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走り続けて着いた場所(体育委員会)
走って、走って、上手く呼吸が出来ないくらい必死に走って。
前で、少し先を走る先輩の背中を追い、ただ足を動かす。
委員長は、辛うじて後ろ姿が見えるくらい先を走っている。
・・・・が、その委員長の足が、ピタリと止まった。
それに続く他の先輩達も、同じ場所までたどり着くと立ち止まる。
先輩が立ち止まった事を不思議に思い、殆んど無意識に駆けながら、金吾はやっと皆の処へ到着する。
足を止めて最初の呼吸音は、ひゅう、と風のような音だった。
バクバクと騒がしく速い鼓動と、自分の乱れた息が嫌にうるさく聞こえる。
額から滴り落ちる汗を拭っていると、二番目に到着していた四年生の滝夜叉丸が、委員長に尋ねた。
「・・・・七松先輩、どうなさったんですか?」
もう呼吸が整ってきている辺り、流石体育委員会の中でも上級生である。
滝夜叉丸に問われた委員長・・・小平太は、後輩達の方を向いてにかっと笑う。
それから、真っすぐ前方に向き直って、その先を指差した。
「・・・・・ほら、見てみろ!」
言われて、後輩達は委員長の指先に沿って前を見やる。
その彼らの目に映ったのは、一面に広がる花畑。
黄色や赤、橙色と様々な種類の花が所々に咲いている。
「うぉぉぉ・・・っ!」
花畑を見てすぐに、三年生の三之助が歓声を上げた。
二年生の四郎兵衛も、驚きに普段から大きい目を丸々と見開いている。
この場所は、いつもランニング等で使っているルートから少々離れた位置にあるので、あまり訪れない。
なので、崖から見下ろせるこんなに大きな花畑があるという事に今まで気が付かなかった。
「これは・・・・?」
「この前、一人でランニングしている時に見つけたんだ。お前達に見せたくてな!」
滝夜叉丸の言葉に応えるように、再び太陽のような笑顔を向けてくる小平太。
彼の笑顔を見て、自然と後輩達の表情も綻ぶ。
「また、見にこような!」
「はい!!」
「それじゃ、学園に戻るぞ!」
「はい!・・・・・・・・・・・・・・・って、え?」
ノリで元気良く答えたものの、「学園に戻る」という一言に、思わず素っ頓狂な声を発してしまう後輩一同。
「え、もう帰るんですか?」
四郎兵衛の問いも、当然といえば当然である。
まだこの花畑が見える崖に到着して数分と経っていない。
にも拘らず、もう帰ってしまうのは多少勿体ない気がするのだ。
それに、ここに来るまでには物凄い距離を走ってきた。
その、行きと同じ距離の道のりを帰るにはもう少し休憩が必要・・・・というのが、後輩達の本音だった。
しかし、後輩達の心中を知ってか知らずか、小平太はあっけらかんと言う。
「モタモタしてたら晩飯がなくなるぞ!」
「それもそうですけど・・・・・。」
「さぁ、帰るぞー!いけいけどんどーん!!」
「って、七松先輩ぃ!!」
後輩の呼び止める声など耳に入っていないのか、さっさと地を蹴って駆け出す委員長。
残された後輩達が呆然と立ちつくしている間にも、彼の背中はどんどん遠ざかる。
それを見て、はっと逸早く我に返ったのは滝夜叉丸で。
「い・・・いかん!お前達!私達も早く後に続くぞ!!」
「そうしないと、置いていかれる!」と必死の顔で付け足して、自分も走り出す。
となれば、他の三人も「はい!」と頷いて後に続く訳で。
こうして、体育委員は綺麗な花畑を数分と眺めもせずに学園に戻っていくのであった・・・・。
(何とか晩御飯までに帰れました。)
お題提供元様:空は青かった
性 別 | 女性 |
誕生日 | 2月16日 |
地 域 | 神奈川県 |
職 業 | 大学生 |
血液型 | O型 |