*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋8』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第8章です⇒
story.25:『糸口無し』
翌日の昼前後、水嶋ら槐事件捜査本部チームの4人は、千葉の警察病院にいた。
槐事件の記憶を無くした矢神拓斗と、病院のベッドの上で眠り続けている八条大夢(ヒロム)の2人に付き添ったからだ。
同じ病院に、八条夏実も運ばれたが、幸い命に別状は無く、警察の警備態勢の下、個室に入院している。
肝心の2人から話が聞けない状況だと判断した水嶋たちは、拓斗と一緒に来た鮎川大夢(ゲンタ)と共に、拓斗を連れて地元へ帰ることにした。
水嶋:「さぁ、乗って。」
鮎川:「はい」
拓斗:「わざわざ、どうもありがとうございます…」
護送車だと目立ってしまうから、わざと軽自動車に2人を乗せた。
拓斗は、まるで甘えるように鮎川に寄り添って後部座席に座った。
鮎川は少し戸惑いながらも、優しく拓斗の手と自分の手を繋いでいた。
舘巻:「じゃあ、2人のことは俺に任せろ」
舘巻はそう言うと、2人を乗せた軽自動車の運転席ドアを開けて入り込んだ。
水嶋:「よろしくお願いします」
水嶋はそう言うと、軽自動車の後ろに停めてあった鮎川の車に向かった。
車には、既に白波と高柳が前方座席に乗っていたので、水嶋は後部座席に乗り込んだ。
舘巻が運転する軽自動車が発車したのを見計らい、運転席に座っていた白波が運転を始めた。
2台の車が高速道路に突入した頃、ふと高柳は思い出してケータイを取り出した。
どこかに電話を掛けるが、一行に連絡が付かない。
白波:「…翔太さん。誰にお電話ですか?」
運転しながら白波が声を掛けると、高柳はケータイの端末を閉じてから言った。
高柳:「姫井先輩ですよ。
結局、向こうから一本も連絡が来ないまま、第8の槐事件捜査はお開きになったので…」
高柳がそう言うと、白波はこう言った。
白波:「滅多に取らない連休ですもんねぇ…。邪魔されたくないんでしょうか」
水嶋:「…アイツは仕事人間なはずだけどなぁ。もう朝の時点で槐事件に関するニュースは流れてたから、連絡あってもおかしくはないけど…」
水嶋はそう言うと、背もたれに寄り掛かりながら言った。
水嶋:「猫の世話で忙しい……ってか?」
高柳:「猫はそんなに手の掛かる動物じゃないと思いますけど?」
高柳がそう反論すると、水嶋はこう言い返した。
水嶋:「分からないぞ?アイツの家、猫が1匹から4匹に増えたからな。猫は縄張り意識が強いから、猫同士でまだ揉めてるのかも」
高柳:「3匹って、長尾さんが飼ってた猫ちゃんですよね。
突然、ご主人様が違う人に代わったから……それもあるんでしょうかね?」
白波:「ということは、姫井さんって実は結構な心配性なんですねぇ……」
そんな風には見えませんでした。と言う白波の話を聞いて、高柳と水嶋も少し疑問視する。
猫は好きなんだから世話をするのは当たり前だろうけど、あの姫井が余裕を持って接するならともかく、電話に出れないくらい心配するほど、猫たちは修羅場なのか。
なんだか信じられない。
水嶋:「それか、猫の世話なんて言いながら一人旅でも行っちゃったとかかぁ〜?」
高柳:「もしそうだとしたら姫井先輩の刑事としての責任が問われますよ」
白波:「警察官が、嘘を付いたことになりますもんね」
水嶋:「お前ら真面目だなァ」
水嶋はそう言いながら苦笑いを浮かべたが、しばらくすると表情から色を無くす。
姫井のことも確かに気になるが、今回の槐事件もドッと疲れた。
水嶋:(そもそも、2件目の八条大朔さんと頼子さんの殺人事件は、大夢くん一人で行ったとは最初から思っていない…)
あの時点では容疑は無しと判断したけど、恐らく2件目の事件では兎の仮面の女こと、加藤智秋が関係していたに違いない。
でなければ、八条大朔の殺害現状が説明付かないのだ。
水嶋:(スタンガンで攻撃をしてから、大夢くんがどうやって花瓶を頭上から打ち付けることが出来ると言うのか…)
いくら大朔が座った状態になったからって、大夢との身長の差がある以上、難しいだろう。
拓斗が地元に留まっていた以上、やはり加藤智秋が関係していたと考えた方が自然だと思う。
水嶋:(彼女は、今頃どこにいるんだろうか…)
石塚警部に、彼女の母親を保護してもらったことは事実。
今の今まで加藤に関する情報が無いということは、彼女は自分の話を信じて雲隠れしたことになる。
水嶋:(ご主人様という人物のところで匿われているのか、それとも……)
犬の仮面の男こと、伊藤諒紀のところにいるのだろうか。
どちらにせよ、全国に指名手配されることになるだろう。
水嶋:(伊藤財務官に関しては、サッパリだけどな…)
自分があんなに言っても、上の人間は家宅捜索どころか任意同行すら許してくれない。
伊藤のところに、第5の槐こと、西原悠一がいることは先ず間違いないはずなのに。
第5の槐事件の際に、財務省の頭取。つまり伊藤の父親にあの時、第5の槐の名前を口外しないように協力を願い出たことが理由だろうと思う。
今となっては後の祭りだ。
水嶋:(伊藤財務官を追い込めば、槐事件の捜査はもう少し進展するはずなのに…)
今回みたいに大夢のような子供が被疑者になるような悲しい事件も防げたはずなのに。
自分に力がないあまりに一行に解決の兆しが見えてこない。
水嶋:「これじゃあ……偉くなっても、意味ねぇよ……」
高柳:「…………。」
水嶋の独り言は、高柳の耳にだけ聞き取れた。
高柳も思っていた。
槐事件は、水嶋が過去に関わっていた『廃倉庫未成年少女誘拐殺人事件』と関係があるはずなのに。
なぜ、調べてはいけないのだろうか。
なぜ、"福崎善"が関係していたのか。
なぜ、山村若菜は殺害されてしまったのか。
それが槐事件解決の大きなヒントになるはずなのに、なぜ石塚たちは分かってくれないのだろう。
喉に魚の骨が引っ掛かってしまったかのように、行き詰まった事件の捜査状況に高柳や水嶋も、気味の悪い心境に参っていたのだ。
------------To be Continued...