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屍蛮で10cmバトンSSS!











「10cmバトン」


10cmバトン

お題→10cmの○○
※○○の部分に好きなキャラや人を入れてください。

指定→屍さま(笑)


1.目覚めた時「10cmの赤屍」があなたの顔を覗き込んでいました。どうしますか?




「……これは夢か、ああそうだな。夢に違いねぇ……分裂とか分裂とか分裂とかやっちまう奴だけど、流石に小さくはなんねぇだろ?なんねぇよな?何ねぇって言えよ、オイ!」
「やれやれ……現実を知りましょうね、美堂クン?」



現実逃避しても、何も始まりませんよ?

何故か小さくなってしまった当事者より、その実害を目の当たりにした蛮の方が焦っていたりする。
何とも、おかしなものだ。



「夢じゃ……ねぇのか?」
「ええ、残念ながらですね」



ちょこんとシーツの上にいつもの格好でいる赤屍を、蛮は物珍しげに見つめる。
何て言ったって、赤屍が10cmなのだ。
これを物珍しがるなという方がおかしい。
というか、どうかしている。
蛮は、赤屍にそっと指を伸ばした。
その指に赤屍が触れる。



「なぁ赤屍。何か変なもんでも食ったか?」
「ふぅ……私は貴方ではありませんよ?」
「……だよなぁ?」



自分達のように、食うに困る男ではない。
だとしたら……。



「……呪いか?」



考えて出した答えはそれだった。
それしか思い付かなかったともいうが。



「呪い、ですか?」
「ああ、だって後はそんくらいしか……っ」



小さな赤屍が首を傾けて蛮を見上げてくる。



(っ、ちょっと待てくれ!オレ、今、物凄くドキドキしてるんだけどっなんで?!)



何でも何も。
こう見えても蛮は、可愛い物好きなのだ。
テディベアもそうだが、自覚あると自覚なしに幅広く可愛いものが好きだったりする。
赤屍の変わり果てた姿を眺め見やって、改めて自分の趣味を実感した蛮だった。



「戻れなくても心配すんなよ……小さな赤屍もオレは好きだからな」
「どうしたんです、急に?」



意味が分からないと赤屍が眉間をしかめても、蛮はその理由を答えなかった。




2.「10cmの赤屍」をあなたは飼いますか?




「取り敢えず、どうすっかな?」



呪いなのか、そうでないのかはひとまず横に置いといて。
仕事はこの調子では出来ないだろう。
まさか、10cmの赤屍に仕事できるはずが……ないよな?
ちょっとだけ、そこで言い切ることが出来ない蛮だった。



「赤屍、仕事は?」



どうするんだと問い掛けて、蛮は赤屍を見る。



「運の良いことにありませんね」
「そりゃ良かったな?」
「まったくですね」



平然としている割りには、少し苛立っているのか。
口調に刺が見える。
やはり、こんな赤屍は珍しくて蛮としてはすぐ戻るなら暫くこのままで良いくらいだった。



(まぁ起きたら小さくなってんだからよ、それも無理はねぇか)



オレは小さい赤屍も好きだけどな。
そんな考えを巡らせていた蛮だったが、実際は違う。
違うどころか、



(こう小さいと不便ですね、触れることもままならないとは……)



赤屍はチラリと意識を飛ばしている蛮を見上げた。
小さいとこんな些細な所作にも、違和感を感じて仕方がない。



(こうしてはいられませんね。早く戻る術を見つけなくては)
(うん、やっぱり可愛いよなー……)



相手を思いやっているようで全くいない、そんな二人は、お互いの視線が絡みあったことで微笑みを交わし合うのだった。




3.「10cmの赤屍」がお腹が空いたと主張しています。あなたは何を与えますか?




「なぁお腹空かねぇか?」
「そんな時間ですか?」
「ああ」



時計を見れば、昼を過ぎている。
二人とも朝を食べる人間でないから朝は抜いても良い。
だが、昼を抜くのは流石に不味いだろうと蛮は何か軽いものを作ることにした。
だが、そこで問題は赤屍の食事だ。
10cmの赤屍にはどのようなご飯がいいのか。
悩みどころだった。



「うーん……無難なところでリゾットとかでいいか?」
「……ですね」



具を小さく切り刻んで食べやすくしたら、大丈夫だろうと蛮は早速行動に掛かる。



「ちょっとだけ、待っててくれな?」



すぐ作ってくるからと言い置いたように、蛮ならすぐに作ってくるだろう。



「………」



いやに機嫌の良い蛮の後ろ姿に、赤屍は人知れず溜め息を零した。




4.「10cmの赤屍」がトイレに行きたがっています。どうしますか?




