大佐殿とベルトルトお兄様とフィアのお話です。
大佐殿たちの特殊な?魔力を書きたかったのです←
*attention*
大佐殿とベルトルトお兄様とフィアのお話です
戦闘ネタです
シリアス…ではない
五線譜の上を滑る大佐殿と天使姿のフィアって絵になるなぁと
魔獣が気の毒かもしれない(笑)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当に澄みませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
青空も綺麗に澄み渡った、まさに秋晴れというような日。
その穏やかな午後を黒髪の少年たち……クラウスとベルトルトは二人で過ごしていた。
ゆっくりと、木漏れ日の降り注ぐ中庭で散歩する。
秋の花がちらほらと咲いているのを見ながら、彼らは互いの近況など他愛もない話をしていた。
「アレクサンダー兄さんもこれればよかったのにな」
そういいながらクラウスは目を細める。
それを聞いて、ベルトルトは苦笑を漏らした。
「またうるさいぞ、アレクサンダー……クラウスやぺルに僕だけ会いに行ったって知ったら」
ふ、と苦笑を漏らすベルトルト。
それを聞いてクラウスも小さく笑いつつ、たぶんそうだな、と笑ったのだった。
と、中庭を横切っていく少年の姿を見つける。
凛とした蒼い瞳の少年……フィア。
何やらはりつめた雰囲気の彼を見て、クラウスは声をかけた。
「フィア、今から任務か?」
そう問いかけてくるクラウスに驚いて、彼は足を止めた。
そしてベルトルトと一緒にいるクラウスを見て微笑みつつ軽く会釈を返す。
「えぇ、今から任務です」
「一人、なんだな」
クラウスがやや気遣わしげにそういう。
というのも、彼が一人で任務にでかけるということ事態が非常に稀であるからだった。
いつもなら、誰かしらが彼の傍にいる。
綺麗な紫髪の少年だったり、北方の書記長だったり、クラウスたちにとっては因縁の相手である悪魔であったり……
相手はともかく、誰かしらが一緒にいることが多いのだ。
そんな彼が一人でいること、しかもそのまま任務に向かうというのは、珍しい事態だった。
クラウスの言葉にフィアは苦笑する。
そして肩を竦めつつ、いった。
「俺も一人でいきたくはないのですが……いかざるを得なくて」
「?危険な相手なのか」
クラウスは真剣な表情でいう。
根が真面目で正義感が強い彼だ。
フィアがその実女性であることから働く騎士道精神もあいまって、放っておくことはできなかった。
フィアはクラウスの言葉に少し迷う顔をした。
それから、苦笑を漏らしつついう。
「空中戦になる可能性が多いにありなのですよ。その場合、戦闘が出来る人間が限られてくる」
「……総統閣下なら大丈夫なんじゃないか」
少し躊躇いつつクラウスはその人を挙げる。
彼は悪魔なのだから、悪魔化すれば空を飛ぶこともできる。
そうすれば戦えるだろう、と彼はいう。
しかしフィアはその言葉にゆっくりと首を振った。
「相手が悪魔属性寄りの魔力を使う魔獣なので、ヒトラー様ではダメなのですよ。
まぁ一人で戦えないこともありませんから」
大丈夫です、とフィアはいう。
それを聞いて少し考え込んだ顔をしたクラウスはすっと顔をあげてフィアを見つめた。
そしてそのまま、静かな声でいう。
「私も一緒にいこう」
「え?」
フィアは彼の言葉に驚いた顔をする。
クラウスは彼が断る言葉を吐く前に、いった。
「今日は私は仕事休みだから。書類もないし……」
「そんなシュタウフェンベルク殿に手伝っていただくのは却ってわるいですよ」
大丈夫ですよ俺は、とフィアはいう。
クラウスは彼の言葉に少し眉を寄せた。
「大丈夫、という保証もないだろう。一人だと何かと危険だろうし……
気にしなくてもいい……兄さんも、いいだろう?」
クラウスはそういいつつ、兄の方を見た。
強いていうならせっかく遊びに来てくれている彼に申し訳がないくらいだ。
ここで待っていてくれ、というのもなんだし。
そんなことを弟が考えているのに気づいたのだろう。
ベルトルトはふっと微笑んだ。
そして、優しく弟の頭を撫でながらいう。
「構わないよ。それに……僕も一緒にいくから」
にっこりと微笑んでそういうベルトルト。
彼の言葉にクラウスは驚いて目を見開く。
しかし彼がダメだ、という前にベルトルトはいった。
「空中戦になりうるんだろう?だったら、僕が傍にいた方がいいんじゃないかい?」
そうだろう?
