西さんの鹵獲能力に関するお話です。
フィアと西さんの絡みが書きたかったのです。
思えば、珍しいペアでした、共通点がないからかな←
*attention*
西さんとフィアの絡みメインの話です
後半はメイアンと西さん
ほのぼのなお話です
西さんの鹵獲能力について
フィアにとっては驚きの事態です
リアクションがちょっと兄貴と似てる(面白い能力だと思う)のは、まあご愛敬
後半はかわいい西さんが書きたかっただけです←おい
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
賑やかな、食堂。
亜麻色の髪の少年騎士……フィアは混み始めた周囲を見渡して、小さく息を吐き出す。
食後のコーヒーを飲んでいたところだったのだけれど、もうそろそろ出た方が良さそうだ。
そう思いながら、フィアはカップに残っていたコーヒーを飲み干した。
「ふぅ……戻るとするか」
そう呟いて、フィアは席を立つ。
食堂の中はごった返し始めていた。
食堂は食事時になると著しく混む。
それを、昔から此処に勤めているフィアはよく知っているのだ。
だから、早いところここから出ようとしていた。
今日は外での任務もなく、書類の仕事も早めに片付いた。
だから、食堂が混む前にと夕食をとりに来たのだ。
案の定知っている人間はいなくて、一人で食べることになってしまったけれど。
そんなことを考えていた時。
「おい!」
後ろから呼び止められた。
フィアはそれを聞いて振り返った。
「あ、西……どうしたんだ?」
フィアは小さく首をかしげる。
彼の目の前には背の高い黒髪の少年がたっていた。
彼……西はなにかを差し出しながら、言う。
「忘れ物だ。ダメだろ、これ忘れちゃ」
そういって、西は笑う。
フィアは"忘れ物?"と呟きながら視線をしたに落としていって……ぎょっとしたように目を見開いた。
というのも。
西が手に握っていたのは、フィアの魔術剣で。
「ちょ……馬鹿者手を離せ!」
こおりづけになりたいのか!
そう声をあげるフィア。
西はその声に驚いたような顔をしたが、すぐに笑みをこぼした。
「大丈夫だ、きにすんな」
そういって笑みを浮かべる西。
それを聞いてフィアは幾度もまばたきをして、彼の手元を見た。
やはり、彼の手元は凍っていない。
普通の人間なら、フィアの剣を握った瞬間に冷凍になるだろうというのに。
「……驚いたな」
フィアは素直な感想を漏らす。
まさか、自分の剣を素手で握れる人間がいるとは。
西はそれを聞いてくすっと笑った。
そしてフィアに剣を渡しつつ、言う。
「俺もビックリしたよ、こんな大事なもの忘れててさ。
ほら、忘れるなよ。俺以外の人間がうっかりさわったら大変だろ」
そういいながら西は笑う。
フィアは彼から剣を受け取ってから、ふっと笑った。
「そうだな、気を付けなければ」
そういって、フィアはいつものようにベルトに剣を戻す。
そして西の方を見て、いった。
「西も夕飯か?」
「あぁ。先に席をとっておいてくれって言われてな」
西はそういいながら視線を人混みの方へ向ける。
彼の視線の先を追ってみて、フィアは目を細めた。
彼の視線の先。
そこには、鮮やかな金髪の男性の姿があった。
西がいつも一緒にいる、この国の警察の一局長……メイアン。
今日は一緒に夕食をとれるらしい。
だから彼はこんなに嬉しそうなのかな、と思ってフィアは目を細めた。
「まだ今ならギリギリ座席も空いているからな。
せっかくだから、二人だけの方がいいだろうし」
相席になったら面白くないだろう。
フィアがそういうと、西は大きく目を見開いた。
それから、ぷいっとそっぽを向いて、言う。
「……別に、そうなったらなったで構わねぇんだが」
「ふふ、そういわず。
さっきまで俺が使っていた席が空いているから、そこを使えばいいだろう」
フィアはそういって、視線を空いている座席の方へ向ける。
先ほどまでフィアの"忘れ物"があったからか、まだそこは埋まっていなかった。
西はそれを聞いて、とりあえず自分の上着をひとつの座席にかける。
そんな彼を見て目を細めながら、"あぁ、やっぱり二人の方がいいのだろうな"と思いながら微笑んだ。
