ワルキューレコンビ&ペル&フロムさんでのお話です。
大佐殿にたいしてひどいフロムさんを書きたかったのと…
後半はあれです、そこまでたどり着けませんでした←おい
*attention*
ワルキューレコンビ&ペル&フロムさんのお話です
シリアスなお話です
水責め食らう大佐殿を書きたくて…←こら
それを必死に探し回るヘフテンさんとペルを探したくて…
大佐殿にたいして容赦ないフロムさんいいと思います←←
ペルはこういう状況が実はトラウマです
長くなって助け出したところで止まると言う事態(^q^)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKと言う方は追記からどうぞ!
忙しく周囲を見渡しつつ、歩き回る金髪の少年。
彼の緑の双眼は、先刻から姿が見えない上官を探している。
彼がいそうな場所はすべて探した。
食堂も、彼の自室も、中庭も……
あとは図書館くらいだろうか。
そう思いつつ、彼……ヘフテンが歩き回っていたとき。
「あ、ペルさん……大佐を知りませんか?」
彼と同じようにキョロキョロと周囲を見渡していた黒髪の少年を見つけた。
ヘフテンが彼……ペルに声をかけると、ペルは少し驚いたように彼の方を見て、
少し眉を下げつつ、ゆっくりと首を振りながら、いった。
「僕も、探してる……」
彼も、ヘフテンと同じように彼……シュタウフェンベルクの姿を探していたらしい。
いつも一緒にいるペルと、一緒にいない。
それは珍しい事態だった。
珍しいですね、とヘフテンが言う。
ペルはヘフテンのそんな反応を見て、いった。
「書類、出してくるって、いってた……」
彼曰く。
シュタウフェンベルクはいつも通り彼と一緒に部屋で書類の仕事をこなしていたと言う。
そしてそれを仕上げたらしく、ちょっと提出しにいってくる、と出掛けたらしい。
それきり帰ってこない、と言う事態だった。
そんなペルの言葉にヘフテンはひとつ、頭に仮定が浮かんだ。
出来れば、当たってほしくない予感が。
それは恐らくペルも同じなのだろう。
心なしか、表情が暗い。
と、そのとき……――
「あ……」
視線を周囲に巡らせたヘフテンは身を強張らせた。
ペルもそちらを見て、スッと黒い瞳を細める。
そちらから歩いてきたのは、シュタウフェンベルクの上官。
彼のことをかなり嫌い、何かと嫌がらせをしている人物……フロムだった。
頭に浮かんだ仮定。
それは、シュタウフェンベルクが彼のところにいったのではないかと言う仮定だった。
フロムはペルを見て小さく鼻を鳴らした。
そして、ヘフテンとペルに言う。
「会うなり睨み付けるとは教育がなっていないな」
"彼"の教育がな、とフロムは言う。
その言葉にヘフテンは顔をしかめた。
しかし必死にその表情を圧し殺しつつ、言う。
「……大佐をご存じないですか」
恐らく知っているだろう。
そう思いながら、ヘフテンは問いかける。
ペルもじっと、彼を見つめた。
そんな彼らを代わる代わる見て、もう一度鼻を鳴らす。
そして口角をあげると、呟くようにいった。
「さぁな……探してみたらどうかね?」
肩を竦めるフロム。
そのまま歩きだそうとした彼の姿を見て顔をしかめたヘフテンは、彼に詰め寄ろうとした。
―― その、刹那。
「う……っ」
不意に、真っ白い光が弾けた。
ヘフテンとペルは、思わず目を閉じる。
それを開けると同時、ペルははっとしたように目を見開いた。
「!シュタウフェンベルク……」
小さく呟くペル。
少し遅れて目を開けたヘフテンも、目の前の光景に驚愕の表情を浮かべた。
「大佐!?」
そう。
目の前に映し出されているのは、シュタウフェンベルクの姿だった。
意識を失っているのか、壁にぐったりと寄りかかっている。
ヘフテンはそれに駆け寄ろうとした。
しかしそれは、ただの映像だった。
恐らく、幻影魔術が得意なフロムが見せている、幻影……
否、実際の今の彼の様子、だろう。
ペルは視線をフロムの方へ向ける。
そして静かな、しかし何処か棘のある声色で、いった。
「何処に、いるの……」
シュタウフェンベルクは、どこ。
ペルはフロムにそう問いかける。
フロムはわざとらしく肩を竦め、いった。
「それを探せといっているのがわからないかね?」
そういったフロムは笑みを浮かべた。
そして、何やら小さく呟く。
と、その瞬間。
シュタウフェンベルクがいるとおぼしき部屋に、異変が起きた。
壁から、水が流れ込んできたのだ。
「な……っ」
ヘフテンは驚きと焦りで声をあげた。
そんな彼を見て、フロムは声をあげて笑った。
「早く探さないと、君たちの大好きな大佐殿は溺死してしまうぞ」
ではな。
そういうと、フロムはすたすたと歩き出した。
ヘフテンはそれを慌ててよびとめようとするが……
それより先に、彼は姿を消してしまう。
「あ……っ」
「シュタウフェンベルク……っ」
小さく声をあげるペル。
彼も焦っているようだ。
そうだ。
こんなことをしている場合ではない。
あの映像が本当なら……否、フロムのことだ、間違いなく本当だろう。
だとしたら間違いなく、急いで彼を探し出さなければならない。
「探しましょう!」
ヘフテンはそう声をあげる。
ペルはそれに頷くと、彼の魔力のありかを探ったのだった。
***
―― 一方。
シュタウフェンベルクはズボンを濡らしていく冷たい感覚に目を覚ました。
一体なんだ、と思いながら目を開ける。
「……う、ぅ……」
小さく、呻く。
自分はいったい、何をしていた?
