ツイッターで書いたリハビリ小説です。
1400字以内に収めようと思ったら想像したより短くなりましたが、書きたいことは書けました…!
お題は以下です
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星蘭さんには「どうか許さないでください」で始まり、「私も同じ気持ちだった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字)以内でお願いします。
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では追記からどうぞ!
Side Sister
―― どうか許さないでください。
歌うように、彼女は紡ぐ。
一人きりの部屋の中、誰にも聞かれることのない場所で。
メイドも騎士も居ない、一人きりの部屋の中。
国という大きすぎるモノを背負う彼女が、ただの人間に戻れるごくごく僅かな時間。
その時間に、彼女は懺悔する。
その言葉が、想いが、全て私に伝わっていることは知らないままに。
ひっきりなしに打ちあがっていた花火も、漸く静まった。
街中の喧騒も、漸く落ち着いて。
町中に灯っていた夜店の明かりも一つ、また一つと消えて、いつも通りの街の様相に戻っていった。
この国が出来た記念日
それを祝う祭りは、この国の中で一番盛大に行われる行事だ。
花が飾られ、花火が上がり、様々な店が出る。
その主役である彼女も騎士たちに護衛されながら、街中を歩いた。
平和な国。
平和な街。
国民たちの祝いの声を、言葉を聞きながら、彼女はいつも通りに笑っていた。
……その表情に滲む微かな悲哀に気付いた者はどれだけ居たことだろう。
静かな部屋の中で彼女が手にするのは一枚の写真。
まだ幼い頃の彼女と、"私"が写る数少ない写真だ。
縁起が悪いと処分された"私"の私物や痕跡も多いというのに、片割れである彼女はそれを後生大事に持っている。
忘れない、忘れまいとするように、大切に、大切に。
棄てられないように大切に隠して。
そして、言葉を、懺悔を紡ぐのだ。
貴女を犠牲にした先に生きていること。
幸福に過ごしていること。
貴女を厭った国民を愛し続けていること。
それをどうか、許さないで、と。
悲し気な顔をして、彼女は言うのだ。
それを見て、私は思う。
犠牲にしたなんて思わないでほしい。
彼女を守りたくて私が勝手にしたことなのだから。
幸福に生きてほしくてしたことなのだから。
そう告げたくとも、私の声は届かない。
私の姿は、彼女には見えない。
だから、私はただただ、願う。
―― 許さないでほしい。
それは、私も同じ気持ちだった。
―― Never forgive me. ――
(貴女を独りでおいて逝ったこと。
貴女の笑顔を奪った癖に、貴女に笑顔で居てほしいと願っていること)
(嗚呼、どうか許さないで。
こんな残酷な想いを抱く亡霊(わたし)のことを)
2021-4-22 22:27