科学者道化師コラボのお話です。
この二人の関係はやっぱりとがめられるものだよなぁ、と言う話をしていたので…←
*attention*
科学者道化師コラボのお話です
シリアスめなお話です
本家Laurentia!(学パロ)設定でのお話です
教師と生徒と言う関係の二人なので…
不安になってつきはなそうとするけれど、と言うムッソリーニさんだったら可愛いな、と…
でもそれを許さないカルセなのだと思います(笑)
こういう関係性の二人、素敵だと思います…(^q^)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKと言うかたは追記からどうぞ!
いつも通りの、昼休み。
金髪の少年……ムッソリーニは自分の後輩たちと一緒に昼食をとっていた。
購買で買ってきたパンを口に運びつつ、後輩たちと楽しそうに笑いあう。
そうして食事をしているうちに、ふと思い出したように浅緑の髪の少年がいった。
「そういえば、お前イリュジア学園の保健室の先生と知り合いなのか?」
その言葉にムッソリーニは思わず口に含んでいたジュースを吐き出しそうになった。
……動揺の所為で。
それを押し隠しながら、浅緑の髪の彼……スターリンに問い返した。
「え?何、いきなり」
ただきょとんとしたように、動揺を隠して彼は問いかける。
ムッソリーニは彼が買ってきたものの袋からパンをひとつとりながら、いった。
「や、親しいみたいだなぁって。噂にもなってるのだよ」
たまに親しげに話してるの見るよなって、とスターリンは言う。
その言葉にムッソリーニは青い目を幾度も瞬かせた。
そして、必死に頭を回転させてから、笑っていう。
「親しいって言うか……ほら、俺そそっかしいだろ?
それでよく怪我して、あっちでも世話になってて」
半分は本当で半分は嘘だ。
交流授業の時に怪我をしたり体調を崩したりして保健室にいくことはある。
その時にそこの養護教諭……カルセと話したことは事実だ。
しかし、その実……
二人はそれ以上の関係があるのだから、親しいのは当然。
しかし、とりあえずのムッソリーニの言葉に、スターリンは納得したらしい。
「あぁ、なるほど……お前がバカなだけだったって訳か」
「バカって言うなバカって!」
ムッソリーニは大袈裟なほどに頬を膨らませて言う。
いつも通りに振る舞って。
「あんまり間抜けな様を晒さないでくれ……
私たちの学校の生徒がバカだと思われる」
一緒に食事をとっていた黒髪の少年、ヒトラーもそういった。
隣で彼の親友であるクビツェクがくすくすと笑う。
ムッソリーニはそんな彼を見てむくれつつ、いった。
「ヒトラーまでそういうこと言う……!」
どうせ俺はバカですよーだ、なんていいながら笑って見せるムッソリーニ。
いつも通りの笑顔を向けながらも、彼の内心では焦りのようなものが渦巻いていた。
***
そんな日の、夜。
ムッソリーニは携帯を手にしていた。
その画面に表示されているのは彼の番号。
通話状態に出来ないままに、既に十分が経過していた。
帰りは、彼と一緒だった。
いつも通りの帰り道……そうしたつもりだったけれど、
ムッソリーニのことをよくよく知っている彼は、すぐに異変に気がついた。
何かあったのかと彼は訊ねてきた。
でもムッソリーニは笑顔を向けて、何でもないと返した。
その言葉に納得いかない様子ではあったのだけれど、
深くは追求せずに、いつも通りに話をしながら、いつも通りに別れた。
そうして帰ってきた後、数時間……
ムッソリーニはこうして、彼に電話するか否か、悩んでいるのだった。
話すべきか。
……否、話すべきなのは間違いない。
でも……――
その思いを抱きつつも、ムッソリーニは小さく息を吐き出した。
そして、携帯の画面をタッチして、通話状態にする。
携帯を耳に当てる。
コール音が響く。
一度、二度、三度……――
その後、コールが途切れた。
『もしもし、ムッソリーニ?』
どうかしましたか、と聞きなれた声が電話の向こうから聞こえる。
ムッソリーニはぎゅっと携帯を握りしめる。
「……カルセさん?」
彼はとりあえずカルセにそう問いかける。
その声色がぎこちなかったからだろう。
カルセは不思議そうに問い返してきた。
『おや、どうかしましたか?』
そんな声を出して、とカルセは言う。
