ワルキューレコンビメインでのお話です。
通称眠り姫病、と呼ばれる病気のオマージュでのIFパロです。
あくまで創作であり実際の病気などとは無関係なのでなのでご了承を。
*attention*
ワルキューレコンビメインの話です
シリアスなお話です
IFパロです
眠り姫病にかかった大佐殿
それを健気に看病?するヘフテンさんが書きたかった
あくまでパロ
健気なヘフテンさんが書きたかっただけです←おい
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
静かにベッドに眠る、隻眼の少年……
彼の傍に椅子を置いて腰かけているのは、鮮やかな金髪の少年……ヘフテン。
彼はそっとベッドの上の彼……シュタウフェンベルクの額を撫でていた。
慈しむように、いたわるように……――
「大佐……」
優しく呼びながら、そっと彼が頬を撫でた、その時。
軽いノックの音が響いた。
ヘフテンは顔を上げて、ドアの方を見る。
「どうぞ」
そう返すと、ドアが開いた。
長い緑髪の男性が部屋に入ってきて、ヘフテンは目を細める。
「ジェイドさん」
入ってきたのはこの城の魔術医……ジェイド。
彼はヘフテンに軽く会釈すると、シュタウフェンベルクの方に歩み寄った。
「様子は、変わりありませんか?」
「えぇ。さっき、少し起きていたのでスープを飲んでもらいましたよ」
"今日はいつもより少し多く食べれましたよ"とヘフテンはいう。
ジェイドはそれを聞いて翡翠の瞳を細めた。
「そうですか。
ならば、点滴を打つ必要はなさそうですね」
良かった、とジェイドは言う。
それから少し表情を暗くして、ヘフテンに問いかける。
「……今日で、何日でしたっけ」
「十日、ですかね。……今回はちょっと長いみたいですね」
そういってヘフテンは苦笑する。
換気のために開けている窓から風が吹き抜けていった。
最近は、此処……シュタウフェンベルクの病室がヘフテンの部屋と化していた。
その理由は、シュタウフェンベルクがある病に罹ったから。
あの日以来、ヘフテンはずっと此処で、シュタウフェンベルクの様子を看続けているのである。
***
それが起こったのは、ある任務の直後だった。
「今日は早く終わって良かったですね、大佐」
そうヘフテンは彼に笑いかけた。
シュタウフェンベルクもそれを聞いて、"そうだな"と微笑んでいた。
いつも通りの、やり取りだった。
いつも通りの一日だった。
そのはずなのに……
少し、二人の距離が空いた時。
不意に、後ろでどさりと何かが落ちる音……基誰かが倒れる音がした。
ヘフテンは驚いて振り向いて……目を見開いた。
「大佐?!」
思わず驚きの声を上げた。
その理由は、シュタウフェンベルクが倒れこんでいたからで……
さっきまで普通にやり取りをしていた。
辛そうな様子も一切なかった。
それなのに、どうして?
「大佐、大佐!!」
彼に駆け寄ったヘフテンは必死に彼を呼んだ。
怪我をしたのか?
気づかないうちに魔術をかけられた?
一体どうしたの?
