久しぶりの無彩色極彩色コラボでのお話です。
フォルとノアのはなし「閉じる世界に」の続きで…
かっこいいフランコさんを書きたかったのです←
*attention*
無彩色極彩色コラボのお話です
シリアスなお話です
「閉じる世界に」の続き的なお話です
ノアールと一緒にいたいと思うフランコさんを書きたくて…←
包容力のある優しくてかっこいいフランコさんが好きです
ノアも本当はフランコさんとずっと一緒にいたいのだと思います
色々暴走しましたすみません←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかタは追記からどうぞ!
―― 静かな、ディアロ城の一室。
そこに一人でいる長い赤髪の少年は小さく息を吐き出した。
少し唇を尖らせつつ、彼……フランコは小さく呟く。
「おっそいなぁ、ノアール……」
彼が待っているのは、いつもならば部屋に来てくれる黒髪の青年。
いつもならとっくに来ている時間なのに彼の姿は部屋にない。
いったい何処にいってしまったのやら、と少し拗ねたような顔をする。
と、そのとき。
部屋の中に空間移動術が発動する気配が生じた。
フランコはぱっと顔を輝かせる。
その空間移動術は、彼が起こしたものだと思ったから。
けれど、その魔術が生じた場所に姿を見せたのはよく見慣れた黒髪の彼ではなく、
彼の主人である亜麻色の髪の青年……フォルだった。
「こんばんは」
にっこりと微笑むフォル。
それを見てフランコは怪訝そうな顔をする。
「何しに来たん?ノアールに、なにか……」
なにかあったんか?
と、フランコは訊ねていた。
きっと、内心で不安だったのだ。
フォルがこうして自分の前に現れるのは、大体彼になにかあったときだったから。
フォルは彼の言葉にサファイアの瞳を細める。
そしてフランコを見つめながら小さく首をかしげて、いった。
「僕と一緒に来てくれる?そうしたらわかるから」
詳しいことを説明しようとしないフォル。
とりあえず一緒に来てと、それだけを言う。
フランコは彼の言葉に少し不安げな顔をした。
嫌な胸騒ぎが、した。
「一緒にいけば、えぇのん?」
「うん。来て」
君が来てくれるなら。
フォルはフランコの金色の瞳を見つめながら、そういう。
フランコは彼の言葉に幾度か瞬きをした後、
小さく頷いて彼についていったのだった。
***
そうしてフォルにつれていかれたのは、彼らの住処である廃墟。
ノアールと一緒に幾度かいったことがあるその場所だったけれど、
なんだか今日はいつもよりもなおひっそりしているように感じた。
フォルは"こっちだよ"といって、フランコをつれて歩いていく。
フランコはただただ彼について歩いていった。
そうしてたどり着いたのは、廃墟の一室。
記憶にあるかぎり、そこはノアールの部屋だ。
いっそう煽られる不安。
フォルはフランコのそんな心境をよそに、あっさりとドアを開けた。
静かな部屋。
明かりの灯らないその部屋のベッドの上……――
そこを見て、フランコは金色の瞳を大きく見開いた。
「な……」
ベッドの上に横たわっているのは他でもないノアール。
彼はドアが開いても身動きひとつしない。
フランコがすぐ傍にいっても起き上がる様子も見せない。
それどころか、呼吸している様子さえ、見えなかった。
フランコはそっとそんな彼の頬に触れる。
そして大きく目を見開いた。
冷たい頬。
彼の肌が冷たいのはいつものことだったけれど……
それは、その冷たさは……死人のようで。
「何で、……何したん!?」
フランコはフォルに叫ぶ。
どうして、どうしてこんなことになっているのか、と。
フォルはそんなフランコを見つめた。
そして、ふっと息を吐き出しながらノアールの方を見て、言う。
「ノアールが望んでしたことだよ。
もう終わりにしてほしい、って」
「望んで……」
フランコは掠れた声をあげる。
フォルはそんな彼に頷きながら、ノアールのことを話す。
「誰にも愛されない、愛される方法がわからない、愛する方法もわからない……
だから、もう良いんだってさ」
だからもういい。
もう、辛いから。
そういって彼は"この結末"を求めたのだと、フォルはそういった。
そしてそっとノアールの額に触れる。
そのままフランコに言った。
「だから、僕が魔術をかけたんだよ。
君に何か伝えたそうだったけど、やっぱり良いってやめちゃった」
フランコはそんなノアールを見た。
そして、そっと彼の唇に触れる。
やはり冷たいそれ。
呼吸は、感じない。
ノアール、とフランコは掠れた声で彼の名前を呼んだ。
答えはない。
もう、これから先ずっと……?
