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ルビー×サファイア(シンキラ)











君にあげるよとそう言われてオレがキラさんから貰ったモノは、オレの瞳とキラさんの瞳を模したような……二つの宝石でした。










「……どうしたんですか、これ」



掌に二つの宝石。
これをオレにくれるキラさんの意図が分からなくて、困惑気味に問えばクスリと悪戯っ子のように笑うキラさんがいた。



「ルビーとサファイアだよ?」
「それは知ってますけど、ね。こーゆーことに疎いオレだって、いくらなんでも」



紅い紅玉がルビーで、青紫の青玉がサファイア。
一般的なサファイアは濃紺か青紫を指すらしいが、黄色やピンクや透明などの色のサファイアも存在している。



(……何かあるのかな、キラさんがこういう顔してるってことは)



メイリンやルナマリア辺りなら、もっと詳しく知っているだろうなと思いながら、オレは二つの宝石を見つめる。
彼女達はミーハーで、常に情報収集を怠らないのだ。
生活に役に立つものならオレだってそれは構わないけどと思うが、彼女達のあのどうでもいいような情報集め――例えば、アイドルの好きな食べ物とかの類い。
本当に好きなのかも分からないのに、彼女達はそれに踊らされるのだ――あのバイタリティは何処からくるものなんだろうか?
オレがいつも不思議に思っていることだ。



「シン?」



どうしたのと、キラさんがオレの顔を下から掬い見る。
考え事に没頭していたせいか、つい横に思考が逸れてしまった。



「何でもないですよ……ただ、何でルビーとサファイアなのかなって思って」
「……不思議に思った?」
「はい」



素直に頷けば、キラさんが額に唇を寄せてきた。



「キラさん?」



そして、オレが掌に握っている宝石ごとキラさんが掌を重ねる。



「ルビーとサファイアはね、同じ鉱物から出来てるんだ」
「同じ、ですか?」
「そうだよ」



これが……と、オレは掌に納まっている宝石を見つめる。



「そう考えると、宝石って面白いよね。不純物の違いで名前が全く違うんだよ?同じ鉱物から生まれたものなのに」
「へぇ……」



濃赤色が濃いものだけをルビーと呼び、その他の石をサファイアと呼ぶんだとオレに話して聞かせるキラさんは、とても優しい瞳をしていた。



「ねぇシン……僕達は色んな意味で一つには永遠になれない生き物で、一つのモノから生まれたわけでもない。家族関係もないし、ね?」
「……キラ、さん」



いくら身を繋げようともその時は満足するが、やはり一つにはなれないのだとキラさんは言う。



「だけど、心は一つだから。何処にいようと、何をしてようと、例えば側から離れるようなことがあろうとも。これからの僕達の未来に一体何が起こって、どんな未来が訪れるか……僕達にもそれは分からないよね?何もなければいいと願うけど、神様はいつだって無力だから……だから、君にこの石を贈ることを僕は決めたんだよ」



君は一人じゃない。
どんな時にも、君の傍らには僕がいることを。
君の中には、僕が棲みついていることを。
それを何があっても、シンは忘れないで。



「……っ」



そう言って、微笑みかけるキラさんの、何と綺麗なことか。
手の中にある石と匹敵する……いや、それ以上のそれは美しさ。
そう思うのは多分、キラさんの心が綺麗だからだ。
心が人一倍キラさんは綺麗だから……宝石なんか霞んでいってしまう。



「は、いっ……オレ、忘れませんから……絶対にっ」



忘れられるわけがない。
こんな告白を聞かされては。
オレは宝石よりももっと大事なモノを、キラさんから貰ったのだから。



「うん、ありがとう。シン」
「っ、オレの方こそ…!」



キラさんの瞳の色のサファイアと、オレの瞳の色のルビー。
肉体的な意味と世間体的な意味で一つには永遠になれないけど、心は一つだと言ったきったキラさんが同じ鉱物から採れた石をオレにプレゼントしたそのわけ。



(オレ達はやっぱり一つなんですよ、キラさん)



キラさんの手を指を絡め合わせて繋ぐ。
その繋いだ先からキラさんの温もりがオレに伝わり、ほら一つになった。



(こんな簡単なことでも、ちゃんと一つになれるんだよ……キラさん)



即物的にならなくても人間は一つになれる。
結ばれ合った掌をずっとずっと離さなければ、それだけでもういいのだ。
ずっとずっと、最期の別れがきても繋いだ掌を離さなければ。



「……永遠に一つになれますよ」
「シン?」
「オレ達は、こうやって掌を繋いでこれからも生きていくんです。これの何処が、一つじゃないって言うんですか?」



繋ぎ合わせた掌を掲げてオレは笑う。



「世間体なんかどうだっていいんですよ。要はオレ達が一つだと思うか思わないか、それだけなんですから」



ね、そう思うでしょう?キラさんも……。



「うんうんっ、そうだね……それが一番なんだよね?」
「………」



何度も頷いて見せるキラさんの後頭部を無言のまま引き寄せると、オレはキラを胸元へ押さえ付けてそっとその肩を抱き締めた。
泣いているキラさんに、泣かないで……と囁きながら。




















オレ達は、ずっとルビーとサファイアのように生きていくんです。
きっとね、キラさん。












END


アメジストが正解なんだろうが、同じという点からサファイアを選びました。テヘ☆←




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