「オイ……何処に行くんだよ?」



食事を終えてのんびりとしていたところだった。
蛮は、ソファーに寝転んで雑誌を捲り。
赤屍は、その近くでぼんやり蛮を眺めていた。
10cmになった特権を活かしてといいたいところだが、ただ単にすることがなかったからである。



「……トイレですよ」
「一人で行けるか?」
「………」



一々、子供ではないのですよと赤屍は言い掛けて、子供より厄介な姿の己を思い出した。
それから、赤屍は何度目かの溜め息をついた。



「大丈夫ですよ」



きっとね、とは心の中の声だ。
でも、蛮は引き下がらなかった。



「でもよ、心配だから着いてく」



ドアだって、今のお前じゃ開けられないだろ?

甲斐がいしい蛮は赤屍をひょいと掴むと、スタスタとトイレへと足を進める。



「………」



蛮の掌に抱えられトイレへと向かっている赤屍は、無言のままとにかく早く元の姿に戻らなくてはとずっとそればかりを考え続けていた。




5.「10cmの赤屍」が風呂に入りたがっています。どうしますか?




「確かに……私はお風呂に入りたいと言いましたがね、美堂クン?」



それは一人で入りたいと言ったのであって。
嬉しそうにしている貴方の前でストリップする気は更々ないのですが?

嫌味も何のその、蛮は赤屍に笑って。



「だから、オレが髪洗ってやるって」
「結構です」



にべものない赤屍の返事に、蛮はやはりめげない。



「そんじゃ身体!」
「余計なお世話ですから私のことは放って置いてください」



いつもなら蛮が嫌がっても洗って貰いたがるのに今日は駄目だという。
理由は分かる気がするが、そんな態度はないのではないか。
そこまで厭われると、流石にそれ以上は何も言えなくなり、しゅんとなって蛮は後ろを向いた。
赤屍に顔を見られたくなかったからだ。



「そうかよ……お前は嫌がっていたのにお節介して悪かったな」
「……美堂クン」



蛮は心配してくれていたのに、無下な態度で少し大人げなかったかと赤屍が折れた。



「すみませんでした、美堂クン」
「怒ってねぇのかよ」
「ええ、始めから怒ってはいませんでしたよ?」



ただ、苛立っていただけなのだ、赤屍は。



「許して貰えますか?」
「お前が怒ってねぇなら」
「では、洗っていただけますか?」
「……いいのかよ?」
「ええ」



静かに諦めの溜め息をついた赤屍に、蛮は確認を込めて再度問う。
勿論、赤屍には背を向けたままでだ。

反対側で、舌を出していた蛮に赤屍は気付かなかった。




6.「10cmの赤屍」と初デート!どこにつれて行きますか?




「出掛けるっていっても、限られてるよな?」



何処へ行く?

外に行くのは良いが敵が多いので、普段の赤屍なら心配などしないが。
この姿の赤屍では、心配しないわけにはいかなかった。



「大丈夫ですよ」



定位置を決めるのに四苦八苦していたが、赤屍は蛮の肩に落ち着いたようだ。
器用に腰掛けている。
よく落ちないものだと蛮は感心していた。



「お前って結構、楽観主義だよなぁ?」
「いいえ、腹を括っただけですよ?」
「?」



蛮の肩で10cmの赤屍は笑う。



(戻る時は戻るでしょうからね)



ただ、戻った暁には蛮には覚悟して貰わないといけない。
それなりに、今回のことで赤屍は傷ついたのだ。
そう色々と。



「そんじゃ、買いモンに行くか?」
「そうですね」



何処へだっていいのだ。
二人で行く場所なら。




7.最後の質問!「10cmの赤屍」がいたらあなたはどう思いますか?




