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醜い欲望の果てに(花→蛮)












僕の目の前に、今愛しい『彼』がいる。

『彼』に手を伸ばして見た目通りの柔らかい黒髪を梳き優しく撫ぜてやると、ハラハラと指の隙間から零れ落ちる黒髪が部屋の中に入り込む光に艶やかさが一層と際立ち、誰が見ても美しく目に映るだろうその光景に心が和むのを感じた。
撫ぜられるままに身を預けきって、気持ち良さそうに瞳を細める『彼』の姿は、まるで猫のようだった。
けれども、警戒心もなく抵抗する気配も見せないその様子に、警戒心が全くないなんてこれでは猫らしくないなと僕は思わず笑ってしまう。
猜疑心のない猫なんて何とも珍しくて。
すると、そんな僕をいぶかしむように不思議そうな顔をして『彼』は見上げてきた。
それに、笑みを浮かべて何でもないよと止まっていた髪を撫でる仕草を再開させれば、何かを言おうとして口ごもる『彼』の迷いに気付く。
何かを聞こうとして失敗する……子供のようなそれに。
だから、促すようにどうしたのかと首を傾げ言いやすいように誘導してやる。
窺うような仕草をする『彼』に、大丈夫だから……言ってごらんと優しく問い掛けて。



「どうして……どうしてオレは、記憶を失してしまったんでしょうか?」



髪を撫ぜていた指がピタリと止まった。
そして、僕は何も言わず『彼』を見つめる。
これを彼はずっと聞きたかったのかと、半ば分かっていて遠ざけていた問題を改めて『彼』は僕の前に突き出して見せた。
勿論、いつかは問い掛けられると分かっていたからその答えは幾つも用意していた。
その幾つも用意していた答えの中から一つをチョイスして、何度も自分の中で繰り返してきた答えを……今、やっと『彼』へと返す。



「それは……ごめん。僕にもよく分からないんだ。推測だけど、僕が君を見つけた時にはもう…――」



以前の口調とは全く違ってしまった『彼』を心の片隅で痛ましく思いながら、僕は平然と嘘を重ねる。
そう、これは真っ赤な嘘だ。
真実は、僕の中と過去の『彼』の中だけに存在する。



「そう、ですか……」



ガッカリして肩を落とす『彼』の身体を、そっと抱き寄せる。
それっきり『彼』が言葉を紡ぐようなことはなかった。




















「すみません、美堂君」



身体を胎児のように丸め目の前で眠る彼に、幾度目になるかもう分からない謝罪を今日もまた繰り返す。
記憶を失うことを促したのは、誰でもない……この僕自身。
追い詰めて追い詰めて、彼の心を壊した。
心ない言葉で傷つけて少しずつ狂わせていき、最後に手放す振りをして突き放した。
そうすることで、より一層離れがたく思わせようと。
そして、それは簡単に成功した。
呆気なさすぎるくらいに。
心の弱い彼は簡単に自我を手放してしまった。
こちらが望むがままに。



「ただ、誰にも奪われたくなかったんです」



そして、君のすべてを自分のモノにしてしまいたかったから……。

懺悔のような想いを吐き出して唇を噛み締める。
誰の目にも触れさせたくなくて狂った心は闇を抱えた。
律する理性を凌駕する想いの深さに恐れるよりもまず歓喜した。
こんなにまで自分は彼を愛しているのだと。



(所詮、それは自己満足でしかないのだろうけど)



これ以上の無意味な言葉の謝罪はただの自己満足にすぎなく、そしてまだ辛うじて残っている純粋な愛情までも嘘に塗り固めてしまいそうで……ただ頭を垂れ、罪を贖うように眠れる人の額に唇を落とした。
そう、それはまるで神聖な口付け。




















だって、二度と腕の中の檻から出してやらないと彼へと誓う……これは大事な接吻けなのだから―――。











END

オリジで書いたのを花蛮風に直した奴(笑)
記憶喪失モノ。





お題:狂った僕は、君を閉じ込めて縛り付けて、逃がさない。




奪われる者の末路(屍蛮)

蛮ちゃんの誕生日がパスです。

無題(屍蛮)



※かなりの意味不明な駄文です。悪しからず















太陽が眠りつき、闇夜が刻を支配する深い夜。
いつもの公園のベンチで一人煙草を吹かしながら、頭上に煌々と輝く月を眺め見やっていた。
そこにあったのは、燃えるような緋色の月。