ムッソリーニは少し戸惑ったように口を噤んだ末、勇気を出したかのようにいった。
「……うん、ちょっと話があって」
『話?なんですか、藪から棒に……
それに、それなら明日聞きますよ。
普通に学校はあるのでしょう?』
カルセの声は怪訝そうだ。
どうせ明日も会うのだから、その時直接話せば良いだろう、と彼は言う。
別に帰り道に話せないとしても、どちらかの家に入って話せば良いだろう、と。
しかしムッソリーニはその言葉に首を振った。
その動作がカルセに見えないことはわかっていたけれど……
「いや……直接は、話せないから」
彼の言葉にカルセも何かを感じたのだろう。
一瞬間を開けた後、彼は真剣な声色で問いかけてきた。
『……ムッソリーニ、どうしたんですか?』
いきなり電話を掛けてきたことから疑問だ。
それに……彼がこんな声を出していることも、そもそもおかしい。
いつも、空元気でだって明るい声を出して見せるのだから。
カルセの問いかけに、ムッソリーニは一度口を噤んだ。
そして二度、三度、と深呼吸をすると、静かな声で彼にいった。
「……しばらく、会わない方が良いんじゃないかな、俺たち」
『え?』
カルセの声は、心底驚いたようなものだった。
ムッソリーニはそれを聞いて、胸の痛みを感じる。
それでも言葉を紡ぐことをやめず、いった。
「ほら、やっぱり、俺たち、生徒と先生って関係な訳だしさ……
やっぱり、良くないと思うんだよ……」
ムッソリーニは彼に、そういう。
自分達の関係。
それは決して簡単に受け入れられるものではない。
だから……
だから、一緒にいない方が良いと思う。
ムッソリーニはカルセにそういった。
彼の言葉にカルセは暫し黙っていた。
その後、彼は静かな声色でいう。
『何を今更……そんなの、私も貴方も納得した上のことではありませんか』
納得した上のこと。
教師と生徒でもよい。
それでも一緒にいたいと思うから……
そう思って一緒にいるのだろうと、カルセは言う。
その言葉にムッソリーニは唇を噛んだ。
そして、小さく息を吐き出しつつ、いった。
「俺は納得してるよ、でも……」
そこで一度言葉を切った。
そのままいったら、涙声になりそうだったから。
何度も深呼吸をしながら、いった。
「……世間は、納得してくれないよ」
自分達は納得していても、世間は納得してくれない。
許されない。
……きっと、反対される。
そして何より……
その時に被害を被るのは、恐らくカルセの方だ。
ムッソリーニはあまり咎められまい。
カルセが彼を誑かしたと言う話で終わりになってしまうだけ。
そうなれば責められるのはカルセだけ。
……そんなの、嫌だった。
『ムッソリーニ』
カルセは彼を呼ぶ。
しかしムッソリーニはこれ以上彼の声を聞いていられなかった。
放っておいたら、泣き出してしまいそうで……――
「迎えに来なくて良い。
俺も待ってないから、そのまま帰るから……」
『ムッソリーニ、待ちなさ……』
「ごめんね」
一言。
ただ一言そういって、ムッソリーニは電話を切った。
そしてそのまま、電源を切る。
彼がかけ直してくることは想像が出来ていたから……――
ムッソリーニは携帯を放り出して、ベッドに突っ伏した。
そのままぎゅっとシーツを握りしめて、泣き出した。
「っふ、……ぅう……」
噛み殺しても噛み殺しても、泣き声が止まらない。
ぼろぼろとこぼれる涙がシーツを濡らしていった。
胸が痛い。
苦しい。
最後に聞こえた焦ったようなカルセの声が、耳から離れない。
いつものように優しく呼んでくれた彼の声が思い出せない……
「これで、良いんだよ……これで良いんだ……」
ムッソリーニは自分に言い聞かせるようにそう呟き続けた。
これで良い。
これが良い。
これで、良いんだと……――
***
それから、どれくらいの時間が経っただろう。
ムッソリーニはぱちり、と目を開けた。
「……ん」
どうやら、泣きながら眠ってしまったらしい。
そう思いつつ、ムッソリーニはむくりと体を起こした。
泣いていた所為でか体が怠い。
目が痛い。
顔を洗いにいかないと……
彼がそう思っていたとき。
「目が覚めましたか」
そう、声が聞こえた。
ムッソリーニは驚いたように目を見開く。
「え……」
そこにいたのは、他でもないカルセ。
どうして?