たしか、フロムに書類を提出しにいって……
そこから先の記憶が、ない。
「お目覚めかね?」
聞こえた、フロムの声。
そちらに視線を向けると同時、あることに気がついた。
「な……っ」
彼がたっている方の壁から、水が吹き出している。
それが床を濡らして、シュタウフェンベルクの服を濡らしているのだ。
それに気づいた様子のシュタウフェンベルクを見て、
フロムは楽しそうな表情を浮かべつつ、いった。
「ちょっとした戯れ(ゲーム)さ。
貴様が死ぬのが早いか、助けが来るのが早いか……」
そういいつつフロムはシュタウフェンベルクに歩み寄った。
そして魔術で取り出したらしい小さなバケツを彼の頭の上でひっくり返した。
ばしゃりと降り注ぐ、水。
それは氷水のように冷たい。
「っ、く……」
小さく声をあげる彼。
それを見てフロムは笑う。
「ははは、冷たいかね?」
なかなかいい顔だ、といってフロムは嗤う。
シュタウフェンベルクはそういいながら、彼の眼前に魔力で映像を展開させた。
それを見て、シュタウフェンベルクは大きく目を見開く。
「な……っ」
そこに映ったのは、何やら走り回っている様子の、ヘフテンとペル。
必死の表情。
それを見て、シュタウフェンベルクは動揺した表情を浮かべた。
何故彼らが必死なのか。
それは、考えずとも容易に想像がついた。
フロムは相変わらずに笑っている。
シュタウフェンベルクはそんな彼を睨みながら、いった。
「……二人に、手を出したら……」
ただじゃおかない。
そう、言おうとした。
しかしその言葉は、封じられる。
頭の上から降り注いだ、大量の水の所為で。
「っ……」
氷のような、水。
それに全身を塗らされて、シュタウフェンベルクは唇を噛む。
体が、震えた。
そんな彼を冷たい目で見ながら、フロムは鼻を鳴らした。
そして、軽く彼の膝を蹴飛ばしつつ、言う。
「そんなことが言えた立場か?」
こんな状況で、とフロムは言う。
彼の足には、自由を封じる枷がつけられていた。
立ち上がって自由に歩き回ることは、できそうにない。
シュタウフェンベルクは悔しそうな表情を浮かべる。
それを見て、フロムは満足げな顔をする。
そして、笑みを浮かべつつ、いった。
「私に命を握られていることは忘れないことだな」
私の采配ひとつで注ぎ込む水の量も変わる。
そういいながら彼は水の量を増やした。
あのペースだったら、この空間が水で一杯になるのも時間の問題だ。
ひやりとする。
そんなシュタウフェンベルクを見て笑みを浮かべると、フロムは姿を消した。
ここは、どこだ。
それは、シュタウフェンベルクにはわからない。
薄い明かりがついているが、それは周囲を照らすのには、足りない。
魔力を使って照らそうかと思ったが……
水に濡れ、体温が下がったこの状態では、出来そうにない。
「寒い……」
彼はそう呟くと、ふるりと体を震わせる。
流れ込む水の音と自分の呼吸音だけが酷く大きく聞こえた……――
***
ヘフテンとペルはシュタウフェンベルクを探して城中を走り回っていた。
いそうな場所をあらかた探したが、見つからない。
フロムの部屋にもその周辺にもいなかった。
外かもしれないとペルが探しにいったが成果はなし。
二人の次第に焦りの色が濃くなってくる。
「城のなか、じゃないんでしょうか……」
ヘフテンは小さく呟く。
気が気ではない。
今水は、どれくらい入っているだろうか。
ペルはその言葉に少し考え込む表情を浮かべる。
「あんな設備は、ない……けど」
「けど?」
そこで言葉を切ったペルを見て、ヘフテンは不思議そうな顔をする。
ペルは小さく頷きながら、いった。
「設備、だけなら……魔力で、用意できる……よね」
そう呟く彼。
ヘフテンはその言葉に小さく頷いた。
「そうですね、あとは水……
あの人は水属性ではないはずですし……」
設備は、魔力でどうにでもなる。
問題は、水だ。