ベルトルトはクラウスにそういう。
それを聞いて一瞬はっとしたクラウスは、すぐに"それもそうか……"と呟いた。
置き去りになっているのはフィアである。
彼はやや困惑した表情をベルトルトの方へ向けた。
そして彼が気を悪くしないだろうか、と思いつつ、いった。
「シュタウフェンベルク殿の実力はよく知っております。
しかし……失礼ながら、兄上は戦えるのですか?」
彼は、見るからに戦闘員ではない。
武器らしい武器も見受けられないし、戦っているところは見た覚えがない。
弱いとは思わないが……特殊魔力を使う魔獣である時点で、非戦闘員をつれていきたくはない。
フィアがそういうとクラウスはふっと微笑んだ。
そして大丈夫だ、という。
「兄さんには近づけさせないから」
「……頼もしいですね。まぁ、俺も極力サポートはしますが」
それでもフィアは渋い表情だ。
クラウスはそんな彼に"急いだ方がいいんだろう"と声をかける。
相手は魔獣。
一定のところにとどまり続けるということは、考えにくい。
早いところ移動した方がいいだろう、というクラウスにフィアは小さく息を吐き出した。
「……よろしくお願いします。急いで片付けます」
「焦りすぎて怪我をしないようにな。
兄さんも、私やフィアからあまり離れないようにしてくれ」
クラウスは兄の方へ振り向く。
ベルトルトは自分の性格を反映したようにやや過保護な弟に小さく頷いてみせたのだった。
***
そうして辿り着いたのはフィアが言いつけられた森の奥。
その空中からは確かに不穏な空気が漂っていた。
鳥の魔獣だというから、仕方ないだろう。
「やれやれ……可能性どころから飛ばせる気満々だな」
そういいつつフィアは魔力を解放して天使の姿をとる。
この姿はあまり好きではないのだけれど、空を飛ぶにはこの姿をとるしかないのだった。
そんな彼の魔力を感じたのだろう。
空中から甲高い声が聞こえたと同時に、なにかが急降下してきた。
「避けてください!」
そんなフィアの声に応じて、クラウスとベルトルトもその攻撃を躱す。
巨大な猛禽類の姿の魔獣を見てフィアは息を吐き出す。
そしてその魔獣を誘い出すように空へ舞い上がった。
「ほらこっちだ、かかってこい」
挑発するようにそういうフィア。
それを聞いてか、魔獣は声をあげて空へ舞い上がる。
暫しそれを見上げていたクラウスだったが、魔術で武器を取り出した。
そして兄の方へ振り向く。
「兄さん、頼んでも良いか」
真剣な声色でそういうクラウス。
それを聞いて、ベルトルトは微笑む。
「そのために僕もついてきたんだから……ほらいくよ!」
そんな兄弟のやり取りをフィアはみおろしていた。
いったいどうするつもりなのだろう、と。
と、そのとき。
ベルトルトが指揮をするように手を振った。
瞬間。
空間にさらりと流れ出す、五線譜。
魔力を感じるから、恐らく魔術なのだろうけれど……
こんな魔術を見たことはなくて、フィアは少し困惑する。
「気にしなくていい、フィア」
集中してくれ。
クラウスはそういうや否や、ベルトルトが出現させた五線譜の上を滑り……空中へ。
まるで、そこだけ道が出来たように、シュタウフェンベルクは空中を滑る。
流れる五線譜の上、まるで音符のように。
フィアはそれを見て青い瞳を見開いた。
「……実体があるのですね」
これは面白い。
そういいつつフィアは攻撃を仕掛けてきた魔獣を躱す。
クラウスはそんなフィアがいるような高さまで五線紙を滑ってくると、マスケットを構えた。
「これは、私たちが使う魔術でな……自分で使いながら戦えればいいんだが、片腕では無理で」
そういって、彼は苦笑する。
ベルトルトが下でクラウスの足元を維持するべく魔術を使っている。
なるほど、とフィアは思った。
「指揮しつつ戦うことは難しいですから、ね!」
そういいながらフィアは氷属性魔術を鳥に向かって放ち、動きを止める。
鋭い氷柱が魔獣の翼を貫いた。
甲高い悲鳴をあげてバランスを崩す魔獣。
じたばたもがくから、完全には止まらない。
止めは頼みます、という彼を見てふっと笑うと、クラウスは兄が空に張り巡らせた五線譜を滑り、マスケットに込めた破魔の魔力を放ったのだった。
―― 流れる五線譜と舞う羽と ――
(私たちだけが使えるその魔術。
まるでオーケストラを指揮するように振るう腕と流れる五線譜)
(空を舞う天使と五線の上を滑る隻眼の騎士。
その麗しさにはつい見とれるほどで)