そう一瞬思ったけれど……
すぐに納得した。
彼は、この部屋の合鍵を持っている。
泣き疲れてねむってしまったから、気がつかなかったのだろう。
カルセはじっとムッソリーニを見つめている。
そして彼は呟くような声でいった。
「いきなり随分と酷い扱いなんですね、ムッソリーニ」
「カルセ、さ……」
掠れた声で、ムッソリーニは彼を呼ぶ。
カルセは小さく息を吐き出しながら呟くような声で言う。
「電話であんなこと言われて、応えるより先に切られて、
何度かけても繋がらなくて……
私がどれだけ傷ついたか、わかっていますか」
彼の声は静かだが、確かに傷ついたような声だ。
ムッソリーニは顔を歪めつつ、掠れた声で詫びる。
「!ごめ、なさ……」
謝ると同時、ぎゅっと強く抱き締められた。
ムッソリーニは体を強張らせる。
浅い呼吸が、口から漏れた。
「酷い人ですよ、貴方は」
呟くようにカルセはそういう。
ムッソリーニは唇を噛み締めた。
わかっている。
彼をどれだけ傷つけたか。
どれだけ彼に、酷いことをしているか。
傍にいるといってくれている彼を突き放したのだ。
カルセは彼を抱き締めたまま小さく息を吐き出した。
そして、ふっと表情を緩めつつ、言う。
「……優しくて、優しくて、優しすぎて……残酷です。
私にも、貴方自身にも」
カルセはそういいながら優しくムッソリーニの頭を撫でた。
その手からムッソリーニは逃げようとする。
彼の優しさが今は怖い。
泣き出してしまいそうで。
しかしカルセの腕は緩まない。
ぎゅっと彼を抱き締めたままに、彼はいった。
「私のことを思っていってくれたんでしょう?
もしも私と貴方の関係がバレたら咎めを受けるのは私の方だと」
そうですよね、と問いかける彼。
ムッソリーニはこくりと頷きながら、いった。
「……うん。俺は、別に何言われても気にしないし」
「そう思ってくれるのは嬉しいですよ。
それに、その現実も私は知っています」
カルセはそういう。
自分もわかっている、と。
自分達の関係がバレたらどうなるか位は想像がつく、と。
ムッソリーニはその言葉に一度息を詰まらせる。
その後、小さく頷きながらいった。
「……うん、だから……」
だから、離れなければならないと思った。
だから、距離をとるべきだと思った。
ムッソリーニはそういうが……
「貴方と一緒にいられなければ、何も意味がないんですよ。
私にとって……生きている意味がない」
「カルセ、さ……」
そうまで言う彼。
ムッソリーニは驚いたような顔をして、彼を呼ぶ。
カルセは一度彼を抱く腕を緩めた。
そして真剣な顔をして彼を見つめながら、いった。
「もし貴方が本気で私と離れたいと思っているのなら、従いましょう。
でも、そうだとしたら……
電話でではなく、今この場で、私の顔を見て、直接いってください」
そういいながらカルセはまっすぐムッソリーニを見つめる。
ムッソリーニはそれを見つめ返した。
「……俺、は……」
震える唇を開く。
しかし、そこから先の言葉が出てこない。
本気で離れたい。
離れなければならない。
そんな言葉は、口から出なかった。
ムッソリーニは顔を歪める。
その頬に、涙が伝い落ちた。
「離れたく、ないよぉ……」
そんな言葉と同時、ムッソリーニはカルセに縋った。
そのまま、泣きながら彼は言う。
「一緒にいて、ほしい……
でも、そしたら……そしたら……っ」
普段涙を見せない彼。
泣くにしても静かになく彼。
それが一度こうして完全に堰が切れてしまえば、止まらなくなる。
苦しげに泣く彼。
呼吸もままならなくなって震える肩。
カルセはそっとそれを抱き締めて、背中を擦った。
「落ち着いて、ムッソリーニ。大丈夫ですよ」
大丈夫、大丈夫。
何度も何度もそういいながら、カルセはムッソリーニの背を擦る。
彼はふるふると首を振りながら、いった。
「いやだ、嫌……どっちも、やだ……」
離れるのも嫌だ。
でもカルセが咎められるのも嫌だ。
どっちも嫌だと、彼は泣く。
暫しそうしてパニック状態でしゃくりあげていた彼だったが、
すぐに正気に戻ったらしく、啜り泣きながらいつものようにいった。
「我儘だよね、ごめんなさい、すぐに……」
すぐに泣き止むから。
ムッソリーニはそういう。
カルセはそれを見て顔を歪めると、ぽんと彼の頭を撫でた。
「泣き止まなくて良いですよ。
貴方が泣いてることを想像して、私は此処に来たんですから」
ね、といいながら、カルセは彼の頬に、額に、キスをする。
そしてでも、と言葉を紡ぎかけた彼の唇を塞いで、微笑んだ。
「……愛してますよ、ムッソリーニ」
私の気持ちは変わりません。
カルセはそういいながら、ムッソリーニを抱き締める。
ムッソリーニは彼の腕を感じながら、目を閉じる。
離れなければ。
離れた方がいい。
そう思えども離れることなどできず……
彼は静かに泣きながら、彼に縋っていたのだった。
―― 選ぶべきもの、選べないもの ――
(どちらの道が正解か何てわかってる
自分が傷ついても彼を傷つけても離れるべきだって)
(でもその道は選べないよ。
彼を突き放すには、俺たちの距離は詰まりすぎていたから)