(イヤな感じの月だな……)



煙草の吸い殻を足で揉み消して一人ごちる。
何だか寝苦しくて、眠れなくて。
気分転換にとスバルから出てみれば、蛮の身体を照らしたのは闇をも恐れぬ月の明かり。
そう、今夜は満月の夜だった。
そのせいなのかもしれない。
血が騒ぐというか、妙に喉が渇くというか……。
身体の中で何かがざわめく。



「………」



これ以上見つめているとどうにかなってしまいそうで、月からそっと視線外すとチラリとスバルの方を窺った。
スバルには相棒の銀次が眠っている。
銀次はこんな時間、滅多に起きていることはない。
この時間帯は眠りの国に旅立っている。
車を出る前に何事か寝言を言いながら幸せそうに笑っていたから、おそらく……いや、きっと良い夢を見ていることだろう。
一体どんな夢をみているのだろうか?
それに比べてオレは……と、自嘲して己を嘲笑う。

ここ最近眠れなくて、こうやって月明りの下で夜を明かしている。
辛うじて明け方の数時間、身体を横にして眠るだけの生活は流石に辛いものがあった。
けれど眠れないのだから仕方ない。
まともな睡眠を確保出来たのは、何時のことだったろうか。



(月は嫌いなんだ)



特に、満月の夜の月は。
己の魔女としての本性を自覚させられると共に、嫌な出来事ばかりを思い出させるから。
幼き日の辛い出来事は凍えるように凍てついた雨と、不自然なくらいまでに緋色の月がいつも関係していた。
だから、こんな夜は必然と思い出させる。
月の魔力で目覚める魔女の性と、罪深い己の宿業。
そして、悪魔の子と罵る己の母親の金切り声を―――。
魔女の性、呪われた運命云々は、この際生まれついてしまったものと……仕方がないと思うとして。
けれど、あの母親のことに関してはいつまでたっても忘れることも、忘れた振りをすることもできやしなかった。
月など関係なくてもふとした時に思いだし、今だに傷ついている。
昔も、今も、きっとこの先も。
これは永遠に変わらないのだろう。



「まったく、なさけねぇの……」



常にない弱気な声が外気に漏れる。
まるで萎れた花のようだった。
自覚して、また堪らなくなる。



「マジで情けねぇ――…」



痛みで弱さを誤魔化すように、掌を強く握り締めた。
今与えられる救いは、掌に食い込む鋭い痛みだけ。
こんな姿を誰にも見られたくないと思う。
その思いと反するように、こんな時だからこそ“誰か”に側にいてもらいたいとも強く思う。
相反する矛盾した感情。
分かっていても。
過去の痛みに囚われた今の自分は、一人では立ち直れなくて人の温もりを求めてしまう。
出来るはずがないことであることを、承知していてもだ。



(ここまでくると情けなさを通り越して、もう……惨めだな)



重い吐息をついて、サングラスを取り外しベンチの隅に置く。
それから、いつもはサングラスに覆われている瞳を掌で覆い隠した。

涙は流れない。
どんなに辛かろうと、痛かろうと。
涙はとうの昔に捨ててきた。
そんなものを後生大事に抱えて生きていたら、これまで生きてこれなかったからだ。



(だから、涙は流れない)



もし、泣き方を知っていたら癒せたのだろうか。
この苦痛の核を……。
今、詮無きことを考えている。
しても無駄なこと。
結局、泣き方を忘れてしまった子供は世界の片隅でただ震えているしかないのだ。
こんな風に。



(人の温もりを求めた結果、邪馬人がどうなったか自分がよく知っているだろう?)



