「これと、これと……」
「えー、そんなに書類あるのー?」
目の前に積み上げられる書類のあまりの量に拗ねるヒュウガ。
「そんなこと言ってる暇があるならさっさとやってくださいよ。あと、キモい」
「酷いよ、コナツ…俺はコナツをそんなふうに育てた覚えないよ!!」
「少佐に育てられた覚えもないですがね」
ああ言えばこう言う、お互いに引かない二人にカツラギは苦い笑いを溢しながらお茶を差し出した。
ありがとうございます、とコナツが湯呑みを受け取り一口すすると、うつ向いていたヒュウガがふふふ…と怪しく笑いながら顔をあげた。
「コナツは知らないかもしれないけど、俺は小さい頃にコナツに逢ってたんだよ」
「へぇ……どこでですか?」
胡散臭い、とばかりに呆れながら適当に答えるコナツ。
「よくぞ聞いてくれました!コナツの家の庭って外に面してるでしょ?偶然通りかかった俺はコナツが飛ばしてしまったボールを…」
「へぇ」
相も変わらず呆れた顔で答えるコナツに、ヒュウガはう…と泣きそうな顔になる。
後ろで、やーい、とクロユリが囃したてているのを聞きながら。
「あ、そうだ、ヒュウガ少佐」
突然思い出した、とばかりに声を上げたコナツを見ると、やけに嬉しそうに笑っていた。
「明後日から、少佐のベグライター辞めますから」
「え……?」
「だから、明日からベグライター辞めます」
ニッコリと笑むコナツとは裏腹に、ヒュウガの顔はどんどん青ざめていく。
なんで?どうして?
様々な疑問が頭の中でぐるぐると巡る。
そんなヒュウガの顔を見て、コナツは笑いを堪え切れなくなったようにどっと笑い始めた。
「少佐、嘘ですよ、嘘」
「……あ。ホントかと思って焦ったー。酷いよ、コナツー」
「先に嘘をついたのは少佐じゃないですか。…少佐、嘘っていうのはこうやってつくんですよ」
してやったり、と意地の悪い笑みを見せるコナツに、ヒュウガは子供のようにぷー、と頬を膨らませる。
悔しいなぁ。いつもは俺がコナツを振り回してるのに。
成長したんだな、と寂しいような嬉しいような気持ちになるヒュウガに、突き刺さるコナツの言葉。
「だから、それキモいだけですってば」
…成長、しすぎじゃない…?
20分後、部屋の隅でしゃがみ込んで「の」の字を書き続けるヒュウガを「いい加減にせいっ!」とファイルの角で殴るのも、当然のことだった。
***
Xデーとゆーことで「嘘」をお題に書いてみました。だってXデーらしい企画思いつかなかったんだもん…(´・ω・`)
最近コナツが暴力的(笑)
ファイルの角は痛かろう。
ヒュウガのツッコミが「それ、痛いから!」から「それ、ドメスティックなバイオレンスだから!」に変わるのも時間の問題かと。