久々科学者道化師コラボのお話です。
本家設定でのカルセのことに触れておきたかったのと、ムッソリーニさんを久々書きたくて…←
こういうネタ好きです←
*attention*
科学者道化師コラボのお話です
本家Laurentia!(学パロ)設定でのお話です
シリアスめなお話です
カルセの過去にちょっと触れてみたり
カルセが養護教諭をしている理由、的な
優しくて他人想いなムッソリーニさんを書きたくて…←
細かい話は、きっとそのうち…うん←おい
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
チャイムが鳴り響く、校舎。
そこからぱたぱたと駈け出すのは金髪の少年……ムッソリーニ。
彼が目指しているのは、校門。
いつも通りに待ち合わせしている、恋人。
今日は少し遅くまで補講があったから、学校を出る時間も遅くなった。
恐らくもう、彼は……カルセは来ているだろう。
あまり長く待たせたくはない。
早く行って、一緒に帰りたい。
ムッソリーニはそう思っているのだった。
廊下で先生とすれ違い、走るなよ!と怒られ、すみませーんと軽く返しつつ、
ぱたぱたと、ムッソリーニは校舎の外に走り出していく。
既に太陽は傾きかけていた。
空は少しずつ夕焼けに染まり始めている。
鮮やかなグラデーション。
それを見て目を細めた後、ムッソリーニは門の方へ駈け出して行く。
そうして辿り着いた門。
そこに立っている、長い淡水色の髪の男性。
白衣は脱いでいるものの見慣れた姿。
ムッソリーニはそれを見てぱっと顔を輝かせる。
カルセさん、と彼の名を呼ぼうとした。
しかし、そこにいる彼の表情を見て思わずその言葉を飲み込む。
カルセは何処かをじっと見つめていた。
何処か……正式に言えば、病院の方を見ている彼。
その表情は少しだけ、暗いものだった。
「?カルセさん……?」
一体どうしたのだろう。
何か、あったのだろうか。
いつも冷静な彼の暗い表情など滅多に見たことが無い。
何時でも彼は優しく微笑んでいるから。
何時でも穏やかな表情を浮かべているから。
ムッソリーニは少し躊躇ってから、彼に歩み寄った。
そして軽く彼の服を引っ張る。
「カルセさん?」
小さく名を呼べばカルセは驚いたように彼の方を見た。
そしてすまなそうに苦笑を浮かべて言う。
「!ムッソリーニ……すみません、ぼうっとしてました」
「大丈夫だけど……どうかしたの?」
ムッソリーニは心配そうにカルセに問いかける。
カルセがあんな沈んだ表情をしているのは、初めて見たから……――
カルセは彼の言葉に少し驚いたように目を見開いた。
それからふわりと微笑んでゆっくりと首を振る。
そしていつも通りの声で答えた。
「いえ、なんでもありませんよ。
少しだけ、考え事をしていたんです」
それだけですから。
そういうカルセはいつも通りに見えて……いつも通りではない。
それを、ムッソリーニは見抜いていた。
「とりあえず帰りましょう?」
カルセはそういって歩き出す。
ムッソリーニは慌てて彼と一緒に歩き出した。
いつも通りの帰り道。
いつも通りの彼の表情。
それが何処か、いつもと違う。
もう少しでムッソリーニのアパート。
そんなところまできた彼はカルセの服を軽く引っ張った。
「……カルセさん」
「?何ですか?」
不思議そうに首を傾げるカルセ。
ムッソリーニはそれを見つめて、少し微笑みつつ、言った。
「カルセさんの家に、いってもいい?」
彼の言葉にカルセは驚いたように目を見開いた。
彼から一緒に居たい、部屋に行きたいというのは珍しいことだったから。
しかし断るようなことではない。
カルセはふわりと微笑んで、頷いた。
「構いませんよ。このまま一緒に行きましょう」
貴方の私物は幾らかうちにありますし。
カルセはそういって柔らかい笑みを浮かべる。
ムッソリーニはその言葉を聞いて微笑みながら頷いた。
そのまま、一緒に歩いて彼の部屋に向かったのだった。
***
そうして辿り着いたカルセの部屋。
行きなれた彼の部屋。
そこにムッソリーニは今、一人でいる。
カルセは今、シャワーを浴びている。
ムッソリーニだけ先にシャワーを浴びてこの部屋に居るのだった。
「何て聞けば、良いだろ……」
ムッソリーニは小さく溜め息を吐き出した。
カルセの様子がおかしい。
それは間違いなく確かなのだけれど、だからといって、どう聞けばいいだろう?
寧ろ、訊いても良いことなのだろうか?
