*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋8』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第8章です⇒
story.26:『立ち入り禁止』
昼過ぎ------------姫井は、自宅に一度帰宅して猫たちに餌を与えた後、資料を持って警察本署へ向かった。
警察署へ到着すると、姫井はふとある光景を目にして立ち止まる。
そこにはよく知る警察官らが、一人の中年女性を囲い、困った様子で一緒にいるところだった。
姫井:「………。」
女性:「あら!チアキ〜!」
女性は、姫井を見付けるなり駆け足で寄ってきて、いきなり抱き付いてきた。
姫井:「えっ?あ、あの…」
女性:「チアキ、お巡りさんたちがあなたを悪者扱いするのよ!
親である私が何度も否定しても決め付けるの!」
困惑する姫井を無視するかのように、女性は警察官らをキッと睨み付けながら言った。
女性:「とにかく!娘は連れて帰らせて頂きますからね!」
姫井:「お、お母さん!」
姫井は咄嗟に女性を呼ぶと、こう言った。
姫井:「違うのよ。私、悪いことなんかしてないけど、悪いことしてる人を見ただけなの」
女性:「え?そうなの?」
姫井:「うん!これからその時のことをお巡りさんに話すから、待っててくれる?」
姫井は愛想良くそう言うと、女性は大きく頷いて返事をした。
女性:「分かったわ。…お巡りさん、勘違いしちゃってごめんなさいねぇ」
刑事:「い、いえ…」
刑事:「お気になさらず…」
ようやくと言った様子でホッとする警察官らを見て姫井が小さく息を付くと、後ろの方で様子を見ていた石塚が姫井を手招きする。
姫井は石塚のところへサッと行くと、石塚が話し掛けてきた。
石塚:「すまない。我々だけでは何ともいかなかった…」
姫井:「それは構わないんですけど…。……認知症みたいですけど、どうしたんですか?」
姫井がそう尋ねると、石塚は説明してくれた。
石塚:「彼女は、加藤多江子さん。第6の槐・六条薫くんが勤めていた会社の同僚だった加藤智秋さんのお母様だ。」
姫井:「加藤智秋さん、って……薫くんが六角恵梨香に襲われた時に助けた……彼女ですよね。」
姫井はボウッと加藤のことを思い出していると、石塚は突然こう言ってきた。
石塚:「その加藤智秋さん。
水嶋の直感では、槐事件の共犯者の一人である兎の仮面の女である可能性が高いそうだ。」
姫井:「…!?」
姫井はその話を聞いて、動揺しながら石塚に聞いた。
姫井:「直感では…って、ひょっとしたら間違いかもしれないんですよね?」
石塚:「その可能性もある。…が、水嶋の直感が今まで外れたことはほとんどない。信じて、損はないはずだ。」
そう言い切った石塚を、姫井は意味深な表情で見つめた。
昨夜、若月里沙と葉隠真紀の双子姉妹から聞いた話が脳裏に過るからだ。
あの話が事実なら、槐事件と繋がってしまう。
姫井:(そしたら、水嶋は…)
事件を早く解決したい。
けど、真相に近付くということは少なからず誰かが傷付くということなのだ。
姫井:(でも、逃げてられない)
槐事件に、昨夜聞いた話が関係しているならば、事実を公表して解決しなければならない。
姫井:(例え、誰かの人生をズタズタにする結果となっても…)
そうしなければ、長尾実の死も無駄になってしまうから。
それだけは絶対に嫌だ。
姫井は決心したように、こう口を開いた。
姫井:「石塚警部……すみませんでした。」
石塚:「ん?急にどうした。
休んだことなら気にしていないぞ。こうして今、ここにいるんだしな。」
石塚は笑顔でそう言う、が。
姫井:「違うんです」
石塚:「?」
