「……あ?」



もう、朝なのかよ?

唐突の目覚めにそう思って、手探りで枕元に置いておいた時計をひったくる勢いで掴みとる。
そして、眠たい目で布団の中から時計を見てみれば……時刻は。



(ふざけんなー……まだ六時かよっ)



まだ朝早い時刻にも拘らず目を覚ましてしまった蛮は、一つの布団で一緒に寝ている相手に視線をやった。
実に気持ち良さそうに寝ている。
そうなると、隣りでグースカとそれは気持ち良さそうに眠っている男が、何故だか無性に腹立たしくなってしまい、自分の身体を覆うように巻き付いて離れないその腕に問答無用とばかり噛みついてやった。
そう、ガブリと。



「ふがっ……ふぐっ」



すると、変な声を漏らして銀次が唸り声を出し足をバタバタとさせる。
その様子に蛮は一人忍び笑いを漏らし。



(けっ、ざまーみろ!)



オレ様がもう起きてんのに、テメェだけが寝てんのは許せねぇんだよ…!

心の中で叫んで、蛮は銀次の腕にまた歯を立て噛みつく。
何とも理不尽な言い分である。
そういうわけで、暫く蛮は銀次の腕に噛み付いては、痛みに呻く銀次を堪能していたのだが……。
しかし、銀次はそこまでされても起きる気配を見せることはなく。



(ちっ、つまんねぇの!)



段々、飽きてきてしまった蛮である。
どうやら噛み付かれた痛みはあるようなのだが、寝汚い銀次はなかなか起きてくれはしない。
溜め息をついて、蛮は銀次に噛み付くのを諦めた。
というより、恥ずかしさが徐々に込み上げてきたのだ。



(朝から何をやってるんだか、オレ様は……)



ちょっとした自己嫌悪が襲ってきて、一つしかない布団の中に潜り込もうとした……その時だ。
ふと、安アパートの窓から差し込む陽が銀次の髪を輝かせていた。
その光り輝く金に、思わず手を伸ばしてクシャリと撫でてみる。



(おー…やわらけー)



そういえば……と蛮は思い出す。
よく銀次は蛮の髪を触りたがり、蛮は適当にあしらいながらも、最後には銀次の好きなようにさせていたことを。
ベタベタと触られたことならある蛮だが、銀次の髪をここまでじっくりと触ったことはなかった。
結構、触り心地の良い髪質をしていることに満足して蛮は唇に笑みを刻む。



「まぁ、オレ様の髪には劣るけどな」



そうやって銀次の髪をいじくって遊んでいる内に、何処かへと行っていた眠気が戻ってきたようで。
これなら、もう一度寝れそうだと大きな欠伸をして、だが寝る前にこれを……と、眠りに落ちようとする瞼を必死に蛮は堪え。
何とか銀次に手を伸ばし、銀次の頭を抱え込むように抱き締めた蛮は、そこで漸く瞳を閉ざすことを自分に許した。



(抱き枕が……ねぇ……と…な……)



朝焼けの赤い陽が、金髪の銀次の髪を更に黄金(こがね)にして透き通らせていた。





















「……蛮ちゃんー?」



寝ちゃったかな?と様子を窺いながらモゾモゾと動き出したのは、先程蛮になかなか起きないといって悪戯されていた銀次だった。
実は、腕を噛まれた時に既に目を覚ましていた銀次である。



「っ……蛮ちゃんってば、もう!何、この人!ちょっと朝から何、可愛いことしてくれちゃってんの?!」



オレ、我慢するの大変だったんだからね!

腕に噛みつく蛮に銀次は忍耐力を総動員させて、襲いたくなるのを我慢していたのだ。



(昨日の今日だから、流石にそれはマズいかなって)



蛮の胸元に銀次は顔を埋めている状態のまま、上目遣いで蛮の寝顔を見る。
二度寝に入った蛮がなかなか起きないことを知っている銀次は、多少身を動かしても平気だった。
だが、極力動きを押さえて蛮の腕の中で銀次はじっとしていた。
身体を包む温もりがとても気持ち良くて、滅多にないこの状況が勿体ないと思ったからだ。
普段は銀次が蛮を抱き抱えるようにして寝ているからか、それはいつもと逆で銀次には新鮮に映った。



「でも……目を覚ましたら覚悟しててね、蛮ちゃん」



腕に噛み付いて好き勝手してくれたお礼を、タップリ蛮ちゃんに払って貰うからね?

クスクスと笑って、銀次は蛮のはだけた胸元に残る淡い跡に唇を寄せて囁いた。



「悪戯は三倍返しだよ、蛮ちゃん?」










お題:朝焼けに輝いた金髪が透き通る



お題に添えてなーい(笑)