設定資料集のようなものその2です。
これから4話使って、廃人基礎レベルの解説っぽいものをしていきます。ゲームをしてない方や、性格補正・努力値などがまったくわからない方向けです。
この世界にもゲームと同じく隠しステータスはございますのでそれを説明させて頂きますが、詳しい数値などは今後出す予定はございません。

HGSSの仕様をご存知の方には、そうじゃないだろ! と突っ込まれるくらい簡素なので、リョウはこういう認識でこの程度の廃人だとご理解頂ければ幸いです。
理解し辛いなどのご意見がありましたら、遠慮なく指摘して頂けると助かります。


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 ヒビキが特性の意味とか性格補正がわからないと言うので、ポケモン塾へ行くことになった。ジム戦前に塾講師のジョバンニ先生に捕獲され、説明も受けたがイマイチわからなかったらしい。

「最初はそんなもんだよ」
「リョウくんもわからなかった?」
「ああ。性格だけでも25種類あるのに、特性なんて数え切れないほどあって、効果もいろいろだろ? 今だって有名どころしか覚えてないよ」

 一応、病院にいる間に覚えてる限りの知識はノートに書き出してみたけど、穴だらけだったんだよな。

「性格補正ってのは、ポケギアで確認できる。例えばワカナは意地っ張りだから、攻撃が上がりやすくて特攻は上がりにくい」
「へー。攻撃と特攻ってなに?」

 あ、そっからか。

「うーん。じゃあまずはー、ステータスが6つあるのは知ってるよな」
「えっと、HP、攻撃、防御、素早さ、あとは特攻と特防、だよね」
「そう。6つのステータスはそれぞれ、なんだ、あー、HPはもちろんHPに、素早さは素早さに関係してて。攻撃、特攻は自分が攻撃する時に、防御、特防は自分が攻撃を受ける時に関係してて……ああ、うまく説明できないな。ちょっとまって」
「うん」

 自分は理解してるけど、改めて説明するとなるとなんて伝えればいいのかわからない。

「んー、まずは、攻撃と特攻から説明するな。そもそも攻撃と特攻は、技の種類に関係している」
「種類って言うと、タイプ?」

 ポケモンは自分のタイプ、属性、としか言い様がないものを持っている。代表的なところで、草、炎、水だろうか。草は炎に弱く水に強い、って感じで、それぞれ得意なタイプと苦手なタイプがある。タイプの種類は17種類だが、草と毒、なんて2つのタイプを持っているポケモンも存在するので、実際は17種以上だ。
 が、技の種類とタイプは関係ない。

「いいや、タイプの事じゃない。まず技の種類について説明するな。どんな技も、タイプに関係なく3つに分類される。物理・特殊・変化の3つだ。ヒビキもポケギア出して、ちょっと確認しよう。――この、漫画の吹き出しみたいなトゲトゲのマークが物理技、紫の二重丸が付いてるのが、特殊技」

 最初にチコリータの葉っぱカッターを、次にヒノアラシの火の粉を指差す。

「へー、これ、そんな意味だったんだ。ずっとなにかなーって思ってた」
「うん、俺も最初なんのマークがわからなかった」

 確か、ゲーム中でもこれの説明なかった、と思う。俺が知ったのネットで調べた時だったし。

「物理はそのまま、体当たりとか引っ掻くとか、あと葉っぱカッターは草タイプの物理技だな。特殊は火の粉とか水鉄砲とか、それぞれ炎タイプと水タイプの特殊技。ここまでOK?」
「うん」
「じゃ、最後。変化ってのはこう言う、丸の中にうにょっとしたマークの、灰色のアイコンのやつ」

 チコリータの鳴き声を見せながら言うとヒビキは頷いた。

「これはちょっと変わってて、相手の攻撃力を下げる鳴き声とか、自分の攻撃力をぐーんと上げる剣の舞、相手を毒状態にする毒の粉とか、天気を雨にする雨乞いとか、とにかく状態を変化させる技だな」
「……いっぱいあるね」

 ヒビキは引け腰になっていた。最初から詰め込みすぎたか?

