フォルスタでシリアスなSSです。
ナハトさんの素敵なイラスト「fall down」のイメージで書かせていただきました!
何だか済みません…途中から完全に妄想が暴走しました…←
どう言うシチュにしようか悩んだ末のこれです(おい)
*attention*
・フォルスタSSです
・シリアスなお話です
・ナハトさんの素敵なイラスト「fall down」のイメージで…
ですが、元々の素敵な作品を台無しにしていないか心配(おい)
・こう言うシチュが好きな星蘭が暴走しました…!
・結末的にどうなったかは…ご想像におまかせします(ぇ)
・ラストのポエムはおまけです。イメージ小説のイメージポエムです(おい)
・相変わらず妄想クオリティ
・ナハトさん、本当にすみませんでした…!
素敵なイラストのイメージで書かせてくださってありがとうございます!
では、追記からどうぞ!
「……書記長様」
フォルはベッドに横たわったままの彼に声をかけた。
その声が届くか否かなんて、関係なかった。
やはり彼は反応しない。
フォルはぎゅ、とスターリンの手を握る。
誰かが部屋に来るかもしれないとか、
見つかったら自分の身が危ないとか、
そんなことは一切、頭から消え失せていた。
唯々今は……目を閉じたままの彼を、呼び戻したくて。
―― 彼が"この事態"を知ったのは、ほんの数分前だった。
任務に出かけたまま帰ってこないスターリンを心配して、
彼は騎士……ラフの姿をとって、城の中を探した。
辺りが騒がしい。そう直感的に感じた。
何かが起きたのだということは想定がついた。
だから、彼が向かったのは……医療棟だった。
嫌な予感が外れてくれるよう、願っていた。
けれども、それは外れてなどくれなくて……
死んだように静かな病棟で唯一明かりが点っているその部屋に入って、
彼……フォルが目にしたのは、
ベッドに横たわったまま目を閉じているスターリンだった。
一体何が起きたのか。
そう、そこにいた緑髪の魔術医に訊ねた。
魔術、或いは呪術の一種ではないかと医療部隊長は話していた。
今日の任務は貴族の護衛任務だったはず。
おそらく、敵の中に優れた魔術師がいたのだろう、と。
精神的に不安定な者は、その手の魔術の標的になりやすい。
スターリンはその典型例だったのではないか、と。
かけられた魔術がどんなものかはわからない。
けれどもこうも深く昏睡しているとなると、
無理に起こせば精神に異常を来たしかねない。
何も出来ない、精神に干渉することはできない。
魔術医はそう言って言葉を切った。
フォルはその場に立ち尽くした。
緑髪の魔術医はスターリンと仲が良い"ラフ"に、
"暫く僕は部屋をあけます。此処にいてください"と言って部屋を出て行った。
気を利かせたつもりなのだろう。
フォルの変身術は直ぐに解けた。
そして、そのままにフォルはスターリンの手を握った。
フォル自身も呪術を使うが……
他人がかけた強力な呪術を簡単に解くことは出来ない。
彼に出来るのは、ジェイドが無理だといった"精神への干渉"くらいだった。
呼び戻そうと、そう思った。
それくらいしか自分に出来ることはないから、と……
***
―― ……!
必死に呼ぶ声が聞こえた。
堕ちゆく、意識の中で。
スターリンは薄らに目を開けた。
上に見えるは遠のいた世界。
下にあるのは一体なんだろうか。
果てなく堕ちるのか、それとも……
―― 嗚呼、それでも構わないかもしれない。
スターリンはぼんやりとそう思った。
落ちて、墜ちて、堕ちて……何処に行くとしても、どうでも良い。
もう全てが面倒だと、そう思った。
全てはそう、彼にかけられた呪術のため。
人の心の奥の闇に漬け込み、その身も心も囚え、封じてしまう恐ろしい呪術だった。
スターリンは元々色々と不安定なところがある。
心に深い傷を負った幼少期。
騎士となってからも、様々な面で苦難に直面してきた。
傷つくことも多かった。
自分の存在意義を見失いかけることもあった。
周りへの信頼と疑心。その間に揺れたこともあった……
それ故、だろうか。
彼も気づかぬ間に、呪術に絡め取られていた。
ただ、落ちていく。
冷たい冷たい、"何処か"へ。
―― ……!
さっきから聞こえる声は、誰のもの?
先刻からずっとずっと聞こえている声に、スターリンは怪訝そうな顔をした。
誰だろう。
自分をこうも一生懸命呼んでいるのは、誰?
と、その時。
自分の方に伸ばされた手が見えた。
差し出されている、白い手。
それは何だかとても懐かしいと、そう思った。
冷たい、冷たい、何かが下から体に触れる。
巻き付く。
逃げられないように、絡めとろうとするように。
その、刹那。
―― 書記長様!
一度、はっきり聞こえた。
聞きなれた、彼の声。
いつものように明るく甘えた声ではなく、切羽詰ったような声ではあるけれど、
間違えようがない。あれは……
「……フォル」
小さく、スターリンの口がその声の主の名を紡ぐ。
思い出した。
自分をいつでも守ろうとしてくれた堕天使の名前。
嗚呼、駄目だ。
これに絡め取られてはいけない。
帰りたい。帰りたい……
スターリンは一度強く、そう願った。
彼の手を握れば、彼はいつものように引き上げてくれるだろうか?