「ムッソリーニ?」
聞こえた、彼の声。
それにムッソリーニは顔をあげる。
まだ髪を濡らしたカルセが、部屋に戻ってきていた。
カルセさん、とムッソリーニは彼の名を呼ぶ。
歩み寄ってきた彼は少し心配そうに眉を下げつつ、ムッソリーニに問いかけた。
「どうかしたのですか?さっきから……」
様子がおかしい気がするのですが。
カルセはムッソリーニにそういう。
ムッソリーニはそれを聞いて青い瞳を幾度か瞬かせた後、小さく息を吐き出した。
そして、呟くような声でいう。
「それは、俺の台詞だよ……」
「え?」
ムッソリーニの言葉にカルセは首を傾げる。
そんな彼を見つめながら、ムッソリーニは言った。
「カルセさんこそ……さっきから、様子がおかしいよ……
さっき、帰ってくる前……門の前で病院の方、みてたでしょ?」
その時からおかしかった。
ムッソリーニはカルセにいう。
やっと聞けた。
そう思いながら彼は小さく息を吐き出した。
カルセはその言葉に大きく藍色の瞳を見開いた。
それから、ふっと息を吐き出す。
「……貴方には、隠し事は出来ませんね」
そういいながら、ムッソリーニが座っているソファの隣に座った。
そしてぽん、と彼の頭を撫でながら、言う。
「……私ね、医師免許を持っているんですよ」
唐突にカルセはそんなことを言う。
ムッソリーニは少し戸惑いつつ、頷く。
その話は聞いていた。
「うん……前に、おっちゃんが倒れた時、そういってたよね」
ムッソリーニが親しくしている洋食店の店主。
彼が倒れた時、カルセが処置をしてくれた。
その時いっていたのだ。
自分は医師免許も持っている、と。
珍しいな、とムッソリーニは思った。
教職を目指している彼は、知っている。
養護教諭は、医師免許を持っている必要がない。
そうなるための教育を受ければいいだけなのだ。
だから珍しいと思ったのだ。
医師免許を持っている養護教諭が……
「……本当は、ね」
カルセはゆっくりと口を開いた。
そして、小さく呟くように言う。
「本当は、医者になりたかったんですよ」
だから医師免許もとった。
カルセはそういう。
ムッソリーニはそれを聞いて、そうだったんだ、と呟くように言う。
こくり、と頷きながらカルセは言った。
「正直、養護教諭になるつもりはなかったんですよ。
医者になって、普通に病院に勤めるつもりだったんです」
「……じゃあ、どうしてならなかったの?」
少し戸惑いつつ、ムッソリーニはカルセにそう問いかける。
彼は頭が良い。
医者になるくらい、簡単だっただろうに。
カルセはその前にふわりと微笑んだ。
そして遠くを見るような目をした。
「……なれなかったんですよ。人が死ぬのが、怖くて」
「え?」
ムッソリーニは驚いて目を見開いた。
幾度も、瞬きをする。
カルセはそれを見て、ふっと微笑んだ。
「……ごめんなさい。
あまり、詳しく話すのは……今は、勘弁してくださいね」
理由は言わなかった。
けれど、なんとなく予想は出来た。
……話したくないような、思い出したくないような、事。
それが、原因なのだろう。
そう思いつつムッソリーニはこくり、と頷いた。
「大丈夫……というか、無理に話さなくていいよ、カルセさん」
もう、貴方の表情が暗い理由は分かったから。
何故あんな表情で病院を見ていたのかわかったから。
ムッソリーニはそういうが、カルセはゆっくりと首を振った。
「いつかは話すつもりでしたから……」
だから、貴方が聞いてくれるなら。
カルセはそういってふわりと微笑んだ。
ムッソリーニはその言葉に小さく頷いた。
聞くよ、と。
それを聞いたカルセは柔らかい表情を浮かべたまま、言った。
「簡単な、話ですよ。
私には幼馴染がいたんですが……
その子、今のムッソリーニと同じ年の頃に亡くなったんです」
その言葉にムッソリーニははっとする。
今まで聞いたことが無い話。
幼い頃の、彼の話。
自分と同じくらいの年の頃の、彼の話……――
「そう、だったんだ……」
「えぇ。
……その時には、乗り切った気でいたんです。
彼との約束……医者になるという約束を、叶えるつもりでいたんですよ」
そういったところで彼は言葉を切る。
そして小さく息を吐き出してから、言った。
「でも……研修のときから、おかしいことに気づいたんですよ。
どうにも、駄目だって……
研修で救急センターなどにも行ったのですが……
そこで命の危機に瀕している人を見た時は、必ず体調が悪くなるんです。
すぐに、回復するんですけどね」
それが、医者になれなかった理由。
カルセはそういって、微笑んだ。
「笑っちゃいますよね。
人が死ぬのが怖くて、医者になれないなんて」
「カルセさん……」
かける言葉が見つからなくて、ムッソリーニは小さく掠れた声で彼を呼ぶ。
カルセはふっと微笑んで、話の結末をつけた。
「それで、私は医者になるのをあきらめました。
そして……養護教諭になることを決めたんですよ。
子どもは好きでしたし……医者になりそこなった能力でも使える場所が欲しかった。
誰かの力になれればいいなと思ってね」
これが、結論です。
そういったカルセは軽くムッソリーニの頬にキスをした。
「ごめんなさいね、暗い話になってしまって。
でももう、大丈夫ですよ。
貴方に話して、すっきりしました」
―― だからもう、そんな顔をしないで?
そういって彼は微笑む。
そこでムッソリーニは自分が痛みを堪えているような表情を浮かべていることに気が付いた。
「ごめんなさい……聞きだしちゃって」
話したくない事だっただろうか。
そう思いながらムッソリーニが言えば、カルセはそっと彼の体を抱き寄せた。
そして、穏やかな声で言う。
「いえ……本当に、話したかったから。
だから、嬉しいんですよ……貴方が、聞いてくれて。
でも……」
―― もう少し、このままで。
そういいながら、カルセはムッソリーニの肩に顔を埋める。
ムッソリーニは少しだけ戸惑いつつ、彼の背をそっと、撫でていたのだった。
―― 伝えたかった話 ――
(本当は、もっと前に話しておきたかったのかもしれない。
大切な貴方に、私が目指していたものを)
(そんな話を聞きだしてしまってごめんなさい。
でもそれを、話すことで貴方がホッとできるなら、俺はいつでも聞くから…)