予想外の言葉が返ってきて、石塚は首を傾げながらその先の言葉を待つ。
姫井:「私、見てしまったんです。勝手に…」
姫井はそう言ってから、小さく息を飲み込んでからもう一度、決心したような表情で言った。
姫井:「『廃倉庫未成年少女誘拐殺人事件』の資料を…」
石塚:「……っ…」
その時、石塚の表情が厳しいものに変化した。
姫井は続けて、こう口を開く。
姫井:「石塚警部…。"阿岐名"さんって、どんな刑事だったんですか?」
石塚:「阿岐…名……っ」
明らかに動揺する石塚の様子を、姫井は真剣な表情で見る------------その時だった。
透真:「俺たちの同期だった奴だよ、姫井。」
そんな2人の様子を見ていた沢田透真が、間に入ってきた。
姫井は持っていた資料を胸に充てて、ギュッと抱き締めた。
その姫井が持っていた資料を見て、透真そして、石塚もそれが何の資料なのか気付き出した。
透真:「……何で、資料を見たんだ?いや、お前は刑事だし、見ても構わないんだけどよ」
姫井:「それは…」
姫井は少し躊躇ったが、隠していてもしょうがないので話した。
姫井:「鳥の仮面の男……城之内凛太の事件の時、長尾が殺害された現場で一命を取り止めた男性の話から、阿岐名巡査の名前が出たのよ。」
透真:「初耳だな、その話。何で黙ってた。」
姫井:「別に好きで黙ってたわけじゃないわよ」
姫井はそう言い訳をすると、こう言った。
姫井:「一緒に話を聞いていたはずの水嶋だって阿岐名巡査のことを何も話さなかったから。
きっと、アートロと接触した時に記憶操作されたんだって思って。それに、水嶋が社長室へ向かった時に助かった男性が言ったのよ。『"アイツ"は俺の同期生だったんだ』って。」
透真:「…それだけで、阿岐名と結び付けるか?」
律じゃあるまいし。と言って透真が困ったような顔で息を付くと、姫井は少し考えながら話した。
姫井:「長尾の家の遺品整理に立ち会った時、卒業アルバムがあってご家族の許可もらって見せてもらったら、阿岐名葉月って名前の男性が写ってたのよ…」
姫井は一部嘘を交えながら、話を続ける。
姫井:「長尾の家族から、警察官だって聞いて興味があったから調べたら、『廃倉庫未成年少女誘拐殺人事件』に繋がったの。
でも拳銃が使われて、警官が一人殉職してる事件なのに資料を見たら阿岐名さんの下の名前が載ってなかったり曖昧だったから、猫を理由に自宅でずっと調べていたって訳です」
石塚:「………………。」
透真:「……高柳たちにも言ったが、今は猫の手も借りたいって時だぞ。もちろん、お前の手だって貸してほしい時だ。
今は過去の事件を掘り返している時じゃないだろう」
呆れたような顔をしながら透真が言うと、石塚は浅く頷いた。
石塚:「そうだ。槐事件という悪夢を解決するためには、お前の力も必要だ。今は槐事件に集中してくれ」
姫井:「……分かりました。」
石塚の言葉に、姫井はそう返事をした、が。
姫井:「迷惑が掛からないようにします。
『廃倉庫未成年少女誘拐殺人事件』と阿岐名さんは、長尾が残した槐事件の手掛かりですから。」
透真:「なっ…お前なぁ…」
姫井:「失礼。資料室へ行きますので…」
石塚:「ダメだ。」
資料室へ向かおうとする姫井を、闘志を秘めた冷たい視線が引き止める。
石塚:「姫井。お前はしばらく資料室への出入りを禁ずる。」
姫井:「何故ですか!迷惑は掛けません、絶対に!」
石塚:「上司命令だ。従え!」
珍しく大きな声で厳しく指導する石塚を見て、姫井はハッと思い立った。
姫井はその反応に、ひとつの確信を得た。
やはり『槐事件』と『廃倉庫未成年少女誘拐殺人事件』は根っこから深い秘密が隠されているということに。
------------To be Continued...