そう言い聞かせて、切なさに身を揺らす。



(早く、早く朝になってしまえ……)



こんなに弱気になるのは頭上に煌々と光る月のせいなのだと、今にも押し潰されそうになる弱い心を抱えて、漆黒をたたえた闇に向け切に祈る。



(朝になれば、大丈夫だ……大丈夫なはず…――)



この身体を満たす空虚も、魔女の血ゆえのざわめきも、罵り……叱責……罵倒する声も……全部が落ちつく。

だから、もう早く朝になってくれと。

それは、何の根拠もない子供じみた祈り。
だけど、膝に肘をついて身体を曲げるようにベンチに座っていた蛮は、この時初めていもしない神に祈りたい気分になった。
あくまで、それは気分だけのことだったが……。
誰がキリストとは対極に位置する魔女の願いなんて、叶えてくれるというんだろうか。
叶えてくれるわけがないと今までの経験上よく分かっているから、口には出さない。
それでも気休めに。
“何か”に縋りつきたいと思う心が、らしくないことをさせる。
愚かな行為……祈るということを。



「おや?」
「……っ」



ビクリと、ふいに聞き覚えがある声に過剰なまでに肩を揺らして反応してしまった。
それは、普段の自分ならば有り得ない失態。
そもそも、こんな弱った姿を人前に晒すこと事態稀なのだ。



(狙ったように現れやがって)



内心、舌打ちして闇と同化している漆黒の男を睨みつける。



「……何の用だよ?」



どうしてこんなところにいるのかと、一々問わない。
この男は神出鬼没なところがあるのを予め知っているからだ。
だから、言外に用がないなら目の前から今すぐ消えろと、剣呑さを包み隠さずに伝える。
その思惟を汲み取っているはずなのに、目の前の男は帽子の鍔を傾けて面白そうに笑うだけだった。
そして、歌うような口振りで問い掛けてきた。



「銀次クンは?」
「……アイツに用があんのならスバルで寝てるから、叩き起こすなり何なりすればいいだろ」



勝手にしやがれ、と。
何処か銀次を気に掛けている風な男にウンザリと答える。
銀次に会いにきたのならば、そっちに直行すれば良いだろうにと。
今は、何を考えてるか分からない人間の相手をしてやるような余裕は自分にない。
銀次で遊びたいのなら、好きにすればいいと思う。
こんなことを思うこと事態、常の蛮だったらしないはずで。
この時の自分がまともな思考ではなかったことを、自覚するまでには至らなかった。
そして、それを看破されていることも。



(いいから、早く消えやがれ)



先程は、あれほど一人でいたくないと願っていた蛮も、相手が相手であるからか何故こんな奴をよりによって連れてくる…!と毒つくが、男は一向に立ち去らない。
ベンチに腰掛けている蛮を見下ろして、何事か検分しているようだった。
その視線がいやに気持ち悪い。
誰だって―――相手が死神だということを差し引いても、だ―――舐めるように見下ろされていては良い気は決してしないだろう。



「あのな……マジでテメェは何しにきたわけよ?」
「………」
「あ?」



溜め息混じりに問い掛けても、無言が返ってくる。
本当に何なのだ。
理解に努めたいとは生憎思わないが、こうもキッパリ無視されると苛立たしい。
それから、たっぷり凝視された後。
ようやっと、口を開いたかと思えば……。



「満足に睡眠が取れていないのでは?」



目の下に熊が出来ていますよと、暗がりでの鋭い指摘に舌打ちしたくなった。
月明りがあれど、バレはしないだろうと高を括っていた。
だが見事、言い当てられてしまった。
やはり目の前の死神は油断ならない。
その侮れない男に柳眉をしかめながら、外して放置しいたサングラスを手に取る。



「だったら、何だって言うんだよ?」



テメェには関係ないだろうと、言葉を選んで交わしながらサングラスを掛け直した。
どうして目の前の男と、こんなに呑気に会話をしているのだろうか。
本来なら、毛嫌いしているタイプであるのにも拘らず……だ。
変に頭の良い男は、こちらの神経を逆撫でてくれる。
それは、言葉であったり態度であったり。
はたまた、言葉の裏に潜む駆け引きめいたそれだったり。
いけ好かなく、うさん臭い。
それが、この男に対しての評価だった。



(相手にしてると余計に気分が悪くなってくるな)



男が自ら立ち去る気配がないのなら、こちらから立ち去ればいいだけのこと。
ベンチから重い腰を上げ、蛮は立ち上がる。
そして、男を無視して足を踏み出した。
……のだが、後ろから腕を掴まれたことで身体がバランスを崩してよろける。
そして、よろけた身体は死神に捕らわれて。



「何処へ行くんです?」
「っ、何処でもいいだろうが!」



大体、そんなのこっちの勝手だろうに。
いいから、手を離せ!と。
腕を振り払えば、思ったより力が込められているその腕は振り払えず、身動きが取れないまま死神と対峙することになった。



(何だよ……この状況?)



