西さんとアネット、シストのお話です。
珍しいペアなのは、単に西さんに剣道をやってほしかったという…←
*attention*
西さんとシスト、アネットのお話デス
ほのぼのなお話です
本家Laurentia!設定のお話です
剣道部ネタ
剣道やったことないので雰囲気だけですが…←
西さんは剣道も出来るとのことで
珍しいペアになりました(笑)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
夕焼けに染まるグラウンド。
そこに走り抜けていく少年たち……
白黒のボールを追いかける彼を見て、西は目を細めた。
今日は、久しぶりにサッカー部に遊びに来た。
馬術部は練習が休みなのだ。
久しぶりに、友人……アネットのいるサッカー部に顔を出しに来たのである。
「お、久しぶりだな西!」
そんな明るい声が聞こえた。
西が顔を上げると、グラウンドで走っていた赤髪の少年……アネットが駆け寄ってきているところだった。
「おう、アネット!久しぶりだな!」
笑顔でそういう西。
アネットはにこにこと笑って……それから、ふと真剣な顔をした。
「あー、あのさ、西、お前剣道出来たりしないか?」
「え?いきなりなんだよ」
あまりに唐突な彼の発言に西はきょとんとした顔をする。
以前も、サッカーが出来るかといきなり聞いてきて、部活の活動場所まで連れていっただけのことはある。
そう思いながら西が問いかけると、アネットはちいさく息を吐き出して、言った。
「いや、お前この国の人間だろ?
だから、もしかしたら"ブドー"も出来るんじゃあないかと思ってさ」
彼曰く、日本人である西ならば剣道くらいできるのではないかと思った。
だから問いかけた、という。
それを聞いて西は瞬きをしながら、言った。
「まぁ、出来るけど……?」
それがどうかしたか?
西がそう言うと、アネットはぱぁっと明るい表情を浮かべた。
そして、いつかのようにぎゅっと西の手を握りながら、言った。
「じゃあ、さ、ちょっと手伝ってやってほしいことがあるんだ!」
「え?」
思わぬ発言に西はきょとんとする。
アネットはそんな彼の手を引いて走り出したのだった。
***
そんな彼が向かった先は、武道場だった。
さっき剣道が云々といっていたから、おそらくそれ関連だと思うのだけれど……
そう思いつつ、西は瞬きを繰り返す。
アネットはすたすたと歩いて、武道場に入っていった。
たのもー!と叫ぶ彼に苦笑しながら、西はそれについていく。
武道場の中では鋭い声と音が響いていた。
叫び声と一緒に響く竹刀がぶつかり合う音。
パシパシィッという派手な音と、甲高い叫び声。
むっとするような熱気を感じながら、西とアネットはひとりの部員の方へ歩み寄っていった。
「シスト!」
そう声をかける。
面に覆われた顔は見えず、西は少しだけ警戒した。
アネットに声をかけられたシストという名前らしい少年は動きを止めた。
そして竹刀をおいてから、面を外した。
ぱさり、と長い紫の髪が道着の上に流れる。
ふぅっと息を吐き出した少年……シストはアメジスト色の目でアネットを、そしてその隣にいる西を見た。
「お、アネット……どうした?あと、その人は誰?」
怪訝そうな顔をするシストだったが……すぐにぱっと表情を変えた。
驚き、戸惑いの表情を。
「え、その人、馬術部のエースじゃん。何でこんなところに連れてきてるんだよアネット先輩?」
ややからかうような声色で、シストはアネットを呼ぶ。
どうやら、シストと呼ばれたこの少年は二年生らしい。
アネットはそんな彼を見て小さく笑った。
そして西を示しながら得意げに言う。
「喜べシスト!練習相手、連れてきたぞ!」
「え?練習相手、って……」
シストは驚いた顔をする。
そのアメジストの瞳が、西の方を見た。
西はそんな彼に"西竹一だ"と自己紹介して、はにかんだ表情を浮かべた。
「え、本当に……?剣道出来るんですか?」
西が三年生なのも知っているのだろう。
シストは一応、敬語でそういう。
それを聞いて西は頬を引っ掻きながら、言った。
