大佐殿とフォルのお話です。
祓魔師であるが故に思い悩む大佐殿とそれをからかうフォル的な…
この二人の絡みも好きです←
*attention*
大佐殿とフォルのお話です
シリアスなお話です
自分は二の次、という性格の大佐殿だからこその悩み
静かな教会でのやり取りって好きです←
大佐殿に言葉攻めしまくるフォル
強くあろうとしつつも実は脆いとかいいなと
何か抽象的
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
神秘的な雰囲気を湛えた、深夜の教会……――
そこに一人跪く、黒髪の少年……シュタウフェンベルク。
今日は、眠れなかった。
だから、そのまま外にこうして出かけてきて……
うち捨てられたような、静かなこの教会までゆっくり歩いてきたのである。
この国の騎士は、そこまで信心深い方ではないのだろうか。
そう思いながら、彼は埃が積もった祭壇の方へ歩み寄った。
少し割れたステンドグラス。
それが床に散らばっている。
色とりどりの欠片。
それを、月明かりが照らしている。
その様子を見て、シュタウフェンベルクは目を細める。
何処か、寂しげに、悲しげに……――
忘れられた、存在。
そんな呼び方が正しいような、教会……
それを見つめていると、切なくなっていく。
何だか、それに自分が重なって見えるのだ。
自分……否、"自分の未来"が。
遠い、否、もしかしたら近いかもしれない、未来。
そこにある、自分の姿が重なって見えた。
きっと、この教会も昔は、人であふれていたのだろう。
ミサが開かれ、祈りを捧げる人で、溢れていたはずだ。
しかし、今はこの状況。
役目を終え、廃れ、忘れられていく……
―― 嗚呼、きっと私もそうなるのだろう。
近からず遠からず、そうなる運命なのだろう。
"悪を滅ぼす"という役目を果たした後、自分は消える。
そして、忘れ去られていく存在……
それで構わないと、思っている。
その覚悟は出来ているつもりだった。
……けれど。
実際そうなったときの事を考えるのは、少し怖いと思った。
「こんな真夜中にどうしたの?」
不意に聞こえた、声。
それに顔を上げると同時に、床に散らばったステンドグラスを踏む、ブーツ。
ぱき。
乾いた音が響く。
そこに立っているのは、鮮やかな亜麻色の髪の堕天使……フォル。
彼の背には大きな翼が広がっていた。
「たまにはこうして魔力を解放しないとね。
下手に暴走させても厄介だから」
「それはたしかに厄介だな」
シュタウフェンベルクはそっけなく返す。
フォルに、先程までの自分の想いを、感情を、悟られないようにするために。
しかしそれも無駄なあがきだったのだろう。
フォルは小さく笑って、彼に歩み寄った。
そして、意地悪く笑いながら、いう。
「それで?
孤独な祓魔師様はこんな真夜中の教会で何をしているのかな?」
お供の番犬を連れもせずに。
そういいながらフォルはシュタウフェンベルクの頬に触れる。
その手をふり払いながら、シュタウフェンベルクは目の前の堕天使を睨みつけた。
「別に何であっても貴様に関係はないだろう」
冷たい声でそういいながら、出現させたマスケットをフォルに向ける。
すぐにでも引き金を引けるという体勢のままで睨みつけても、フォルは少しも動じなかった。
そればかりか……
ふ、と小さな笑みをうかべて、いう。
「僕を殺す?それもいいかもね。
君の生きる意味なんだろう?"悪を滅ぼすこと"は」
やればいいじゃない。
そういうフォルは何処か意味ありげで……
「そうして悪を滅ぼして、その先に君を待つモノが何か、考えていたんだろう?」
―― それを君はよく知っているよね?
そういってフォルはサファイアの瞳を細める。
一瞬瞳を揺らしたのを見逃さず、フォルはいった。
「君は何をどうあがいたって、救われはしないのにね」
可哀想に、とフォルは笑う。
シュタウフェンベルクは彼から視線を逸らして、震えを殺した声で言った。
「私自身に救いなんていらない……」
静かな声でそういうシュタウフェンベルク。
フォルはそれを聞いてすっと目を細める。
そして"へえ?"といいながら小さく首をかしげた。
「永久にむくわれなくていいの?」
「私は、あくまで皆を守りたいだけだ……
私自身のことは、別に……」
―― どうでもいいんだ。
そう。
どうでもいい。
自分は、報われなくても。
たとえ悪を滅ぼしたとして。
その先に待つのは、孤独だ。
悪を滅ぼす。
その時どれほどの憎しみを背負うかはわかっているつもりだ。
感謝も、敬いもいらない。
自分は、一人孤独に沈むだけでいい。
そう思っている。
そういうシュタウフェンベルクに、フォルはふ、と笑みを浮かべた。
そして、"君らしいといえば君らしいけどさ"といいつつ、シュタウフェンベルクの顔を覗き込んでいった。
「可笑しいとは思わない?
人知れず人を救い、守ってきた君は救済されないなんて」
この世界はおかしいよね。
そういいながら、フォルは何故か、シュタウフェンベルクの頬を撫でた。
からかうのとは少し違う、優しく暖かな撫で方で。
それに少し、戸惑う。
気持ちが、揺れる。
それを感じて首を振ろうとするシュタウフェンベルクにフォルは畳みかける。
「怖いとは思わない?
どんなに頑張っても、その先に待つのは永久の闇。
君を絶望から、孤独から救える人間なんていない……
そんな世界を憎いとは思わないの?」
その問いかけに、シュタウフェンベルクは答えられず俯いた。
黙り込んでいる彼を見て、フォルは目を細めた。
あと少し。
あと一歩。
彼は、堕ちる。
そう思いながらフォルは小さく笑って、彼の耳に唇を寄せた。
「壊しちゃえばいいじゃない。こんな、可笑しい世界」
守る義理もないよね。
フォルはそういいながら、笑う。
シュタウフェンベルクの体から少し力が抜けた。
ふぅ、と彼が小さく息を吐き出す。
そして、半ば自嘲気味に彼は口を開く。
「……そうだな、それも良いかもしれない」
そう呟く彼。
その姿を見てフォルは満足げに目を細めた。
「……全ての悪を滅ぼした後なら、そうするのも」
そういう彼に、フォルは少し驚いたように目を見開いた。
それから、愉快そうに嗤う。
「ふふふ、君らしいねぇ……」
壊れかけの、アンバランス。
ダイヤモンドのように強く見せる癖に、硝子みたいに危なげ。
そんな彼だから、堕ちるのを見るのが好きなのだ。
フォルはそう思いながら、目を細めたのだった。
―― Glass or diamond ――
(強いのか、脆いのか。
どちらともつかない君だから…)
(そんな君が背負う運命は、きっと誰が背負うそれより重いもの。
君は何所まで受け入れて、何処まで耐えられるんだろうね?)