「小さい赤屍がマジでいたら……?」



そうだな……と蛮は考える。



「一緒に寝るだろ?一緒に風呂に入るだろ?一緒に……」



蛮は気付いてないようだが、小さくなくてもそれはいつもしていることである。



「それからな、」
「……何をしているんですか、そのようなところで美堂クン?」
「お、呼んでるからオレはもう行くな?」



……最後に聞いておくことがあるんですが。
そういうと、蛮はああと笑って見せた。



「小さい赤屍もいいけどな、やっぱりいつものアイツがいいんじゃねぇの?」



なるほど……ありがとうございました。
礼を言ったら片手をヒラヒラ振って、蛮はこっちも楽しかったぜと去っていった。



「……結局、ラブラブなのよねぇ」



アンケート用紙をペシッと指で弾いた。
これに尽きる。




アンケートしていたっていうオチ。分かりにくい…!!
蛮ちゃんの妄想ともいう(笑)




8.妄想させたい友達5人!



フリー




エムブロ





朝、おはようを言う前に(銀蛮)












「……あ?」



もう、朝なのかよ?

唐突の目覚めにそう思って、手探りで枕元に置いておいた時計をひったくる勢いで掴みとる。
そして、眠たい目で布団の中から時計を見てみれば……時刻は。



(ふざけんなー……まだ六時かよっ)



まだ朝早い時刻にも拘らず目を覚ましてしまった蛮は、一つの布団で一緒に寝ている相手に視線をやった。
実に気持ち良さそうに寝ている。
そうなると、隣りでグースカとそれは気持ち良さそうに眠っている男が、何故だか無性に腹立たしくなってしまい、自分の身体を覆うように巻き付いて離れないその腕に問答無用とばかり噛みついてやった。
そう、ガブリと。



「ふがっ……ふぐっ」



すると、変な声を漏らして銀次が唸り声を出し足をバタバタとさせる。
その様子に蛮は一人忍び笑いを漏らし。



(けっ、ざまーみろ!)



オレ様がもう起きてんのに、テメェだけが寝てんのは許せねぇんだよ…!

心の中で叫んで、蛮は銀次の腕にまた歯を立て噛みつく。
何とも理不尽な言い分である。
そういうわけで、暫く蛮は銀次の腕に噛み付いては、痛みに呻く銀次を堪能していたのだが……。
しかし、銀次はそこまでされても起きる気配を見せることはなく。



(ちっ、つまんねぇの!)



段々、飽きてきてしまった蛮である。
どうやら噛み付かれた痛みはあるようなのだが、寝汚い銀次はなかなか起きてくれはしない。
溜め息をついて、蛮は銀次に噛み付くのを諦めた。
というより、恥ずかしさが徐々に込み上げてきたのだ。



(朝から何をやってるんだか、オレ様は……)



ちょっとした自己嫌悪が襲ってきて、一つしかない布団の中に潜り込もうとした……その時だ。
ふと、安アパートの窓から差し込む陽が銀次の髪を輝かせていた。
その光り輝く金に、思わず手を伸ばしてクシャリと撫でてみる。



(おー…やわらけー)



そういえば……と蛮は思い出す。
よく銀次は蛮の髪を触りたがり、蛮は適当にあしらいながらも、最後には銀次の好きなようにさせていたことを。
ベタベタと触られたことならある蛮だが、銀次の髪をここまでじっくりと触ったことはなかった。
結構、触り心地の良い髪質をしていることに満足して蛮は唇に笑みを刻む。



「まぁ、オレ様の髪には劣るけどな」



そうやって銀次の髪をいじくって遊んでいる内に、何処かへと行っていた眠気が戻ってきたようで。
これなら、もう一度寝れそうだと大きな欠伸をして、だが寝る前にこれを……と、眠りに落ちようとする瞼を必死に蛮は堪え。
何とか銀次に手を伸ばし、銀次の頭を抱え込むように抱き締めた蛮は、そこで漸く瞳を閉ざすことを自分に許した。



(抱き枕が……ねぇ……と…な……)



朝焼けの赤い陽が、金髪の銀次の髪を更に黄金(こがね)にして透き通らせていた。





















「……蛮ちゃんー?」



寝ちゃったかな?と様子を窺いながらモゾモゾと動き出したのは、先程蛮になかなか起きないといって悪戯されていた銀次だった。
実は、腕を噛まれた時に既に目を覚ましていた銀次である。



「っ……蛮ちゃんってば、もう!何、この人!ちょっと朝から何、可愛いことしてくれちゃってんの?!」



オレ、我慢するの大変だったんだからね!

