「腐った卵に性を与えても、形にはならんな」

「…何が言いたい…」

「お前のソレは、お前なのか?」

べっとりとソレに濡れてしまった手に視線を向ける。

「…完全な俺では無い…」

興味無く、一瞥したソレを拭うのも面倒だった。

「ならば、ソレは誰だ?」

「…」

押し問答など…退屈なだけだ。

「ソレは誰だ?俺か??」

「…そんな訳無い…」

上気した頭は上手い台詞すら紡げない様だ。

汗ばんだ肌を、冷たい指がなぞる。

「お前は何を孕んで居る?」

「…」

産み出す事など出来ない俺に、ソレを体外に出す術が無い事ぐらい、知っているだろう…。

喘ぐ俺を視る眼は、好きも嫌いも無い輝き。

「俺に、委ねるか?」

囁く声は麻痺した脳内に染み渡る。

嗚呼、いっそもう…

「楽になりたいだろう?」

そうだ、寧ろ逝ってしまいたい位だ。

だが、それを俺は許せない…。

そのうち心が壊れるのかも知れないな。

果てたら、どうなるかなんて妄想しない。

まどろむ眼に映ったのは…歪んだ笑みすら消えた、お前の顔だった…。


「オイオイ、冗談だろう…?」

そんな言葉も、もう、虚いだ…。