「Rescue and…」の続きなお話です。
ペルが大佐に甘えてるだけの話…
こういうほのぼのも少しやりたかったのでした←
*attention*
大佐殿とペルメインのお話です
ジェイドもちらっと
シリアス混じり?でも基本ほのぼの
「Rescue and…」の続きです
ペルを心配する大佐殿を書きたくて…←
大佐殿はペルを思い切り甘やかしてくれたらな、と
ペルと大佐殿たちは一つしか年が違わないはずなんだけどなぁ…←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
医療棟の部屋の中……
普段は引っ込めたままの色白な手首をむき出しにする漆黒の髪の少年……ペル。
彼の手首には、擦れたような傷。
薄く血が滲み、鬱血したその場所は酷く痛そうで、手当されている様子を見つめる隻眼の少年も顔を歪める。
ペルの手首の傷の手当をしていた緑髪の魔術医……ジェイドは、
彼……シュタウフェンベルクの様子を見て小さく苦笑した。
「大丈夫ですよ。
見た目ほど酷い傷ではありませんから」
そんな彼の言葉に、シュタウフェンベルクははっとする。
それから、苦笑を浮かべつつ、言った。
「いや……わかっては、いるんだが」
それでも、痛そうで。
シュタウフェンベルクはそう呟く。
それを聞いて、ジェイドは小さく頷いた。
「まぁ、まったく痛くないはずはないですけどね……」
そういいつつ、ジェイドはペルの手首に包帯を巻いていく。
その手つきにシュタウフェンベルクはふっと息を吐き出しながら、ペルに問いかけた。
「大丈夫か、ペル」
「うん……」
こくり、と頷く長い黒髪の少年……ペル。
しかしいつも以上に言葉は少なく、表情は暗い。
シュタウフェンベルクは彼の様子に眉を下げつつ、そっとそんな彼の頭を撫でた。
ついさっきまで、見知らぬ男達に監禁されていた彼。
怯えさせられ、痛めつけられ、恐怖に震えていた彼を助け出せたのはついさっきだ。
彼の手首に残った傷も、その時についたもの。
彼を逃がさないために柱に彼を繋いでいた手錠が擦れて出来た傷だった。
恐らく、傷の痛みはそこまで酷くないはずだ。
これよりも酷い傷を負っている彼の姿をシュタウフェンベルクは見たことがある。
無論、そんな姿を見たくなどないのだけれど……
今心配なのは、身体の傷の方ではない。
何方かといえば……――
「……もう、大丈夫だからな」
シュタウフェンベルクは彼にそう声をかける。
そしてそっと彼の肩に手を置いた。
びくり、と彼の肩が跳ねる。
やはり、まだ怯えは消えていない。
それを感じ取って、シュタウフェンベルクは眉を寄せる。
その表情を緩ませると、彼は優しくペルの頭を撫でてやった。
「大丈夫……
もうお前が恐れる様な事はないから」
もう大丈夫だ、とシュタウフェンベルクは何度もペルに告げる。
その言葉にペルはほっとしたように目を細めて、頷いた。
手首の傷が問題なのではない。
彼がつけられたであろう心の傷の方が問題なのだ。
そう思いながら、シュタウフェンベルクは優しくペルの頭を撫でてやっていた。
「これで治療は終わりですね。
まめに包帯は巻きなおさないといけないと思いますけど……」
ジェイドはそういいながら、ペルに微笑みかける。
ペルはそんな彼にぺこり、と頭を下げる。
「ありがとう、お医者様……
ごめんなさい」
迷惑かけて、と彼は言う。
その言葉にジェイドはふっと笑みを浮かべる。
そしてゆっくりと首を振ると、そっとペルの頭を撫でた。
優しい微笑み。
ゆっくりと瞬くペルの目を見つめつつ、彼は言った。
「迷惑だなんて思いませんよ。
シュタウフェンベルクもいっていたでしょう?