相手が何をしたいのか、全く意図が掴めない。
銀次に会いにきたのなら、余計な道草などせず会いに行けば良いものを……。
何を考えているのだと思考を巡らせつつ、逃げ道はないのかと模索していた隙を狙われてしまった。



「なっ?!」



それは、油断が招いた大失態。
気が揺るんでいたのか。
腹部に痛みが走って初めてそのことに気付いた。
みぞおちに拳を入れられ意識が闇へと墜ちる。
完全に墜ちる瞬間、目にしたものは。
死神とその後ろに聳える緋色の月。



「…―――」



痛いじゃねぇかよ!糞が!と叫んだつもりの雑言も、言葉にはならなかった。
フッと力が抜けたかのように、強制的に身体が沈んでいく。
それを、腕を広げて受け止めたのは月を優しいかいなで包み込む闇。



「痩せ我慢はいけませんよ?」



意識を失ったことで重くなった身体を抱え上げて、死神は後ろに聳え立つ月を振り返る。
瞳を細め、妖しい月を見つめた。



「……魔女にあの月は毒なのでしょうかねぇ?」



囁いて、月から視線を外した。
それから、何処か苦しそうにして腕の中にいる蛮に向ける。
が、意識を失っている魔女は答えることが出来ない。
出来たとしても、素直に答えはしない人であることは容易に想像出来る範囲内のことではあったが。



「次に目を覚ました時、どういった態度を貴方が取るか……」



実に楽しみで仕方ない。
心底楽しそうな笑みを浮かべて、死神は公園を足早に立ち去る。
途中で万が一、目を覚まされたら―――寝不足であることからきっと起きはしないだろうが―――面倒だった。
だから、早く連れ去ってしまおうと公園を後にすることにした。
まるで、闇に溶け込むように夜に紛れて。










蛮が深い眠りから目を覚ました時。
死神の腕の中に抱き締められ、尚且つ裸で寝ている自分(相手も、だ)に絶叫し、卒倒仕掛けたのは―――また別の話。




END

蛮ちゃんが苦しそうにしているのは、貴方がみぞおちに拳をi……げふんっ;

後半、ノートが見当たらなくてテキトーに書き殴ったら収拾がつかなくなった。
あと、オチをどうするか決めてなかったのでキリが良さそうなとこで。


ちょんぎってやりました←


本当はシリアスだったんです。
なのに、ギャグでオトしたよこの人!
ノートの続きが見当たらないのが悪いんだ!
久し振りの更新なのに、肩透かしですみません;

一応、屍→→→蛮な感じで。
屍さまは蛮ちゃんが好きなんですが、蛮ちゃんは銀次が好きなんだろ?と思っている。
で、蛮ちゃんに会いにきているのに分かってくれないのでついに実力行使に出たみたいな……。

文章からは1ミクロンも分かりませんよ、ね!
いえやっ、私にも分かりませんからそこのとこは激しく大丈夫です!(爆)

屍蛮で10cmバトンSSS!











「10cmバトン」


10cmバトン

お題→10cmの○○
※○○の部分に好きなキャラや人を入れてください。

指定→屍さま(笑)


1.目覚めた時「10cmの赤屍」があなたの顔を覗き込んでいました。どうしますか?




「……これは夢か、ああそうだな。夢に違いねぇ……分裂とか分裂とか分裂とかやっちまう奴だけど、流石に小さくはなんねぇだろ?なんねぇよな?何ねぇって言えよ、オイ!」
「やれやれ……現実を知りましょうね、美堂クン?」



現実逃避しても、何も始まりませんよ?

何故か小さくなってしまった当事者より、その実害を目の当たりにした蛮の方が焦っていたりする。
何とも、おかしなものだ。



「夢じゃ……ねぇのか?」
「ええ、残念ながらですね」



ちょこんとシーツの上にいつもの格好でいる赤屍を、蛮は物珍しげに見つめる。
何て言ったって、赤屍が10cmなのだ。
これを物珍しがるなという方がおかしい。
というか、どうかしている。
蛮は、赤屍にそっと指を伸ばした。
その指に赤屍が触れる。



「なぁ赤屍。何か変なもんでも食ったか?」
「ふぅ……私は貴方ではありませんよ?」
「……だよなぁ?」



自分達のように、食うに困る男ではない。
だとしたら……。



「……呪いか?」



考えて出した答えはそれだった。
それしか思い付かなかったともいうが。



「呪い、ですか?」
「ああ、だって後はそんくらいしか……っ」



小さな赤屍が首を傾けて蛮を見上げてくる。



(っ、ちょっと待てくれ!オレ、今、物凄くドキドキしてるんだけどっなんで?!)