ある程度魔力でいじれる場所まで水を引かなければならない。
水が下っていくとしたら……
「水を、引ける場所……下?」
ペルは小さく呟く。
それを聞いて、ヘフテンははっとした顔をした。
「下……地下!」
盲点だった。
此処はディアロ城。
フロムにとってもホームではないからと、表ばかりを探していた。
ペルはその言葉に頷く。
そして少し考え込んでから、いった。
「地下に、使ってない、倉庫、ある……そこかも」
「行きましょう!」
ヘフテンはそういうとペルの手を掴んだ。
そしてそのまま駆け出す。
ペルは彼においていかれないように必死に走ったのだった。
***
そうして辿り着いた、地下室。
そこから微かに、シュタウフェンベルクの気配を感じた。
地下室に続くドアは、施錠されている。
ペルはそれを見て顔をしかめた後……魔力を当てて、それを破壊した。
二人でドアに体当たりをして、ドアをこじ開ける。
転がり込んだそこに、彼はいた。
薄明かりしかない地下の物置。
そこにおかれた水槽のような、空間。
そこに、彼はいた。
すでに水は背伸びをした彼の顎辺りまで来ている。
もう、意識も薄いのだろう。
時々水に沈んでいる。
「大佐!」
ヘフテンは悲痛な声をあげる。
ペルは彼の方へ駆け出そうとした。
しかしその足は、すくむ。
水。
それは、ペルにとって何より苦手なものだった。
"人間だった"頃、彼は溺死したから。
だから……
今、そのときの自分と同じ状況になりかけているシュタウフェンベルクを見て、
体の震えを止めることが出来なくなっていた。
それを見てヘフテンは顔を歪める。
そして、彼の肩に手をおいてから、いった。
「ペルさん、僕がいきますから、此処で待ってて……」
そういうと、ヘフテンは彼のいる空間に走る。
そして少し周囲を確認した後、小さく息を吐き出した。
そして、思いきり魔力を込めて……彼のいるガラスを破壊した。
割れたガラスから水が溢れ出す。
シュタウフェンベルクは空になった水槽のようなそこに、そのまま座り込む。
魔術で出来ていたのだろう。
それをヘフテンが破壊するのと同時にその水槽は消えた。
「げほっ、けほ……っ」
咳き込む彼。
ヘフテンはそれを抱き止めた。
「大佐、大丈夫ですか!?」
そう声をかける。
シュタウフェンベルクは薄く目を開けた。
自分を抱き止めるヘフテンと、おずおずと歩み寄ってきたペルを見る。
「ヘフテン……ペル……」
掠れた声で名を呼ぶ彼の体はがたがたと震えていた。
顔は青い。
かなり、体が冷えている。
「っ、ペルさん、ジェイドさんを呼んできてください、なるべく早く!」
ヘフテンはシュタウフェンベルクを抱いたまま、ペルに言う。
ペルはその言葉にこくりと頷いた。
「分かった……」
そういって駆け出しかけて……彼は、戻ってきた。
そして首に巻いたマフラーをほどいて、ヘフテンに手渡した。
「これ、使って……寒く、ないように……」
少しでも、体が暖まるように。
ペルはそういう。
ヘフテンはそれを受け取りながら、頷いた。
「ありがとうございます」
ペルはそれを見届けると、急いで駆け出す。
しかしその足取りは何処か、おぼつかない。
ヘフテンはそれを心配そうに見送った。
けれど、自分は此処で彼をみていなければ。
そう思いながらヘフテンはシュタウフェンベルクを見た。
体の震えは、止まらない。
「大佐、もう大丈夫ですからね……」
ヘフテンはそういいながらペルのマフラーを彼の首に巻き付ける。
そして自分の魔力を使って、彼の濡れた服を乾かし、彼の冷えた体を暖める。
大丈夫。
もう大丈夫ですから。
そう、自分自身にも言い聞かせるように呟きながら……――
―― 冷えゆく体に… ――
(冷たく冷えていく体。
次第に薄れていく意識のなかで、私を探しに来た二人が見えた)
(大丈夫、もう大丈夫だから。
私にそう声をかけてくる副官。遠ざかる小さな黒い背中…)