「じゃあ、俺は戻るから。ゆっくり食事をとってくれ。
これ、ありがとう」
フィアはそういって自分の剣を示す。
それを聞いて西はおう、と応じて手を振ったのだった。
***
「随分珍しい子と話してたのね」
夕食のプレートを二つとってきたメイアンは、開口一番そういった。
それを聞いて、西は首をかしげる。
「珍しいって……あぁ、フィアのことか」
先ほどまで話をしていた、この国の騎士。
それが珍しいと、メイアンは言うのだ。
それを聞いてメイアンはこくりと頷いた。
「彼……お城の天使さんでしょう?話したことあったの?」
「そんなに。でもアネットたちは親しいし、それなりに話はするよ」
西がそう答えると、なるほどね、とメイアンは頷いた。
そしてとってきたプレートをひとつ西に渡す。
「はい、これ竹一の分ね?」
遅くなってごめんなさい。
メイアンがそういうと、西は気にしてねぇよといってプレートに手をつけた。
二人で夕食をとるのは何だかんだで久しぶりだ。
いつもはメイアンが仕事を終えて軽く夕飯をとってから城に来ることが多い。
そのときは西もさきに夕食を食べてしまう。
だから、こうして二人で夕食をというのは珍しいことだった。
メイアンはそれを聞いて微笑む。
「確かにそうねぇ。嬉しいわ、一緒に食べられて」
「その原因を考えると、ちょっと……素直に喜び切れないけどな」
西はそういいながらちらりとメイアンの方を見る。
にこにこと笑っている彼だが、制服の下はまだ傷だらけなのを西は知っている。
メイアンが城(ここ)にいて、一緒に夕食を食べられている理由。
それは、メイアンが先日深手を負って、城で療養しているから、だった。
それを考えると素直に喜べない。
西はそういいながら、小さく切った肉を口に運んだ。
メイアンは彼の様子を見て微笑む。
そして、自分の分の食事を一口口に運んでから、いった。
「もう平気よ。だから、心配しないで?」
そういいながらメイアンは首をかしげる。
西は彼の言葉に、少し戸惑いつつ頷いた。
それでも、少しは心配だ。
何せ、彼は死にかけていたのだから。
メイアンも、そんな彼の思考を読み取ったのだろう。
ふわりと微笑むと、優しく西の頭を撫でて、いった。
「もう大丈夫よ。……心配かけて、ごめんなさいね」
そういって、メイアンは微笑む。
西はその手を感じて、ふっと息を吐き出した。
「……ありがとう」
そういってくれると安心する。
そういいながらもう一口食事を口に運んで……ぴたりとうごきを止めた。
「……メイアン、これ食って」
そういいながら、西はメイアンの皿にオレンジ色の固形物……基ニンジンを移した。
あらあら、とメイアンは苦笑する。
「ちゃんと食べないとここの栄養士さんに怒られるんじゃない?」
そういいながらメイアンはちらっと食堂の一角に視線を投げる。
此方を見ていないようだ。
それを確認して、西は言う。
「ニンジンは、ウラヌスの食べ物だ。人間の食べるものじゃない」
西はあっさりとそういう。
それを聞いて、メイアンはくすりと笑いながら、首をかしげた。
「あら、それを私に食べさせようって言うの?」
そんなメイアンの言葉に西はうっと言葉に詰まる。
別に、メイアンを馬扱いしている訳ではない。
……否、別に西にとって"馬扱い"は決してバカにしている意味にはならないのだけれど。
そう思いつつ、西が考え出した答えはといえば。
「……大人は食える」
「こんなときばっかり子供ぶって」
しょうがない子ね。
そういいつつ小さく笑って、メイアンは彼がお皿に移してきたニンジンを口には混んだ。
さんざん心配させたのだ。
これくらいの甘やかしは……許されるだろう。
今度、彼でもニンジンを食べられるような工夫をしてみようか。
でも彼のことだからどんなにすりつぶしても他のものとまぜても気づきそうだな。
そう思いながらメイアンは緑の瞳を細める。
西はそんな彼を見て不思議そうに首をかしげていたのだった。
―― 特技と好き嫌い ――
(あんな能力は、初めて見た。
俺の剣を素手でつかんでいる彼に、かなり驚いて)
(特殊な能力を持っていようが、関係ない。
苦手なものは苦手なんだ)