何でも何も。
こう見えても蛮は、可愛い物好きなのだ。
テディベアもそうだが、自覚あると自覚なしに幅広く可愛いものが好きだったりする。
赤屍の変わり果てた姿を眺め見やって、改めて自分の趣味を実感した蛮だった。



「戻れなくても心配すんなよ……小さな赤屍もオレは好きだからな」
「どうしたんです、急に?」



意味が分からないと赤屍が眉間をしかめても、蛮はその理由を答えなかった。




2.「10cmの赤屍」をあなたは飼いますか?




「取り敢えず、どうすっかな?」



呪いなのか、そうでないのかはひとまず横に置いといて。
仕事はこの調子では出来ないだろう。
まさか、10cmの赤屍に仕事できるはずが……ないよな?
ちょっとだけ、そこで言い切ることが出来ない蛮だった。



「赤屍、仕事は?」



どうするんだと問い掛けて、蛮は赤屍を見る。



「運の良いことにありませんね」
「そりゃ良かったな?」
「まったくですね」



平然としている割りには、少し苛立っているのか。
口調に刺が見える。
やはり、こんな赤屍は珍しくて蛮としてはすぐ戻るなら暫くこのままで良いくらいだった。



(まぁ起きたら小さくなってんだからよ、それも無理はねぇか)



オレは小さい赤屍も好きだけどな。
そんな考えを巡らせていた蛮だったが、実際は違う。
違うどころか、



(こう小さいと不便ですね、触れることもままならないとは……)



赤屍はチラリと意識を飛ばしている蛮を見上げた。
小さいとこんな些細な所作にも、違和感を感じて仕方がない。



(こうしてはいられませんね。早く戻る術を見つけなくては)
(うん、やっぱり可愛いよなー……)



相手を思いやっているようで全くいない、そんな二人は、お互いの視線が絡みあったことで微笑みを交わし合うのだった。




3.「10cmの赤屍」がお腹が空いたと主張しています。あなたは何を与えますか?




「なぁお腹空かねぇか?」
「そんな時間ですか?」
「ああ」



時計を見れば、昼を過ぎている。
二人とも朝を食べる人間でないから朝は抜いても良い。
だが、昼を抜くのは流石に不味いだろうと蛮は何か軽いものを作ることにした。
だが、そこで問題は赤屍の食事だ。
10cmの赤屍にはどのようなご飯がいいのか。
悩みどころだった。



「うーん……無難なところでリゾットとかでいいか?」
「……ですね」



具を小さく切り刻んで食べやすくしたら、大丈夫だろうと蛮は早速行動に掛かる。



「ちょっとだけ、待っててくれな?」



すぐ作ってくるからと言い置いたように、蛮ならすぐに作ってくるだろう。



「………」



いやに機嫌の良い蛮の後ろ姿に、赤屍は人知れず溜め息を零した。




4.「10cmの赤屍」がトイレに行きたがっています。どうしますか?




「オイ……何処に行くんだよ?」



食事を終えてのんびりとしていたところだった。
蛮は、ソファーに寝転んで雑誌を捲り。
赤屍は、その近くでぼんやり蛮を眺めていた。
10cmになった特権を活かしてといいたいところだが、ただ単にすることがなかったからである。



「……トイレですよ」
「一人で行けるか?」
「………」



一々、子供ではないのですよと赤屍は言い掛けて、子供より厄介な姿の己を思い出した。
それから、赤屍は何度目かの溜め息をついた。



「大丈夫ですよ」



きっとね、とは心の中の声だ。
でも、蛮は引き下がらなかった。



「でもよ、心配だから着いてく」



ドアだって、今のお前じゃ開けられないだろ?