腕に噛みつく蛮に銀次は忍耐力を総動員させて、襲いたくなるのを我慢していたのだ。



(昨日の今日だから、流石にそれはマズいかなって)



蛮の胸元に銀次は顔を埋めている状態のまま、上目遣いで蛮の寝顔を見る。
二度寝に入った蛮がなかなか起きないことを知っている銀次は、多少身を動かしても平気だった。
だが、極力動きを押さえて蛮の腕の中で銀次はじっとしていた。
身体を包む温もりがとても気持ち良くて、滅多にないこの状況が勿体ないと思ったからだ。
普段は銀次が蛮を抱き抱えるようにして寝ているからか、それはいつもと逆で銀次には新鮮に映った。



「でも……目を覚ましたら覚悟しててね、蛮ちゃん」



腕に噛み付いて好き勝手してくれたお礼を、タップリ蛮ちゃんに払って貰うからね?

クスクスと笑って、銀次は蛮のはだけた胸元に残る淡い跡に唇を寄せて囁いた。



「悪戯は三倍返しだよ、蛮ちゃん?」










お題:朝焼けに輝いた金髪が透き通る



お題に添えてなーい(笑)




魔法のキス(屍猫蛮)












「なぁ、蔵人ー……まだ出来ないのぉ?」
「ええ、まだ何ですよ」
「えーオレ、早く食べたいー!」
「もうすぐ出来ますから……あと少しだけ、大人しく待っていてくださいね?」



良い子にしてたらすぐに出来ますから、と。
キッチンから赤屍が笑みを蛮に送る。
だが、それを聞き入れるどころかダイニングテーブルをバンバンと叩き、子猫は足をバタつかせてお腹が空いたと連呼していた。
そんな落ち着きのない愛猫の姿に、肩を竦めて仕方がない子猫ですね……と思いながらも更に笑みを深める。
何をしていても可愛いと思ってしまうのは、飼い主としてのアレだ。
溺愛ゆえの盲目的愛情だ。
それが、お腹が空いたと合唱している子猫を、このままずっと見ていたいとさえ思わせる。
だがそれも、お腹を空かせて待っている子猫に泣かれてしまえば意味がない。
赤屍は愛猫が気に掛かりながらも早く作ってしまわなければと、休めていた調理の手を再開させるべく素早く意識を切り換えた。



(これは、早く作ってしまわなければいけませんね?)



お腹を空かせた蛮が本格的に暴れ出す前にと、赤屍は素早く鍋に火をつけた。
何を作るのか、大体の献立は決まっている。
正月の日の朝らしく、お雑煮だ。
それは、蛮がどうしても食べたいと赤屍にねだったもの。
可愛いおねだりだった。
正月だからといって別に食べる必要は何処にもないと思っていた赤屍に、では作ってみましょうか?という気を起こさせるもので。
でなければ、わざわざ作る気はなかった。



(果たして、美味く出来上がるのでしょうかね?)



火を吹く鍋を気に掛けながら出来上るまでの間、赤屍は雑煮以外の調理に取り掛かるのだった。



























赤屍が調理を終えてダイニングへ戻ってくると、蛮はテーブルと仲良くなっていた。
テーブルに顎を乗せ、手足を宙にブラブラさせている。
尻尾も、へたれていて元気がない。
そんなに、お腹が空いていたのか?
思わず、笑い出してしまいそうになる格好に、赤屍はニコニコと相好を崩す。



「おや、蛮……寝てるんですか?お待ちかねの物が出来上がったんですが」



いらないのですか?

