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鬼胎(きたい)

失業してから一年も経ち、病状も落ち着いてきたというのに、僕が一向に懶(ものぐさ)をしているものだから、父は箸が転んでも面白くないようだ。
当然の報いであることは承伏(しょうふく)しているのであるが、気が揉める日々である。


然れども、こちらにだって言い分が無い訳ではない。

成程(なるほど)、昨年の様な狂人の言動は鳴りを潜(ひそ)めた。
但(ただ)し、“気が触れる前”に戻ったのであって、健常人になったのではない。

他人に隠し自分を騙し、傍目(はため)には愚鈍で散漫な奴に見えるだろうが、常に緊張を孕みながらの生活を送ってきた頃に返っただけである。


再び独りで藻掻(もが)く日々。
今の憂患は屹度(きっと)、嘗(かっ)てより強い。


話題:メンタル

初便(はつだより)

賀詞(がし)は措(お)いて、新年初めて発信する記事が“病犬(やまいぬ)”である。

幸先(さいさき)が悪いが仕方ない。
年末年始の消息が捗々(はかばか)しくなかったのである。


去年最後の通院さえ出来ない様な有様だった。
現下(げんか)もそうであるが、食事や入浴も厭(いと)う程、疲弊(ひへい)している。
廃人同様である。

臥せると必ず、何者か―或いは自身の手が首元に伸びている様な幻覚を視(み)た。
寝付いたとしても、悪夢に魘(おそ)われる日々が続いていた。

初夢すらそうだった。
社会(そと)に出ても顛(たお)れて立ち上がる事が出来ない。
周囲は助けようもしない。
見ても失望する様な眼をして蔑(さげす)むだけ。
そんな夢だった。 それから同じような夢を毎夜見ている。

寝床に塞(ふさ)いで、この重たく暖かな闇の内に溶け込みたいと何度思ったか。
死を冀(こいねが)う人の気持が理解出来たような気がした。


話題:死にたい

狭霧(さぎり)

一昨日、通院の為外出した。

先回は厳しい秋暑に滅入ったものだったが、3週の間蟄居している間にすっかり秋立った。
天の高さ、空の色、雲の様子、風の風情、また身辺の佇まいに、季節が変化した事を知る。
行き合いの間を籠って過してしまった事を悔やむが遅い。 
殊に雨冷えが身に入(し)みた。 


扨(さて)、
僕の具合だが、秋という折り目に際して、若干悪化したようである。
主治医には「鬱状態」だと告げられた。

内外から影響された様々な葛藤に因るものらしい。 

就職していた頃の病状は好転しつつある様に見える。
しかし、その事に因って新たな問題に直面せざるを得なくなったという事だ。 


それに向き合うか、まだ避けるか、それは僕自身の自由意思によってなされなくてはならないと医者は云う。 


まだ答えは出ない。
決断実行は僕の不得意とするところだ。


話題:鬱

希死念慮

隔週で通院をしていて、本来なら今日が通院日に当たるのだが、担当医の都合で翌週となった。
そんなときに限って、容態が悪化し僕の精神はすっかり衰弱していた。

今迄規則正しく起床していたのが乱れ、なかなか起きられない。
四肢が鉛のように重たく感じられ、動かせない。
そのうち睡魔に襲われ、また起きては同様な事態を何度も繰り返し、日一日(ひいちにち)を殆ど臥せて過ごしていた。

定時の食事の度に起こされるが、悪心(おしん)で食欲が湧かない中渋々食べる。

両親は自由業の為、僕が家族に合わせて生活しないと家事が進まないので仕事に掛れず迷惑なのだと云われた。
そろそろ復職に向けて勉強し始めるようにも促されたりもした。


そうして、いつからだったろう、漠然と「しにたい」と思考するようになっていた。

実際、枕元に脱ぎ捨てたパーカーを首に絞め付けたりしたこともあった。
手元の薬を一遍に飲んでしまおうかと思った時もあった。


今迄にない思想だった。

今になって思うと…今も事態は好転したとは云えないが…僕は一人になりたかったのだと思う。


僕は今度は家族から逃げたいのだ。

いつまで逃げようとするのだろう。
どこでなら僕は適応できると云うのか。


話題:死にたい

現(うつつ)

狂った猫の様な喚叫(きょうかん)を上げて、僕は午睡から醒めた。
シャツの襟は前も後ろもぐっしょりと濡れている。 

まただ。目醒めると大抵この有様だ。 


少しく休んだ後、タオルを取り出し汗を拭(ぬぐ)う。
そうしてからまたマットレスで作った簡易ベッドに沈み込む。 

風に揺蕩(ようとう)する木漏れ日が瞼に当たるのが気に障る。
微かな音にも飛び起き四囲を警戒する。 それ位、病んだ神経は過敏なのだ。 


暫らくして、喉の渇きを自覚した僕は薬缶(やかん)の湯ざましを注(つ)いで呷(あお)るが、眠りの後の口渇は中々引かない。 



僕はまだ病人だ。


話題:昼寝
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