フランコがそう思った、そのとき。
「ねぇ……このまま終わりにしても良いと思う?」
フォルがそういった。
フランコは彼の言葉に瞬きをしつつ彼の方を見た。
そんな彼を見つつ、フォルは微笑んで、いった。
「ごめんね、さっきのは半分嘘。
まだノアールは、死んでないよ。
殺してくれって言われたけど……
僕がノアにかけたのは、あくまで催眠の魔術だよ」
「眠ってる、だけ……」
フランコは脱力したようにそう呟いた。
思わず一瞬力が抜けたが、今はそれどころではない。
目の前にいるこの堕天使はいったい何がしたいのだろう?
眠っているだけなん?と問いかけたフランコにフォルは少し悩む顔をする。
そして、小さく肩を竦めながらいった。
「それもちょっと違うけどね。
ある程度の毒薬は、飲ませたから」
だから息してないように感じるんだよ、とフォルはいう。
その言葉にフランコは少し眉を寄せた。
毒を飲ませたというのは、少しいただけない。
でも、彼が死んでいないというのにはほっとした。
フランコはフォルを見つめる。
そして真剣な声色でいった。
「どうしたら、ノアールは起きるん……?」
「起こしたいの?」
このまま終わりにはしたくない?
そんなフォルの問いかけに、フランコは頷いた。
「出来るはずが、ないやん」
こんなの認められない。
フランコはそういう。
フォルはそんな彼を見つめて目を細めると、小さく呪文を呟いた。
それが恐らく、魔術を解く方法なのだろう。
フランコはそっとノアールの頬に触れる。
そして、そっと彼の名前を呼んだ。
「ノアール……」
起きて。
そう呼ぶと同時、ノアールの瞼が震えて、目が開いた。
漆黒の瞳がぼんやりと、フランコの姿を捉える。
「……フランコ?」
小さく呼んだその声は、驚いたものと同時……絶望したような声でもあった。
フランコはそれに少し顔を歪める。
ノアールはベッドの上に体を起こした。
しかしフォルが飲ませたという毒の所為で上手く体が動かないのだろう。
倒れかけた彼を、フランコが支える。
ノアールはそんな彼の腕を払いつつ、なんとか自分の腕で自分の体を支えた。
そして、震える声で言う。
「何故……何故、ですか、主……
私は、もうすべてを終わりにしてくれといったではありませんか……
それなのに、何故……」
そんなノアールの声。
フォルはサファイアの瞳を細めて、いった。
「死にたかったら自分ですれば良いじゃない。
そうする方法くらい、君もわかるよね」
僕が糸を切ってあげるのは確かに義務だと思うけどさ……」
―― 誰かに恨まれたりしても嫌だし?
フォルはそういいながらフランコを見る。
ノアールは暫しそんな彼を見つめていたが、
やがて顔を歪めて、呟くようにいった。
「もう、良いですよ……
ならば、自分でするまでです」
彼はそういった。
魔術を使って手元に現したのは、拳銃。
フランコはそっとその手に自分の手を重ねた。
そして、少し険しい声で言う。
「ちょい待ち、ノアール……俺に、わかるように説明しぃ」
ノアールは何故お前が此処に?という顔をした。
しかし大方フォルがつれてきたのだろうということは想像がついたのか、
小さく息を吐き出すと、呟くような声でいった。
「俺は愛情なんて知らない。
うまく受けとることも与えることも出来ない。
それでも受けたい、与えたいと矛盾した思いを持ってしまう。
……それが苦しいから、すべて終わりにしてほしい……
そう望むのは、おかしいことか」
ノアールの声は静かだったが、フランコにはそれが苦しげな悲鳴に聞こえた。
泣くことも弱音を吐くことも出来ない彼の、苦しい本音にも。
フランコが黙ったままでいると、ノアールはふっと息を吐いた。
そして自分の拳銃を撫でつつ、言う。
「……もう、良い。疲れた」
もう、終わりにしたい。
もう、このまま……
そんな彼を暫し見つめた後、フランコは目を伏せた。
「それで……」
ぎゅ、とノアールの手を握るフランコの手に力がこもる。
そして彼は顔をあげてまっすぐにノアールを見た。
「それですべて終わらせるんか?」
それは険しい声だった。
彼のそんな声は珍しく、ノアールは思わず彼を見つめ返す。
フランコは再び視線を落としてノアールの手元を見た。
彼の武器である拳銃。
彼は、これを使って……?