お盆に乗せた雑煮をテーブルの上に置くと、赤屍は蛮の耳元で囁く。
その瞬間、死んだように瞳を閉じてうなだれていた蛮が、上体をガバッと起こして飛び上がった。



「出来たの?!」
「クスクス……ええ」



ほら、出来ているでしょう?と赤屍が蛮へと雑煮を差し出すと、瞳を輝かせて蛮が顔を近付けて雑煮に魅入った。
クンクンと鼻で匂いを嗅いでいる。



「わー……本当に雑煮だ!」



そこまで喜ばれるとかえって面映ゆい。
作った側からして見れば、ただの雑煮である。
それをそんなに喜んで貰えると、こちらとしても作った甲斐があったというものだ。



「なぁー蔵人……食べていい?」



窺いを立てる蛮に、赤屍は首を縦に振って答える。



「どうぞ?」



蛮の為に作ったのだからと、赤屍は蛮に箸を持たせてやる。
すると、耳をピクピクとさせてありがとうと蛮は笑った。



「いただきまーす!」



礼儀正しく手を合わせ、器用に箸を使って餅を口の中へと運ぶ。
そんな蛮の姿を視界の端に入れながら、赤屍も席に着き箸に手を掛けた。
そして、蛮を見る。
そこには、蛮の笑顔が溢れているかと思いきや……。



「ぁにゃぁッ?!」



泣き出す一歩手前の声のような悲鳴を上げて、箸を放り投げる蛮の姿があった。



「蛮!?」



驚いた赤屍は椅子から立ち上がって、蛮へと駆け寄る。



「あひゅいッ!」



どうやら舌を火傷してしまったらしい。
ひーひー言いながら舌を出して、ヒリヒリする痛みに耐えている。



「ああ、すみません。貴方が猫舌なのを忘れていましたね」



冷ましておかなければならなかったのを、どうやら失念していたらしい。
口を開けてごらんなさいと赤屍が促すと、素直に蛮は口を開いてきた。
あーん、と開いた口の中を赤屍が覗くと、舌と口内が確かに赤くなっている。



「ああ……赤くなってますね」
「ぐぅっ」



舌がヒリヒリするのか、しきりに蛮は唸っている。
尻尾をパタパタとぱたつかせて忙しない。
興奮しているのか、なかなか治まらない蛮を赤屍は宥めに掛かった。
痛くないですかと赤屍が聞くと、蛮は痛い……と呟き首を縦に振る。



「いひゃいよぉ……」



涙目の蛮の眉が八の字になってしまっている。
そんな蛮の頬を包んで、赤屍は唇を蛮の唇に押しつけた。



「早く治るようにおまじないですよ?」



そう言って、赤くなっている蛮の舌を赤屍の舌が絡めとり、舌で撫でていく。
痛みが早く、引くようにと。



「ふあっ……にゃぁっ!」



オマケとばかりに最後にチュッと唇に吸い付けば、あんなに落ち着かなかった子猫は大人しくなっていた。



「どうですか?まだ痛いですか?」



蛮の濡れた唇を拭ってやりながら、赤屍が問い掛ける。
すると、子猫は……アレ?という顔をしてみせた。



「んにゃ……あれ?」



口元を掌で押さえて、蛮が不思議そうな顔をして戸惑っていた。
そして、赤屍をそっと見る。



「……なん、で?」



痛くないかも?と、目を丸くして見上げてくる蛮に赤屍は微笑んだ。



「貴方にしか効かない魔法ですよ?」
「まほー…?」
「ええ」



そう、これはとっておきの魔法。
私以外としても効かないですから、決してしてはいけませんよ?

意味が分かってるのか、分かっていないのか要領の得ない蛮が、だが、しきりに頷く。
コクコク、と。



「蔵人って……スゴいなぁ」



何でも出来るんだ……と瞬きを繰り返して凄いなぁと笑った蛮に、赤屍も嬉しそうな笑みを返して冷めてきた雑煮を蛮へ勧めるのだった。










END

去年一昨年……もっと前の奴(笑)
漁ってたら出てきた…!!
ので、コッソリUP(笑)
くだらないくらいの駄文ですね。



それは、嵐の前の静けさで(屍蛮)












海風が吹き付ける度、頬にヒリリとした感覚を与える。
夜の海辺はとても静かだった。
そして、冷たかった。
それを、直に肌で感じ取って海から吹き付ける風に踊る髪を押さえ付けながら、蛮は傍らの男を窺い見る。



「なぁ……お前そんな服装で寒くねぇの?」



男の姿はいつもと変わらずに、蛮の瞳には見るからに寒く映る。
マフラーくらいしてくれれば、まだそれもマシだろうが。
それすらも、ない。
黒いコートとトレードマークの帽子といったいつもの格好で、男は冬の海辺に佇んでいた。