貴方が無事でよかった、と」
そういいながらもう一度軽く彼の手に触れると、ジェイドは部屋から出て行った。
その背を見送り、シュタウフェンベルクはふっと息を吐き出す。
と、その時。
微かな、声が聞こえた。
「……シュタウフェンベルク」
自分を呼ぶ声。
それを聞いて、シュタウフェンベルクは振り向く。
自分を呼んだであろうペル。
彼に首を傾げて、問うた。
「どうした?」
そんな問いかけに何故かペルは目を伏せてしまう。
一体どうしたのだろう?
そう思いながら、シュタウフェンベルクはペルが座っているベッドに腰掛ける。
そして彼の長い髪を指先で漉いて、もう一度問うた。
「どうかしたのか?」
責めるわけではない。
あくまで答えを引き出そうとするような問いかけ。
それを聞いて、ペルは視線を上げる。
そして、少し戸惑いつつ、口を開いた。
「……ぎゅって、して」
そういうペル。
彼の言葉に一瞬驚いた顔をしたシュタウフェンベルクだったが、
すぐにふっと笑みを浮かべて、優しくペルを抱き締めてやった。
一方しかない彼の腕。
それを体に感じながら、ペルはぎゅっと彼の背に抱き着く。
そして小さく息を吐き出した。
「……まだ不安か」
シュタウフェンベルクはペルにそう問いかける。
心配そうに。
ヘフテンと一緒に彼を助け出してから、もうかなり時間が経っている。
しかしまだ極度に怯えているとなると、心配だ。
その理由は痛いほどよくわかるのだけれど……――
しかしシュタウフェンベルクの問いかけにペルはゆっくり首を振った。
そして、シュタウフェンベルクに抱き着きながら、ぽつりと言う。
「……もう会えないかと、おもったから」
小さな声。
小さな、呟き。
それと一緒に彼の体は小刻みに震える。
怯えというよりは安堵から来る震えだと、わかった。
ああして捕まって。
売り飛ばすだのなんだのという話を間近で聞いて。
本気で売り飛ばされたらどうしよう、と思って。
その時思ったのは何よりも、大好きな人達に会えないということ。
大好きな、シュタウフェンベルクたちに会えなくなるということ。
それが怖くて怖くて……――
だからこそ。
「今、こうしてられるの、幸せ……」
ペルはそういいながらシュタウフェンベルクに縋る。
そんな彼の温もりを感じて、シュタウフェンベルクは目を細めた。
そして彼の頭を優しく撫でてやりながら、言う。
「私も、もう一度ペルをこうして抱きしめてやることが出来て良かった」
心配した。
彼が帰ってこなかった時間。
何処に居るか。
無事なのか。
必死になって探し回った。
だからこそ安心した。
こうして彼が、此処に居ることに。
「……暫く、こうしてても、良い?」
少し甘えるようにペルはいう。
それを聞いて、シュタウフェンベルクは頷いた。
「気が済むまで。
今日は仕事もないから」
シュタウフェンベルクはそういいながら優しくペルを撫でる。
その優しく暖かい手を感じながら、ペルはふっと息を吐き出す。
「……シュタウフェンベルク」
さっきとは少し違う声色で、ペルは彼を呼ぶ。
そして、静かな声で言った。
「……助けに来てくれて、ありがとう」
改めて、言う。
助けに来てくれてありがとう、と。
「礼を言われるようなことでもないよ」
「ううん……
あとで、ヘフテンにも言わないと……ね」
ペルはそういいながらもう一度シュタウフェンベルクに抱き着く。
子供のように甘えてくる彼を甘やかしてやりながら、
シュタウフェンベルクはふっと笑ったのだった。
―― Like child ――
(まるで子供。
年が一つしか違わないとは、思えないような)
(怯えが消えたのならば、良かった。
こうして一緒に居てやる事で傷が癒えるなら…)