大佐殿とペルのお話です。
先程の話の続きで、過去の大佐殿との絡みも…←
*attention*
大佐殿とペルのお話です
シリアス?ちっくなお話です
でもラストは多分ほのぼのです(笑)
過去の大佐殿との絡みもあります
こういうちょっとシリアスなやり取りが好きで…←
ペルのことを大切にしようとする大佐殿だったら萌えます
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
翌朝。
目を覚ましたペルは、シュタウフェンベルクに現在の状況を細かく聞いた。
此処はマリティンとの国境付近の森であること。
そこでキャンプを張り、魔獣の討伐をしていること……
「竜の、討伐……」
それが一番大きな目標だと、シュタウフェンベルクに聞いた。
まばたきをするペルを見つめて、彼は頷く。
「そうだ。
この辺りを根城にしてる種がいるらしくて」
竜は危険だ。
人里に降りていって甚大な被害を及ぼすことが多々ある。
最近にも竜の襲撃で壊滅に陥った村がイリュジアにもあると、ペルは聞いた。
「それを、倒すんだ……」
シュタウフェンベルクたちが倒すんだ。
ペルが呟くように言うのを見て、シュタウフェンベルクは言う。
「そう。それが私たちの仕事だ。
もっとも、竜以外の魔獣も出るけどな……」
他にも魔獣はいる。
竜が殺した獲物のおこぼれを狙う魔獣も多いからだ。
よってこの地帯は現在危険地帯とも言えた。
と、その時。
不意に響いた銃声。
シュタウフェンベルクは反射的に身を躱し、駆け出した。
恐らく、近くに魔獣が出たのだろう。
それを狙うために銃撃が始まったようだ。
そこではっとする。
少しペルとの距離が空いていた。
そのために……彼と、はぐれていた。
「!ペル!」
銃弾の雨のなか立ち尽くしたままのペル。
戻るには、時間が足りない。
「っ、くそ……伏せろペルッ!」
シュタウフェンベルクはペルに向かって叫んだ。
ぴくっと跳ねた彼の小さな体。
次の瞬間、ペルは地面に伏せる。
それが伏せたのか、はたまた倒れたのかよくわからない状況で……――
ある程度銃撃がやんだタイミングでシュタウフェンベルクは彼に駆け寄った。
半ば叫ぶように彼の名を呼ぶ。
「ペル!」
ペルは体を起こさない。
それに焦りつつ、シュタウフェンベルクは地面に潰れたペルの体を抱き起こした。
「怪我はないか?!」
慌てて声をかければ、ペルはゆっくりと目を開けた。
そして、小さく頷く。
「だい、じょうぶ……」
そう答える彼に、怪我はないようだ。
シュタウフェンベルクはそれにほっとした顔をした。
「良かった……」
そういいながら、シュタウフェンベルクはペルを抱き締めた。
両腕で、強く、強く。
その腕の強さにペルは大きく目を見開いた。
暖かく、強い力。
今までこうしてシュタウフェンベルクにこんなに強い力で抱き締められたことはなかった。
そのためにか、驚きでペルは固まる。
「すまない。私がもう少し傍に居れば……」
シュタウフェンベルクは言う。
少し震える声で。
驚いた。
目の前で、あの少年を死なせてしまったのかと思って。
そう呟く彼。
ペルはそれを見て幾度か瞬きをした後、ゆっくりと首を振った。
「ううん、大丈夫……」
大丈夫。
もう、大丈夫だから。
ペルはそういう。
その、刹那。
―― 私がもう少し傍に居れば……!
不意に頭に響いた声。
台詞は、さっきと同じ。
しかしその声色は、幾らか、悲痛なそれで……――
何処で聞いた?
その声は、シュタウフェンベルクのそれだったけれど……
一体、何処で聞いた?
「え?」
―― どうして……!
