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信頼は猫のかたち(むかしむかし3)

私が中学2年生の頃、両親は離婚した。
その頃もう大分長いこと両親は喧嘩ばかりしていた。
週末になって父が帰ってくるのだが、やがて始まる喧嘩の気配を察知すると、いつも最低な気分だった。泣いている妹が可哀想だった。
母は、泣いている妹をみて、「なんで〇〇ちゃんが泣くの?悲しいことなんてないよ」と言っていたが、それは流石に無理がある。と今では分かる。両親が喧嘩していたら、子供は自分が関係なくても泣くほど悲しい。
でも離婚するとは思わなかった。

その頃の記憶が曖昧だが、確か母は既に家を暫く離れていて、久しぶりに私宛に電話をもらった。
家にある書類を持ってきてほしいという話で、近くの空き地にいるので、と言われて私は、書類を持って駆けて行った。

母の頼みだったのでたぶん快く引き受けたのだと思う。母は車の中で待っていて、私の持ってきた書類を受け取ったあと、離婚することにしたと言った。はずだ。
その辺りは記憶が本当に薄ぼんやりしていて、思い出そうとしても時系列がばらばらだったりして当てにならない。この記憶まるごと、夢だったり私の妄想の可能性もある。

でもそれを聞いて私は、中学2年生なりに両親の仲を悪化させないようにいろいろしてきたつもり(今となっては無駄な足掻きだったわけだが)だったが、あ、やっぱり駄目だったんだと思った。
そして何となく、私が持ってきた書類は、離婚届(さすがにそれはないかな)とか、保険の書類とか、何か離婚に不可欠な書類だったのではないか?と思ってしまった。
自明のように、何を思うより先に、これを持って来なければ、私がこの書類を見つけられなければ、両親は離婚しなかったのでは?と思った。

しかし世の中終わるときは終わるものだ。その暫く後に、飼っていた犬が事故で死んでしまったときもそう思ったけど

いや、犬が死ぬのが、両親の離婚より先だっただろうか?自信がない。

むかしむかし2

私はその時小学生で、もう覚えていないが、何か家の手伝いを忘れて怠けていた。
母に手伝いを忘れていることを指摘され、私は謝り、もう2度とこんなことはしないと母に言った。

母は、「謝られても、もうあなたを信用できない。この先このことを忘れたりして、なんとなく流れたとしても、一度信用を失ったということはもう消えないの。」
だから約束はしっかり守りなさい。

母は正しいと思う。約束は守るべきだ。失った信用は取り戻せない。もう一度新しく築くことは出来るかもしれないが、同じものは手に入らない。
私は非常に納得した。それでももう一度謝って、その場は流れた。それ以来、私の心の根底には、「私は母から信用されていないかもしれない」が居座るようになった。

妹に感心されるほど、私と母は仲が良い。でも、母と楽しく話すとき、母と買い物に行くとき、私はふと思うのだ。母は未だに私を信用していないかもしれない。
「もう信用できない」は、言われたから分かる。
しかし「今は信用している」は言われていない。可能性としては、信用されていないということもあり得る。
もちろん頭では分かっている。そんな昔のこと、もう母も覚えていないだろう。
当たり前なくらいには信用されているだろう。
でも、もしそうでなかったら?私の信用した振る舞いを快く思っていなかったら?
事あるごとに、「ああ、この子昔からこういうところあるから」と呆れられていたら?
不安感が拭えない。

関係はないと思っているが、私は誰も信用出来ない。仲が良くても家族でも、ふとした時に「いつかころされる日がくるかも」と思う。
知らないうちに相手の不興を買っているかも。
目下、くまちゃんだけが頼りである。くまちゃんはだいたいいつも微笑んでいる。かわいいな。優しい為に

むかしむかし

母のお腹に妹がいた頃、母は体調が悪く絶対安静の日々が続いた。私はどうしていたかもう覚えていない。しばらくして母は多少体調が回復し、一緒に買い物に行った。母が牛乳を買う、と言ったところ、私は急に駆け出して牛乳のコーナーまで行ってしまい、母はびっくり仰天、危ないから勝手に走っていっては駄目だと言った。

という話を先日、何かの弾みで母から聞いた。
母は笑っていたから、普段大人しくて臆病な私が、急に駆け出していったのがおかしかった(もしかしたら、多少可愛く思ったのかもしれない)のだと思う。
私はこの話の結末の前から、嫌な予感がしていた。もう覚えていないエピソードなのに、結末が来る前に、「なんであれ昔の、子供の時のことだから、もう関係ない。今の私がショックを受ける必要はない」と防御線を張るのを感じた。

そして結末を聞いたとき、自明のように、その時の小さい私が、自分など消えてしまえば良いと朧げながら思ったのを思い出した。思い出したというか、もう一度感じた。
まだ小学校に上がる前の話なので、多分自分にはジサツの概念はなかったと思うが、只でさえ体調が悪い母の迷惑になって、失望させた(実際は軽く叱責されただけだと頭では分かるが)私など、消えてしまえば良いと思ったのだ。

そしてそれから10年以上が経ってから、この話を聞いたにも関わらず、そして予防線を張ったにも関わらず、私は衝撃で口がきけなかった。
小さい私はなんて馬鹿なんだろう。でも心はついていかなくて、大人の私が引っ張っても泣きながらそこから動かない。
お前が私を苦しめているんだよ。おまえなんかきえてしまえ。
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