―彼女は「雨」なので何時も濡れている。―
今回は、ほぼ無修正で僕の青春の恥部を晒します。
駄目な人は回れ右。
この小説は、所謂(いわゆる)、エロ小説という範疇に這入(はい)るのでしょうか。
僕が高校生の未だ子供(がき)だった頃に唯一の創作小説です。
童貞臭が溢れ出ています。童貞ではありませんでしたが。
僕はこれより他に小説を書いていません。書く心算(つもり)も、今のところ、ありません。
では、
以下はフィクションです。
この街は今日も雨だった。
実際は僕が家を出るときには降ってはいなかったのだが、電車に乗ってから少しして降り始めた。
目的の駅に着くと、今日の待ち合わせの相手が既に改札口に立っていた。約束の時間には未だ若干の余裕があった。
「三十分程、ここで待っていました。」 と彼女は零した。それは僕が丁度電車に乗った頃だった。
彼女は自分のことを「雨」だと云うので、変わり者として知られていた。
降り始める前に駅に着いていた筈の彼女の髪は濡れていた。
彼女と僕は駅前の小道を歩いた。二人で入るにはこの傘は小さい。
ホテルLEIN(利用者はRAINではないかなど野暮な事は云わない。二人連れの客達は目前の「事」にしか目がいってないのだ。)に着く頃には僕の肩はもうすっかりびしょ濡れだった。彼女も頭から足元まで濡れていた。無論、彼女は「雨」なので何時も濡れている。
照度を抑えた橙色の明かりが上品な感じでホール全体を彩り、期待による甘美な緊張感を醸し出していた。
ナンバーの付いた鍵とエアコンのリモコンを彼女がカウンターで受け取った。
「部屋は三階にあります。私達はエレベーターで三階に上がります」
それらを僕に渡しながら、続けて彼女は云った。
「私の願いが初めて叶うのが、これからです」
下りてきたエレベーターから中年の男女が出てきて、入れ違いに乗った。
三階に着くと、仄暗い廊下で壁に表示された部屋の番号が赤く点滅していたので、僕等がこれから使う部屋だとわかった。
部屋は、奥に続く通路が真っ直ぐあり、奥には綺麗に整えられて未だ何事も起こっていないダブルベッドが見えた。
荷物を置いて直ぐ、彼女は浴室に入った。曇りガラスの向こうに彼女が服を脱ぐのが見えた。
暫らくして水を使う音が聞こえた。
その音を聞きながら、その間に何か飲み物を作ろうと思って立ち上がった。 程無くして浴室のドアが開いて彼女が出てきた。彼女はシャワーを浴びる時間が短かい。
僕がコーヒーを煎れている所に、バスローブを纏った彼女が後ろから腰に腕を絡めてきた。
「君のも煎れるよ」
「いれて」
「今煎れる」
ううん、と彼女はかぶりをふる。
「私に、いれて」
寝台の端に腰を下ろした彼女は、動きを粘らせて着ているものを剥ぎ取った。
僕は立ったままその姿を観察していた。しかし自分が激しい性的興奮の渦中にいる事に気付いた。
僕は気付いた。だからベッドに近づいた。
彼女は「雨」なので何時も濡れている。
僕等は南国のポップスをスピーカーから垂れ流した儘、魚の様な匂いに充ちたベッドで抱き合った。彼女の声が部屋中に響く、僕を打つ、雨の様に、止む事も無く。あ、あ、あ、あ、あ、ああ、ああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
夕方、僕等は駅前で別れた。
彼女の姿は家路を急ぐ人々の群れに紛れ、直ぐ見えなくなった。
暫くして雨は上がった。
その日から彼女は消えた。
彼女は「帰った」のだ。
彼女は「雨」なので何時も―――。
今日もこの街は雨。
【HOTEL LEIN end】
話題:エロ・18禁