何か厄介事らしいから、チョット先輩行ってきて!!
篤瓏:…?;
※"掃除屋"求む
やぁ、わたしの名は"M"
コードネームにて失礼
聞くところによると
君は優秀な[暗殺者]らしいな
篤瓏:………
(今回はKでは無いんだな)
今回は君に
重要な仕事を頼みたい
やり方は君の自由だ
だが失敗は許されない
頼むぞ!
篤瓏:………
では、さっそく最初の依頼だ
ターゲットは
某大企業の重役だ
ただし、警備は厳重で
武器の持ち込みは不可能
唯一持ち込める武器は
この[とうふ]だ
篤瓏:………(…とうふ…?;)
種類は"木綿"で殺傷力は
決して高くはない
さあ、腕の見せどころだぞ
篤瓏:……!…
(まさか…この何の変哲も無い食品用木綿豆腐を…使え、と…?;)
まず君は、この木綿豆腐で
どうやってターゲットを
仕留める?
篤瓏:「…まずは、相手を【木綿豆腐を置いた部屋へ誘導】する
…そして【木綿豆腐】を【囮にターゲットの気を逸らし】、
すかさず【気配を抑えて背後を取った後…一気に首を折る…】!
(…で…良いんだろうか…?)
M:「なるほど、
なかなかいいプランだ…が!
武装した警備員が来たら
どうするつもりだ?」
篤瓏:「【…抹殺】する…
豆腐の持つ【硬さからの崩れ易さ】を利用し
警備員を【視界不良に】する…」
(…と言うか…コレを“良いプラン”として果して良い…の、か?)
M:「なるほど…
完璧だな…さすがだ
で?脱出はどうする?」
篤瓏:「…決まってるだろう?
【…降下…飛び降りを】する他に手はない…
途中【…と言うか…高度】が気掛かりだが
最悪【口寄せ】を使えば
【落下速度を調節】出来るハズだ…!」
(…完璧……なんだろうか…?)
M:「す、すばらしい…
さすがは"プロ"だな…
ではそんな感じで行こう
作戦成功の報告を
待っているぞ!」
篤瓏:………
(残された木綿豆腐を回収し、退席)
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エムブロ!バトン倉庫
mblg.tv
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流石の掃除屋でも厳しいんじゃないか?
…と言うか大体こんな感じ…?
辺りは闇と街明かりの交差する夜。
ターゲットが勤める高層ビルの屋上に一つの影が音無く舞い降りた…。
無駄な装飾無く、動き易さに配慮された装いを纏い、彼は一度だけ唯一の武器をケース越しに確認する。
指先に、微かだが冷たさを感じた…。
先ず、下層に有る重役室-ターゲットの執務室だ-に素早くこの武器を仕掛けなければならない。
仕掛けが無くても事は成せそうだが、依頼人たっての希望ならば、それに添うべきなのだろう。
間もなく、ターゲットが誘導指定通りに部屋へと来るだろう。
クイッ、と首に巻かれた蒼布を引き上げ、顔の半分を覆う。
…時間だ…。
「…大宮篤瓏……推して参る…」
呟きが風にさらわれるより先に、影は姿を消したー…。
―――――――――――――――――――
予定通り、ターゲットは一人で室内へ入って来た。
そして、普段なら絶対に存在しないであろう“ソレ”に気を惹かれている。
最初は訝しげに。
次第に歩みを進め、目前に置かれている一物を凝視しだした。
好機である。音を立てぬ様に天板をずらし、ターゲットの真後ろを取る。
ヒラリ、と着地した気配にターゲットが気付いたのか振り返ろうと身をよじるより先に、鼻と口を右手で塞いだ。
驚き、咄嗟に手を払い除け様とターゲットの手が右腕を掴む。
が、振り払われるより早く左腕で首を固定し、そのまま力を込めて顔を捻る。
ゴキンッ!!
鈍い音の後に力の抜けた四肢を床に落とす。
絶命を確認。
耳に足音が聞こえて来る、定時巡回の時刻に間に合わ無かった様だ…。
(…調度良い器を探すのに時間を取り過ぎた、な…)
白い塊を一瞥し、段取りの悪さを多少悔やむ。
(…まぁ…モノが特殊では有ったが…)
普段食事に使う代物である、無理も無い。
思考を切り替えて臨戦体制を取る。
極力姿勢を落し、四肢を何時でも動かせる様に構えた。
ガチャ…ッ
扉が開かれる、相手は武装した2人組。
完全に扉が開放される前に、素早く構えていた右手で得物を持ち、手前の人物に投げ付ける。
グチャッ!と顔面に付着した異物に相手が怯んだ好きに、両足に溜めていたバネを解放、一気に間合いを詰めて腹部に重い一撃を叩き込む。緩慢に動作が見えた。
ゆっくりと、顔から白い固体を零しながら倒れる相手の武装から手早く刃物を抜き取り二人目の喉を裂き、距離を取る。
鮮血が飛び散るが、まだ生きている様だ。
恐怖と動揺から見開かれた目が彼を捉え、口角から赤い筋を流しながら銃口が向けられる。
一撃目で取った距離から、構えた刃物を投擲。
微かな風切り音を立てた凶器は狙い澄ました喉笛に噛み付いた。
声亡き絶叫と共に銃が暴発される、標的なき弾丸を交わしながら窓側へ移行。
暫くして、二人目も絶命した様子で床に伏す。
銃声を聞き付けた他者達の気配が近付く。
(…長居は無用だ…)
高層階の窓を開き、ヒラリと躊躇無く身を投げる。
緩慢に感じていた速度は通常感覚を取り戻していた。
目まぐるしい速度で街明かりが流れ、風が轟音を響かせる。
その音に紛れて、僅かに、高く遠く、指笛が鳴った…。
―――――――――――――――――――
風の轟音は止み、代わりに羽音が耳朶を打つ。
ふわり、対岸の建物の屋根へ足を降ろす。
呼び出した人の大きさぐらい有りそうな大鳥は主の命を受け夜の闇へ紛れ去った。
「……鴇緒…」
視線すら向けずに声を掛ければ、何だ?と返答が返って来る。
「……来なくても良いと言った筈だが…?…」
「え?そうだっけ?
嘘々、聞いてたよ。でも気になっちゃってさ?
だって“あんな物”で仕事出来るとは思わないじゃ無いか」
惚けた調子から気さくに軽口が流れるのを、黙して耳を傾ける。
「ホラ、ボクが一応残務処理とかすべきかな、ってね?
いや、篤瓏が仕留め損なうとは思っては居ないけどさ」
相手の話が進む間に例の建物も騒がしさを見せ始めた様子だった。
「…戻るぞ…」
隠し布を下ろし、身を翻す。
「っと、了解!」
ざわめき出す街並から、影は幻の様に掻き消えていたー…。
―――――――――――――――――――
え、マジでやって来たの!?
豆腐で!!?;
篤瓏:………
(報告書差し出しながら頷き)
色々無理が有ると思うんだ…うん;
(土下座←)