「ええ、寒くはないですよ?」



苦笑を刻み受け答える赤屍に、そうかよと蛮も曖昧に笑うしかなかった。

大晦日の夜。
わざわざ冬の海にまで足を運んでやってきたのには、大して理由はなかったりする。
理由をどうしてもあげるなら、海が無性に見たかった。
今見ておかなければと何かに急かされるように、男を誘い海へとやってきた。
ただ、それだけだった。



「もしかして、夜明けまで此処にいるつもりですか?」
「んー……嫌、か?」



本気で夜明けまでいるつもりはなかったが、それを男には黙っておいた。
逆に問い掛けて、夜明けまでをねだる。
だが、赤屍はそのことについて触れてこなかった。



「寒くはありませんか?」
「テメェこそ、な」



寒さなど、苦にならない。
何よりも、此処にいたい気持ちが寒さを感じさせない。
だから、心配は無用だと寒さを気に掛ける男にヒラヒラと手首を振ってみせる。
すると、赤屍は仕方がない人だと、蛮に肩を竦めてみせた。



「やっぱ、冬の海が一番いいよな……お前もそう思うだろ?」
「そう、ですね」



春の海は、穏やか過ぎて何だか自分に合わない。
夏の海は、ギラギラした感じがあまり好きになれなかった。
秋の海は、どちらかといえば好きな部類に入るが……それはどっちつかずのようなものだ。
やはり、身も凍らせるような凍て付く冷たさが漂う冬の海が一番いい。
自分には、性に合っている。
鋭利なまでに研ぎ澄まされた冷たさに、ホッとするのだといったら笑われてしまうだろうか。
おかしいことを言うものだ、と。
だけど、そう思うのだから仕方がない。



「まるで、貴方のようですね」
「奇遇だな、オレもそう思ってたんだぜ?まるで、お前のようだってな」



冴え渡る冷たさが、とても男に酷似していると思っていた。
薄暗く静けさ漂う海が、時には厳しさをも見せる。
そんなところが特に。



「いつの間にか、新しい年を迎えてしまいましたね」



どうやら、話している間に日付を越えてしまったらしい。
腕時計で時間を確認する男に、蛮は笑って首を振った。



「そんなモン、関係ねぇよ」



新しい年なんて。
明日も明後日も、きっと変わらない日常がそこには待っているはずだから。
二人の間に、古いも新しいも何もない。
そう、ないのだと。
身の内に抱える不安を覆い隠すように、そう信じていたかっただけなのかもしれないが。



「だけど、宜しくな?」



脳裏を掠めた何かを振り切るようにおどけて言えば、近付いてきた赤屍が蛮の額に唇を寄せて微笑む。



「ええ、こちらこそ宜しくお願いしますね」
「ああ、仕方ねぇから宜しくされてやんよ」



敵になったり味方になったり、仕事上の関係で二人の立場はガラリと変わる。
だけど、お互いがそれでいいと認め合っているのだから、二人の関係は敵だったり味方だったり……はたまた、恋人同士だったりするのだろう。



「手始めに、私は“貴方”を宜しくされたいのですが?」
「言ってろ、馬ー鹿」
「おやおや、つれないですねぇ」



クスクス笑う男にスッと手を差し伸べられて、それは何だよ?と見返す。



「手を繋ぎませんか?」
「はぁ、何で?!」
「そこで驚かれたら、さしもの私も傷つきますよ?」
「いや、だってよ……」



お前がキャラにないこと言うからだろ?
したいことは、こちらの意見など聞き入れることなくやり遂げるくせに……。

そう言ったなら、赤屍はそれもそうですねとアッサリと頷いて寄越した。
認めるのかよと、蛮が呆れた視線を男にやったのは言うまでもない。



「貴方が寒そうに見えたので、せめて手ぐらいは暖めて差し上げようかと思いまして」
「………」



呆気に取られたとは、このことだろう。
寒そうに見えたとお互いがお互いにそう思っていたのは、この際別に良いとして。
実は、そんな男を暖めてやりたいと内心では思っていた事実を、先回りして見透かされてしまったのではないかとヒヤリとした。

あまり内情を知られたくはない。
この男の前では、特にそうだ。
自分が自分のままでいられなくなってしまったら、際限なく甘えに走るであろう我が身を知っているからだ。
例え、それすらも知らされていて男が甘えさせようとしているのだとしても。
律せねばならない己を強く自覚した。



