少し歳上の友人が娘さん一家との同居にふみきり、年始早々に引っ越しをした。
 熟年離婚を数年前にしてから、彼女は仕事もがんばり広い2DKのマンションで一人暮らしをしていた。
 仕事熱心な介護士の彼女は夜勤もこなし、仕事の合間には娘さんからの依頼を黙って引き受け、孫の面倒をせっせとする。娘さん夫婦は孫の面倒をみてくれたら、夫婦で仕事をもっと頑張れるし、戸建を購入する機会に一緒に住もう、と去年彼女にもちかけてきた。
 同居になれば彼女の部屋は6畳一間だけ。しかも、毎月ローンがあるから、家賃や食費を入れるのが当然と言われているという。
 私をはじめ親しい友人は口を揃えて同居に反対した。
まだ元気に働けるのだから、今まで通り仕事の合間に孫の面倒を見ればいい。家賃だと?あなたから同居をお願いしたわけじゃないのに!と友人一同息を荒くした。
 でも、彼女は娘さんや可愛いお孫ちゃんのことを思うと同居を選択するしかない性格なのだ。
 今回の引っ越しは彼女が今まで生活を共にしてきた家具や食器、生活用品をかなり切り捨てなければならない、つらい準備になった。年末にはコロナに罹患し、そのおかげで?仕事が休みになり、引っ越し準備が少しはかどったが、娘さん夫婦は全く手伝わず、結局彼女ひとりで断捨離を完結した。
 捨てるには勿体無いものがまだまだある。
使えるものがあれば引き取ってほしいといわれたので、私は主人にお願いして二日にわたり、彼女からのリサイクル品を引き取ってきた。
 はじめて彼女の部屋に入ったが、彼女らしく几帳面に古い家具も食器も調理器具もきっちり生活していた感が伝わってきた。
 荷造り中に涙が出てきて、と何回も言っていた。
なかには、今の私には手が出ない高級メーカーのコーヒーカップセットもある。ほぼ新品だ。
 客もあまり来ないんやから売ったらええやん、と主人に言われた。 
 我が家も引っ越し直後のように荷物だらけになってしまったが、使えるものは、うちを整理してできるだけ利用したいと思っている。
 入りきらないもの、使わないけど売れそうなものはメルカリ出品か、セカストにでも持って行って。
 いくらかお金になったら、おいしいランチを食べに行こうねと、彼女には伝えてある。 
 リビングに引き取ってきたラタンの引き出しを置いてみた。我が家へようこそ!これからどうぞよろしくね。
写真はラタンの引き出しと、新品のショッピングカート。調理器具もいただきました。