差し伸べられた手に触れようとした
あと少し。あと少しで、その手に触れる……
そう思った、その時。
―― 本当ニ ソノ手ヲ取ルノ?
聞こえたのは無機質な声。
優しいフォルの声をずっと聴いていたから、その声は酷く冷たく感じた。
スターリンはびくりと、動きを止める。
残酷な声は問いかけ、告げる。
―― ソンナニモ大切ナラバ……イッソ 彼モ共ニ堕トシテシマオウカ?
その言葉にスターリンは目を見開いた。
彼も共に、堕とす?この、冷たい世界に?
それは駄目だと思った。嫌だと、そう思った。
大切だから、愛おしいから……
口に出さずとも、彼のように伝えることは出来ずとも……
駄目だ。彼の手をとってはいけない。
抱いたのは諦めにも似た感情。
先刻のように何も考えずに居られたらどれほど楽だっただろうか。
そう思いつつ、再び目を閉じかけた……その時。
ぐい、と強くその手を引かれた。
スターリンは驚いて目を開ける。
無論、そこにいたのは……――
「フォル……?」
スターリンは驚いた声でその名前を呼んだ。
亜麻色の髪。サファイアの瞳を細める、堕天使。
自分に向かって手を差し伸べた、本人……
「やっと、捕まえた」
そう言って彼はスターリンをきつく抱きしめる。
スターリンは琥珀色の瞳を大きく見開いた。
彼は、何故此処にいるのだ。
否、嬉しい。嬉しいけれど……――
後ろから、"魔術"は迫っているというのに。
離さなければ。
彼だけでも"元の世界"に戻さなければ。
拒絶しなければ。
そう、思うのに……
フォルは、腕を緩めようとはしなかった。
「フォル、なんで、離して……」
「いやだ」
「だって、そうしないと、お前も……!」
お前も堕ちてしまう。帰れなくなる。
そうスターリンが訴えてもフォルの腕は緩まない。
かえって強く抱きしめられた。
「……君がいない世界に僕が生きる理由はない」
―― 君が望んでも望まなくても、僕は君と一緒にいる。
フォルはそう言って微笑んだ。
スターリンの虚ろな琥珀の瞳が涙に潤む。
「……馬鹿」
「馬鹿で構わない。
君のためなら、馬鹿にでも阿呆にでもなってあげる。
……堕ちるとしても、ずっと一緒だよ」
フォルはそう言って、スターリンにキスをする。
絶対に離れない。離さない。
その意志のこもった口づけに、スターリンの白い頬を伝う涙は増える。
抱きしめるフォルの背に、スターリンも自分の腕を回し、強く抱きしめた。
合わせられた唇からは確かに互いの熱が伝わっていた……
―― Fall down ――
(堕ちゆくとしても 君と共に)
(虚ろな瞳に滲む涙 これで良いのかと悩みつつ拒めない掌)
fall down
堕ちゆく意識 果てない闇の底へ
何も見えない 何も聞こえない
嗚呼それでも構わないと そう思い始めた
何も見えなければ 何も聞こえなければ
この体を この心を 傷つけるものも存在し得ないのだから
そう思い目を閉じようとした
それを許さなかったのは 遠くから聞こえる声
懐かしい 愛おしい 大切な者の声
目を開ければそこに見える 差し伸べられた掌
それをつかめば 自分は"元通り"に戻れるだろうか
けれども 残酷な声は言う
"ナラバ 彼モ 共ニ 堕トシテ シマオウカ?"
嗚呼 それはダメだとそう思った
伸ばしかけた手を下ろす
彼を堕としたくはない
この世界に囚われるのは 自分一人で充分だから
怖くなどない これが"最善"と思っているから
そう思うのに 嗚呼どうしてだろう?
求めてしまうのは その優しい掌で…
閉じられたままの瞼 目を覚まさない愛しの君
見えなくとも 聞こえなくとも
嗚呼構わないのだと そう思ったんだ
何も見えないのならば 何も聞こえないのならば
この声を この想いを 君のもとに届けるまでだから
そう思い強く君の手を握った
差し伸べた手を掴みかけたのは 他でもない君の掌
かけがえのない 愛おしい 大切な君
僕は更に手を伸ばす 彼がこの手をつかめるようにと
ほらこの手をとって? 一緒に帰ろうとそう呼ぶのに
残酷な声は告げる
"彼ガ オ前ノ 手ヲトルコトハ マズアリエナイダロウ"
嗚呼 誰がそんなことを勝手に決められようか
伸ばされた掌が下ろされる
優しい君は僕を守ろうとしているんだね
この世界に囚われるのは 自分一人で充分だと
怖くなどないよ 君を独りで行かせたりはしない
堕ちゆく時も 君と共にありたいと
君が求めてくれるなら 僕はいつでも傍にいるから…
Fall down 沈みゆく意識
その果てに何があったとしても
君が隣にいてくれるなら きっと怖くなどない
Fall down 堕ちたりとも永久に共に
そうあることが僕の願い…
そうあることを望んでも良いのなら…
さぁ 口づけで応えよう(応えてみせて)
その温もりだけは永久に失わないという誓いの証に…
2013-6-30 21:00