赤髪金髪こらぼ&ワルキューレコンビのお話です。
そういえばそうだよな、という事態に呆然とするアネットとドSなライニさんです←
*attention*
ワルキューレコンビ&赤髪金髪こらぼのおはなしです
ほのぼのなお話です
決闘ネタなお話です
アネットはしばしば戦闘を挑むので…
そして驚きの事実
アネット相手に容赦ないライニさん
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
中庭に響く、激しい戦闘の音。
先程から、度胸あるもの以外は立ち入り禁止になりつつあるそこでは、隻眼の少年と赤髪の少年とが戦っていた。
無論、本気ではない。
……否、本気ではあるのだけれど、相手を殺すつもりで戦っている訳ではない。
あくまで訓練、なのだけれど……
彼らのやり取りは、本気だった。
アネットは本気で剣を振るって、隻眼の少年……シュタウフェンベルクは本気で彼を狙い、マスケットを使っている。
弾ける魔力。
アネットの剣とシュタウフェンベルクのマスケットがぶつかる音。
派手な音が響くその場所に自ら進もうと思う者は、そうそういなかった。
「っくそ、なかなか勝てねぇ……っ」
アネットは舌打ちする。
そんな彼を見て、シュタウフェンベルクはフッと笑う。
そしてもう一発魔力を射ち出しながらいった。
「降参してもいいぞ」
「冗談っ!」
アネットはそういいつつ一気にシュタウフェンベルクに距離を詰めた。
流石に、それに少し驚く。
僅かにのけぞったシュタウフェンベルクに向かって、アネットは剣を思いきり振るった。
僅かに、シュタウフェンベルクの前髪を掠めるアネットの剣。
それでも負けることなく、シュタウフェンベルクは自分に近づいたアネットにマスケットを向けた。
「近距離攻撃は、隙も大きいぞ」
「っ!」
アネットは慌てて彼から距離をとろうとした。
しかしそれより先に、シュタウフェンベルクがマスケットの引き金を引く。
派手な炸裂音。
周囲にいた人間もさすがに驚いて、目を覆った。
彼らが戦っていた場所には土煙。
アネットやシュタウフェンベルクの姿は見えない。
その土煙が晴れたとき……アネットは、地面に座り込んでいた。
そんな彼の鼻先には煙が上がるマスケットが突きつけられている。
どうやら、シュタウフェンベルクはアネットに向けたマスケットを直前に空に向けたようである。
暫しの、沈黙。
その後、アネットは"あぁああ"と声をあげた。
「……っくそ、負けた!!」
アネットはそう声をあげて、取り落としていた剣を拾い上げる。
シュタウフェンベルクはそんな彼を見てふっと笑うと、マスケットを下げて座り込むアネットに手を差し出した。
「でもやはり強いな、アネット」
シュタウフェンベルクはアネットにそう言う。
アネットは"そういわれても素直に喜べねぇよぉ"といいつつ彼の手をとった。
「くっそ、絶対いつか勝つ、いつか負かす!」
そう宣言するアネット。
シュタウフェンベルクはそんな彼に"いつでも受けてたとう"といって微笑んだ。
と、そんなアネットの方へ歩み寄ってくる美しい金髪の少年。
長いそれをなびかせた彼はアネットの頭を軽く小突いた。
「相変わらず隙が多いですね」
金髪の彼……ハイドリヒは溜め息混じりにそういう。
アネットは彼の言葉にむぅっと頬を膨らませた。
そして、拗ねたような声色で言う。
「シュタウフェンベルクさんくっそ強いんだぞ、ラインハルト」
「強くとも彼は正式な"戦士"ではないんですからね」
ハイドリヒは釘を刺すようにそう言う。
アネットは彼の言葉にきょとんとした顔をした。
「どう言うこと?」
そう問いかけるアネット。
ハイドリヒはふぅと溜め息を吐き出しつつ、いった。