甲斐がいしい蛮は赤屍をひょいと掴むと、スタスタとトイレへと足を進める。



「………」



蛮の掌に抱えられトイレへと向かっている赤屍は、無言のままとにかく早く元の姿に戻らなくてはとずっとそればかりを考え続けていた。




5.「10cmの赤屍」が風呂に入りたがっています。どうしますか?




「確かに……私はお風呂に入りたいと言いましたがね、美堂クン?」



それは一人で入りたいと言ったのであって。
嬉しそうにしている貴方の前でストリップする気は更々ないのですが?

嫌味も何のその、蛮は赤屍に笑って。



「だから、オレが髪洗ってやるって」
「結構です」



にべものない赤屍の返事に、蛮はやはりめげない。



「そんじゃ身体!」
「余計なお世話ですから私のことは放って置いてください」



いつもなら蛮が嫌がっても洗って貰いたがるのに今日は駄目だという。
理由は分かる気がするが、そんな態度はないのではないか。
そこまで厭われると、流石にそれ以上は何も言えなくなり、しゅんとなって蛮は後ろを向いた。
赤屍に顔を見られたくなかったからだ。



「そうかよ……お前は嫌がっていたのにお節介して悪かったな」
「……美堂クン」



蛮は心配してくれていたのに、無下な態度で少し大人げなかったかと赤屍が折れた。



「すみませんでした、美堂クン」
「怒ってねぇのかよ」
「ええ、始めから怒ってはいませんでしたよ?」



ただ、苛立っていただけなのだ、赤屍は。



「許して貰えますか?」
「お前が怒ってねぇなら」
「では、洗っていただけますか?」
「……いいのかよ?」
「ええ」



静かに諦めの溜め息をついた赤屍に、蛮は確認を込めて再度問う。
勿論、赤屍には背を向けたままでだ。

反対側で、舌を出していた蛮に赤屍は気付かなかった。




6.「10cmの赤屍」と初デート!どこにつれて行きますか?




「出掛けるっていっても、限られてるよな?」



何処へ行く?

外に行くのは良いが敵が多いので、普段の赤屍なら心配などしないが。
この姿の赤屍では、心配しないわけにはいかなかった。



「大丈夫ですよ」



定位置を決めるのに四苦八苦していたが、赤屍は蛮の肩に落ち着いたようだ。
器用に腰掛けている。
よく落ちないものだと蛮は感心していた。



「お前って結構、楽観主義だよなぁ?」
「いいえ、腹を括っただけですよ?」
「?」



蛮の肩で10cmの赤屍は笑う。



(戻る時は戻るでしょうからね)



ただ、戻った暁には蛮には覚悟して貰わないといけない。
それなりに、今回のことで赤屍は傷ついたのだ。
そう色々と。



「そんじゃ、買いモンに行くか?」
「そうですね」



何処へだっていいのだ。
二人で行く場所なら。




7.最後の質問!「10cmの赤屍」がいたらあなたはどう思いますか?




「小さい赤屍がマジでいたら……?」



そうだな……と蛮は考える。



「一緒に寝るだろ?一緒に風呂に入るだろ?一緒に……」



蛮は気付いてないようだが、小さくなくてもそれはいつもしていることである。



「それからな、」
「……何をしているんですか、そのようなところで美堂クン?」
「お、呼んでるからオレはもう行くな?」



……最後に聞いておくことがあるんですが。
そういうと、蛮はああと笑って見せた。



「小さい赤屍もいいけどな、やっぱりいつものアイツがいいんじゃねぇの?」



なるほど……ありがとうございました。
礼を言ったら片手をヒラヒラ振って、蛮はこっちも楽しかったぜと去っていった。



「……結局、ラブラブなのよねぇ」



アンケート用紙をペシッと指で弾いた。
これに尽きる。




アンケートしていたっていうオチ。分かりにくい…!!
蛮ちゃんの妄想ともいう(笑)




8.妄想させたい友達5人!



フリー




エムブロ





朝、おはようを言う前に(銀蛮)












「……あ?」



もう、朝なのかよ?

