大輪の花




線香花火の一生。


目まぐるしく表情を変え、
儚く消え行く線香花火。




その燃え方はまるで
人の一生のような十数秒間。




今では希少な存在となった
日本産の線香花火。




線香花火は非常に繊細で、
職人の縒り方、火薬の量、気象条件で
一つ一つ違う表情を見せます。




国産線香花火は火玉が大きく
火花が四段階に変化するのが特徴です。




また、ワインと同様、線香花火も
「熟成」によって味わいが深まります。




時を経た線香花火は、どこか柔らかく、
温かみのある火花を散らします。



私の小さい頃は
線香花火は花火セットの最後にやる
ショボい花火と思っていましたが、
大人になると、こんな綺麗な花火はないな
これだけで良いなと思うようになりました。






線香花火の東西




西の線香花火
〜スボ手牡丹〜

300年変わらない花火の原形です。

現在、国内でこの花火を製造しているのは、
福岡県みやま市にある
筒井時正玩具花火製造所のみと
なっています。

米作りが盛んな関西地方には、藁が豊富にあったため、関西地方を中心に親しまれて来た線香花火が「スボ手牡丹」です。











東の線香花火
〜長手牡丹〜

火薬を紙で包んだ昔懐かしい線香花火です。

米づくりが少なく、紙すきが盛んな関東地方で藁の代用品として紙で火薬を包んで作られたことから、この長手牡丹は関東地方を中心に親しまれ、その後、全国に広がる事になります。





線香花火の表情






点火とともに、命が宿ったかのように酸素を吸い込みながら、どんどん大きくなっていく火の玉。 今にも弾けそうな瞬間は、さながら花を咲かせる前の「蕾」のようです。
元気いっぱいに走る幼少期を思い浮かべます。



牡丹
やがてパチッ、パチッと一つずつ、力強い火花が散り出します。 称して「牡丹」。 迷いながらも一歩一歩進んで行く青年期を彷彿させます。 火花の感覚は、徐々に短く…。



松葉
やがて勢いを増し、「松葉」のように次々と火花が飛び出します。 結婚や出産、子供の成長…優美な火のアーチを眺めていると、不思議と幸せな出来事が重なります。



散り菊
火花が一本、また一本と落ちて行く「ちり菊」。 静かに余生を送る晩年といえます。 赤から黄に変わった火の玉が光を失った瞬間、線香花火の一生は幕を閉じるのです。




写真の線香花火の名前は「花々」
火薬には宮崎産の松煙、紙は福岡県八女市の手すき和紙を使用し、その和紙は草木染めで染色されています。

ちなみに価格は10000円





天然の染料が織りなす美しい色合い。
可憐な花のようなその姿からも分かるように、今もなお進化を見せつつ、その伝統は受け継がれています。



線香花火は日本の侘び寂びを凝縮した
美しい花火です。


今年の夏は線香花火を楽しんでみては
いかがでしょうか





seven




秋の七草とは
無病息災を祈って食する「春の七草」があるように、秋にも七草があります。


春の七草とは違い、秋の七草は食するのではなく、その姿を鑑賞して楽しむものです。





秋の七草は、万葉集に収められている奈良時代の歌人、山上憶良の以下の2首から生まれたとされています。


「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」


「萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」




ひとつめの歌で
「秋の野に咲く草花を数えると7種類ある」
と詠み、


ふたつめの歌では、
その7種類とは「萩(はぎ)、尾花(おばな)、葛(くず)、撫子(なでしこ)、女郎花(おみなえし)、藤袴(ふじばかま)、朝貌(あさがお)」であると詠んでいます。

ただし「朝貌」は、現在では「桔梗(ききょう)」のことであるとされています。





萩(はぎ)は秋を代表する花。
お彼岸にお供えする「おはぎ」の由来にもなっています。





尾花(おばな)は「すすき」のこと。
すすきの穂が動物の尾に似ていることから、
名付けられたと言われています。






葛(くず)は、
古くから日本人の生活に欠かせない植物。
葛の根を乾燥させた「葛根(かっこん)」は漢方薬にも使用されています。たぶん葛根湯。






撫子(なでしこ)は、
美しい日本女性「大和撫子」でもおなじみ。
清楚で可憐な淡紅色の花を咲かせます。





女郎花(おみなえし)も、優雅で美しい花として古くから人々に親しまれています。






藤袴(ふじばかま)は、その香りの良さから、
湯に入れたり洗髪などに使われたほか、
薬草としても活用されてきました。






桔梗(ききょう)は、
その美しさから家紋にも用いられた花。
かつては喉の薬としても使われ、人々の生活に寄り添ってきました。






どれもが魅力的な秋の七草。


「ハギ・キキョウ、クズ・フジバカマ、オミナエシ、オバナ・ナデシコ」の順で、
口ずさむことが覚える秘訣だそうです。




秋は、長雨や気温の変化などで季節が早く進み、
木々や植物も日々表情を変えてゆきます。








和歌に詠まれた
古の秋の風情と日本の美、





秋の月と七草肴に盃を煽るのも風流ですね。
(下戸ですが…)













「雑草という名の草はありません」
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