涙雨にしては激し過ぎるし、冷た過ぎる雨は、朝には白い雪に変わっていた…。
2人で掃除した家に、は温もりも無く静寂だけが染み渡る。
君が持って行ったモノは、
知識、記憶、僅かな服に宝物達…勿論、お菓子(特に薄荷糖)も渡してあげた。
去り際に、君が残したのは、
思い出と「さよなら」だった。
俺は身支度を整えてから唯一の相棒を携え、外に出る。
初雪に近い感覚と冷たさ。
白い息を吐いて、戸に施錠する。
君とは違う、家族の証を少し上げて寒さを凌ぐ。
色んな事があった…。
晴れた夕焼けに逢った君。
見付けた沢山の宝物と、温かい町。
この世界も、変わらず幸せであって欲しいと思う。
雪が降る、積もる前に行かなくては…。
ふと、目を遣ると猫が居た。
薄く笑って、告げる…。
「さよなら」
雪に消されて、埋もれて忘れるだろう。
俺は歩き出す、止まらない、止まれない。
何度言っても寂しさが遺る言霊は、白い煙りとなって霧散した。
次の世界はどんな世界だろう?
何時かまた、君と逢えるだろうか?
静かな雪に紛れて、そうしてまた、魂は姿を消した…。