったアヤナミの手には先ほどから床を叩きつけている鞭。
「え…あ…遠慮します!!」
冷や汗をかきながら言うヒュウガとは裏腹に、カツラギ達は苦い笑いを溢していた。
…クロユリに至っては必死なヒュウガを指差して大爆笑している。
「そ、そんなことより、瞳が手に入って良かったね、アヤたん」
慌てて話題を切り替えたヒュウガに対してか、それとも易々と手に入ってしまった瞳に対してなのか。
アヤナミは微かに笑いながら「あぁ」と答えた。
…その時、どこからか一瞬の殺気を感じた。
(気のせいか…)
警戒していた手を緩め、刀から手を外す。
外では至って平和な日差しがさんさんと降り注いでいた。
その日の夜は、綺麗な満月だった。
ヒュウガは何だか眠れなくて、独り廊下を歩いていた。
ふと、執務室から人が出てきた。
暗闇に目を凝らしてよく見ると、それはコナツだった。
こんな時間まで書類を片付けていたのかと「お疲れ」の一言でもかけようとしたが、コナツがあまりにも疲れた顔をしていたのでやめた。
その代わりに、明日は朝早く起きて、まだ残っているであろう書類を片付けようと決意した。
(俺ってば偉いなぁ。もしかしたらアヤたんに褒められるかも)
そう考えて、アヤナミが自分を褒めちぎる姿を想像したが、何だか気持ち悪くなったので部屋に帰ってすぐに寝た。
<続く>
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りん様、大変遅くなりました。
大体のストーリーを練るのに時間がかかってしまい、申し訳ないです。
『ヒュウガは(自分は)アヤナミが好きだと思っている』という設定がうまくできそうにないですo(T□T)oすみません。
続きも少しずつアップしていく予定なので、よろしければ読んで頂けると嬉しいです( ̄□ ̄;)