不意に頭をよぎる、その声。
少しずつ強くなるそれ。
ペルはあちこちを見渡す。
「?どうかしたか、ペル……」
"シュタウフェンベルク"はペルを見て……大きく目を見開いた。
「ペル、体……!」
そんな彼の声にペルは自分の体を見た。
そして、彼も驚きに目を見開く。
「え……」
ペルの体は、透けていた。
自分の掌を見たペルはまばたきを繰り返す。
―― あぁ、そうだ。
思い出した。
さっき聞こえた、あの声。
何処で、どういう状況で聞いたのか……――
思い出す。
遠くにかすんでいく、"シュタウフェンベルク"の姿。
声はもう、聞こえなくて。
ペルはゆっくりと目を閉じる。
光が、頭の中にあふれた。
***
「……ん」
ゆっくりと、ペルは目を開けた。
そして瞬きを繰り返す。
そんな彼の顔を覗き込んだのは、隻眼の少年……シュタウフェンベルクだった。
「ペル!」
大きな声で、彼はペルを呼ぶ。
ペルがゆっくりと瞬きをしているのを見て、彼はほっと息を吐き出した。
そして、ぎゅっとペルの手を握りしめる。
「良かった……本当に、良かっ……」
掠れた声で彼は呟く。
ペルの手を握る彼の手は小さく震えていた。
「シュタウフェンベルク……?僕、……」
僕は、一体。
そう、ペルが問いかける。
シュタウフェンベルクはそんな彼に、言った。
「私たちの任務の時に、巻き込まれたんだ……
魔獣には襲われなかったが、銃撃に巻き込まれて……」
そう、思い出した。
ペルは、シュタウフェンベルクとヘフテンの任務について行って。
その途中で、巻き込まれたのだ。
シュタウフェンベルクはペルを見つめた。
そして、顔を歪める。
「撃たれたと、思ったんだ。
でも、近付いたら……お前の姿が、消えて」
そう。
ペルが、唐突に倒れた。
撃たれたのかと、怪我をしたのかと……
死んだのかと、そう思った。
シュタウフェンベルクはペルにそういう。
「消えた……?」
ペルは不思議そうにその言葉を繰り返した。
シュタウフェンベルクはそれに小さく頷く。
「……ペルは、特殊な生き物だと言うから……
だから、そんなこともあると……思って」
死んでから姿が消えることもあると、そう思って。
だから……そういったシュタウフェンベルクは口を噤み、俯いた。
「……私が、もっと傍に居れば……」
シュタウフェンベルクはそういった。
それを聞いて瞬きをしたペルは、ほっと息を吐き出す。
「そうか……それで」
その所為であの声を聞いたんだ。
ペルは、そう呟く。
「え?」
どういうことだ?
そう首を傾げたシュタウフェンベルクを見つめて、ペルは話した。
自分が見ていた夢……否、"過去"を。
シュタウフェンベルクはそれを聞いて、大きく眼を見開いていた。
そして、ふっと息をはきだす。
「そうか……
その時の私なら、お前を両腕で抱きしめることが出来たのにな……」
そういうシュタウフェンベルクは少し、悲しげだ。
ペルはそんな彼を見て幾度か瞬きをした後、ぎゅうと彼に抱き付いた。
「わ……」
「今の、シュタウフェンベルク、大好き……だよ」
ペルはそういう。
そしてそっと、シュタウフェンベルクの"右腕"に触れた。
シュタウフェンベルクはそれを聞いて、大きく眼を見開いた後……ふっと微笑んだ。
そして、優しくペルの頭を撫でながら、言う。
「……ありがとう」
片腕でしか抱き締める事が出来ないけれど。
シュタウフェンベルクはそういいながらそっと、左腕でペルを抱き寄せてやった。
ペルはそんな彼に抱き着きながら、いう。
「大好き、だよ、シュタウフェンベルク……
あのときも、今も、守ってくれて、ありがとう……」
ペルはそういって少し微笑んだ。
シュタウフェンベルクはそんな彼を優しく撫でてやりながら、穏やかに微笑んだのだった。
―― 大好きなもの ――
(大切な、大好きな、お兄ちゃんみたいな、彼。
大好きなのは、"あのとき"も、今も、変わらなくて…)
("あのとき"のようにお前を両腕で抱きしめてやれたら、良かった。
そういっても彼は、今のままでも良いのだと微笑んで…)