「とにかく、まずはこれ覚えればいいから。物理技は攻撃の高さに比例する。特殊技は特攻の高さに比例する。物理にも特殊にも分類されないのは全部変化技と呼ばれる」
「それなら覚えられるよ!」

 最初から簡単にすべきだったみたいだなー。うし、なるべく省くか。

「じゃあ後はわかるな。防御と特防はなんだ?」
「うーんと、防御が高いと物理技を受けた時にダメージが少なくて、特防が高いと特殊技を受けた時にダメージが少なくてすむ」
「正解!」

 偉い? とはにかむので偉い偉いと褒めてやる。素直で向上心があるからやりやすいね。

「ステータスは他に素早さとHPがあるけど、これは説明しなくても大丈夫だよな?」
「うん。HPが0になるとポケモンは瀕死になる。だからHPが高いほど瀕死になりにくい。で、素早さが高いほどバトルの時に早く技をだせる」
「その通り」

 基礎はこんくらいでいいか。次は性格だな。

「次、ポケモンの性格補正についてだな。ポケモンは性格によって上がりやすいステータスと上がりにくいステータスを1つづつ持つ」
「それが性格補正?」
「そう。上がりやすいのは1.1倍、上がりにくいのは0.9倍になる。最初は微々たる差だけど、最終的にはかなりでかくなる。次の話はおおよその目安だと思って聞いてくれ。――例えばLv50で素早さが100だとする。補正なしの性格はそのまま100で、1.1倍なら110、0.9倍なら90になるよな」
「へぇ、かなり差が出るんだ。同じポケモンでも素早さが上がりやすい性格だったら先手が取れるんだね」
「だな」

 いろいろ計算とかあるから本当はこんな単純じゃないけど、それは必要になった時に自分で調べればいい。今はなんとなく、補正の有る無しの重要ささえわかればいいだろう。
 性格補正はレベルが上がる程、つまりステータスの値が大きくなるほど顕著になるんだけど、まあそれもその内でいいだろ。今話しても、実感が沸く頃には忘れちゃってそうだし。

「さらにその長所を伸ばしたいなら、努力値を気にしなきゃいけない」
「どりょくち?」

 あー、調べて無かったけど、努力値って名称あるのかな? ゲーム内では基礎ポイントって名前なんだよなあ。

「努力値ってのは俗称で、本当は基礎ポイントって言う。タウリンとか、ポケモンを育てる使いきりのアイテム手に入れたら説明読んでみ。基礎ポイントが上がるって書いてあるはずだから」

 傷薬とか人間が作ったアイテムの使い方はアイテムに書いてある。元気の欠片についても、鞄探ったら説明書出てきたしな。

「名称が違うだけで同じなんだ」
「そうだよ。俺は俗称の方がわかり安いから努力値って呼んでるけど」
「なんで?」
「努力して手に入れるもんだから」
「ふぅん?」

 よくわからないらしい。まだ説明してないから当たり前だ。

「素早いポケモンを倒すと、自分のポケモンも素早くなるのはわかるか?」
「そうなの?」
「そうなんだよ」

 まだ実感したことがないらしく、ヒビキはわからないと言った表情だ。

「コラッタばっか倒したら素早さが上がるし、オタチばっか倒すと攻撃が上がる」
「へええ、へええ」
「ただし努力値がどのくらい溜まったかは、経験値みたいに確認できない。実感できるのは、そうだな。レベルアップの時にステータスが4も5も上がった時か」

 ステータスは普通0〜3づつしか上がらない。しかし自分よりずっとレベルが低いコラッタとかを倒しまくってからレベルアップすると、一気に5とか上がる時があって、その時ばかりは努力値の存在を感じられる。

「そっか、頑張ったご褒美にステータスがいっぱいあがるから、努力値」
「そうだと思うよ」

 最初に呼び始めたやつを知らないから、本当のところは知らないけどな。まあ名称なんてどうでもいいや、次次。

「ここでようやく最初の話題に戻るぜー。性格補正だけど、ステータスで確認できる」

 ポケギアでチコリータのステータスを参照すると、攻撃の文字は赤く、特攻の文字は青くなっている。

「この赤い方があがるやつ。青いのはあまり上がらない」
「へええ、じゃあ僕のヒノアラシは……あれ?」

 自分のポケギアを覗き込んでクエスチョンマークを浮かべた。ヒノアラシのステータスはどれも色が変わっていないのだ。それについて補足を口にする。

「ヒノアラシの性格は照れ屋だったよな」
「うん」
「25種の性格の内、照れ屋を含む5種類はステータスに補正がかからない。後は各5種類づつ、HP以外に補正がかかるようになってる」
「HPは増えやすいとかないんだ」
「ああ。でもHPにも努力値は入るから、伸ばす事はできる」

