ジェイドとアレクのSSです。
今回は珍しくきっちり決着つかないまま(?)終わりました。
このふたりは仲がいいのですが、どうしても相容れないものがあるというか
ものの考え方が違うんだろうなぁ、と。
そんなことを考えつつ書いたので、
結構シリアスなままで終わったですが、
OKという方は追記からどうぞー!
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主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
ジェイドとアレクのSSです。
今回は珍しくきっちり決着つかないまま(?)終わりました。
このふたりは仲がいいのですが、どうしても相容れないものがあるというか
ものの考え方が違うんだろうなぁ、と。
そんなことを考えつつ書いたので、
結構シリアスなままで終わったですが、
OKという方は追記からどうぞー!
―― 遠い、昔の夢を見たのです。
静かで、暗い病棟に、一人佇む自らの姿。
握り締めた、両親から来た手紙。
思い出す、幼い妹の姿。
……嗚呼、もし叶うのならば。
窓から遠くを見る自分の背中を押してやりたい。
愚かしい、自分のことを……叱咤して……
今すぐ、今すぐ帰れと、言ってやりたかった。
***
―― ……いど……ジェイド!
肩を強くゆすられ、緑髪の魔術医の意識は浮上した。
はっとして、顔を上げる。
驚いた顔をした彼の瞳に映ったのは、茶髪の同僚の姿。
少し呆れたような、心配そうな顔をしている。
「大丈夫か、ジェイド。お前が居眠りは珍しいな」
「……眠って、いましたか」
どうやら、机に向かったままに眠っていたらしい。
アレクと自分以外に誰もいなかったことだけが幸いだった。
「びっくりしたよ。お前がそんな姿晒してるのなんか、珍しいからな。
というか、マジで大丈夫か?ちょっと顔色悪いぞ」
心配そうに覗き込むアレクの視線から逃れるように、ジェイドは顔を伏せた。
深く息を吸って、気持ちを落ち着かせる。
そして顔を上げると、ふるふる、と首を振ってジェイドは微笑んだ。
「平気、平気ですよ……」
「……声震えてんぞ」
呆れたようにアレクが言う。
ジェイドは目を見開いた。
「な……っ」
「気づいてねぇのか。おもっきり声震えてるっつの。ったく……
余計に心配だよ……どうしたんだよ、ジェイド」
お前変だぞ、と言いながらアレクはジェイドの瞳を見つめた。
ジェイドは小さく笑って、"アレクには敵いませんね"と呟くように言った。
「少し、昔の夢を見たのですよ」
「昔?」
「えぇ……リンが、体調を崩した時の夢を……
夢というか、記憶に近いものですかね」
ジェイドは苦笑気味に、そう返答した。
彼の発言に、アレクは少し表情を歪めた。
覚えている。あの時のことは、鮮明に。
「……まだ、気にしてたのか」
「いつまでも……消えないでしょうね。この後悔は」
そっと、自らの胸に手を当てるジェイド。
目を伏せた彼は、何処か痛むところでもあるかのような顔をしていた。
アレクはそんな彼の姿を見て、少し躊躇うように視線を外す。
言葉を探し、声をかけた。
「でも、お前の妹さん今は元気だろ?」
「えぇ……元気、といえるかはわかりませんが……
あの時のような状況ではありませんよ」
―― "あの時の状況"
その言い方が、また切なさをおびていて。
アレクは決まり悪そうな顔をして、頭を掻いた。
そのまま、言う。
「……気にするな、とは言えねぇけどさ」
「ふふ、わかっていますよ。
でも、やはり気にしないわけにはいかない。僕が、悪いのです……
でも、僕は……やはり、あの時の自分の行動が正しかった、とは言えないのです。
あの時の自分に会うことができたなら、迷わずに言ってやりますね。
"実の妹の命が危ない時にさえ傍にいてやれないような、
そんな情けない人間が医師であってはいけない"と」
静かな彼の言葉には悲痛の色が込められていて。
ジェイドはふっと笑って、言った。
「笑えませんよね。
親から、妹が体調を崩した。下手をしたら死んでしまうかもしれない……
そんな連絡があったにもかかわらず、僕は故郷に帰らず、仕事を続けた。
リンに、嫌われても、軽蔑されても当然なのに……
あの子は、僕をしたってくれるのですよ。健気に……
そんな兄であること、そんな医師であることが、
僕は時々……酷く、不安になります。
本当に、こんな僕が医師を続けても良いのか、と」
そう、ジェイドが気にしているのは彼の過去。
数年前……ジェイドの妹、リンは一度、死の淵に立ったことがある。
危険な状態だから帰ってこい、と親からジェイドに連絡があった。
しかし、その時既にセラとなっていた彼は……帰らず、仕事を続けたのだ。
そして今、彼はそれを悔いている。
リンが生きているにもかかわらず、だ。
もし、万が一に……リンが死んでしまっていたら。
彼は、本当に一生消えない十字架を背負っていかねばならなかっただろう。
もっとも、今も充分彼は苦しんでいるようだけれど……――
ジェイドの言葉を聞いて、アレクは顔を顰めた。
「あまり自分を追い詰めるなよ」
「ならば……ならば、誰を追い詰めればいいのです?