「貴方がしばしば訓練を申し込んでいる相手の大半が、貴方のような戦闘要員ではない、という話ですよ」
そういいながら、ハイドリヒはアネットの頭を小突いた。
いて、と声をあげる彼にハイドリヒはいった。
「私は警察官僚ですし、シュタウフェンベルク大佐は参謀将校ですし……
バロン西ぐらいですよ、負けていいのは……ま
あ彼も騎兵科らしいですから歩兵戦で負けてたらあなたの取り柄ってなんでしたっけってなりますけど」
彼はアネットがしばしば戦闘を申し込む人間の名をあげて言う。
アネットは彼の言葉にがっくりと肩をおとした。
「うう……ラインハルト辛口ー……」
もう少し慰めてくれてもいいじゃんか、とアネットは言う。
シュタウフェンベルクも、彼の方へ駆け寄ってきていた金髪の副官……ヘフテンもそんなアネットを憐れんでいた。
しかしハイドリヒはなお容赦ない。
彼はヘフテンを示しつつ、いった。
「そこの中尉に至ってはここでいうアークに相当しますから格下ですよ、あと彼の前職を教えて差し上げましょうか?」
その言葉にアネットはガーネットの瞳を瞬かせる。
そしてヘフテンの方を見ながら首をかしげた。
「え?ヘフテン何やってたんだ?ずっと軍人じゃないのか?」
そう問いかけるアネット。
器用に爆弾や小銃を使ってのけるヘフテン。
てっきり彼も、ずっと軍人をしていたと思っていたのだ。
しかしヘフテンはあっさりと、彼の考えを裏切る言葉を吐いた。
「ええ、はい!銀行で弁護士をしておりました!」
笑顔でそう答える彼。
それを聞いて、アネットは目を丸くして固まった。
「……まじか」
そう呟いたアネットはがっくりとうつ向く。
これは、しばらく立ち直りそうにない。
そう思いながらヘフテンは慌てて、彼を励ました。
「ぼ、僕のは爆弾とか自動小銃ですから……!
剣だと苦手なのでアネットさんが絶対勝ちますって!」
今まで剣では戦ったことがない。
それを考えると、もしかしたら……
そう想ったアネットが少し顔をあげかけたところで、ハイドリヒはいった。
「剣で負けてたらいよいよ擁護できませんし、なんなら合わせるべきは中尉ではなくあなたの方だと思いますが」
そこのところどうなんですか、とハイドリヒ。
アネットはそれを聞いて……完全に沈んだ。
「言い過ぎでは……」
「事実しかいっていませんよ、私は」
ハイドリヒはシュタウフェンベルクにさらりと返答する。
ヘフテンは黙り込んで固まってしまったアネットを必死に揺すって、いった。
「だ、大丈夫ですって、アネットさんは十分強いですよぅ」
「でも、非戦闘員に負ける戦闘部隊って……」
「そう言うときだってありますって、それにほら、アネットさんは手加減してますし!」
ヘフテンは必死に彼を励まそうとするが、横からハイドリヒが"手加減はあなた方もしているでしょう"という。
その度に結局アネットも沈んでしまうのだった。
「ぅうう……」
小さく唸るアネット。
これは、本気で拗ねたか。
下手をしたら泣き出しかねない彼。
そうしたらどうして慰めようか、と思うと同時……
「任務ないかアレク様に聞いてくる!!」
アネットはそう言うと同時に中庭から飛び出していった。
その背中を見てシュタウフェンベルクとヘフテンは唖然、ハイドリヒは溜め息を吐き出す。
「ほんとに、極端なんですからあの人は」
「……お前がからかいすぎた結果な気がするが」
シュタウフェンベルクは小さく呟く。
ハイドリヒはどこ吹く風で軽く自分の髪を撫で付けた。
いつのまにか任務に出掛けていたアネットがぼろぼろで帰ってきてハイドリヒに別の意味の説教を食らうのは、また別の話。
―― 戦闘員と… ――
(知らなかった事実。
俺が負けちゃいけない相手じゃねぇかよ!)
(強くなりたいとそればかりを望む少年。
彼らしいと言えばらしいのだけれど…少々極端な気がする)