 ただし同じ種族でも個体によってステータスの伸びやすさは違う。俗称で個体値と呼ばれる隠しステータスの存在があるからだ。
 最低限の上昇しかしない0から、最高の成長率を見せる31(なぜかVと呼ばれている)までの32の値がそれぞれのステータスに設定されている。これはそのポケモンの才能みたいなものだ。人間で例えるなら、同じ野球選手でも足の速さが違う、みたいなものだろうか。
 性格補正ほど重要ではないけれど、勝率を上げるには個体値も重要だと思う。ただし廃人要素が濃縮還元された話になるのは目に見えてるし、現実ではあまり気にしてもしょうがないものだと思う。ポケモン乱獲して強い個体値もつのを厳選するとかヒビキはしないだろうし。説明飛ばしていいかな。

「あとは種族値な。コラッタが素早いってのはもうわかってるよな」
「うん」
「他には、ホーホーはHPが多いとか、トランセルは防御が高いなんていうその種族のステータスの特徴、それを種族値って言う」
「ほうほう」

 ホーホーとほうほうかけた? とは聞かなかった。優しさのスルーだ。

「あとはー、なんだっけ」
「特性は?」
「あー、いっぱいあるから自分で経験してください」
「説明放棄ですか」
「放棄ですよ」

 一口に特性っつっても様々な効果がある。あんまり教えても覚えきれないと思う。んー、なんて説明すべきなんだろ。

「そーだなー。使い方次第ではバトルを有利にできる、それが特性かな。例えば俺らが貰ったヒノアラシ・チコリータ・ワニノコの特性は、それぞれ猛火・深緑・激流って名前だけど、実は効果が一緒だったりする」
「へー。そんなこともあるんだ」

 ゲーム開発会社のゲーフリ的に最初の3匹にはあまり差を付けたくなくてこうなったんじゃないかと思う。が、格差は確実に存在してんだよなー。例えばうちのチコリータ、ジョウトのジムはほとんど相性が悪かったりする。逆にワニノコはかなり良い。まあストーリーはレベルあげてごり押しすりゃーなんとかなるけどな!

「リョウくん?」
「あ、悪い、ぼーっとしてた。御三家の特性だったな。自分のHPが3分の1以下になると、自分のタイプの技の威力が1.5倍になる、って効果だ」
「へー!」

 これは素早さが高いポケモンと相性が良い。シンオウ御三家のゴウカザルがこの特性と先制技で猛威を奮ったし、対策が見つかった今でも十分強敵だ。猿こわい。

「後は、そうそう。特性を2つ持つポケモンもいる」
「お得だね」
「ん? あー、説明不足だった。1匹が2つ持つんじゃなくて、どちらか1つを持ってるんだよ。ポッポだったら鋭い目か千鳥足、どっちかを持ってる。捕まえる度に違う訳だな。クルルの特性見して」
「いいよー」

 ヒビキがポッポのステータスを見せてくれる。おー、やっぱ素早いなー。

「クルルは千鳥足か。混乱状態になった時、回避率があがるって特性だな」
「便利なんだか不便なんだか」
「もしかしたらピンチを逆転できるかもしれない、そのくらいの気持ちでいいと思う」
「りょうかーい」

 本当にね、たまに思わぬところで救われたりするからなー。ま、混乱自体はピンチの証拠だし、いったん引っ込めることも考えた方がいいと思うけど。

「ところでヒビキ」
「なあにー?」
「俺らどこ向かってんの?」

 街の東側にあるポケモンセンターから歩いて住宅地に突入した俺たちは、遠くにマダツボミの塔を望みながらもそれを通り過ぎようとしていた。

「知らない。僕、リョウくんに着いてきただけだよ」
「そうか……。ごめん、戻る」

 話すことに夢中で、いつの間にか塾を通り過ぎてたよ。

「あ、やっぱり?」
「気付いてたのかよ!」
「うん〜。なんかこっちに用事あるのかな? って思って」

 素直、天然、お馬鹿。どれを選ぶ?

「そうか。有り難うな。でも次からは教えてくれると助かる」
「うん、わかった」

 無邪気に笑うヒビキを責められる奴が居たら知りたいと思う。
 あ、ライバルは責めそうだな。ツンデレだし。


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