そう思いながら揺らして……気づく。
どういうわけか、彼は眠っていた。
ただ、静かに、深く。
そんな彼の様子に驚きつつも、ヘフテンは急いで助けを呼んだ。
小柄(シュタウフェンベルクに比べて、だが)なヘフテンでは城まで彼を運べなかったから……――
そうして助けを呼んで、すぐに医療部隊の騎士に診てもらった。
そして発覚したのは、彼が魔術にかけられたわけではないということ。
「それは、一体どういうことですか?」
困惑しつつ、ヘフテンはジェイドに問いかけた。
彼の問いかけにジェイドは言いづらそうに目を伏せた。
それから溜息まじりに、事情を説明した。
彼の症状は魔術の所為で起きたわけではないこと。
これは、ある種の病気であること。
……その病気に明確な治療法がないこと。
ただ、眠り続ける。
それがシュタウフェンベルクの症状だった。
ただ、長く眠るというだけでない。
薄く意識がある時もあり、その時に食事をとったりトイレにいったりすることは出来る。
だから、死ぬような病気ではない。
その旨を聞いて、ヘフテンは少しほっとした顔をした。
死ぬような病気でなくて良かった、と。
「それなら……」
―― 僕がいつだって支えます。
そういって、ヘフテンは微笑んだ。
寝入ってしまっているシュタウフェンベルクを優しく撫でながら……
支える、とはいっても簡単な話ではなかった。
眠りについてしまったシュタウフェンベルクがいつ目を覚ますのかは、わからない。
二日で目を覚ますこともあれば、一週間目を覚まさないこともあった。
それに……
目を覚ました時、彼はいったのだ。
"どうしてそんな心配そうな顔をしているんだ?"と。
……彼は、知らなかった。
自分が何日も寝入ってしまっていたことを。
それを聞いた時彼は愕然とした顔をしていた。
自分は、そんな病気に罹ってしまったのかと。
そんなにヘフテンに、ジェイドに、いろんな人に迷惑をかけてしまったのかと……――
そんな彼にヘフテンはいった。
"大丈夫ですよ"と。
優しく、穏やかな声で。
それから、ヘフテンが彼の面倒を見る日々は続いている。
シュタウフェンベルクが起きている時も、眠っている時も……
***
ジェイドが部屋から出ていくと、ヘフテンはそっとシュタウフェンベルクの頬に口づけた。
そして、一度微笑む。
「大佐、今回はちょっぴりお寝坊なんですね」
大佐らしいですけど、なんて少し軽い口調で言う。
今日は仕事という仕事もない。
ずっと、シュタウフェンベルクと一緒に居られる。
そう思いながら……
「ん……」
小さくシュタウフェンベルクが呻いた。
ヘフテンはその声にはっとする。
そして、"大佐?"と優しく彼に声をかけた。
ゆっくりと瞬く、シュタウフェンベルクの青い瞳。
それにヘフテンの姿が映る。
「ヘフテン……」
寝ぼけたような声でシュタウフェンベルクは彼を呼ぶ。
ヘフテンはふわりと微笑みながら、優しく彼の額を撫でた。
「おはようございます、大佐」
「……どれくらい、寝ていた……?」
おはよう、ではないことをシュタウフェンベルクは理解している。
だから、目を覚ますと同時にそんなことを言った。
少し、怯えたような表情で。
ヘフテンはそれを見て一瞬眉を下げる。
しかしすぐに笑みをうかべて、いった。
「十日くらいですかね?」
軽い調子でそういうヘフテン。
それを聞いてシュタウフェンベルクは眉を下げた。
そして、ふっと息を吐き出す。
「月の三分の一を……寝て過ごしてしまった、のだな」
その間に一体どれだけのことが起こっただろう。
その間に、自分が出来なかったことは一体どれくらいあっただろう。
その間に……いったいどれだけヘフテンに迷惑をかけただろう。
そう思い、瞳を揺らすシュタウフェンベルク。
彼の気持ちを汲んだように、ヘフテンは微笑む。
そしてベッドの上に体を起こした彼をぎゅっと抱きしめた。
「……だいじょうぶですよ、大佐。何も変わっていませんから」
そういって微笑むヘフテン。
しかし、シュタウフェンベルクの表情は晴れない。
ふるふる、と彼は首を振った。
そして、掠れた声で言う。
「少しずつ……目が、醒めなくなっていくのかもしれない……」
「そんなことないですよ。
この前は、普通に起きてられたじゃないですか」
この病は、いつまでもずっと眠り続けるわけではない。
眠り続けてしまう期間があるだけで、普通に過ごせる時期もある。
ただ……
そのコントロールが利かないのだ。
本人も、どのタイミングで深い眠りについてしまうのかがわからない。
それが、シュタウフェンベルクにとって何よりの恐怖だった。
ヘフテンもその不安はよくわかっている。
だからこそ、明るい声色で言った。
「大丈夫ですよ、大佐!
ほら、折角目が覚めたんですから、らぶらぶしましょうよぉ」
そういいながらヘフテンはシュタウフェンベルクに軽いキスをする。
ぎゅっと抱き付いてくるヘフテンの背に、彼はおずおずと手を回したのだった。
―― お伽噺ならば… ――
(それはまるで、眠り姫。
でもそれはおとぎ話のようにロマンチックなものではなくて)
(少しずつ、少しずつ、自分が世界から取り残されていく気がする。
その不安が、胸を占めていって…)