「お前、コートの前を開けろ」
「……はい?」
「いいから開けろって」



突然のお達しに赤屍が首を傾げる。
それに、埒が明かないと踏んで蛮は勝手に釦を取り外しに掛かった。



「暖めてくれんだろ?」



寒さを感じなくても、身体は随分と冷えていた。
なかなか言うことを聞いてくれない指先に多少の時間が掛かったが、全部の釦を外し終わるとコートの中に潜り込むようにして、男の胸元には頬を背には腕を回して抱き着く。
その時、ふわりと鼻についた香水の香りに身体の力を抜いた。
安堵する匂いというものがこの世に存在するのだと、それを知った瞬間だった。



「オラ、ちゃっちゃかコートでオレ様を包めよ」
「それは命令ですか?」



そう言いながらも、腰には既に腕が回っている。
それに、蛮はさも面白そう笑った。
男に対してと、こんな冬の海で一体自分達は何をしているのだろうか、と。
考え出したら、おかしくて仕方なかった。



「可愛いオレ様からの、可愛いお願いだろ?」



なぁ、叶えてくんねぇの?

下から見上げるように男を窺えば、赤屍はククッと喉を震わせて笑った。
コートで身体を覆われていくのを感じながら、蛮は頭上から降ってくる唇を見つめていた。
スローモーションのようにゆっくりと近付く唇。
口付けの予感に駆られて静かに瞳を閉じた。
そして、重なる唇と唇は存外に冷たいもので。
いつものキスと、それは少し違った。
お互いが冷たい唇を暖めるように舌を使って、唇の表面を舐め回しては吸い付いて離さないから……唇が少しだけ痛い、キスだった。



「唇……塩の味がしますね」
「海に……いる、からな」



海風に晒されているのだ。
きっと、髪なども塩で塗れている。
そう思うと、風が強い日の海辺には来るべきではないのかもしれないと、当たり前のことを今更に思う。



「多少生々しいですが、塩味風味の貴方も乙なものですね」
「……変態くさい発言と行動は、やめろっつーの」



っつーと舌で頬を舐められて、ゾワリと背筋を走り抜けた何か。
それを察知した男がクスリと笑んだのが触れ合っている箇所から伝わり、無性に腹が立った蛮は胸元に頭突きを食らわした。



「っ、痛いですよ?」
「痛くしたからなァ」
「痛いことがお好きな貴方でしたら構わないでしょうが、生憎私は違うんですよ?」
「っ!テメェはもうしゃべんなっ」
「では、貴方のその唇で私の口を塞いでください」



貴方ならば、簡単に出来るでしょう?

その問い掛けに、蛮はしばし考えを巡らせるとニヤリと笑った。
笑って、



「ホテルで、ならな」



思う存分、やってやるよ?

男の唇の端を舐めて告げる。
すると、その気になったのか。
男はコートに包んでいた蛮を身から引き剥がし、海から離れることを提案してきた。
それに頷いてみせたが、突然なくなった温もりにまだ少しだけこのままでいたかったなんて……そう思ってしまったのは、赤屍には内緒だ。



「では、参りましょうか?」
「ああ」



促されて、歩みを進める。
その前に、一度だけ海を振り返った。
来た時と変わらない海がそこにはある。



「美堂クン?」
「あ、いや」



どうしたのかと視線で告げてきた赤屍に、何でもないと告げて今度こそ海辺から立ち去る。



「また足を運んだらいいでしょう?」
「そんぐれぇ、分かってんよ」



それでも、名残惜しく感じてしまうのは寂寥からか。
それとも……。



「……また、来れるといいんだけどな」



本当に……。

小さく呟いた声は、隣りを歩いている男には聞こえない。
聞こえないように囁いたからだ。



(嫌な予感がするんだなんて、口に出して言えっかよ)



前に進むしかないから、後ろを見ない。
やるべきことがあるから、他は切り捨てられる。
邪魔をしようとするなら、誰であろうと容赦するつもりはない。



(だけど、それが隣りにいる男だったら……オレはどうするのか?)



考えてみるが、答えは出ない。
何かの前兆を嗅ぎ取るように、耳の奥でざわめく海鳴りのような音が鳴り響いて、なかなか離れようとはしてくれなかった。










END

卑弥呼ちゃんの誕生日前のお話的なもの。
今更、原作設定!←




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