フランコは小さく息を吐き出しながら、呟くような声でいった。
「まあ確かに、自分で毒煽ったり銃で撃ちぬいたり、
ご主人様に消してもらえばアンタ自身は終われるやろうな……」
終わりに出来るだろう。
死ぬことが望みならば、それはきっと簡単に終わる。
フランコはそういった。
ノアールは"そうだろう"といった。
そしてフランコの手をほどこうとする。
しかし、それより先……
フランコはノアールの手をしっかりと握ると、まっすぐに彼を見つめた。
そして、言う。
「でも、俺は?俺は終わられへんで……
ノアールが消えても、アンタに出会う前には戻られへんねん。
……そんなんズルいわ」
たとえお前が消えても自分はもとには戻れない。
お前に出会う前には戻れない。
終わりになんか、出来ないんだ。
フランコはそういう。
ノアールは彼の声に黒い瞳を見開いた。
そして、目を伏せたままに呟く。
「それ、は……」
「好きや、って……ノアールも言うてくれたやん。
俺も好きだから、守りたいっていったのに……
結局お前はそんな俺の思いもぜーんぶ無視して、
そうやって一人勝手にいなくなろうとするんやな。
……ほんとに、自分勝手でズルい奴や」
酷いわ、とフランコは言う。
そして小さく溜め息を吐くと、彼の手にある拳銃を一度つかんで、放った。
彼の魔力を宿すそれは少し熱かったけれどそれも無視して。
そして、驚いた顔をしているノアールをぎゅっと抱き締めた。
驚いたようにもがく彼。
しかし体の自由はきかないようで、もがいてもフランコの腕はほどけなかった。
フランコは小さく息を吐く。
そしてノアールを強く抱き締めたまま、いった。
「愛したい愛されたいと思うんなら俺が権利をやる。寧ろ義務にしたる。
俺は独裁者のフラグメントやで?
絶対に愛し愛されやな許さん……」
それくらいしたる、とフランコは言う。
ノアールは彼の言葉に顔を歪めて、呟いた。
「っ、むちゃくちゃだ……」
「うるさい。
一人で勝手に悩んだ末に一人で全部全部終わりにしようとするノアールに、
そんなこと言う資格ないわ」
フランコはそういって、優しく彼の頭を撫でた。
そして、強い声で言う。
「……誰もノアールを愛さんって言うんなら、俺がその分全部を与えたる。
絶対に苦しい思いさせんから」
今まで誰も愛してくれなかったというなら、そのぶんも自分が愛す。
それが愛であるとわかるまで、何度でも、どれだけでも……
フランコは、強い強い声でそういった。
ノアールは彼の声に、優しい腕に、息を吐き出した。
浅く、苦しげな呼吸。
それは毒の所為なのか、それとも……
「そうしてもらっても、愛してもらっても……
俺は、いつかお前を壊す……」
ノアールは掠れた声でそういった。
愛情を受けとる術を知らないから。
正しい受け取りかたを、返しかたを知らないから。
だから……離れたい。
壊したくない。
だから離れたい。
そんなノアールの言葉にフランコは小さく笑う。
そしてそっと彼の髪を撫でながら、いった。
「そんな簡単に壊れんって言うとるやん」
大丈夫。
壊れたりしない。
壊されたりしない。
全部受け止めてみせる。
アンタの苦しみも悲しみも、全部。
だから……――
「守らせて?俺じゃ頼りないかもしれんけど……ずうっと傍に居るから」
愛情を、あげる。
ノアールが愛されたいというのなら。
幾らでもあげる。
だから、いなくならないで?
「俺は、ただノアールと一緒にいられたらえぇんや。
だから離れたいなんて言わんといて?」
わかったて言うまで離さんよ?
そういいながらフランコはノアールを強く抱き締める。
ノアールは彼の腕のなかで小さくもがいた。
しかしそのもがきも次第に弱くなる。
浅い呼吸。
苦しげな声で、彼は自分を抱き締める"愛しい人"の名を呼ぶ。
フランコはそんな彼を抱き締めながら、優しく微笑んで、
何度でも、何度でも、"大丈夫やで"と応えていたのだった。
―― すべてを受け入れて… ――
(愛情を求めるのなら与えるから。
それがわからないというのなら教えるから。
アンタの全てを受け入れてみせるから……――)
(親にさえも愛されなかった。
愛情なんて知らなかったし要らないと思っていた。
そんな俺でもお前を愛せる?お前は、愛せる…
それを、信じても良いのだろうか……――)