当事者は、他でもない……僕でしょう?
セラであり、リンの兄である、僕が当事者……
リンが危険な状態だという親からの連絡を聞いても、
この城にとどまり、騎士としての仕事を続けた僕が、当事者なのですから」
自嘲を含んだ笑みを浮かべる彼は、悲しげで。
後悔の色を灯した翡翠の瞳が小さく揺れる。
「……誰を、責めることもできない。
否、してはいけない……僕が、悪いことなのですから」
ジェイドは彼にしては珍しく早口にまくし立てると、少し咳き込んだ。
アレクはそんな彼の肩に手を置いた。
「落ち着け、ジェイド」
不安げな、若干取り乱した彼の表情を見るのは久しぶりで。
嗚呼、たまに此奴は精神的に脆いところを見せる……
それを思い出して、アレクは溜息をついた。
「……すみません、アレク……もう大丈夫ですよ」
"情けないところを見せましたね"と言ってジェイドは苦笑した。
アレクは小さく首を振って、その額を小突いた。
「おまえはどうしていつもそうなんだ?
周りに頼れる人間はいねぇのか?
相談して、助けてくれと言える相手は、いくらでもいるだろう?
俺でもいい、ルカでもいい、アンバーやクオンでもいい、
察しの良い部下だって仲間だってたくさんいるだろう?
なのに何で、全部ひとりでカタをつけようとする?」
「何で……何で、と言われても……」
「"それは僕の問題ですから"か?笑わせんな。いつもお前が言ってることだぞ。
"仲間の問題は僕の問題だ。だから、僕にも手伝わせてください"って。
なのに、当の本人が全部を自分ひとりで片付けようとするんじゃねぇや。
バカバカしい……んな説得力のない説教、今すぐ撤回しちまえ」
吐き捨てるように言って、アレクはジェイドの髪をぐしゃぐしゃと撫で回した。
"やめてくださいよ、アレク"と迷惑そうに言っても、やめない。
そのまま、ジェイドをまっすぐに見据えて、言った。
「頼れ。周りに頼れ。嫌なら嫌、怖いなら怖いといえ。
何かを後悔すんのは勝手だが、その所為で自分を追い詰めんな。
誰か……絶対に、お前を支えてくれる人間はいるんだから。
部下だからとか、自分が一番年上だから、とか関係ねぇ。
頼れる相手に、より書かれる相手に、頼れよ。
甘えることは別に、罪じゃねぇ。
……ほかでもない、お前が言ったことだろうが」
まっすぐな、茶色の瞳。
かつてのパートナーのその瞳を見つめ返して、
ジェイドは小さく微笑んだ。
「そう、ですね……確かに、僕が言ったことです。
でも、やはり頼り切ることはできませんよ」
「なんでだよ」
「僕がリーダーである以上、強くなければ。
貴方も、知っているでしょう?僕の部隊は幼い子が多い……
僕が不安げな顔をすれば、彼らはもっと不安になってしまう。
だから、僕は……」
パンっと乾いた音が響いた。
ジェイドは驚いたように目を見開く。
そのまま、そっと痛む自分の頬に触れた。
目の前には、鋭い目をしたアレクの姿。
アレクが言葉を続けようとした、ジェイドの頬を強くぶったのだった。
「もう勝手にしやがれ、馬鹿ジェイド!
テメェはずっと前から変わっちゃいねぇなッ!」
そう言い捨てて、アレクは足音も荒く部屋を出ていく。
ドアがバンっと大きな音を立てて閉まった。
ジェイドは暫し彼の出て行ったドアを見つめていたが、
やがてふっと笑みを浮かべた。
「……誰かに頬をぶたれたのなんて、随分久しぶりですね」
冷たい水からの手が心地よいと感じるほど、頬は熱を持っていた。
よほど強くぶたれたらしい。
「冷やさないと、あとから腫れてしまいますかね……
それこそ、誰かに見られたら大変です。
誰かが来る前に、なんとかしなくては……」
くすり、と笑ってジェイドは立ち上がる。
とにかく、教え子たちに心配をかけたくない一心で……
哀しいかな、アレクの思いは、届いていない。
ただひたすらに、教え子を思い、強い統率官を演じ、
皆の精神的支柱であることを願い、保とうとする彼を、
支えることができるものは……?
―― 相棒という距離は近すぎて ――
(心配しているのに何で手が先に出てしまったんだろう。
不安なのです。自らの過ちを話すことで相手を幻滅させはしないかと)
性 別 | 女性 |
年 齢 | 29 |
誕生日 | 7月27日 |
地 域 | 静岡県 |
系 統 | おとなしめ系 |
職 業 | サービス |
血液型 | AB型 |