スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

時を刻む薄紅



「いやぁー、春だね!」

「桜も散っちゃいましたけどね」

隣で黙々と仕事をしていたベグライターがやっと口を開いたかと思えば、それはそれはすっぱりと上司の言葉を一刀両断。

幸せだ、とばかりに両腕を広げていたヒュウガはぶー、と頬を膨らませた。


「だから可愛くないです」


そんなコナツの鋭いツッコミを最後に、二人しかいなかった執務室には静寂が訪れた。




花見を飾っていた桜ももう散り際で、今日の風は強いとか明日は雨が降るとか聞くし今日で桜も見納めだろう、
そう思って、コナツは書類の上を滑っていた手を止めて換気のために開いていた窓の外を見やる。

そこから見えるのは、どこか意図的に作られたような青空だった。
人工的で、機械的で、握り潰したら粉々に砕けてしまいそうな儚い現実。
その時確実に、世界は変わったのだ、と感じたのだ。

小さい頃に窓から見た景色は、どことなく輝いていて。まるで神の手によって洗練されたかのように神聖で、神秘的に見えていた。


自分が今見る世界とは異なる、別の世界。
本当は夢だったんじゃないかと思うほど美しく、手の届かない世界。

そして、今も。


そんなことをぼう、と考えながら窓の外を見つめていると、びゅ、と一際強い風が吹いて来たと同時に薄紅色の欠片が舞い落ちてきた。



「桜…」


「…ねぇ、」

珍しく静かに作業に徹していたヒュウガが視線を動かさずに口を開いた。


「時は、流れていくんだよ。桜が散って、また同じ所に咲くまでの間にも、時は流れていくんだ。桜自身はそこから動けないし同じ景色しか見えない。
…それでもね、世界は動いてる。
確実に、変化している。
それってさ、やっぱりすごいよね」

ヒュウガが顔を上げてにっこりと笑った。

あぁ、この人はきっとわかってるんだ、なんてノロケみたいなことを考えながら、手の動きを止めた上司に制裁の一発をぶち込んだ。


*****

季節外れとか知らn(爆)
深い意味を持たせようと思って撃沈しました…
シンプルだけど深い文章書ける人って尊敬する!!

嘘のつき方


「これと、これと……」

「えー、そんなに書類あるのー?」


目の前に積み上げられる書類のあまりの量に拗ねるヒュウガ。

「そんなこと言ってる暇があるならさっさとやってくださいよ。あと、キモい」

「酷いよ、コナツ…俺はコナツをそんなふうに育てた覚えないよ!!」

「少佐に育てられた覚えもないですがね」


ああ言えばこう言う、お互いに引かない二人にカツラギは苦い笑いを溢しながらお茶を差し出した。

ありがとうございます、とコナツが湯呑みを受け取り一口すすると、うつ向いていたヒュウガがふふふ…と怪しく笑いながら顔をあげた。

「コナツは知らないかもしれないけど、俺は小さい頃にコナツに逢ってたんだよ」

「へぇ……どこでですか?」

胡散臭い、とばかりに呆れながら適当に答えるコナツ。

「よくぞ聞いてくれました!コナツの家の庭って外に面してるでしょ?偶然通りかかった俺はコナツが飛ばしてしまったボールを…」

「へぇ」

相も変わらず呆れた顔で答えるコナツに、ヒュウガはう…と泣きそうな顔になる。
後ろで、やーい、とクロユリが囃したてているのを聞きながら。


「あ、そうだ、ヒュウガ少佐」

突然思い出した、とばかりに声を上げたコナツを見ると、やけに嬉しそうに笑っていた。


「明後日から、少佐のベグライター辞めますから」


「え……?」

「だから、明日からベグライター辞めます」


ニッコリと笑むコナツとは裏腹に、ヒュウガの顔はどんどん青ざめていく。

なんで?どうして?

様々な疑問が頭の中でぐるぐると巡る。







そんなヒュウガの顔を見て、コナツは笑いを堪え切れなくなったようにどっと笑い始めた。

「少佐、嘘ですよ、嘘」

「……あ。ホントかと思って焦ったー。酷いよ、コナツー」

「先に嘘をついたのは少佐じゃないですか。…少佐、嘘っていうのはこうやってつくんですよ」


してやったり、と意地の悪い笑みを見せるコナツに、ヒュウガは子供のようにぷー、と頬を膨らませる。

悔しいなぁ。いつもは俺がコナツを振り回してるのに。

成長したんだな、と寂しいような嬉しいような気持ちになるヒュウガに、突き刺さるコナツの言葉。

「だから、それキモいだけですってば」

…成長、しすぎじゃない…?


20分後、部屋の隅でしゃがみ込んで「の」の字を書き続けるヒュウガを「いい加減にせいっ!」とファイルの角で殴るのも、当然のことだった。



***

Xデーとゆーことで「嘘」をお題に書いてみました。だってXデーらしい企画思いつかなかったんだもん…(´・ω・`)
最近コナツが暴力的(笑)
ファイルの角は痛かろう。
ヒュウガのツッコミが「それ、痛いから!」から「それ、ドメスティックなバイオレンスだから!」に変わるのも時間の問題かと。
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2010年04月 >>
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30