ヘフテンさんとブランのお話です。
ノアに放置されて怪我をしたブランが保護されたあとの話です。
ヘフテンさんにはなつくブランです(笑)
*attention*
ヘフテンさんとブランのお話です
ほのぼのなお話です
状況的にはシリアスだけど…
ヘフテンさんにはなつくブランです
そしてそんな彼を甘やかすヘフテンさんであってほしい
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
ディアロ城の医療棟……
その一室の前に立ちながら、金髪の少年……ヘフテンは小さく息を吐き出す。
そしてよし、と自分自身に気合いを入れるような声をあげると、そっとドアを開けた。
刹那、飛んでくる炎属性の魔力。
それを上手く自分の魔力で打ち消しながら、彼は苦笑を漏らす。
「ブランシュさん、僕ですよ」
そう、ベッドに寝かされている少年……ブランに声をかける。
ヘフテンの声を聞いて、驚いたような顔をして彼は体を起こした。
「ヘフテン……?」
どうして此処に、と呟くように言う彼。
ヘフテンは彼にゆっくりと歩み寄ると、優しく頭を撫でた。
「ブランシュさんが怪我をしたって聞いて、心配で来たんです。
大丈夫ですか?まだ痛いですか?」
心配そうにそう問いかけながら、ヘフテンはそっとブランの腕を撫でる。
ぐるりと包帯が巻かれている腕。
身体中にあるであろう傷。
それゆえに、ブランシュは此処に保護されているのだった。
その話は、すぐにヘフテンの耳にも入った。
それと同時、ブランがジェイドの治療を拒否していると言う話も。
ブランは元々ディアロ城の騎士たちとは敵対していた。
その負い目故か、或いは……彼が慕う人間がこの騎士団を嫌っているからか、ブランはジェイド含め、この城の騎士たちを拒絶しているようだった。
治療は魔力を駆使してどうにかしたらしいが、予後の様子見が出来ない。
それに困り果てた医療部隊の騎士に呼ばれたのがヘフテンだった。
ヘフテンが最近ブランとコンタクトをとっていることは知れていた。
その話を聞く限り、ブランが彼にかなり心を許していると言うことも。
それ故に、彼ならばもしかして、とヘフテンが呼ばれたのである。
どうやらそれは正解だったようだ。
ブランはおとなしくヘフテンに撫でられている。
少し迷うような表情ではあるが、拒絶する風はなかった。
ヘフテンはそれにややほっとしつつ、微笑んだ。
そして優しくブランの頭を撫でてやりながら、いった。
「でも、よかったです。大丈夫そうで……
お城にいるんだったら、いつでも会えますね?」
「!いつでも……?」
ブランは瞬きをした。
そんな彼を見つめて頷きながら、ヘフテンは言う。
「そうですよぉ。僕は此処でお仕事をしていますから」
此処にいるんでしょう?
ヘフテンは無邪気な風で彼に問いかけた。
―― 話は聞いていた。
彼が怪我を負った理由。
それは、彼が慕う人物からの命令による仕事。
その途中で怪我をして放置されたらしい、とジェイドはいっていた。
そんな状態なのに彼をあちらに返す訳にはいかない。
だから、捕虜にすると言う形で"保護"していた。
ブランはそれから逃げ出そうとしたらしい。
それを止めるためにヘフテンが来た、と言うのもある。
「また会いに来ていいですか?」
せっかくいつでも会えるんですから。
此処にいるんですよね?
そう問いかけるヘフテンに、ブランは視線を揺らす。
どうしよう、と思った。
……"嬉しい"と思った。
自分をこうして心配してくれる、会いに来てくれると言う人がいたことが。
「……仕方ない、なぁ……此処に、いてあげるよ。
だから、また会いに来てよ」
あ、いい間違えた、と思った。
遊びに来てもいいよ、といいたかったのに"会いに来て"と素直な感情が漏れて。
それを聞いてヘフテンは微笑む。
そして優しくブランを撫でながら、"ケーキでも持って来ますよ"といってやった。
と、視線がブランのベッドサイドのテーブルに向いた。
そこには数冊の絵本が積み重なっていた。
恐らく、ブランのためにジェイドが持ってきたものだろう。
「本、読んでたんですか?」
そう問いかけるヘフテン。
それを聞いてブランはきょとんとした顔をした。
それから視線をベッドサイドの絵本に向けてから、ゆっくりと首を振る。
「読めない、絵は見れるけど」
「え?」
今度はヘフテンがきょとんとした。
読めない、とはどういうことだろうか?