「あ、あぁできる、けど……俺も状況理解出来ないままに連れてこられたんだ。
……おいアネット、どういうことだよ?」
そう問いかける西。
それを聞いてアネットは"悪い悪い"と笑いながら、言った。
「うちの剣道部、あんまり部員がいなくてさ。
もうすぐ大会らしいんだけど欠席者も多くてなかなか対戦相手が組めないってシストから聞いてさ」
経験者なら相手をしてやってほしいって思ったんだ。
アネットはそういう。
西はそれを聞いて、やや呆れたような表情で言った。
「あのなぁアネット……俺確かに段位は持ってるけど現役の選手の相手が出来ると思うか?」
「出来る出来る!西は強そうだし!」
何故か自信満々にアネットは言う。
シストもふっと笑いながら、言った。
「段位持ってるなら十分だよ。
ちょっと、相手してくれませんか?手加減はある程度しますし」
そういって、シストは笑う。
アネットのような強引さはないが、何処か人懐っこい風はちょっと似ている。
西はそんな少年を見て"敬語は別にイイよ"と笑った。
「相手、してやるよ。でも別に手加減は良いぜ」
本気でかかって来いよ、と強気に笑う西。
それを見てシストは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに笑みを浮かべた。
「はは……良いぜ、じゃあ手合わせ願おうか」
そういいながら、シストは面を被り直す。
そして道着や防具のある場所に西を案内した。
「此処だ。
つけ方とかは、わかるよな?」
「あぁ。ちょっと体動かしてから、頼むよ」
怪我したら元も子もない。
そういって笑う西。
シストはそれを見て明るく笑いながら、頷いたのだった。
***
それから少しして、西は剣道の装備を身に付けた。
それから、軽く竹刀を振るう。
普段あまりしない装備に、しないスポーツ。
少し緊張するが、これはこれで、良い機会だ。
そう思いながら彼は小さく笑みを浮かべる。
そして、シストと二人向かいあって、礼をした。
主審の合図で、構えをとる。
そして、"始め!"の合図と同時、二人は声を上げて、激しく打ちあった。
シストは正直驚いた。
"現役選手相手に……"などといっていた少年が、かなりまともに打ち込んできたから。
力も強いし、型もしっかりしている。
打ち込んでくる時の隙もなかなか無いし……
そんな彼をみてシストは目を細めた。
「はは、これなら確かに手加減はいらないや」
そう呟いたシストはすっと目を細める。
そして真剣そのものの表情で、打ち合いを再開した。
なかなか決着がつかない。
そんな二人の試合を見て、周囲の部員たちも驚いたような顔をしていた。
暫しそんな時間が続いた後、シストが竹刀を止めた。
西もそれを見て、止める。
「おいおい、決着ついてないぞ」
「ははは、ついてないな……でも、此処で良しにしてくださいよ先輩。
後輩の前で経験者とはいえ部外の人間に負けたくない」
そういって苦笑しながら、シストは面を外した。
西は"ちぇー"といいつつ、面を外し、礼をする。
決着をつけなかったのは、互いに遊ぶような、戯れのような剣道になってきたからだ。
本気でやっていたのだが……
それがだんだんに、楽しくなってきてしまったのである。
「でも楽しかったよ、西先輩」
付き合ってくれてありがとう。
シストはそう言った後、彼に微笑み、言った。
「出来れば、俺以外の奴の相手もしてやってくれるか?
軽い打ち合いで良いからさ」
本気になることはないよ、という。
西はその言葉に少しだけ迷ってから、頷いた。
「軽くで良いなら付き合うよ」
そういって笑みを浮かべながら西は軽く汗を拭う。
そんな彼を見てシストも微笑み、もう一度面をつけ直す。
二人はそうして、再び竹刀を握り直した。
楽しそうな表情……
そんな彼らを見て、他の部員たちも何処か嬉しそうな表情を浮かべたのだった。
―― Enjoy… ――
(楽しい、楽しい部活動の時間。
人数が足りなくても、こうして助っ人が来てくれるから全然平気だ)
(初対面で、でもこんなにも話が出来て。
それが嬉しくてたまらないんだよ、俺も)