唐突の目覚めにそう思って、手探りで枕元に置いておいた時計をひったくる勢いで掴みとる。
そして、眠たい目で布団の中から時計を見てみれば……時刻は。



(ふざけんなー……まだ六時かよっ)



まだ朝早い時刻にも拘らず目を覚ましてしまった蛮は、一つの布団で一緒に寝ている相手に視線をやった。
実に気持ち良さそうに寝ている。
そうなると、隣りでグースカとそれは気持ち良さそうに眠っている男が、何故だか無性に腹立たしくなってしまい、自分の身体を覆うように巻き付いて離れないその腕に問答無用とばかり噛みついてやった。
そう、ガブリと。



「ふがっ……ふぐっ」



すると、変な声を漏らして銀次が唸り声を出し足をバタバタとさせる。
その様子に蛮は一人忍び笑いを漏らし。



(けっ、ざまーみろ!)



オレ様がもう起きてんのに、テメェだけが寝てんのは許せねぇんだよ…!

心の中で叫んで、蛮は銀次の腕にまた歯を立て噛みつく。
何とも理不尽な言い分である。
そういうわけで、暫く蛮は銀次の腕に噛み付いては、痛みに呻く銀次を堪能していたのだが……。
しかし、銀次はそこまでされても起きる気配を見せることはなく。



(ちっ、つまんねぇの!)



段々、飽きてきてしまった蛮である。
どうやら噛み付かれた痛みはあるようなのだが、寝汚い銀次はなかなか起きてくれはしない。
溜め息をついて、蛮は銀次に噛み付くのを諦めた。
というより、恥ずかしさが徐々に込み上げてきたのだ。



(朝から何をやってるんだか、オレ様は……)



ちょっとした自己嫌悪が襲ってきて、一つしかない布団の中に潜り込もうとした……その時だ。
ふと、安アパートの窓から差し込む陽が銀次の髪を輝かせていた。
その光り輝く金に、思わず手を伸ばしてクシャリと撫でてみる。



(おー…やわらけー)



そういえば……と蛮は思い出す。
よく銀次は蛮の髪を触りたがり、蛮は適当にあしらいながらも、最後には銀次の好きなようにさせていたことを。
ベタベタと触られたことならある蛮だが、銀次の髪をここまでじっくりと触ったことはなかった。
結構、触り心地の良い髪質をしていることに満足して蛮は唇に笑みを刻む。



「まぁ、オレ様の髪には劣るけどな」



そうやって銀次の髪をいじくって遊んでいる内に、何処かへと行っていた眠気が戻ってきたようで。
これなら、もう一度寝れそうだと大きな欠伸をして、だが寝る前にこれを……と、眠りに落ちようとする瞼を必死に蛮は堪え。
何とか銀次に手を伸ばし、銀次の頭を抱え込むように抱き締めた蛮は、そこで漸く瞳を閉ざすことを自分に許した。



(抱き枕が……ねぇ……と…な……)



朝焼けの赤い陽が、金髪の銀次の髪を更に黄金(こがね)にして透き通らせていた。





















「……蛮ちゃんー?」



寝ちゃったかな?と様子を窺いながらモゾモゾと動き出したのは、先程蛮になかなか起きないといって悪戯されていた銀次だった。
実は、腕を噛まれた時に既に目を覚ましていた銀次である。



「っ……蛮ちゃんってば、もう!何、この人!ちょっと朝から何、可愛いことしてくれちゃってんの?!」



オレ、我慢するの大変だったんだからね!

腕に噛みつく蛮に銀次は忍耐力を総動員させて、襲いたくなるのを我慢していたのだ。



(昨日の今日だから、流石にそれはマズいかなって)



蛮の胸元に銀次は顔を埋めている状態のまま、上目遣いで蛮の寝顔を見る。
二度寝に入った蛮がなかなか起きないことを知っている銀次は、多少身を動かしても平気だった。
だが、極力動きを押さえて蛮の腕の中で銀次はじっとしていた。
身体を包む温もりがとても気持ち良くて、滅多にないこの状況が勿体ないと思ったからだ。
普段は銀次が蛮を抱き抱えるようにして寝ているからか、それはいつもと逆で銀次には新鮮に映った。



「でも……目を覚ましたら覚悟しててね、蛮ちゃん」



腕に噛み付いて好き勝手してくれたお礼を、タップリ蛮ちゃんに払って貰うからね?

クスクスと笑って、銀次は蛮のはだけた胸元に残る淡い跡に唇を寄せて囁いた。



「悪戯は三倍返しだよ、蛮ちゃん?」










お題:朝焼けに輝いた金髪が透き通る



お題に添えてなーい(笑)




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