そんなヘフテンの言葉を聞いて、ブランは俯く。
そして、ポツリと呟くようにいった。
「僕、字読めないもん」
そう呟くように言うブラン。
彼は少し拗ねたような顔をしていた。
―― そう。
彼は文字を読み書きすることが出来ない。
多少はわかるが、本を上手く読むことは出来ないのだ。
ジェイドがおいていってくれた本は絵が綺麗だから見ていたけれど……
そう言うブランにヘフテンは幾度もまばたきをする。
それからふわりと微笑んで、ブランの黒い瞳を覗き込みながら問いかけた。
「読みましょうか?」
「え?」
ヘフテンの言葉にブランは驚いた顔をする。
そんな彼を見つめつつ、ヘフテンは首を傾げて、言う。
「僕、弟だったから読み聞かせはしてもらえてもしたことないんですよぉ。
だから、ちょっと憧れてて」
そう言ってにこにことヘフテンは笑った。
ブランは彼の言葉にぱちぱちとまばたきをする。
そして、少し照れ臭そうに目を伏せながら、ボソボソといった。
「べ、別に、いいけど……読んで、くれるの?」
そういいながらブランは視線だけあげてヘフテンの様子を窺う。
ヘフテンは彼の問いかけに微笑んで頷きながら、絵本を手に取った。
「この絵本が一番お気に入りなんですか?」
幾つかある本のなかで一番上にあった。
そして何度も開いたように少しカバーの端が破けている。
どうやらこれが気に入りらしい、と思いつつヘフテンがそう言うと、ブランはこくりと頷いた。
「その本が、一番絵が綺麗なんだ」
だから、好き。
ブランは少し照れたようにそう言う。
"好き"という言葉を口に出すのが照れ臭いのだろう。
そう思いながらヘフテンは目を細めて、絵本を開いた。
その絵本は確かに綺麗な絵の本だった。
一匹の黒猫が街のなかを冒険する話だ。
賑やかな町並み。
お洒落なお店。
そんなものをみながらブランは目を細めている。
「いいですよねぇこういうお店」
可愛いです、とヘフテンは笑う。
こういうお店にブランと、或いは恋人であるシュタウフェンベルクと一緒にいきたいものだ。
そんなことを考えながら。
「お店って、色々あるんだね」
絵ではみてたけど何処がなんの店なのかは絵でしかわからなかった、とブランは言う。
そうですかぁ、といいながらヘフテンはいった。
「色々ありますよ。
ディアロ城の城下町にもお洒落なおみ背や美味しいお店がたくさんありますね」
僕はそこまで詳しくないですけどね、といってヘフテンは笑う。
ブランはそれを聞いて"ふぅん"と小さく声をあげた。
「僕もあんまりちゃんと知らないな」
いったことないし、とブランは呟く。
今まであまり買い物にいったことはない。
お菓子屋には最近よくいくようになったが、それでもあまり買い物にはでない。
だから、こういった店は絵本の中にあるものだった。
……少し、憧れる。
色んなものを買える店に。
そして何より……
―― 誰かと買い物に行けたら……
そう思いながら、いつも本を眺めていた。
誰かと、一緒に買い物にいくのを楽しみにして。
そんなことをふわふわと考えていれば、眠たくなってきた。
傷は大分塞がってきたが、まだ体力が回復していないらしい。
ヘフテンもそんな彼に気がついたらしい。
ふわりと微笑んで、彼はブランにいった。
「寝てていいですよ。僕が、読み聞かせていますから」
それをBGMがわりに、とヘフテンは言う。
ブランはその言葉に甘えながらとろとろと眠ったのだった。
―― 憧れ、求めて ――
(ほしいって、望んでもいいのかな。
僕を思ってくれる人を、優しくしてくれる人を)
(買い物だって、お出掛けだってしてみたかった。
それを僕が望んでいいのかわからなかったけれど)