久々のシストのお話です。
Aimer様の「寂しくて眠れない夜は」の歌詞のイメージがシストとエルドにぴったりで…(笑)
ここ最近書いてなかったせいでシストの口調がふわふわしてますが←おい
シストはあれで寂しがりやで臆病な性格なのでこういうこともあるかな、って…←
私の小説の出来はともかく、歌詞は勿論曲もとても良い曲で好きです♪
ともあれ、追記からどうぞ!
Side シスト
―― ふわり。
部屋に吹き込んできた風が、酷く寒く感じた。
もう七月に入って暑い、この季節だと言うのに。
そう思いながら、俺は目を開ける。
時計を見れば、まだ時刻は深夜。
起き出すには、早すぎる。
そう思って俺は小さく息を吐き出す。
まだ、眠れない。
なんだろう、なぜだろう。
胸が、苦しくて眠れない。
時々、あることだった。
……エルドが、死んでから。
寂しくて、寂しくて、眠れない。
何度目を閉じても。
何度眠ろうとしても。
胸の痛みが、睡眠の邪魔をする。
何度も何度も寝返りを打つ。
ちらと目に映ったのは、エルドのベッド。
エルドが使ってた布団や枕。
使う人間を失ったそれは、今でもベッドの上にある。
俺がそのままにしてくれと我儘をいったら、メイドたちはそのままにしてくれて、
今でも時々その布団をほしたり、シーツを変えたりしてくれている。
「エルド……」
無意識に、名前を呼んでいた。
彼はもう、応えないというのに。
そのベッドに彼はもう、いないと言うのに。
手を、天井に伸ばした。
その手を、アイツが握ってくれることを望んで。
でも、実際は冷たい夜の空気を俺の細い手が掻くだけ。
寂しさが、増して。
胸がいたくなって。
俺は、もう一度目を閉じる。
眠れば、アイツに会えるかもしれない。
何度も何度も、心のなかでアイツに問いかけた。
"夢のなかでなら会えるかな?"って。
せめてせめてその声が聞きたい。
今でも、アイツが死んでから二年もたつ今でも色濃く残るアイツの声。
それを聞きたいんだ。
もう一度、もう一度だけでいいから……――
そう願いながら、俺はベッドのシーツを握りしめる。
その手は、小さく震えていた。
―― 嗚呼。
今でもこうしてアイツのことを思っているのに。
その気持ちはきっと誰よりも強いのに。
もう、アイツは……エルドは、傍にいなくて。
こんな肌寒い夜に、ふと実感する。
"一人きりだ"って。
それで、負けそうになる。
涙が止まらなくなって、暗い闇の底に思考が沈んでしまいそうになる。
嗚呼、エルド……
お前は、こんな俺を、許してくれるかな……?
……駄目だ。
どうしても眠れない。
俺はそう思って体を起こした。
そしてそのまま、ベランダに出る。
吹き抜ける風が、俺の長い紫の髪を揺らした。
もう、夏だというのに吹いていく風が何故か冷たく感じて、俺は少し身を震わせる。
そして柔らかな光を落とす月を見上げて、呟いた。
「なぁ、エルド……――」
―― 時がたてば、忘れられるかな?
なにも、エルドのことを忘れたいわけじゃない。
お前がもういないこの世界の悲しさや苦しさを忘れたい。
エルドの記憶をずっと笑ったままで話せるようになりたい。
そうなるためには、後何年かかる?
後、何年我慢したらこの胸の痛みは消える?
後、いくつ夜を越えたら……――お前に、会える?
そんなことを思うと同時に、強い風が吹き抜けた。
バカなことを考えてるんじゃないよ、って言うかのように。
俺はまだ18で、普通に生きてったらあと何十年って生きないといけない。
そうだよなぁ、あと幾つの夜、何て数えられないよな。
でも、エルド。
お前が死んだばっかりの時は、俺何度も思ったよ。
お前のところにいきたいって。
罪滅ぼしなんて綺麗な感情じゃない。
お前の傍にいたいって言う、自分勝手。
我儘。
そんなものは許されるはずがなくて、俺の傍には四六時中ジェイド様がいて、
俺がバカなことをするのを止めてくれたけど。
「……エルド」
もう一度、その名前を呼ぶ。
もう一度、もう一度だけでいい。
俺の声にお前が答えてくれるのを望んで。
一言でいいんだ。
なんだ?ってそれだけで。
でも、その願いさえももう、叶いはしなくて……――
寂しくて、眠れない。
俺はただ、温もりを探す。
もう二度と戻らない、優しい優しい温もりを。
―― ん?なんだよ、シスト。怖い夢見たのか?
―― ガキだなぁ。仕方ねぇから、一緒に寝てやるよ!
―― せっま……俺をおとしたら許さないからな!
あぁ、昔にはそんなこともあったっけ。
温もりを感じながら、眠った。
暑苦しい何ていいながら、エルドはちゃんと俺の傍にいてくれた。
あの温もりが、恋しい。
眠れない。
寂しい。
そう思いながら、俺は綺麗な月に手を伸ばす。
もう一度。
もう一度だけ。
エルドの声が、聞けるように……――
それだけをただ、願いながら。
―― Please replay… ――
(一言だけでいいよ。
俺の孤独に、応えて)
(そうでないと俺……
寂しくて、寂しくて、死んでしまう気がするんだ)
2014-7-14 23:05